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08 愚者の陽動作戦02

「下水道?!」

ルイがモニターを見ながら絶叫している。

「この辺は近代都市構造のモデルで地下道がデカいんだ」

地面から次々と阿熊が飛び出し、ガンバスへ一目散に向かってくる。

だが、奴らのほとんどが国立自警団第1小隊ペーロンのガンバスへ向かっており、

ガンツアーズには警戒する阿熊が数頭盾を持って取り囲んでいるのみである。

だがペーロン隊長池田は突進してくる阿熊達を何ら動じることなく静観していた。

「まあまあ、予想通りか。やはり”子供”優先は生き物の性か。しかし奇襲とは予想外だった。

だが所詮は熊どもの浅知恵よ、むしろこの方が俺にとって非常に都合がいい」

モニターは阿熊達を捉え、目標までの射程距離を複数個所、測定しているのが表示されている。

「ターゲッティング完了まで残り僅か。沼田、操舵士兼業で申し訳ないが頼りにしてるぞ」

トムに沼田と呼ばれた小柄なパンクヘッドの青年は操舵席でVRゴーグルをかけてトリガーグリップとトラックボールを素早く動かし、

阿熊をすごい勢いでマークしている。

「イケメンちゃんは人使いが荒いねぇ~もうすこしまーってちょ」

「弾は惜しむなよ、全弾打ち込むつもりでいけ」

池田は酒瓶を放り投げ、床に置いていた馬鹿デカいカノン砲を持ち上げ入念にチェックした後、撃鉄を起こした。

一方、奇襲をかけたにも関わらず、何ら目立つ動きのないガンバスたちを怪訝に思い

阿熊達のと筆頭であるゴリが他のモノを制止させた。

(やろう、今までならもうバカスカ撃っててもオカシないのに全然撃ってけえへん。なんやヤバいんちゃうんか?)

槍と盾を構えた先頭集団がペーロンを取り囲み車体との距離を詰めていった。

「先頭待て!引け!おい、グレネード野郎。お前アイツに向かって一発撃て、早くしろ!」

ゴリは傍にいた大陸製大型グレネードランチャーを持つ阿熊集団に号令をかけた。

「でもゴリ、まだ子どもがいるぜ・・・まだ助けてもねーのに」

「うるせぇ!こんぐらいじゃああの車はやられねーよ、早くせえや!」

「くそっ、お前構えろ!撃て、撃て!」

グレネードランチャーをもった一頭の阿熊がガンバスに目掛けて射撃した。

やや、上空に向かって発射されたそれは弧を描きながらガンバスへと向かっていった。

そこに対応したのがガンツアー。

「オッサン、来たよ」

「セントリーガンCD群、弾幕掃射。ペーロンをカバーしろ」

辰はイルに指示を出し、イルはコンソールを操作する。

次にAIアイが各CD群モニターを出して銃砲を操作する。

ダダダダッ!とルーフから飛び出した小型連装単距離バルカンが細かな動きをしながらグレネードを打ち落とす。

「ケッ、あいつ等秘策とかなんとか言っといて防御面は全部こっちにゆだねる気?弾温存して逃げる気なんじゃねーの」

「イル、集中しろ。あいつらはスプリングタウンの研究者から何らかの”ブツ”を貰って装備してるんだ、

ちょっと見せてもらおうじゃないか」

ちょうどその時、ガンツアーにトムスから無線が入る。

「ガンツアーズ、我が隊はこれより”雨霰”を発射する。銃身を収め、味方識別信号の再度確認をせよ。

これよりカウント始める・・・」

「あめあられ・・・上から?ミサ、とりあえず全部の砲門を仕舞え」

「嘘でしょ・・・・り、了解、砲門収納。識別信号確認ヨシ」

ミサは取り急ぎコンソールを操作した。

「隊長、発射準備完了しました。発射許可を」

「ふふふふふふ・・・・了解だ・・・沼田ぁ!雨霰あめあられ掃射開始!」

「雨霰起動、掃射シーケンス開始」

沼田がトリガーグリップ天部のカバーを親指で弾いてボタンを露わにした。

警告音が激しく鳴る。

「カウント・・・3・・2・・・1!」

池田が沼田に顎で合図を取る。

沼田はボタンを力強く推した。

「今!」

ペーロンのガンバスのルーフの装甲一部が急スピードで開放され、酷い金属音と共に針のようなものが

束となって一斉に空中へと発射された。

それを見たゴリが前方に向かって叫ぶ!

「上空だ!お前ら逃げろ、急げ!」

だが叫びも空しく先頭一同はガンバスに近づきすぎたためガンバス上部の様子がわからず、

盾を構えたままただ一同は間抜けに上を見上げた。

その顔の眉間に、”線”のような針が突き刺さった。

その針はまるで生きているかのようにガンツアーのガンバスは避け、

阿熊の先頭集団から後続集団まで巻き込み、頭や肩、背中に刺さってゆく。

「な、な・・・・なぁ?!」

訳も分からず無数の針が刺さった阿熊が定まらない視界でペーロンガンバスを見る。

「接続完了」

「雷鳴招―――――――――来っ!」

ピシャ―――――ン!!!

雷のようなものがペーロンのガンバスから放たれ、辺り一面はその雷鳴と共に光に包まれた。


・・・。

たった数秒の沈黙。

その刹那、身をよじらせ、煙を身体から立ち上らせる阿熊達がゴロゴロ転がっていた。

まだ息のある者もいるのか呻き声が所々聞こえる。

阿熊は皆ペーロンガンバスから放たれた雷に打たれたのである。

それをモニターで確認した池田はボロボロになった阿熊の子供を檻から出して

ガンバスのハッチを開き、蹴り落した。

「さてと・・・ほら!お前らの大事なお子さんだぞ!受け取れ!はははははは」

阿熊は身を震わせながら、何とかその身体を動かして倒れこんでいる仲間たちの中を歩き出した。

―――親元へと一直線に。

「ら・・・”ラー”!・・・こ・・こ・・・ち」

遠くで横たわる血だらけの父親であろう阿熊の呼びかけに気づき、

ボロボロになりながらも血眼になって父親に向かって駆け出す阿熊の子。

ゴリも子の姿を見るや武器を投げ捨て四足歩行で一目散に駆け出した、だが。

「親がいたのかよ。こりゃあ目の前で申し訳ないことをしたなぁーとっ」

池田はカノン砲を構え、撃ちだした。

「冗談でしよ・・・」

事の一部始終をモニターしていたミサが愕然とする。

ペーロンガンバスも一気に銃砲が飛び出し、池田と共に一斉掃射を開始する。

ダダダダダダダダダダダッ!

ゴリの目の前で子と親と、共に焦げた仲間が撃ち殺されていく。

ただ射撃音が辺り一面鳴り響き、阿熊達の血が所々噴き出し、あちこちに血だまりができる。

雷のせいで血が蒸気だっているのか、血の霧のようなものまで出てきた。

「これが雨霰・・・間違いなく”非人道的行為”だな」

辰も目の前の光景に思わず悪寒が走る。

「・・・ねぇ、酷すぎない!?もう見てらんないよ」

ミサは思わずモニター目を背ける。

ミサだけではなかった、イルもルイも。ガンツアー一同だけでなく、トムスも沼田も、また射撃者である池田ですら

悲壮に満ちた顔をしていた。

「そうさ、飲まなきゃやってられんのよ、こんなことはよぉ―――」撃ちながら呟く池田。

ゴリは撃たれ、被弾しながらも瞬く間に子の元にたどり着くと口で子供の首根っこを食わえ、そのまま身を翻して、

安全圏まで後退する。

そして、仲間たちの元にたどり着くと静かに座り込み血だらけになった子供を抱きかかえ、

――――――天に向かって轟音のような雄叫びを腹から吐き出した。


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