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07 スプリングタウン02

第五小隊ガンツアーは第一地方を離れ程なく、瓦礫まみれの国道を横断していた。

”辰さん、目標合流地点まで残り800mです”

ガンツアーのガンバス搭載AI、アイがアナウンスと共にモニターを映し出した。

「もうすぐか・・・たしかあの目標地点は元々”道の駅”みたいなところだったか?」

頬杖を突きながら呟く辰にふとルイが尋ねた。

「なぁ、おっさん。ここら辺は道路だらけで電車なんて走ってないのに”道の駅”とはどういう事よ?」

「いわゆる国道や市道にあるドライブインだよ。昔は車で旅行する奴相手にそういう施設があちこち点在してたんだ

ルイも子供の頃にバス遠足で高速道路乗ったときに途中サービスエリア寄ったろ?

あれの下道バージョンだよ。もう記憶にないか」

「私行ったことないなぁ、ねぇミサ?」

携帯ゲームのボタンをボチボチ押しながらイルが呟く。

「前に学習動画でならちょっと見たことあるかも、なんか古臭い建物のやつ」

「えぇっ、ミサちゃんと勉強してるの?マジ?」

「一応、お国の命令で私たち18歳まで一日8時間ネットワークで勉強する義務があるんでしょ?やんなきゃ」

それを聞いた辰は顔をニヤつかせルイに振った。

「だってよ、ルイよ。8時間勉強しなきゃなぁ?」

「ふざけんなや、俺はとうに18超えてるっつーの。大体あの頃は勉強どころじゃねぇよ・・・」

ルイは大きく溜息をつき操舵へ身体を伏せた。

ピピっ、ピピっ、ピピっ。通信連絡のブザーが鳴る。

”第6小隊より無線入電です”

「応答しよう、どうぞ」

モニターにはかわいらしいカエルのマスコットマークとjumboFROGと書かれた文字が写した出された。

”こちら第6小隊ジャンボフロッグ、第5小隊ガンツアーズでよろしいか?”

「こちらは第5小隊隊長、辰だ。第6・・・小隊か?見慣れない隊章だが俺の知ってる第六小隊とはずいぶん違うが?」

辰はモニターを見ながら怪訝な顔をした。

見慣れない自警団章、声には出さずにジェスチャーで周りに警戒の合図をする。

”ああ、”前”の第6小隊は補給途中に阿熊連中の奇襲を受けて第11小隊と一緒に”引退”したよ。

うちは急遽編成された2代目だ。よろしくな、辰隊長。噂は聞いてるよ、なんかだか最近調子良いようで?

ちょっとはこっちにも回してくんない?”

顔は見えないものの、調子づいた声がガンツアーの面々は呆気にとらせた。

「はぁ、まぁ積もる話は後にしよう。こちらの誘導ビーコンを出すからキャッチしてくれ」

”了解だ、出来るだけ車体を近づけるようAIか操舵に言ってくれ、時間をかけずに水もオイルも早急に補充できるようにしたい。

あと、飯も持ってる。停車後に運ぶからそっちの隊員を何人か寄こしてくれ”

「やったぁ、飯だ!」

イルがゲーム機から顔を離してモニターに向かって満面の笑みで叫んだ。

「どうせ、栄養豆2週間分でしょ?たくっ」

ミサは不貞腐れながら、呟く。だがそれを聞き拾い上げていたのかモニターから思わぬ返事が来た。

”さーてさて、それはどうかなぁ?期待していいんじゃないか?”

「え・・・マジッ!?マジなの?!」

一同は顔を見合わせながら驚きを隠しえなかった。

「飯の話すればもう警戒ゼロかよ・・・」

「・・・期待していいのか?ええっと第6小隊・・・隊長さん?」

辰は思わずスツールから立ち上がりモニターに詰め寄った。

「ああ、申し遅れたね。こちらは第五地方自治体連合自警団第6小隊・隊長―――」

一呼吸置き。

かがみだ。よろしくな、辰隊長」


ルイ、イル、ミサの3人の中心にある机には誰しもが馴染みであろう、

しかし彼らにとっては宝石ほどの価値があろう、そう、インスタントラーメンがあった。

すでに3分立って蓋をとってあり、湯気が立ち上って辺りには醤油のいい匂いが広がっている。

「ああっこういう時なんていうんだっけ?ああそう、天に召します我らが神を・・・」

「神とか仏とかどうでもいいって、早く食べようよっ」

「ずずっ、ずずっ、ずずっ―――!」

「ってかミサもう食べてるし!」

3人はラーメンにすっかり夢中になっている。

そんな3人を尻目に辰と鏡はタブレット端末を見つめながら物品のチェックをしていた。

「新設サイド2連速射砲4門、下部連装グレネードランチャー2門、ルーフ部多目的ステー1セット、

速射砲12ミリ徹甲弾12カートン、フロント用22ミリカノン用炸裂弾、

セントリーガン用レール電磁弾30㎏・・・ステーには何を?」

「これよ、これ」

鏡がタブレット端末の画面を辰に見せる。そこにはウインチのようなものが写っていた。

「これを高度リミットを解除した戦術用ホバーボードに取り付けて空からバリバリ狙う訳よ。

ガンバスから電力供給、空を制したものが戦況を制すってね」

鏡は両手に銃を構えて撃つ様な仕草をした、辰よりは若そうだがなんだか色々”足りない”ようなところがあり

見れば滑稽であり不安でもある。

「はぁ、そんなうまくいくもんかね。てかこれだけの武装よく調達できたな、ホンマに本部の指示か?」

辰はボヤキながら合成コーヒーをすすった。

「半分はね、もう半分は俺のサービスだ。死なれても困るしね」

「何言ってんだお前」

「おっほっほっほっ・・・」

そういうと鏡は再びタブレットに目をやった。

「てか、俺たちは手伝わなくていいのか?荷物を運ぶなり、いきなりラーメンなんだから」

ルイがどんぶりを持ちながら辰達の方を向き直り問いかける。

「ああ、いいよいいよ。みんな全然休んでないんだろう?休めるうちに休んどけ?まだ時間はあるし。

うちの茂部モブさんは何でも完璧にやってくれるって。ねぇモブさ~ん」

”あいよ~”

インカムで問いかけるとスピーカからなんだか素っ頓狂な声が返ってきた。

「ほらな、あとはこのオッサン二人に任せるべし!」

鏡は辰の手を取って高らかに振り上げた。

「はぁ、なにいってんだよ。俺ももうクタクタだってのに」

「わかってるさ、でも。お前だけじゃない、みんな無理してる。俺にはわかるぜ」

立ち上がって腰に手を当て窓の外を眺める鏡。

案の定待ち合わせ場所の”道の駅”はボロボロで唯一トイレのみがほぼ原形を残したままその名残を残していた。

しばしの沈黙の後。

不意に小声で鏡は呟く。

「辰、お前で偉いよな」

「何が」

「皆まで言うな」

「はいー?」

「絶対守ってやれよ、あの3人の事、もうずっと一緒なんだろう?」

「・・・・・・」

辰はコーヒー持ったまま鏡を見つめていた。鏡はラーメンに夢中になっている3人を細い目で見つめている。

「昔、まだ世の中がマトモな時、仕事ん時に中学生ぐらいの子に尋ねられたことがあるんだ。

”生きている意味が解らない” ”なんで生まれてきたのか解らない”って言う、いわゆる思春期あるあるだ」

「へぇ、んでなんて答えたんだ?」

「答えられなかったよ、あんときはまだ20代そこらのクソガキだったし。でも、今ならきっとこう答える」

鏡は辰に向き直った。

「答えはない、何故ならそれこそが答えだから」

辰はキョトンとして問いかけた。

「はぁ?どういうことよ」

「つまりな、俺たちが生まれてきたのは”生きるため”だ。苦しみも喜びも、すべては生きるため、

つまりは生きることこそに”意味がある”」

辰は理解に少し苦しんだ。生きること自体が目標?

「つまりな、俺達は生きる上でいろんな目標を立てたり、希望なんかを持つだろう?

でもそれは全て”生きること”が前提だ。つまり全ては生きること。

そこからすべてが繋がるもんだ」

「極端すぎる。その中学生もチンプンカンプンだろう」

「正味の話、俺達は生きているだけで目標なんて達成してる、それ以上の事を望んだりするのは”次いで”ぐらいの感覚で良いんだ」

辰は鏡を見ながら不貞腐れたように尋ねる。

「この地獄を謳歌するのも生きることの目標であり意味であるって言うのか?」

そう言ってコーヒーを飲みほした。

「ああそうさ、どんな時代だろうがどんな地獄だろうがすべては生きるため、

そのために俺たちは生まれてきたんだから」

「ならどうせなら今すぐここを天国に代えてくれ。是が非でも意味のある生き方を俺がしてやる」

「まあそう腐るな、頑張れ辰。お前が頑張って”生きる見本”になってくれ」

「ご冗談を―――」

そう言った矢先、奥からガチンッと大きな音が聞こえた。

「お、最後の武装も完了したようだな」

鏡がタブレットで確認する。

辰が重い腰を上げながらガンバス奥の半畳もないような小さなダイニングまで向かう。

「お前ら、飯の時間は終了だ。てか俺の分まで食ってないだろうな?」

「ルイがもう食ってたよ」

「はぁ?!ぶっ飛ばすぞこの野郎」

辰はルイの首に腕を絡めておでこをぐりぐりした。

「いってーやめろオッサン!息が臭い!」

久しぶりの休息にはしゃぎ回るガンツアー一同を見ながら、鏡は少し悲しそうな顔で呟いた。

「・・・絶対勝てよガンツアー」


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