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08 愚者の陽動作戦01

08愚者の陽動作戦01


 スプリングタウンでの決死の戦闘により、辰達の自警団は大幅な戦力低下を余儀なくされた。

しかし、事態は一刻も迫る。

それはスプリングタウン出発前に受けた天空城攻略作戦のブリーフィングでの事である。

作戦開始は一週間後、その作戦開始日の理由について説明があった。

「近く、大陸空軍の大規模侵攻の情報を掴んだ。これに基づいて本来であるならば

十分な対応を得たいところではあるが、こちらの戦力不足はもはや危機的状況にある。

侵攻までに何としても天空城周辺にて凍結中の大規模対空システムを奪還しなければならない状況だ」

 そうモニターから作戦について説明するのは霧島幕僚長。

今回の作戦総指揮を担っている。

芳しくない状況を鑑み、縄文寺本部長は苦悩の末出した結論はある結論に達した。

それは生き残った小隊を三部隊とに分け、

それぞれを目的に応じて戦力分配することである。

 一つ、スプリングタウン佐用町防衛。

これはスプリングタウン内にもある程度の防衛設備が備わっているため第11国立自警団の内3小隊が担当する。

 二つ、天空城攻略作戦人員。

これには自衛隊の要請により最低でも10~12小隊を充てる必要があった。

そこで縄文寺の第4小隊を含め国立から3部隊、生き残った応援の第五地方の自警団の2部隊。

残りを現在急行中の第二地方自治体連合自警団からの応援と現在本部付の小隊を途中合流させる形となった。

 三つ、先の防衛戦での残党を陽動。

スプリングタウンの脅威を無くすため為に残党阿熊の囮になり、巣窟ポイントにて自衛隊における空爆でせん滅を目的とするもの。

これは非常に危険なリスクも有り、出来るだけ手慣れた部隊が最小で行動するのが望ましく、

これは国立自警団・地方自治体自警団から各一小隊、計2小隊が選出された。


 そして今、選出されたガンツアーと国立自警団・第一小隊”ペーロン隊”と共に巣窟ポイントへと赴いている。


今車内のモニターには大講堂にいた巨漢が写っている。

どこから手に入れたのか酒瓶を手に煽りながら辰に愚痴をこぼしていた。

「まさか囮役に第11国立の虎の子・第一小隊ペーロンが出るとはな・・・」

「辰よ、そりゃこっちのセリフだ。お前んとこ大丈夫なんか?腰の弱いオッサンに黒人のガキとメスガキときたもんだっ」

そう言い、顔を真っ赤にしながらせせら笑う巨漢にイルが嚙みついた。

「うっせーんだよくせー酒飲みが!こんな奴らと一緒なんてもうどうにかなりそう・・・」

「ああ?まだ”メスガキ”って言われたのが気に障ってんのか?だからメスガキなんだよ、ダハハハ」

一同は既に敵地のど真ん中なのだがその緊張感の無さに思わずガンツアーの一同は面食らった。

「こんな奴がマジで隊長なの?」

「あいつの飲んでるやつ、半薬品だかんね。あんなの飲むなんて狂ってんじゃない?」

ミサがモニターを見ながら半ばあきれ果てていた。

「まあ、隊長。もうすぐ作戦開始時間になりますのでほどほどに。お嬢さんたち、ご無礼をお許し下さい」

モニターの脇から水を隊長に差し出しながらインテリでハンサムなハーフの青年が現れた。

「トム~早速ポイント稼ぎかぁ?向こうの黒人兄ちゃんがすんごい顔してるぜ」

「辰隊長以外の方は初めてでしたね。私はオペレータをしておりますトム・山田です、お見知りおきを。

あと、操舵士で沼田というものもおります。この飲んだくれは先程皆さんご存じの通り、

我第一小隊隊長・ロイド池田です。よろしくお願いいたします」

トムという青年はそう自己紹介するとにこやかに笑顔を見せた。

「ケッ、飲んだくれにハンサム色男とは。イルもミサも作戦以外で相手にすんじゃねーよ」

ガンバスの操舵席でルイがむくれていた、だが。

「よし、イケメンにつき許す」

「私も~」

イルとミサはそう言うとモニターのカメラを操作してトムだけを映るようにした。

そして、我先にと自己紹介し始める。

「オイオイオイ~ふざけんなよ畜生めが~」

会話だけで大よその流れがつかめたルイが情けない声を上げる。

「はぁ、お前ら大概にしとけよ。で、池田隊長。縄文寺から聞いたがとっておきの策とは大丈夫なのか?」

池田は立ち上がり。トムからカメラを奪うと車内の後方の奥を映し出した。

「どうだ辰?驚いたろう」

カメラに映し出されたのは檻に入れられた子供の阿熊である。

手や足はワイヤーで拘束され血が滲み、顔は布のようなもので簀巻きにされている。

”それ”を見たガンツアーズ一同は目を点にして思わず絶句する。

「・・・マジか、お前何考えてんだ」

「信じられん。向こうの親玉が見たら俺達これ以上の目にあわされるのは間違いないぜ」

辰とルイが口々に呟く。

「何弱音はいてんだお前ら?!俺らが今までどんな目にあわされたと思っとんねん!

こんなん、当たり前やろが」

池田隊長は酒の勢いもあり息巻いている。

「とはいえ、子供にまで罪はないんじゃない?!」

ミサが伏し目がちになり、モニターから目を背ける。

それを見たトムは急いでカメラの向きを変える。

「すみません気分を悪くしましたね、大変失礼いたしました。

陽動作戦に関しましては先程のブリーフィング通りこちらが先導いたしますので

第五小隊は後方支援に徹して頂ければと思います」

「そういうこった。まあ俺たちに任しときな”国のお力”ってやつを見せてやるよ」

池田はそう言うとまた酒瓶と手に取り、残りをすべて煽った。

”目標地点まで残り500です。各員は配置に着いてください”

ガンツアーのAIアイがアナウンスする。

辰はただならぬ予感を感じ、不意にルイの操舵席に近づいて耳打ちする。

「・・・ヤバい予感がする。もしもの時は頼むぞ」

「俺はいつでも”もしも”の時だよ。オッサンも頼むぜ、怪我人なんだからな」

「無論よ」

辰はそう言うとルイの肩を軽くたたいて配置に着いた。


ここはスプリングタウンから離れた郊外、朽ちた住宅街や会社等が点在し、

人が住まなくなって長らく立った町は森林が生い茂り荒廃が続いている。

この辺一帯は先日襲来した阿熊達の住処になっていた。

「モニターは確認できたな。ポイントよし、一同作戦開始だ」

池田は子熊の檻のすぐ近くにスタンバイしていた。

檻の天井には無数のマイクがぶら下がっている。

池田はスタンロッドを手に取ると出力を最大に上げ、子熊の居る檻の中へ差し込み、突き当てた。

「!!!」

身体を走る強烈な電気で子供の阿熊は全身を震わせ聞いたことのないような声を上げた。

子熊の悲痛な叫び声がマイクを通して2台のガンバスの辺り一帯に響き渡る。

「オペレータ、熱源は反応あるか?ガンオペはいつでも速射できるようにしておけ」

辰はモニターを暫く凝視するが状況に変化はない。

20秒・・・30秒・・・1分・・・・

「ヘンだよオッサン。この間の戦闘から日も浅いし、間違いなくこの近辺に生息しているはずよ。トムさん、どう?」

「うん、こっちもくまなく監視しているけど変化なし。熱源・エコー共に反応無し、どういうことだろうか」

「この子熊ちゃんの演技が足んねーんだろっ、おらっ、泣け!」

一同は異様な雰囲気に襲われた。

静寂な荒廃地に、子熊が激しい暴行を受けて泣け叫ぶ声だけが響き渡る。

阿熊は間違いなくここにいる。

叫び声と共に槍やこの間のグレネード一発が飛んできてもおかしくないはずである。

「・・・・」

辰はその時、ある既知感を得た。

なにか、覚えがある。

そう、この間の敗走続きの中、更に辛酸を舐めさせられた右左市で。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。ミサ、ソナーを心音レベルまで下げてみろ、アイ、可視化を」

”了解”

ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ビ――――――――――――――――!!!

2台のガンバスの周り一面は赤い点で包まれた。

「全員下だ!下水道か?!」

辰が悲鳴のように叫ぶ。

だが、その刹那アスファルトがめくり上がり槍を持った阿熊が次々と出現した。

後方にはバズーカ砲を持った連中もいる。

「許さんぞ!!貴様らは絶対に生かして返さん!!」

辰には聞きなれた声の主がそこにはいた。


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