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07 スプリングタウン01 

「そうか、いつの間にかそんな改造を施していたとはな・・・」

辰は先程の戦闘終了後、応援に駆け付けた第二地方自治体連合自警団の2~3小隊が後処理に追われているのを

ただ呆然と玉藻と二人で眺めていた。

「最初は見つけた重機をバラシて装甲板代わりに付けて盾代わりにする予定だったんだ。

でもいざ土壇場で松井のじいさんがきて自分たちが乗車するといって色々荷物を載せ始めたんだけど・・・

まさか電磁地雷をシコタマ積み込んでいたなんて」

玉藻は大きく溜息をついた。

「ハナから勝とうなんて思っちゃいなかったんだろうに。向こうのエターナルキャンセラーは周知の事実だ。

あくまであいつらのガンバスを無力化したかったんだろう」

「これって戦争の一端なのかな?」

「だろうな。阿熊対応だけでも困窮してるってのに、それに加えてこの様だ、もう地球終わるんじゃないか?」

辰は仮設救護テントの方を見た。

先程妻を失った甲斐が小隊の救護員に手当や投薬を受けているはずである。

先程まで付き添っていた玉藻に問いかける。

「甲斐さんの様子は?」

「今は落ち着いて休んでるけど、ずっと俯いているよ。鬱になんなきゃいいけど」

「俺のせいだ、あの作戦はあまりにも無茶すぎた。なんといえばいいのか」

辰はそう言うと、天を仰ぎ見た。相変わらずの曇り空である。

「それは違うよ辰さん、隊長は姉さんにいつも”俺たちはいつも死のリスクを背負って生きている”って言ってたし。

隊長は戦場でも言ってたけど、みんなそれぞれある程度の覚悟はあるんだよ」

玉藻の大人びた答えに思わず息をのんで驚いた。

「おまえ、いつの間にか大人になったな。玉藻、お前も辛いんじゃないのか?」

「俺は大丈夫だよ、家族もとっくにいないしね」

「こらっ寂しいことをいうんじゃない」

辰は頭をちょこっと突く、突いたものは非常食の栄養バーである。

そのまま玉藻に手渡した。

「食べとけ」

「はあ・・・ま、クソマズいけど腹の足しにしときます」

玉藻とそんなやり取りをしてると、ガンバスの方からルイが急ぎ駆け寄ってきた。

「オッサン、入電が入ってる。エマージェンシー回線だぜ」

「はぁ?まだまともに治療すら受けてないってのに」

辰は重い腰をしぶしぶ上げるとバスの方へと向かった。

「玉藻、甲斐さんのこと頼む」

「了解」

玉藻はそう言うと辰からもらった栄養バーをひとかじりし、呟く。

「まずっ!」


バスに戻るといなや、白けた顔でモニターを指差す蔭木姉妹がいた。

モニターには本部の宗田が写っている。

「遅いぞなにやってたんだ辰、事態は一刻を争うんだ」

「お急ぎなら他の小隊へどうぞ。俺らは作戦終了したばかりでもうボロボロなんだ。

死傷者もでてる。大体、久しく白星続きなんだ。まずは褒めるか礼の一言ぐらい・・・」

辰は悪態をつきながらスツールに腰かけた。

「うるさい奴だ、今までの黒星に比べたら大したことなかろうに。とりあえずだ、お前今からビームライン研究所まで飛べるか?

そこからすぐ近くのはずだ。

そちらの阿熊の相当数が減ったんだ、先程AIに順路計算させたら下手な迂回をせずに急行できる」

宗田が突拍子もないようなことをペラペラ言い出した。

たまらずルイが横槍を入れる。

「何言ってんだよ?こっちはさっき戦闘が終わったばかりでもう弾薬もほとんどカラっ欠だぜ。

ふざけんのも大概にしろよ」

「ふざけてなどおらん。いいか、これは日本政府からの直接要請だ。最優先でなければならないんだ!

いまそちらに第一地方連合が何隊か応援に来ているんだろう?いくらか弾を分けてもらえ」

「分けてもらえって、おもちゃじゃねーんだぞ。命綱をそう簡単にあれやこれやできるかっての」

宗田が焦りながらものを言っているので辰はふと気になった。

「まってくれ宗田さん。ビームラインといったな、もしかして・・・スプリングタウンか?」

「そうだ、今そこがかなりの阿熊どもの襲撃に合っている。本部長もその”古巣”にヘリで戻っている真っ最中のことだ」

「マジかよ、馬鹿じゃないの・・・・」

辰は大きく溜息をつくとスツールを離れ壁に手をついてうなだれた。

「ねえ、オッサン。本部長の古巣って?」

イルが水筒から口を離し、辰に問いかける。

「縄文寺は研究施設一帯をドームで覆っているスプリングタウン護衛の元自警団の隊員だ。

昔馴染みだが前までエリートだったんだよ」

「あの、オバハンが?ひぇ~銃とか撃てるのあの人?」

「おいこら、聞こえてるぞ。本部長に向かってオバハンとはなんだ!」

モニター越しに宗田がすごい剣幕で睨みつけている。

「とりあえずだ、お前たちの他に第3小隊と第8小隊にも応援要請を出している。

現場へ行って大至急合流後本部長からの指揮を仰げ。

後、補給がそこまで欲しいなら”有料で”こちらの近くにいる第6小隊に連絡をとって道中で補給をできるようにしてやるから。

さあほら、早く命令確認!」

辰は身を翻し、なにやらブツブツ言いながら気を取り直して敬礼し、発令した。

「了解いたしました、これより第五地方自治体連合自警団・第五小隊は至急ビームライン研究所へ赴き、

”ブルジョア市民”の皆様をお救い致します!」

「有料って・・・金とんのかよ・・・このクズッ!」

「はいはい、通信終わり」

ミサはそう言うと、コンソールを叩き通信を終了させた。

「だとよアイ。いけるか?」

辰はガンバスのAI、アイに問いかけた。

”了解です、連戦続きですが無理せず適度に小休止してください。第六小隊に連絡・・・補給要請、承認確認。

途中補給地点までのルート検索を開始”

「おまえの労りに涙が出るぜ」

辰はアイのコンディションモニターをさすった。

「辰、外に洋太さんがきてるよ」

ルイがエアロックの方を親指で指した。

「洋太・・・松井隊長か」

辰はエアロックを開いて外に出ると、そこには肩を包帯で巻いた洋太がいた。

「辰隊長、エマージェンシーコールということはもう行くのか?」

「洋太、いや松井隊長。ご家族の不幸、お悔やみ申し上げます」

辰は姿勢を改めると、深くお辞儀をした。

「いいんだ、やめてくれ。元々はうちの内輪揉めが引き起こしたこと。

こちらこそ蔭木隊員・甲斐隊長を始め、隊員の皆様に心よりお詫び申し上げる。すまなかった」

洋太も、大きなガタイを深く下げ礼をした。

「松井隊長、結局のところ処分はどうなるんだ」

辰は松井隊長に近づくと小声で問いかけた。

「とりあえずはこれから応援に来た第二地方自治体の本部付の幹部から全員査問を受ける。

既に逮捕者もいるが何人かは直ぐに現場に送られる、俺も含めてな。

多分俺達はこのまま第二地方自治体に組み入れられる、第一は解散かもな」

「戦力になるなら無罪放免か。いよいよ、世の中もヤバくなってきたな。」

辰は軽くため息をついた。

「松井隊長、頑張って生き残れよ」

「あなたも、辰隊長。またお会いしましょう」

辰と松井が別れを告げる最中、遠くから二人の隊員が寄ってきた。

甲斐と玉藻だった。

「辰、エマージェンシーがかかったらしいな。ここでお別れだな」

「甲斐さん?!大丈夫なのか」

「ああ、気持ちの整理はまだつかないが玉藻や生野もいる。今、くじける訳にはいかない、それこそ嫁のためにもな」

甲斐はそう言うと応急処置中のガンバスを見た。

「甲斐さん、すまない。俺は・・・」

「辰、情けないことをいうんじゃないぞ。俺たちは何としても日本を取り戻し、今の土地を守らなければならないんだ。

それが自警団だ。それまでは言うんじゃない」

甲斐はそう言うと軽く微笑んで辰の肩に手を軽く乗せた。

「甲斐さん・・・って俺が慰められてどうするんだ」

「そうだな、これじゃ逆だな」

そうやってお互い軽く笑い合った。笑い声に力はなかったが。

「それじゃあ、もう行くよ。甲斐さんまた連絡します。

玉藻、生野兄弟にもよろしく言っといてくれ。松井隊長もがんばって」

「ああ、またね辰さん」

辰は軽く敬礼するとガンバスへと乗り込んだ。辰はスツールに腰かけ各モニターをオンにする。

「アイ、ルートは?」

”各ルート設定完了、ハイブリッドエンジン出力安定、ショックアブソーバー正常作動。運行準備完了”

「了解だ。全員いるな?!ルイ、出発しよう」

ルイは操縦桿を握ってアクセルペダルを踏んだ。

「OK、発射オーライ!」

ガンバスは大きく砂塵を巻き上げゆっくり反転すると国道に向かって走り出した。

遠ざかってゆくガンツアーを甲斐達はそのまましばらく見送っていた。


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