06 第一地方自治体自警団04
「おい、あれ見てみろよ」
辰が歩きながら甲斐に顎で指す。
その先に掲げていたのは旗。二人は奥の壁に掲げられた国旗と自警団旗、そして煌びやかな大漁旗に目を奪われた。
それはとても年季が入っており永年に当たり大事にしているのが誰の目にも明らかだった。
「・・・一番まともかもしれん。辰、お前も見習ってあの品の無い女の絵を隊章にするのは止めろ」
「はははは・・・御覧の通りですよ。この部隊はいわゆる定年をとっくに過ぎた者ばかりです」
奥に進めば進むほど、目につくのは老人の姿。
元気に作業するものいれば、寝てるのか死んでるのかも見分けのつかない老人達。
唖然とする二人を奥にいた顔の割にはガタイのいい初老が小走りで出迎える。
他の老人と違い、背中が伸び、体格差では甲斐にも引けを取らないようだ。
「よく来てくれました。私は第一地方自治体自警団第二・第三小隊をまとめております、松井と申します」
松井は自己紹介すると深々とお辞儀をした、習って二人も礼をする。
「改めまして、先程ご連絡を入れた甲斐です。こちらは第五地方自警団の辰」
「辰さん、来ていただいて感謝申し上げます」
「いえ、そんな・・・それよりもずいぶんと、その、この部隊はご高齢の方ばかりの様ですが」
見渡すと数名いずれの隊員もみな70から下手すれば80歳はくだらないであろうメンツばかりである。
松井は苦い顔をしながら、奥の席へと二人を促した。
奥の棚からは貴重であろうミネラルウォーターを取り出し、コップに注いだ。
「お恥ずかしい限りです。部隊には若い方も沢山おったんですが、
みな門戸というやつの宗教家のところへ行ってしまいました」
甲斐は周りを見渡しながら質問する。
「でもめずらしいですね、普通。
いえ失礼かもしれないのですが宗教というのはどちらかというとご高齢の方が傾倒しそうな感じではありますが」
「そうでしょうね、ですが門戸は機械人間を何人もつれて若い人間を惑わしていったんですよ。あっという間でした」
それを聞いた辰は甲斐に寄り耳打ちする。
(おい、機械人間ってあれか?)
(たぶんAIロイドのことだろう。門戸の奴が大陸だか都心の方から持ちこんだんだろう)
(AIロイドって要はロボットだろ?でもルイは人間と変わらないぐらい進化してるとか抜かしていたが)
(今度その手の店に行ってみろよ。驚愕するぜ)
二人が小声で話しこみ始めたので松井はわざとらしく咳払いする。
「失礼いたしました!」
改めて向き直った甲斐が改めて尋ねた。
「単刀直入に申し上げます、そちらの部隊は現状を教えてください。
実際問題、何人戦え、どの程度の武器が残っておりますか?」
「正直申し上げますと、私を含めて今ここにいる8人だけになります。武器は長物数丁に手榴弾をいくつか。
後表にあるセントリーガン2基。ガンバスは故障した一機以外は三機とも全て向こうに接収されました。
弾はもう数えるほどしかありません」
「厳しいな・・・ガンバスが三機も向こうにあるとは、こりゃあかなり苦しい戦いになる」
それを聞いた、松井は驚いた。こちらの反応に戸惑いを隠せない様子である。
「ちょ、ちょっと待ってください。本部から第一地方自警団の仲裁に来たのではないのですか?」
辰はコップの水を飲み干し、タンっと机に置いて厳しい顔をして松井に答える。
「そりゃ一応呼びかけはしますよ。でもまあ、それだけの兵器武器の類もって
有ろうことか素行不明の宗教野郎のところに転がり込んだんだ、精巧な人形さんと”仲良くしたい”だけでな。
投降なんて100パーありえないと思っていたほうが良いですよ。
大体、俺らは本部からは基本”処理対応”を命じられているんだ、かなり難しいと思う」
「それにいつまでもこの状況では阿熊の襲来にも耐えられなくなります、一応は向こうが対応しておるんでしょう?」
「はい、それもあって地域住人もみな宗教家にいいようにされております。ですが、はあ、そうですか・・・」
歯切れの悪い言い方をした松井はなんだか落胆した様子だった。傍らにいた黒田がたまらず二人に詰め寄る。
「なあ、隊長さんたち。何とかしてくれへんか?向こうには松井さんのお孫さんもおってやねん」
「孫ときたか」
甲斐はたまらず苦笑いした。
「アイツらが悪いわけちゃうねん。こんなご時世、あんなん見せられたらそらしゃーないやろ!」
「はあ、そう申されましてもね。どうしたもんか」
甲斐は椅子の背もたれにもたれ掛かり宙を見上げた、とそこに部屋にベルのようなものが鳴り響く。
「何事!?」
「ああ、有線電話ですよ。大昔のものがまだ現役で生きているんです」
「スゲーな、これは何時ぞやに見たレトロ館だよ」
一人の隊員が電話にでる。すると驚いた様子でこちらに向かって叫んだ。
「辰さんって人おるかい!?あんた宛に電話だよ」
「はぁ?なんで俺なんだ、この辺に知り合いなんか・・・」
「いや、”そっちが第一地方自治体自警団でしょう、辰っておっさんがいま来てるんじゃない?”ってかわいらしい女の子の声が」
それを聞いた途端、辰は急に椅子から立ち上がって電話まで慌てて駆け寄った。」
「ミサだ!」
「出るのが遅すぎ」
「んなことはどうでもいい、無事か?今どこにいる?」
辰は受話器をひったくると電話越しにミサに詰め寄った。
「今、ロマン館とかいう・・・お土産屋さんかな?そこの電話に使ってる。ここに詳しい奴に案内してもらってね」
それを聞いた辰は、甲斐にロマン館といいアイコンタクトを入れる。
甲斐はすぐさま他の隊員に詳細を訪ね始めた。
一方向こうではミサがちらっと横を見ると満面の笑顔をしたハイロイドがミサにずずっと顔を寄せてきた。
「ミサさん、私はユニトと申します。どうぞよろしくお願いいたします。」
「コラ近寄んなってっ。
ごめん、とりあえず夏冬に拉致られた場所からはこの傍にいるのハイロイドのユニトって子に協力してもらって脱出できた。
拉致られてたのはこの先の廃チャペル、逃げる途中で見た駐車場には装甲車数台と第一地方のガンバスを確認したわ」
ミサはユニトを引っぺがしながら鼻息荒く報告した。
「おい待て、そのユニトってやつは大丈夫なのか?」
「とりあえずはね、戦闘用じゃないようだし、武器や通信物の類も持っていない。
まあ、ムカつくぐらいかわいい感じだから”慰め専用”って言ったところかな」
ミサはユニトのあちこちをまさぐりながら答えた、もちろん不審物がないか調べているのである。
「用心はしておけよ、しかしやるじゃないかミサ、伊達にイルより凶暴な猫かぶりだけはある」
「はぁ?!なんですってぇ!」
「すまんわかった。それよりも敵の情報を詳しく把握したい。現状況でわかることはあるか?」
辰はそう言うと端末を素早く取り出し、操作し始めた。
「とりあえず会議所にあったタブレット端末パクッて一通り写真に撮った、この辺オフラインだから直接後で確認して。
後、最悪なニュースが一点、写真見たらわかるんだけど・・・」
ミサは先程、逃げながら撮影した写真を確認している。
「あ、こんにちは松井さん」
「?!」
ユニトの突然の挨拶にミサが驚き振り返るとそこには数名の自警団隊員が銃を構え立っていた。
(やばいっ!)
ミサはすかさず電話を切ってタブレット端末を自分を背にして大きな電話機の下へ隠した。
「おいミサ、どうした?畜生切れた。甲斐さん急ごう、ロマン館だ」
辰は突然切れた電話で異変を察知し、取り急ぎ荷物を背負った。
「了解だ。後、先程内の隊に連絡して際まで来るよう指示しといた。ここにある故障したガンバスも隊の人間で修理しよう」
甲斐はそう言って端末を操作して本隊に命令を出した。
「では私も行きましょう、黒田さん!」
いつの間にか部屋の入り口には準備を整えた松井の姿があった。驚くほどに身の丈程の長いライフルを構えている。
「マジですか・・・黒田さんまで」
「お前ら若いもんに負けるかいや!」
黒田さんは両手にマシンガンを持ってニンマリした。
「怖すぎだろ・・・」
「下らんこと言ってないで行くぞ!」
黒田の一喝で一同はいそいそ準備しロマン館に向かいだした。
「見つけたぞ。第五地方自治体連合自警団ガンツアーのミサだな?俺は第一地方自治体自警団の小隊長・松井だ」
松井と名乗る長身の青年は真っすぐとミサを見据えていた。
「自警団?エロい儀式するカルト宗教団じゃないの?あーわかった、エロ自警団でしょ?」
「言うな、あれは一部の馬鹿どもだけだ。少なくともここにいる私たちはアイツらが持ってきたの強力な武器弾薬のために
仕方なく門戸の変態に付き合っているだけだ」
「どーだか」
松井青年はミサのふてぶてしい態度にも誠実に答えた。
「残された家族や土地を守るためには仕方ないことだ。
あいつらの武器はあまりにも魅力的すぎるんだ。ロクに本部や支部の支援を受けられず戦うこちらの身にもなって・・・」
「隊長、教団幹部が窓の外に。入ってきます」
部下が声をかける、松井が窓に目をやると教団幹部が若い人間数名を引き連れてこちらに向かってきた。
「くそっ、ここからって時に。仕方がないユニト、昨日話したことは覚えているな?B案実行だ」
「わかりました、松井さん。ミサさん安心してくださいね」
松井はすでに電話機の下に隠したタブレット端末を見透かしていたのかそこにサッと手紙のようなものを忍ばせた。
「??」
ミサは何が何だかわからない様子だったが、すぐさま松井の部下達に両腕を拘束された。
「連行しろ!」
「ちょっと、いったいなんなのよ~」
ミサは引っ張られるようにして一味に連行されてしまった。
それからほどなくして。
「・・・コンタクト!」
バンッ!とドアを突き破り辰たちが銃を向けたまま突入してきた。
散開し、辺りの安全確保に努める。
ただ、後ろから来た松井と黒田だけはちょっと遅れた感じでのそのそやってきて辺りを見渡していた。
「遅かったか・・・甲斐さんそっちはどうだ」
「カウンター後ろにはミサならびに爆弾やトラップの類なし」
「ええっ、怖いこといわないで・・・」
辰はいきなり甲斐が爆弾と言うもんだから恐れおののいた。
「何言ってんだ辰、相手は阿熊じゃなくて同じ自警団の人間なんだ。罠なんて当然だろうって、おっ?」
甲斐は隅にあったレトロ調の電話機に目をやった。
「連絡するのに使ったのはそれですね、間違いなさそうです」
松井は長いライフルの銃口を電話機に向けゆっくりと爆弾の類がないか調べ始めた。
「おっこれは」
辰が歩み寄り、電話機の下にあったタブレット端末と手紙を確認し、つまみあげた。
「ミサが手紙?冗談だろ」
辰は手紙を眺めながら不思議そうに眺めた。
「ミサだって女の子だろう?手紙を書きたいこともある、もちろん俺にな」
「あんた、嫁さんいるだろう・・・」
甲斐の冗談をさておき、手紙には達筆に”連合自警団へ”と宛が書かれておりそれを見た松井が
驚いた表情で、呟いた。
「それは、孫です、孫の洋太が書いたものです。その字は間違いございません」
「孫ってカルト宗教にいった自警団のか?なんでまた」
「わかりません、でもいまだに洋太がカルト宗教に行ったなんて信じられないのです」
そう言って松井はうなだれていた。
「おい辰、それよりもミサの撮った写真見てみろ」
甲斐は確認していたタブレット端末の画像を辰に差し向けた。
「ガンバスの・・・この大陸兵器って、甲斐さんっ」
「ヤバいぞこれ、これがモノホンなら・・・」
タブレット端末にくぎ付けになっている辰たちに黒田が歩み寄ってきた。
「おーいお前ら、ちょっといいか?」
「どうした黒田さん?」
黒田は二人の間から頭の上に手をのせていった。
「伏せなっ」
そういって四人が伏せたと同時にロマン館の窓ガラスを一斉に突き破り、激しい破裂音と共に閃光が襲ってきた。




