07特別 とある報告書
その日、この時代には似つかわしくない調度品が並び、
煌びやかなシャンデリアが吊り下げられ、美麗な赤いカーペットが敷かれた
豪華絢爛の部屋でその恰幅のいい深堀の顔をした男は光沢のある大きなソファに深く腰掛け
紙ほどの薄い使い捨て電子ペーパーに目を通していた。
第80号定期報告書―――陸上自衛隊第二師団 霧島 黒冶 殿
(本書は発行後48時間後に自動消去されます、ご注意ください)
この度はご連絡が遅くなり、誠に申し訳ございませんでした。
原因としては兵庫での11月作戦行動に人員的な遅れが生じたことによります。
重ねてお詫び申し上げます。
〇状況報告
1、第一地方について
第一地方での調査の結果ですがやはり先生のご高察及び研究の通り、阿熊全体の
知能向上が認められます。
また、レベルE2クラスがレベルB1まで向上しており現地での研究者によりますと前頭葉に
大幅の変化が要因とあげられるようです(別途添付資料)
阿熊は前年度に比べ、その相対数を減少しているもののこの地方に置かれましては
依然として勢力が衰えず、制圧圏は依然として膠着状態のままでございます。
現地調査に加え、無人偵察ステルスドローン群での調査を至急提唱いたします。
2、自警団に付いて
国外脅威対応→自衛隊(公) 国内脅威対応→自警団(自治体・民・一部公)
かつて大戦間もない混乱期での先生の発案は功を奏し、我が国も
徐々にその体制を立て直しつつありますが今だこの地方では予断を許さない状況でございます。
内、第一地方自警団が前回の報告書通りに大陸軍星4号旅団・紅3中隊の懐柔を受けております。
(現在、潜入ルートにつきましては私達の隊で調査中でございます)
ですがこの件につきましては既に対処済で近日中には自警団への対処ならびに結果を
ご報告できることをお知らせいたします。(なお、私の身分は大陸時より変えておりますのでご注意を)
なお、第五地方自治体連合自警団につきましてはいささか各小隊の行動に自制が効かない隊員が目につきますので
先生の方から本部の方へご指導いただければと思います。
3、作戦物品支給につきまして
各地方 先月の大まかな作戦物品配給割合の実際は以下の通りとなっておりました。
〇各連結自衛隊54%
〇佐用郡スプリングタウン・旧明石港基地群・ほか管轄研究施設30%
〇各自治体自警団12%(各避難施設含む)
沿岸作戦区域港に拠点を置く連結自衛隊ではその都度、大陸軍への迎撃できているものの
各隊員への士気低下が顕著にみられます。近く何らかの対処を願えればと思います。
自警団では本年度での成果が振るわず、施設での避難生活をする民も労働力に無気力さが目立ちます。
※個人的な意見ですが自警団や避難施設はもう少し締め上げてもよろしいのでは?
4.スプリングタウンでの研究結果につきまして
先生もすでに先日の臨時報告でご存じの通りにこの研究は大陸軍兵器の裏付けが取れた結果となります。
やはり、この日本を立て直すため、対空システム群・工場施設を取り戻すためにも
天空城周辺の奪還は他の大隊長同様、急務であるかと思われます。
現在、第五地方方面は阿熊の巣窟と化しております。
私は暗礁地区から光学最大望遠で目視で調査いたしましたが現状の勢力では困難を極めます。
先生に置かれましては一隊員が差し出がましいようですがより聡明がご判断を頂ければと思います。
以上 陸幕第2部所属 夏冬 恵
PS 先生、いえ幕僚長、”A”を使いましょう。ためらう必要はございません、自警団の連中に撃たせてればいいのです。
私も”3人”という立場に少し疲れを感じておりますゆえ、ぜひともご検討よろしくお願い致します。
(すべてやつらに背負ってもらえればよいのです、気に病むことはございません)
・・・・・・・・・・・・・。
「霧島幕僚長、お客様がお見えになりました」
脇に従えていた美しい出で立ちの制服姿の女性が手元の端末を見ながら静かに声をかける。
「ん、ああそうか」
霧島は大きく伸びをすると手に持っていた電子ペーパーをクシャクシャに丸め、
部屋の脇にあったゴミ箱代わりの丹波焼の壺に捨てた。




