04 222号線での迎撃02
国道222号線通称”ニーサン”と親しまれる国道は日本列島の西側にある北から南へ下る道路である。
大戦前は長きに渡り親しまれている生活道路ともいうべき道であった。
そんな222号も今では見る影もなくアスファルトはボロボロになり、そして今は戦場と化していた。
もう集中砲火を浴びるのはわかってるのか阿熊の先頭集団は全員、板のような身の丈程の盾を携帯していた。
それらはガンバスの射撃開始と同時に一同一斉に盾を地面にめり込ませるように突き刺し、
一瞬にして簡易バリケードが完成した。
そして即座に後方から号令が発せられる。
「一撃イィィ!」
阿熊の号令とともに阿熊集団後方より無数の槍が上空に向かって投擲された。
それらは緩やかに弧を描きながらガンバスに向かって鋭く落下してゆく。
「ルーフセントリー対空弾幕!全車対空に集中させろ!」
各隊全車の屋根に取り付けられた複数もの銃身が一気に角度を変え槍に向かって射撃を開始する。
「続いて、2時方向に複数敵影、砲撃対応できる者!?」
「俺んとこがいける、山南!」
銃座から三連中距離砲を射撃しながら無線で問いかける辰に大森が即答する。
「了解、単装砲砲撃開始」
大森の撃つガトリングガンと共にややクールな印象を受ける男、山南はコンソールを叩き
バスに備え付けられた単装砲を一斉射撃させた。
自らもモニターを見てサイドに取り付けられたリモコン式の2連バルカンを操作する。
”11時後方およそ260m、大型武器所持群接近”
「カネシ、投下タイミング支援を」
”ラジャー”
喜美江はすでにドローンをVR操作し、11時の方向に向けて滑空していた。
ドローンの腹には大量グレネードがぶら下がっている。
”投下目標まで4、3、2、1―――今”
「投下開始」
ピンピンピンピンピンッ―――
喜美江のドローンは急速Uターンしながらグレネードを大量に落下させた。
ドローンが投下点から急速離脱後、ドンドンドンッと連続した爆発音が起きて大きな火柱とともに黒煙が上がった。
”辰さん、9時方向敵影多数です”
「何!?」
ガンツアーのアイからの呼びかけに辰はハッと息をのんだ。
面前に迫る敵に対応を追われ、直ぐ真横に迫っている阿熊に注意を怠っていたのである。
ドドドドドドドドッ!
振り向いた目先を銃撃音と共に砂塵が舞い上がる、絶叫を上げる阿熊達。
「ごめんオッサン、ギリセーフ」
無線から聞こえたのはイルだった。
「待ってたぜイルッ」
「イルちゃん大丈夫?いけるの?」
対応に追われていたルイとミサが、バスに飛び込むなりコンソールを叩きこんだイルに歓喜の声を上げた。
「まだいけるってこんなの・・・てかここでやらなきゃみな死んじゃうでしょ」
イルは顔面蒼白だったが自らを奮い立たせ、スツールに座ると必死にコンソールを弄った。
「ルイ、撃つときは口径とバレルで目標選べって言ったでしょ?なんで7mmライフルのもの近場に向けてんのっ」
「スマンッ、俺にゃお前みたいな芸当できんわ」
「アイ、セントリーガンはA、C群とB、D群にわけて、あと単装砲の回転数を下げて。
このままのペースで撃つとすぐ弾切れする!
オッサン達をすり抜けてこっちに来る奴は火炎放射器で対応、動体探知でいいわ」
”了解―――通知、セントリーガンシステム弾数、A、B、群残り30%、28%、25%...”
「ほら言わんこっちゃないっ」
イルは席を立つとモニターのスイングアームを力任せに引っ張り、サイドに備え付けられた機銃を撃ちまくった。
「オッサンッ、前方注意、早いよ!」
ミサの見るモニターには辰に向かって凄まじい速さで向かってくる阿熊を捉えていた。
あの工場で見かけた阿熊達である。
向こう目掛け、機銃を撃つも備え付けのモニターは10%、7%、となり・・・0%になった。
阿熊達は鉈を手に一斉に飛翔した。
「ウイスキーぼうやのかたきぃぃぃ!!!!」
もはや再装填が間に合わないと悟った辰はいきなり叫んだ。
「メッサートマホークッ!!」
”有効時間四十秒”
機械声と共に銃座の後方から大きな身の丈程の斧が飛び出してきた、刃は異様に大きく、微弱振動してるように見える。
刃に真空を発生させているようだ。
ちなみに辰はメッサートマホークといったが、アニメオタクの言うことなので正式名称は定かではない。
辰は”それ”を掴むと空中に向かって力任せに振った。
刃の部分が重いせいか、辰の身体は引っ張られるように浮いたが逆にそれを利用して。
振り子棒のように重心を利用して振りまくった。まるで曲芸師である。
「俺がメッサ―の本当の使い方を教えてやるよ!」
そう言いながら辰は前面に来た阿熊達を軒並み斬りつけた。
4匹との凄まじい火花を上げての斬り合い、だが辰は激しい攻防の末4匹を仕留める。
大地に倒れ、血しぶきを上げる阿熊四頭。
「ほぅ、さすがは第五小隊隊長、中々男気のあることをする。」
甲斐はモニター越しに大きな斧を振り回す辰を見て、貫録を受けていた。
「増援と思しき集団が11時より接近」
美生が細く美しい指でコンソールを操作しながら甲斐に伝える。
「了解だ、こちらも黙ってみている訳にはいかないな。生野兄弟準備は?」
”砲撃準備完了、いつでもどうぞ”
「了解した。距離十分、榴弾砲、撃てぃ!!」
”榴弾砲、砲撃開始!”
本体とは距離を置いてやや後方に位置していた幾つもの榴弾砲を生野兄弟と呼ばれた二人がワイヤーを引っ張り
一斉砲撃した。
「続いて単装砲、十感覚で発射。セントリーガンのAC群は2時方向に弾幕を張り、BD群は波状攻撃しろ、
マル、L.Z.Rチャージ率は?」
マルと呼ばれたガンバス・リバーのAIは正面モニターにLZRシステムという兵器を表示させた。
”現在、チャージ率90%以上約30秒後に発射可能”
「心得た。各小隊に伝達、これより本ガンバスはL.Z.Rを発射する。
情報端末を確認の上、各自留意されたし。追ってカウントする、辰、大森、うちの射撃軸から距離をとれ」
「L.Z...アール?なんやそれ、聞いたことないわ、オッサンわかるか?」
ルイがそうつぶやきながらバスのあちこちを歩き回り銃弾を補充している。
ガンバスに搭載されている銃の半数が電磁バレルなので、薬莢が付いていない丸い球が入った
バケツを傾け補給口に注いでいた。
「超簡単に言うとレーザー砲だ、陸自でも配備されてるのは数台のスーパーレアだぜ。
まさか甲斐さんのところに配備されるなんてな・・・さすがは第二地方の自警団最強だけあるぜ」
辰はそう言いながら斧を捨て銃座に戻り、武器群からライフルを両手に持って撃ちまくった。
リバーのガンバスのルーフに取り付けられたLZRはレンズが高倍率ズームレンズのようにググっと伸びて
阿熊の集団に狙いを定めた。
”チャージ完了、発射準備よし”
「了解した。カウント開始、10秒前!」
辰は甲斐のオペレータがカウントを開始すると同時にできるだけ多くの敵を巻き込めるよう
射撃軸に誘導するようにライフルを撃った。
「5、4、3、2」
カウントの中、辰は阿熊の群れの中にいる”テ”と名のつく阿熊と目が合った。
「あいつ・・・”テ”か?」
テはこちらを怨念をぶつけるかのような顔で凝視していた。思わず息をのむ辰。
「1・・・ゼロ、L.Z.R発射!」
一瞬の煌めきが辺りを包み込んだ。
そして、それは一遍に収束され、光り輝く一筋の大きなラインが遠くへ目掛け真っすぐ伸びた。
ライン上にいた阿熊は、そのほとんどが一瞬のうちに蒸発した。
無残極まりない光景だが、同時にそれは一種の美しさもあった。
その場にいた一同はただその光景を息をのみながら見つめていた。
光が消え、場が静寂に包まれた数秒の後。
「ひ、ひぃいいい!」
生き残った阿熊達は恐怖の面持ちで、我先にと逃げ出した。
「やったか・・・」
甲斐は安堵の表情を浮かべ、深くため息をついた。
辰はレーザー砲の威力を目の当たりにして呆気に取られていた。
だが、少し距離の空いたところに見覚えのある阿熊が立っていた。
テである。
「あいつ、まだ生きてんのか・・・?」
テは体のあらゆる所から血を吹き出し、右手を失いながらも突っ立っていた。口には鉈を咥えている。
そして辰に目掛けて一目散に突進してきた。
「畜生よっ」
辰は既にあらかた武器を使ってしまったため、最後に残ったサバイバルナイフを腰から引き抜き
応戦しようとしたが、相手の凄まじいタックルにより地面に伏されてしまう。
「ぐふぅ」白目をむいて嗚咽を漏らす辰、体は九の字に曲がっている。
「死ねや、死ねや、死ねや、シネや・・・オッサンがぁぁぁ!」
テは目をひん剥き、鉈を左手に持って辰目掛けて振り下ろす。
だが辰は寸で体を捻らせると同時にナイフを喉元に突き刺した。
喉元の頸動脈が切れ、大量の血が流れる。
テは震えながら呟いた。
「・・ホン・・・マ人間と・・わざわ・・作って・・・・殺し・・お前らマジで・・・害悪なんだよ・・・」
「わざわ・・・作る?」
滴り落ちる返り血を浴びながら辰はテの最後の言葉を聞いたが、どういう事なのか理解できなかった。
やがてテは絶命した。
やがて辺りの阿熊も敗走しつくしたのか、辺りを静寂が訪れる。
「辰、状況は?しっかりしろ」
甲斐が辰に問いかける。
「ああ、大丈夫だ・・・撃退だ・・・作戦成功・・・お疲れさんだ・・・」
無線から各隊の安堵の声が聞こえる。
ガンツアー、久しぶりかつ念願の白星である。




