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06 第一地方自治体自警団02

「おっさんってさぁ・・・変態でしょ?じゃあ死ねよ」

あどけない少女の口からは想像もつかないような冷酷な言葉と鋭い眼光で睨みつけられた。

「・・・・うううううぅ?!なんだよ、なんだよこのクソガキ!」

男は掴まれた腕を振りほどき、二人を突き倒した。

「ぐうぅ!」

ドカッと二人は地面へと倒れこみ、そのままイルは地面に伏して泣き崩れていた。

ミサは小刻みに震えながら身を起こして、男を見上げた。

「ああ、そうかいそうかい!おトイレしないんだ?じゃあ俺がしてやるよ!」

そう言うと男はズボンのジッパー勢いよくを引き下ろした。

「嫌だっ、噓でしょ?!」

ミサは急いでイルへと駆け寄り、身を起こそうとするが男が二人の頭上で仁王立ちした。

「そうかぁー喉乾いてイライラしていたんだね?今飲ませてあげるからねぇ」

二人を見下ろす男の顔が紅潮しだす、ミサはそれを見てみるみる血の気が引く。

すると、男が背後に何か殺気めいたものを感じて振り返る。

「おじちゃん、俺もおしっこしたいなぁ~おじちゃんの顔に」

ゴスッ!!っとすごい音が響いてきた。

いや、実際にはあまり聞こえてはいないのだろうがあまりにも勢いよく殴られていたため音が響いたように感じた。

男はいきなり現れたこれまたちょっとイカツイおっさんに顔面に凄まじいストレートパンチを受けていた。

そのまま尻もちをつき、くずれた顔からすごい勢いで鼻血が出始めた。

「うう?うぁぁぁああああああ!」

男が絶叫する。

ミサは何が起こったのか一瞬わからなかったが直ぐに誰かが助けてくれたことに気づく。

するとすぐさま後ろから肩を叩かれる。

「大丈夫、二人とも立てる?」

後ろを振り返るとそこには中学生ぐらいの黒人の少年がに二カッと笑顔で鼻をすすっていた。

「早くっ、ここは辰おじさんに任せるといいよ」

少年はイルを補助して立たせるとミサに向かって軽く頷き、ミサも承知した様子で

少年が先導して走り出した。

「くそが・・・まてやオラぁ!!!」

男はそう言うと腰から長刃のナイフを取り出した。

「おっ、いいもん持ってんなお前。・・・ちょっと俺に貸してくれよ?」

今よりも若干若い顔立ちの辰はそう言うと信じられない速さで拳銃を構えた。

「ゲェッ?!ちょっとタンマ!」

「”タマァ”ってマジで好きもんだなお前、このご時世にそのバイタリティだけはマジで感心するわ」

走って逃げる三人の背後から乾いた音が数発聞こえた。

しかし三人は気にも留めず一目散に向かって駆けて行く。

「もうすぐ、こっち!」

崩れた校門を通り越し、少し離れた民家の瓦礫のそばに大きな車体が表れた。

(大型バス?)

「入って!」

少年はスライドドア付近でパネルにタッチするとドアがプシュッっと音を立てて開いた。

二人は恐る恐るバスへと足を踏み入れる。

「うぁーなに、これ・・・」

バスの中は座席などはなくモニターが付いていたり、工具や大きな機関銃などが転がっていた。

隅の方にはベッドのようなものまである。

先程まで泣いていたイルも今はバスの中をキョロキョロ見渡していた。

「もう大丈夫だよ、ああ僕らはヤバい奴じゃないから安心してって・・・・・・・信じるのは難しいかな?」

「・・・あの、ここはなんですか?」

ミサは少年に少し恐縮しながら訪ねた。

「ここかい?なんとなんとなんとー!!ここは街を守るために作られた自警団のバスだよ。

まあ、まだ出来たばっかで準備の真っ最中だけどね」

「警察の人ですか?」

「うーん、まあ当たらずも遠からずってとこだね。まあちょっと、いやかなり”過激な警察”かも」

過激と聞き、ミサは思わずピクッと身を震わせる。

自分の苗字が”蔭木”だからだ。

そこへスライドドアが開く音が聞こえ、先程男にパンチを浴びせたイカツイおっさんが戻ってきた。

「ルイ待たせたな、二人とも無事かい?」

先程まで気づかなかったがおっさんは背中に大きなリュックを抱えていた。

「なんとかスタッフに医薬品は渡せたが・・・あれじゃあな。ここの避難所はちょいヤバいかもしれん」

そう言うと車体の隅にリュックをおろした。

「さて、そこのおにいちゃんから話は聞いたと思うけど俺は辰だ、皐月辰。そしてこの少年は長谷川ルイ。

俺たちはおかしくなったクマちゃんと相手する自警団という”会社”の人間だ。

身元も保証されてるから安心してほしいって言っても・・・わかんないわな?」

辰は少し困った顔をしながら軽く自己紹介した。

だがミサは臆することなく自ら自己紹介する。

「私、蔭木ミサです。こっちは双子のイルです。さっきは助けてくれてありがとうございました」

自分の陰に隠れているイルを引っ張り出して深くお辞儀した。

「おおぅ?中々これは立派な・・・おいルイ、お前見習ったらどうだ」

「見習うのは辰おじさんでしょ?すぐトラブル起こしたり首突っ込むんやから」

「さっきみたいにか?あっははは」

辰はそう言うと改めて二人の前でしゃがみ込み目線を合わせた。

そして柄にもなく優しい顔をし、二人に問いかける。

「さてと、ちょっと質問。さっき避難所に居たけど来るのは初めてかい?」

ミサは軽く頷いた。

「その様子だと、ひょっとしたらお父さんお母さんはもういない?」

「うん・・・」

辰は少し伏し目がちになりそして顔を上げて言った。

「ここに来るまでにたくさん嫌な事や、傷つくことあった?」

それを聞いてイルは少し声を出した。ミサもイルを抱きながらうんと、か弱く答える。

「そっか・・・」

辰はそう言うと振り返り先程おろしたリュックをまさぐりだし、再び二人に向き直った。

「今までいろんなことが有ったと思う、でもここに居ればとりあえずは安心だから不安に思わないでほしい。

でもひょっとしたら急に怖くなったり、逃げたしたくなったりするかもしれない。本当にそうしたいなら好きにしていい。

おじさんもルイも二人を捕まえたり、嫌な事したりしない。追い出したりもしない。絶対、約束する。

二人を安全な施設までこのバスで送り届けてやる」

ミサもイルも辰の話を真摯に聞き入れていた。

「それに二人はたぶん、今いろんなことがあって身も心もボロボロで不安で心配でもう”めちゃくちゃー”って感じでしょ?

だからそんなときのもしもの救世主アイテムだ!・・・さ、手出してみて」

ミサは不安だったが恐る恐る手を差し伸べた。

それをいきなり両手でぐっと掴まれた。

「ひっ!」

「大丈夫、大丈夫。怖くないよ」

そう言って辰は両手をゆっくり引いた。

ミサのちいさな手のひらには、キャラメル箱が乗っていた。封も切られておらず、まだ新しい。

「嫌なことが有ったりさ、つらいことが有ったら、甘いものが一番!」

辰は二人に満面の笑みを浮かべていた、よく見ると辰の顔はところどころ傷ついたり汚れたりしている。

彼もまた、自分たちと同じように傷つき・憔悴しきっているのをミサは悟った。

「あー良いなっ、おじさん俺にはないの?」

ルイは物欲しそうに辰に言った。

「お前にゃこれだッ!」

そういうと肩越しにひょいっとルイに投げつけた。

「かぁーガムかよーまぁうまいからいいかぁ?」

そう言うとルイは包み紙を破いてガムを口に放り込んだ。

ミサも封を破り、キャラメルを包み紙から取り出すと一つをイルにあげて、もうひとつを自分の口に放り込んだ。

噛むとじわっと甘さが口の中に広がる。

ミサは今までこらえていた涙が堰を切ったかのように流れ出し、キャラメルを嚙みながら涙を流した。

それを見た辰とルイは安堵の表情を浮かべるのである。

口の中のキャラメルが無くなったころ、ミサは唐突に辰に声をかけた。

「あの、辰・・・おじさん?」

「おうっ、どうした?残念ながらおかわりはまたこんどになっちゃうぜ」

ミサはイルの手を握りしめながら、辰の顔をまっすぐ見据えて言った。


「私達も自警団に入りたい」


「キャラメル食べたいなぁ」

ミサは柵を急造された一室に閉じ込められていた。小さな窓から崩れた建物を眺めている。

夏冬に連れ去られたあと、宗教団体アジトの廃チャペルに押し込まれたのである。

背面のステンドグラスの跡や朽ちたシャンデリアから察するに建築当初は見事であったのだろうが

今やあちこちが崩れたり、ところどころものものしい増改築されたりしている。

「キャラメルですって?あなたには後でいいもの上げますからね(はぁと)」

「キモっ!」

夏冬は柵越しにミサに勝ち誇った顔をしてわらっていた。

「じゃ、後頼んだよ。大人しそうだからって団長に会わせるまで手出したら駄目だからね」

「わかってますよ。てか後で必ず交代よこしてくださいよ」

「わかってるわよ、何度も言わないで頂戴」

ピシャリと窘められたので若い自警団であろう隊員は夏冬にキリっと敬礼した。

夏冬は面倒そうに頭を掻きながらミサを一瞥するとそのまま部屋を後にした。

そのまま、部屋の中は警備の隊員とミサの二人だけになった。


訪れる静寂、20分ほど虫の声に耳を傾けていた頃である。

ミサは隊員の視線がやたら自分の身体にまとわりつくのに気が付いた。

(ああ、なーるほど・・・このひとチョロそう・・・)

そう思い立つとミサは隊員に向き直り、優しく声をかけた。

「あの・・・すみません」

「えっ、なんだトイレか?」

「おっぱい見ませんか?」

「はあ?!え、え、え、今なんて言った」

ミサはそう言うと間髪入れず立ち上がって上着をまくり上げた。

スポーツブラに収められた谷間が露わになる。

「おい嘘だろっ?!マジかよ!」

「はやく・・・こっち来てください」

隊員は興奮し、小銃を壁に立てかけて腰に着いていたカギを取り出しガチャガチャと慌てて柵の扉を上げる。

そして鼻息を荒くしながらミサの胸に飛びつこうとしたその時である。

ミサは急にゆらりと姿勢を屈め、迅速に隊員の懐に飛び込んだ。

「んなぁ!?ガハッ・・・・ヴヴヴヴッ!」

隊員は回避行動を取ることすらままならなかった。

胸の谷間から取り出したミサの小さなスカウトナイフが隊員の喉に突き刺さり、真っ赤に染まっている。

そして隊員は悲壮の形相そのまま、床に倒れこんだ。

ミサは小銃を拾い上げ呟く。

「最後に良いの見れてよかったじゃん・・・じゃあ死ね」


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