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06 第一地方自治体自警団05

ダンダンダンダンダンッ!

「お、おい、ちょっと加減しろや・・・マジで死んでしまう!」

凄まじい銃撃音、閃光、衝撃が襲う。

窓ガラスは砕け散り、壁は見る見るうちにモルタルが剥がれ落ち辺りは一気に瓦礫と化しつつあった。

「こんボケ!クソガキども~!!」

銃撃が少し緩やかになったとたん、黒田は身を乗り出し両手のマシンガンを威勢良く撃ちまくった。

「黒田さんも加減してくださいよ」

松井はそう言うと窓から垣間見える僅かな隙間を縫って相手の直撃を避けつつ正確な狙撃を開始した。

バスン!バスン!と大きな音と共に相手のほぼ寸の壁が砕け散る。

相手はたまらず尻もちをつき、へっぴり腰で後退した。

暫くの銃撃戦の後、お互いに弾数が少なくなってきたのか様子と伺いつつ撃つようになってきた。

そこで辰が相手に向けて、携帯していた小型拡声器で呼びかけた。

「聞け!こちらは第五・第一地方自治体連合自警団である!

お前らは宗教団体に寝返った自警団で間違いないな?!」

辺りが静まり返る、やがてひそひそと仲間内で相談するような小声がわずかながら聞き取れた。

「お前らは自警団の武器兵器を私的利用ならびに他団体への無断協力をした!

自警団法への重大違反のため本部より無力化の命令が下っている。今、もし武装解除し、投降の意思があるのであるならば

処分保留も検討するそうだ。これは第五地方自治体本部長・縄文寺からの代弁だ。

そちらの責任者もしくは司令官に伝えろ、今すぐに!」

辰が小型の拡声器で相手に言い放つとやがて数人の若者が姿を現し、こちらへ向かって叫びだした。

「今更どの面下げて来とんねん、本部も役人もろくな事してくれへんかったくせによ!」

「もう、門戸のオッサンが来てから飯も食えるし、阿熊も殺せるようになったし、

ヤリたいことやれるねんて、黙って死ねよボケが!」

「偉そうにモノ言いやがって!」

辰はそれを聞くや否やボロボロになった扉を蹴り破り叫んだ。

「お前らに言ってないわ!責任者に伝えろ言ってんだよ!」

「うるさいんじゃクソダボがよ、今言うたんが俺らの総意や!」

「あーそうかい!じゃあ今言ったこと録音してるからそのまま本部に送るからな、お前ら覚悟せーよ!」

再び懲りもせずに撃ち合いが始まってしまった。

すっかり頭に血が上っている辰を尻目に、先程まで手紙を熱心に読んでいた甲斐が声をかけた。

「辰、こいつらはダメだ。とっとと撤収しよう」

甲斐が肩に手をかけた途端、相手の若者たち数名が手榴弾を全力でこちらに投げつけてきた。

「くそっ!マジかっ」

「カウンターへ!」

四人は条件反射のように一気にカウンターへ飛び込んだ、と、同時に一気に手榴弾が炸裂する。

爆発と同時に凄まじい煙が巻き上がる。

「ゴホッゴホッ、くそ、若い奴は容赦がねーな、後先のことも考えろって」

「今がチャンスです、早く裏口へ」

松井が促し、黒田がしんがりを務め弾をバラまきながら相手をけん制しつつ裏口へと後退した。

「さっさと行くぞっ」

二手に分かれホバーバイクに飛び乗り、エンジンを入れる。

走り出す間際、甲斐は松井に言った。

「でもよかったな松井さん、一つ朗報だ」

「いきなりなんです?」

「手紙の主だ、多分あんたの孫だ。後で詳細は伝えるがまともな事を言ってる、安心しろ」

それを聞いた松井は驚いて目を見開き、甲斐に問いかける。

「ほ、ほんとうですか、その手紙」

「ああ、間違いないよ。詳しくは後だ、さあ行くぞ」

甲斐はアクセルを勢いよく回して砂塵巻き上げながらバイクを走らせた。


第一地方自治体自警団アジトに帰還後―――。

辰たち一同が到着したころには、すでに待機中の自警団面々がすでに準備に追われていた。

「これまたスゴイ顔だな。ミサをテイクアウトしてないところを見る限り、その調子じゃこっぴどくやられた感じか」

ルイがばらしたセントリーガンを抱えながら出迎えた。

「やかましい、時間がない今日中に対策を練るぞ」

「うそでしょ、オッサン。失敗したの?」

辰たちの姿を見るなりイルが顔を紅潮させ詰め寄ってきた。

「おい落ち着け、情報のやり取りはできた。あいつは無事だから心配スンナ」

「だからってのこのこ帰ってきたの!?」

今にも引き金を引きそうな気迫である。

「イル、落ち着け。幸い向こうの一団に話の通じる奴がいる。

今そいつがミサと一緒にいるから一応の身の保証はできてる・・・はずだ」

拳銃片手に興奮状態のイルを甲斐がなだめる様に声をかける。

「そんな奴信用できるかっての!」

イルはそう言いながら外へ出て行ってしまった。

「小隊長、ちょっといいか?」

甲斐の第一小隊、隊員・玉藻が甲斐を手招きし、老兵たちのガンバスへ手招きする。

「辰、とりあえずそちらはミサの救出と手紙の孫・洋太とのコンタクトの方法、後”処理”の仕方を考えといてくれよ」

「無茶ぶりすぎるだろ・・・」

甲斐はそう言うと玉藻と共に廊下へ出て行った。

「小隊長、タブレット見たんだけど・・・」

歩きながら玉藻は深刻そうに吐露した。

「わかってる、向こうのガンバスは大陸謹製の装備してるだろ」

玉藻はタブレット端末を操作し、目的の物を拡大した。

超電導微細振動装置エターナルキャンセラー

こっちは多分MINIMI(対人ミサイル)・・・あの殺人ロケット花火みたいなのがめっちゃ出てくるやつ」

「はあ、条約も何も関係なしだな。一機は弾が殆ど当たらん、直接もろいところに爆弾か何かつけるしかない。

もう一機は生身で近づいたが最後、人間が風船みたいに弾け飛ぶぜ。どうするよ、まったく」

二人はため息をつきながらガンバスの整備されている倉庫に着いた。

倉庫では第一小隊の生野兄弟が溶接に忙しそうにしている。

「うっす、お疲れ様でーす」

兄弟は甲斐に目をくれることもなく溶接に夢中だ。

「美生は?」

「うちのガンバスで定期報告中です」

「そうか、まあしかし酷い朽果てようだな。本気で動くんだろうな?」

甲斐はガンバスを見渡しながら側面の隊章をウエスで拭いた。

そこに生野の弟が作業を中断し、甲斐に歩み寄ってくる。

「動力はいちおうハイブリッドだし生きてるよ、モーターも、多分ね、試してないけど。それよりもちょっといいモン見つけだんだけど」

そう言うと奥の廃車などを置いている隅の方を指さした。

奥には埃をかぶっているがまだ傷一つついていない

「あれは・・・重機か?」

そこへ辰がやってきて、甲斐たちに声をかけた。

「おう、生野兄弟~生きてるか?玉藻、こうやってみるとお前さらに瘦せたよなぁ」

「辰さんちぃーす」

兄弟はけだるい感じで挨拶し、玉藻は軽く敬礼した。

「辰さん、この間はヤバかったスね~あ、後ミサちゃん救出したらこいつら兄弟が

双子同士付き合いたいって言ってるんですけど」

「あはは、そりゃルイが切れるんじゃねーか?」

それを聞いた双子は顔を見合わせて驚いた。

「マジ、それってマジっすか?ということは・・・」

「さあなぁ、どういうつもりなんか俺にはちっともわからん、特に色恋沙汰はもう遥か昔の話だ」

辰が白けた顔をしてると甲斐が話に割って入ってきた。

「辰、どうする?方向性は定まったか?」

「ああ、甲斐さん。実はさっき黒田さんから聞いたんだが、

この近くのバリアフェンスのすぐ近くに阿熊の拠点があるらしいじゃないか」

それを聞いた甲斐は呆れた様子だった。

「知ってる。お互いフェンス越しにらみ合ってる様な状態だろ?だから事態は急を要するんじゃないか」

「ちがうって、甲斐さん。だからちょっと俺に妙案があってさ・・・」

「ちょっと待て、辰。お前またヤバい考えてるだろ?」

辰の口ぶりからおおよその想像がついた第一小隊一同は顔をこわばらせた。

兄弟と玉藻は甲斐の背でひそひそとつぶやく。

「辰隊長ってなんでこんなヤバいこと思いつくの?」

「第五小隊ヤバすぎってか第五地方の自警団がヤバいんじゃないの」

辰の自信ありげな顔を見ながら第一小隊面々はゲンナリしていた。


「あなたがトップ?これはまたずいぶんなオッサンね」

ところ変わり、ここはミサが捕らえられていた廃チャペル。

ミサを連行した一同は門戸の居る謁見の間へと連れていき、面会を果たしていた。

「いかにも、私がこの愛州馬庵教団・教団長ハウス門戸です。

あなたは自警団のミサさんですね、夏冬から聞いてますよ~」

いままで背を向けていた、門戸はくるりと身を翻しミサと向き合った。

「むむっ・・・むむぅ!」

「な、なによ!」

ミサを見るや否やいきなり門戸はミサにずずっと顔を近づける、ミサは嫌そうに顔をそむけた。

「う、うつくしぃ・・・・」

「はぁ?!しばくぞボケがっ!」

「こら、暴れるなっ」

ミサは門戸を蹴り上げようとしたが瞬間、洋太が取り押さえた。

門戸は再び身を翻すと空に両手を掲げた。

「決めました。私、明日の定例崇拝で彼女と結婚します。アイスバーン!」

「なにこの”イカレポンチ”、この人相当ヤバいんじゃないの?」

ミサの口から想像だにしないほどの汚い言葉を聞き、洋太は驚いた。

「コラ女の子がなんて口をっ。失礼ですが門戸教団長、会うなりいきなり結婚とは・・・

しかもまだ見るからに未成年ですよ!」

洋太の制止に耳を貸すこともなく、門戸はミサに問いかける。

「ミサさん、今この荒廃した世の中で最も必要なものは何だと思いますか?

水、食料、お金、武器・・・確かに皆必要でしょう。ですがもっとも人にとって必要なものがあるのです」

「はいはい、愛でしょう?エロオヤジ?」

ミサはニコニコしながら中指を立てて言い放った。

「ミサさん、わかってなーい!確かに愛が一番必要です。ですが最も大事なのはそれによって人々のいざこざを無くし、

そして結束し、助け合うという事なのです」

「それはもういいから・・・つまるところあなたは何を考えるの?目的は何?」

ミサは門戸の勢いにひるむことなく問いかける。

「ミサさん、私はね、この第一地方を拠点にやがては日本を、愛の力で結束させたいのですよ!

それがアイスバーン!」

「つまりは懐柔して大陸の現地調達兵をたくさん作って中から侵略したいわけね。この間は海自にボコボコにされたものね?」

「何を訳の分からないことを・・・だめですよミサさん。松井小隊長!」

「はっ!」

松井はミサを捕まえたまま姿勢を改めた。

「今日はミサさんはお疲れの様子、丁重にもてなすように。後、そこのハイロイドを四六時中貼り付けておきなさい!」

「はっ!了解いたしました!」

すぐそばにいたユニトも敬礼した。

「明日の崇拝は歴史的なものになりますよ・・・ふふっ」

一同は薄ら笑いする門戸を尻目に部屋を後にした。

「とっその前に!」

ミサは部屋を出る間際に凄まじい速さと身をこなしで洋太の拘束を振りほどき、

門戸の傍らで黙って見守っていた夏冬のみぞおちに強烈な膝蹴りをお見舞いした。

「んなぁー?!ぐふっ!(やっぱ見逃してくれなかった)」

「当たり前だ!チッ!」

一同はミサの行動にただただ呆然としていた。


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