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08 愚者の陽動作戦05

目の前の阿熊達は瞬く間にガンバスの周りを取り囲んでいっている。

全ては遅すぎたのか、ガンバス車内に戻った辰は悲壮な顔を浮かべ全てを失った心持でいた。

辰がAIアイに命令する。

そしてAIアイがそれまでとは打って変わり無機質な声質になり辰に伝える。

”PIN CODE1ready”

「3.141592653589 793238462643」

”PIN CODE2ready”

「俺こそが・・・・・」

(ああ、すまん、スマンみんな・・・・・・憎め・・・呪え・・・この俺を・・・)

辰はふと顔を上げると遠くから近寄ってくる阿熊のゴリと目が合う。

子どもを失い、復讐鬼となった阿熊。

もう、勝機は見えてこない。

意を決し、最後の言葉を伝えるー--。

「その自決待った!!!」

(!?)

後ろの、いや厳密には後方頭上から激が飛んできた。

「AB爆導索発射!A・Bともに目標へ弧を描くように有効範囲まで飛翔後、2秒後爆破」

ガンバスの後方から前方に目掛けて尾にワイヤーのようなものが付いた大型ロケット弾が

取り囲んでいる阿熊の目の前を緩やかにカーブを描きながら飛翔する。

そして、ワイヤーがちょうど後ろを駆け抜けたあたりでロケットはその動きを止め滞空する。

2・・・・・1・・・ドオォォオォン!!!!

先頭のロケット弾からつながったワイヤーの終端まで連続して大爆発が起こる!

”グォオオオオオ!ガアアアァァァッァァ!”

阿熊の多くがその爆発に巻き込まれて爆殺されてゆく。

だが、ゴリを始め勘のいい阿熊や能力の高い阿熊は爆破直前に条件反射に盾などで回避行動を取った。

「モブさん!無理やりでいいんでコンテナをドッキングさせてください!」

”あいヨ!”

ガンツアーズのガンバスに大きな振動が走る。

辰が振り返るとガンバスのリア後方はついこの間見たことのあるガンバスのオプションパーツが繋がっていた。

そして、見たことのある人間がそこに立っていた。

辰は信じられぬ様子で目を点にするが、彼は構わず辰を横切り目の前で仁王立ちして

炎に揉まれる阿熊と向き合った。

背中にはなんと多数のライフルやバズーカ砲を携えたガンラックを背負っている。

「散々やられたようだな辰。だがまだあきらめるな!」

「お前、この間の第6小隊の・・・補給車の鏡か!?」

突如現れた救援は、ついこの間顔を合わせた”戦闘”担当ではない”補給”担当の第6小隊。

鏡隊員であった。


「モブさん、ごめんなさい。・・・また会いましょう。」

”やれやれ・・・あいよ!!”

鏡隊員はそう無線で伝えるとガンツアーの横を第6小隊のガンバスが通り抜ける。

「おい辰、伏せてろ!」

「お、おいマジか。モブって言う隊員は乗ったままじゃ・・・」

「いいんだ!」

辰は急ぎ床に伏せた。鏡は身も身をかがめる。

第6小隊のガンバスは阿熊達の方へ突っ込むと強烈な閃光を放ち、内部から爆発した。

ドォ―――――ン!!

鼓膜を貫かんばかりの大きな爆発音が二人を襲う。

そして、爆発と同時に中から多数の金属片が周りに飛散した。

車内に仕込んであったベアリング類だと思われる。

それは炎に苦しむ阿熊や爆発を逃れた阿熊にも直撃し、阿熊の軍勢は阿鼻叫喚の地獄と化した。

当然辰達にも降りかかってきたが鏡の構えた盾のギミックのおかげか辰達の方へ向かってくる

金属片は急速に進路を変え、辺りに飛び散った。

「モブさんはAIだ、心配無用。ちなみにもうこれで出すものは出したからな。後は俺が持ってきたものだけだ」

「・・・鏡、なぜここに」

辰はボロボロになった身体を起こし、鏡に尋ねる。

「”渡りに船”と思いたいだろう?だがそういう訳にもいかないぜ、残念ながら俺はお前らの救援隊じゃない」

「なんだって?」

鏡は背中のガンラックから両腕でバズーカを取り出して構え、破壊された装甲を見つめそのまま辰に顔を向けることもなく淡々と伝える。

「いいか時間が無い。事態は急を要する、取り急ぎ聞け。伝えることは3つだけだ」

辰は鏡の緊迫した様子を察知し、思わず息をのんだ。嫌な予感が脳裏をよぎる。

「まずひとつ、先程縄文寺の後発隊が阿熊の軍勢と遭遇した。交戦した模様だが現在交信が途絶えている。

合流隊の安否は不明だ」

「おい嘘だろ・・・」

鏡はそのまま続ける。

「もうひとつ、現在第五地方自警団本部に阿熊の大群が押し寄せ総攻撃を受けている。

本部は防衛戦に繰り出しているがあまりの軍勢にこのままでは落ちるのは時間の問題だ。」

「・・・そんな」

そして極めつけに。

「最後だ。事態を重く見た陸自の霧島幕僚長は天空城作戦にて使用予定の

”携帯型小型核砲弾”輸送中の第6小隊補給隊に急遽伝令、輸送中の核砲弾3発のうち2発を

第5小隊ガンツアーのガンシステム及び発射ステーを用い、

自警団本部への敵勢力を鎮圧するよう命令を下した。

故に俺が来たという訳だ。ドッキングしたコンテナにシコタマ入ってるよ」

辰はそれを聞くや否や鏡に飛び掛かり胸ぐらを掴んだ。

「俺に・・・俺に”十字架”を背負えって言うのか!!!」

鏡も負けじと辰を睨んで怒号を上げる。

「ああそうだ!だがお前だけじゃない!お前のチームも!今どうなっているのかわからん縄文寺も!

玉砕上等で戦っている本部の連中も!そして何より俺も!一緒に背負ってやる!」

ああ、クソッと辰はそのまま鏡の胸ぐらに顔をうずめた。

「無理だ、もうやめよう・・・こんなの・・・・」

辰はあまりの情報の羅列にショックを隠し切れない、だが鏡は続けた。

「・・・いいか辰、よく聞け。俺たちの住むこの日本は、もう”国土の6割強”を失っている。

人口にいたっては既に”全盛期の3割程度”だ、しかもそれはデバイス情報からの暫定値でしかない。

・・・そのまま辰は黙って聞いていた。

「いままで、俺たちの住むこの日本は国が始まって以来、信じられんぐらい数多くの困難に見舞われたはずだ」

「それでも今、俺やお前がいるのはきっと顔も名前も知らん大昔のご先祖様達があきらめずに立ち向かっていったからだろ?」

辰は顔を上げる。

「・・・辰、ここであきらめるか?今、バスの中にいる苦しんでいるルイやミサ、イルの前で言えるか?

”もうあきらめよう”って。終わらせるか?何もかも?」

辰はチームの面々を見ながら、涙ながらに歯を食いしばった。

「辰、ガンバスのAI、アイの権限を一時的に俺に移譲しろ、一応最小限のガンシステムは復旧してるだろう」

「な、なんだって・・・」

鏡は辰に無理やりにガンバスのハッチへと押しやった。

「俺は外でルーフに上がって支持を出しながら近づく阿熊を迎え撃つ。

お前は自身とチームの応急手当と反撃を手伝う、いいか?!」

しかしそれを聞いても辰はもうどうしていいかわからず憔悴していた。すかさず鏡が活を入れる。

「辰!しっかりしろ!いいか、これより俺たちはここを直ちに離脱、数キロ先にある電磁地雷原を抜けたのち

直ちに地雷原起動!追手の阿熊達を振り切った後は本部方面へ。

核の有効射程に入ったら直ちに作戦を遂行する、いいな!」

鏡からそれを聞いた直後、奥の方から怒号が聞こえた。

――――ゴリが生きている。


「・・・そうだ、まだ終わっちゃいない」

辰は無線でアイに伝える。

「アイ、これより30分間、ガンバス管理者権限を第6小隊代表・鏡隊員に移譲する・・・鏡、たのむ」

”了解、これより指揮・管理権を30分間、第6小隊 鏡隊長へ移譲します”

「了解した!」

鏡はそれを聞くや急いでモニターでコンディションを確認し、急ぎルーフへと飛び移る。

そして両腕のバズーカをむやみやたらに発射しながらアイに伝えた。

「アイ。セントリーガンシステムEF群以外すべて停止後、弾丸供給をEFへ。

動態探知、一斉掃射!

ハイブリッドエンジンは停止してるな?!非常用シングルモーターを起動して核電池出力限界値まで上げろ。

続いて生き残っている砲台は全て後方のみに注力、前と側面には構うな!俺がやる!

補助輪起動!壊れたものは全て強制パージして車体を軽くしろ!」

鏡はとても早口に、瞬く間にアイに指示を出す。

やがてガンバスのあちこちが動き出し、かろうじて臨戦態勢をとる。

”鏡さん、準備完了いたしました。”

「了解した。ガンツアーズ全力後退、出発進行!」

既に半壊状態である、ガンツアーズのガンバスはその重々しい図体からうなり声のような轟音を出し、

今、ゆっくりと走りだした。



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