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06 第一地方自治体自警団06

「よくお似合いですよ」

「こんなもんどっから手に入れたのよ」

ミサは明日のための風変わりなドレスに身を包んでいた。

ユニトが着付けを手伝い、今は後片づけをしている。

「手紙をうまく読んでくれたなら明日のことも含め今頃部下から辰や甲斐小隊長にこちらのことを聞いているはずだ。

明日には彼らも作戦を開始するだろう」

「偉そうにモノ言っちゃって、松井さんが直接行って言えばいい話じゃないの?」

洋太は窓の景色を見ながら祖父の居る自警団のアジトの方を眺めていた。

「俺は門戸の懐刀扱いだから不要に外へ出る訳にはいかん、それに爺様に合わせる顔もない」

「そうそう、それよ。どうして自警団は分裂してしまった訳よ?」

ミサは姿見を見ながら身を翻し尋ねた。

「元々、俺たち自警団はかねてより本部や他の自警団との衝突が多かった。

この場所自体、多くの敵に囲まれている状態でもあるしな。

本部からの支援物資もままならず、

やがて身内同士のいざこざが頻発するようになったときここにいきなり現れたのが門戸一味という訳だ」

「私たちの事ですね」

ユニトはにっこり微笑んでいた。

「こいつらハイロイドを始め、大陸製だが大量の非常食に武器弾薬をトラック一杯に詰め込んでどこからともなくやってきた

門戸はあまりにも魅力的すぎた。

特に若い連中は元々本部連中を毛嫌いしてたから直ぐに向こう側に付いたよ」

「あーわかった、爺様たちは国を裏切るようなことはできないとかそんな話になったとか?」

「まあそんなとこだ。結局家族が困窮してるため下った者もいるし、阿熊との戦闘を有利に運ぶために

いつ届くかわからない本部の物資を待つわけにもいかなかったからな。俺はその時大一地方の小隊の隊長だったが

門戸の動向や目的を探る目的もあり、祖父には伝えずチームのみに裏を合わせて門戸に着いたわけだ」

だがミサはそれを聞いて腕くみしながら洋太を睨みつけた。

「な、なんだよっ」

「だからってガンバスの情報や自警団の情報、大陸に流すリスクを考えてた訳なの?

下手すれば私たちの自警団、全滅してるわよ」

「それは違います」

二人の話に割って入ってきたのはユニトだった。

「私たちは決して皆さんを攻めるために来たわけではありません。

平和のため、そして一緒に世界の未来を取り戻すためなんです。

私の”モデル”は大陸のみなさんから現地の方への協力を惜しまないよう言われました、信じてください」

「はぁ?あくまであなたのマスターは門戸でしょう。彼が私たちの事尋ねたら、あなたベラベラ伝えるんじゃない?」

疑うミサを制止するような形で洋太はミサに言った。

「それがだ、色々調べたんだがこのハイロイドだけはどうも他のモデルと違い思考モデルが平和主体としてるらしい」

「平和主体?なにそれ」

ミサは怪訝な顔をした。

「つまり主権者を持たないモデルということだ。完全に人に対する奉仕や介護を目的としているため自己の判断で行動するらしい。

これがこいつをここに連れている理由でもある」

「そんなモデル存在するの?いったい門戸ってやつ何なのかしら・・・」

「大陸と連絡を取っているところを何度か盗聴したが大して重要なことは得られなかった。

こればかりは本人に問いただすしかない」

若干疲れ交じりにそう言うと洋太はドアの方に向かった。

「ユニト、後のことは頼む。疲れてるだろうからできれば添い寝でもしてやってくれ」

「了解しました」

「冗談にも聞こえない・・・」

ユニトはミサの手を掴むと身を寄せた。

「ミサさん、心配しないでください。私はあなたを身を挺して守ります、何でも言ってくださいね」

「じゃあ今すぐ一人にさせて」

「ミサさん・・・」

そう言ってミサは暫くの間ユニトとじゃれ合い就寝までの間、僅かな暇をつぶすことにしたのである。


翌日正午、周りが訝しげな木々に覆われる廃チャペル横の大教会地にて。

「お集りのえー、”主に紳士”の皆様、本日のお日柄も相変わらずの曇り空でよく―――」

司会と思しき人間がマイクを持って舞台の周りにいる兵隊たちに向かって挨拶をしていた。

部隊には不貞腐れた態度のミサと笑顔のユニト、少し離れたところにはひどいタキシードの門戸がドヤ顔で仁王立ちしていた。

(オッサンは何やってんのよ、もう当日になっちゃったじゃない!)

ミサは顔を引きつらせながら空を仰ぎ見ていた。素敵なドレスを身にまとい。

「ミサさん、何も心配いりませんよ。すべて時間が解決してくれます、運命に身をゆだねるのです」

「はあ?もう~死ねよ!」

呆れるミサを他所に門戸はニヤニヤしながらシスター姿の夏冬に合図した。

夏冬は司会の挨拶を遮り、皆に伝える。

「早速ながら、今ここに二人の誓いの儀式を致したいと思います、お二人は中央へ!」

山野は二人を中央にある回転ベッドのようなものが設置してある場所へ促した。

隊員たちが一斉に歓喜を挙げる。

「ちょっと嘘でしょ?!マジなの?!馬鹿の極みなの!ちょっとユニト、てか松井さんはどこ?守ってくれるんじゃないの、ねぇ?!」

しかしユニトはなぜか呼びかけたミサに応じることもなく遠くを見つめている。

「3時方向、熱源及び90㏈以上の音源、複数確認、距離300m以内、接近中」

ユニトは淡々と発し、ミサもユニトと同じ方角に目をやった。

「え、え、なに、なんなの?」

開けた場所の方角から突如として爆音とともに砂煙が複数上がり、こちらへ向かってくるシルエットが確認できた。

「あれは・・・」


作戦よりおよそ数十分ほど前―――。

「オッサン、ホントにうまくいくんでしょうね?」

「相手のガンバスに立ち向かうならこれしかない。甲斐さんも”一応”賛同してくれた」

「マジか・・・」

二人は対阿熊バリアフェンスを越えた阿熊の密集地に潜んでいた。

辰達の眼前には早朝にもかかわらず酒盛りする阿熊達が宴に酔いしれていた。

「ほう、いい気なもんだな。だがこれはかなり好都合だ、寄っていればなおさら誘いやすい」

「ったく、オッサンと二人で作戦行動するといつも背筋がぞっとすることばかりなんだよっ」

「何言ってんだイル。バスにいりゃあいいのに無理やり同行したんだろ?実は下心でもあるんじゃないか」

イルは辰の横脇腹にボディブローを入れた。

「おぶっ!」

「静かにしろっ」

物陰で漫才する二人のすぐ近くには阿熊の集団、見れば覚えのある阿熊が一匹いた。

「んでアンよ、そのクソ人間なんつったの?」

「ああ、そのババアの腕にかじりつこうとしたらよ、”熊ってはちみつしか食べないんじゃないんですか?”だってよ」

「だあぁーははは!馬鹿じゃねぇの!酒しか飲まねーのまちがいやろ」

「マジうける、そいつ■■ガイやろっ!」

集団の中には辰たちの因縁である三兄弟阿熊のアンがいた。

「あいつは・・・イル、こりゃーチャンスだ、今仕掛けよう」

「嘘、もうやるの?!」

「善は急げだ!」

二人は忍び足で阿熊達の背後にそっと回り込んだ。

辰はアンの背中をツンツンと付いた。

「おい、アン。こっちだこっち」

「ああーん、なんだぁ?」

アンはゆっくりと振り向くとそこには上、横、上、横と手をL字に切る辰がいた。

「ぶぶっ!ヘルニアのオッサンじゃねーか!ここで何してんねん!」

飲みかけていた酒を口から噴き出してアンは仰天し、周りの阿熊達も目をひん剥いた。

「イヤー知らんかったわ、お前らがやるこのポーズって”お前の首切り落とす”って意味だったんだな。

俺はてっきりバブリーダンスかと思ったぜって昭和かよ~なんつて」

「何しにきやがったオラぁ!テをやったのお前だってな、んでわざわざぶちの召されに来たんかい!」

「”ぶちのめす”の間違いやろ、お前もテみたいにしてやってもいいんやで。

あ、そうか、アンは熊鍋にしてやろう、まずそうだが俺の血と肉となり共に生きるがいい」

アンは声ならざる声を、信じられないほどの雄叫びを上げた。

目は血走り、歯をむき出しにし、怒りを爆発させる。

周りの阿熊も酔ってふらついているものの一斉に傍らにあった武器を手に取る。

「イル、いいぞっ!」

辰はゴーグルのようなサングラスを素早くかけた。

「オラ、酔い覚ましだッ!」

少し離れたところにいたイルは合図とともに辰の真上に目掛けグレネードランチャーを発射する。

弾は真上で炸裂し、強烈な光が放たれた。閃光弾である。

「ぐぁあ、目がいてえええええええっ!」

「オッサン、早くっ」

「おい、お前ら、ウエディングパーティーがあるから早くついてこい!みんなで来いよ!」

辰は脱兎の如く駆けイルと合流し、少し先にあったホバーバイクに二人同時に飛び乗った。

「畜生めが・・・殺す、絶対殺したんねん!」

アンは両腕に巨大な鎌を持って仲間たちと共に辰に向かって駆けだした。

「よしっ、イル走らせろ。甲斐さん?!」

辰は後部座席にまたがって後方を伺いつつ無線で連絡を取った。

”辰か?守備はどうだ”

「第一段階は成功、今からそちらに向かう。現着と同時に作戦開始されたし」

”了解、今モニターにミサが写ってるがこれは見物だよ。辰、お前のガンバスに一眼レフあったろ、借りていいか?”

「ありゃ望遠ききませんよ」

”それは残念だな、よし、予定通りバリアフェンスを開放して一時的に電源を切るぞ、通過後は報告を”

甲斐は笑いながらオペレータの美生に指示を出した。

二人は”やんちゃな”ゲストを多数引き連れ、結婚式場へと急ぎ向かった。


そして時は戻り、今まさに作戦の第二段階が目前に迫る。

「その結婚待ったぁ!!」

啖呵を切って正面からホバーバイクに乗って颯爽と登場してきたのはイルだった。

「イル、きてくれ・・たの・・・ってええっ、うそでしょ?!」

イルの後方には阿熊の大群が目を血走らせながらこちらにせまって来ていた。

「オッサン!お願い!」

イルの呼びかけに辰はインカムに手を当てながら無線で全部隊に通達する。

「ガンツアーは右舷単装砲、目標第一地方二号ガンバスに射撃開始!第一小隊と合わせろ!

足回りを狙え!」

無線には辰の声と共になにやらBGMが聞こえる。

第一小隊の玉藻が怪訝に思い辰に質問した。

「あー辰さん、駄目っすよ。なに作戦中にかけてんスか」

「そりゃー結婚式ぶち壊しつったら”祭り”だからなっ、ハイになれるにはこれしかねーよ」

玉藻の溜息を他所に生野兄弟はノリノリである。

「兄ちゃん、これなんだっけ!」

「日本に伝わりし、由緒正しきガン・・・パレードソング」

曲に合わせてガンバスが一斉掃射を開始した。

アイスバーンのガンバスは阿熊達の対応に追われて辰達のガンバスの対応に間に合わない。

今ここに三つ巴の合戦の火ぶたが切って落とされた。


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