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08 愚者の陽動作戦03

「さぁ、吠えろ吠えろ熊どもがっ!こっちはやってもやってもやり足りねーんだよ!」

池田は酔ってるとは思えないほどの素早い動きで銃の弾倉を交換する。

交換が済むないなや、生きてるもの、死んでるもの、かまわず射撃する。

「池田隊長、もう必要十分だろ!?相手は今、沈静化している。これ以上は意味のない行為だ」

「自重しろだぁ?!辰!お前も俺と同世代ならわかるだろう?!

俺ら”貧乏くじ世代”の憤りがよ!」

池田は無線の辰に向かって怒鳴り散らした。

「ガキの頃には学歴社会!(ダダダダダダッ)

毛の生えたころには就職氷河!(バンバンバンッ)

ゴミみたいな仕事に就いた時には格差社会!(ドンッドンッ)

バブルであほみたいに贅沢した無能でわがままなクソじじい共に足で使われ!

それでも絶えて成熟したころあいで疫病で世界が超不景気ですべてが台無しになり!(バス、バスンッ)

ただ唯一の拠り所・・・!」

「池田隊長!自重をっ・・・」

「家族は”戦争”で皆殺しににされちまうしなぁー---!!」

池田は目頭を熱くしながらただただ撃ち尽くしていた。

池田の叫びを聞き、ただモニターを見ながら沈黙する辰、他のメンバーも珍しく

言葉を発することもなく事の成り行きをただ眺めていた。

”雨霰、再装填完了及び電力チャージ完了”

ペーロンのガンバスAIが無機質な声で車内アナウンスする。

「沼田っ!ロックオンだ、ターゲッティングしろ!トムスっ、お前も索敵だ索敵!」

池田は怒号をメンバーに浴びせかける。沼田もトムスも池田の気迫に押され急ぎ作業に入る。

一方、ガンツアー車内ではミサが敵の不穏な動きを察知した。

「ちょっとこれ・・・アイ、国道方面、ちょっと逸れたところの付近にこっちに向かってくる熱源あるでしょ、解析できる?」

”目標約420m地点確認、解析開始”

ミサがコンソールを弄る様子を見てイルが疑問を投げかける。

「ミサ、どうしたの?」

「これ阿熊連中だと思うんだけどちょっと様子がおかしい・・・変な動きしてる?」

ミサの様子を見たルイも手元のモニターを見ながら怪訝な顔をしながら呟く。

「確かに変だ、これじゃあまるで建物を貫通しながら動いているような・・・」

それを聞いた辰は驚いてモニターを凝視すると叫ぶと同時にアイも報告した。

 「これは兵器っ―――!」 ”観測地点に兵器及び動力熱源感知”

ビィ―!!!

いきなり車内にロックオン警告音が鳴り響く。

「大陸軍だ!ペーロンっ、捉えているかっ」

辰は無線で取り急ぎ山田に伝えた。

山田は急いでモニターを上空に向ける。

・・・現れたのは大陸軍の大型輸送ドローン。

第三小隊輸送ドローンよりもはるかに大きい軍用ドローンが上空に3機姿を見せた。

全てステルス仕様であったため近距離まで来なければ探知できなかったのである。

「っち、ふざけやがって!おい沼田っセントリーガンだ!対空!」

「・・・駄目だ高度がっ、射程外っ」

ルーフセントリーガンの有効射程距離は100m~120mあまり。

上空にいる目標には遠く及ばなかった。

やがてドローンの下部貨物ハッチが開き、無数の爆雷が見えた。

一同は顔面蒼白になり、ガンバスを回避行動させる。

ガンツアーでは辰が矢継ぎ早に命令を出す。

「イル、対空防御だ。真上に向けられる砲座は全部向けて弾幕を張れ!

ルイ、急速前進!残りの阿熊に注視しながら出来るだけドローンの下から逃げろ!

ミサ、ほかにもドローンがいないか索敵しろ、阿熊もだっ!

建物付近には寄るな!瓦礫に当たれば身も蓋もないっ!」

火事場と化すガンツアーを他所に、何故かペーロンガンバスは微動だにしなかった。

池田はハッチの上を覗き見てから再び車内に視線を戻す。

「・・・おい、沼田。このまま真上に向かって雨霰を撃て。200mまでならとどくやろ」

「ちょっ、マジですか隊長。そんなのやったこともないですよっ」

「隊長。回避行動を取りましょうっ、危険です」

山田や沼田の制止を他所に、池田は自ら操作に乗り出し操縦席に向かうと沼田を押しのけてVRゴーグルをかけた。

「・・・ふざけんなや。なにがや。なにが大陸軍じゃ。お前らこそ熊共と槍や鉈で戦ってりゃあいいんだよっ!!」

池田は勢いよくトリガーグリップのボタンを押す!

”発射”

AIのアナウンスと共にルーフのハッチが開き、勢いよく針のようなものが無数に飛び出す。

それと同時にまた、ドローンも爆雷の投下を開始した。


爆雷と針が交錯し、爆発と閃光が幾つも弾け出る。

両者の射撃が終わるころには上空は大きな黒煙で包まれた。

それをモニターで見ていた辰は何かに気づいたのかペーロンのガンバスに向かって無線で叫ぶ。

「逃げろ第一小隊!危険すぎる!」

辰は過去に大陸軍が策を講じているのを過去に幾つも見てきた。

(畜生黒煙で前が見えない、これはまずい。)

そんな辰の心配を他所に池田は切り返す。

「辰っ!怖気づいたのか。こんなもんはなぁ、力で押すんや!俺が手本をっ・・・」

再びハッチへ出向き銃を構えようとした矢先、面前には他の2体のドローンがすでにこちらと同じところまで

降下していた。

「なぁっ!?」

ドローンには阿熊が何匹も乗っており、皆大砲のようなものを構えている。

「嘘だろっ!!」

「クソっ、間に合え!」

沼田は足で蹴るようにアクセルを踏み、舵を思いきり切る。

ガンバスは急発進で回避行動を取る。車体は大きく揺れ、その慣性で山田がスツールから振り落とされ

柱に頭をぶつけて倒れてしまった。

「山田っ、大丈夫か?!ち、畜生がっ・・・」

「言わんこっちゃない!」

ガンツアーは移動しながら位置的にドローンのやや後方にいたことから相手の注意を削ぐことができた。

「目標はドローンだ!カノン砲、連装砲一斉掃射!!イル、俺らも撃って出るぞ!!」

「了解!」

辰はイルに言うと、イルは直ぐにガンシステムをオートにして銃を持ってハッチを開き

辰と共に外へ向けてランチャーや単装砲を発射する。

激しく撃ち合う両者。

そこに池田も体制を立て直して再び加勢に加わろうとした。

「やりやがったなクソ野郎ども・・・・ボケがよ!皆殺しに―――」

・・・・・・・・・・・・・・。

池田がそう啖呵を切った最中、池田の頭が吹き飛んでいた。

それは車体をも貫通し、一瞬にしてソフトボールほどの穴をあけた。

頭を打って床にへたり込んでいた山田は一瞬、何が起きたのかわからず崩れ行く池田の身体を見ながらただ呆然としていた。

そして、遠巻きながらも”それを”確認した辰とイルも、一瞬時が止まり撃たれた池田に釘付けになった。

「・・・・ヤバイ!!!」

一瞬の思考の後、辰は叫んだが遅かった。

ガンツアーズの車体、後方側面に幾つもの穴が開き、

内の一つが爆破物に当たったのか車体が炎柱を上げ大きく弾け、ガンバスは横転した。

「ぎゃああああああああっ――――!!!!」

一同の悲鳴が耳の鼓膜を弾けんばかりに響き渡る。

その時、辰は一瞬ではあるがハッチの外部から射撃元を目撃する。

ちょうどゴリの付近にいる、それは身の丈程大きなライフルを持った小さな”ヒグマ”のような阿熊だった。

(そんな・・・アンチマテリアル・・・か?阿熊が・・・精密射撃を・・・)

薄れゆく意識の中、辰の目の前には両目を手で覆い、のた打ち回るイルの姿が目に映っていた。


「ゴリ、遅くなった」小柄なヒグマが数頭、ゴリに向かって伝えた。

「・・・天空城から来た連中か、お前ら遅すぎんねん!」

ゴリの両手に抱かれる子熊を見て、ヒグマが事態を察する。

「・・・すまなかった」

「女将には」

「すべて承っている、順調だ」

ゴリはそれを聞くと既に息を引き取った我が子をそっと地面に置き、

馬鹿デカい大砲と盾を構えペーロンのガンバスに向かってゆっくり歩き出した。

「お前らそこで見張ってろ、まずはあの胸糞悪い連中からよ!」

「心得た」

ヒグマはそう言うと散開しライフルを構え辺りを警戒しだした。

そしてゴリと数頭は鬼のような形相でペーロンのガンバスに向かって歩き出す―――。


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