04 222号線での迎撃01
迎撃地点の第五地区・第二地区自警団三部隊はすでに迎撃態勢を整えていた。
それぞれが位置をずらしつつ180度をカバーできるように布陣し、すべての砲門が開かれこちらへ向けられていた。
「おーいこっちだ、早くしろ」
小型のガトリングガンを持った大森がこちらを見つけて手を振っていた。
「よし、すぐに配置に着こう」
そういって辰が隣のバイクを見た途端、後ろの二人が低い縁石を乗り超えたバイクの振動で転げ落ちるのが目に入った。
「おいマジか、冗談だろ?!」
”イルちゃん、噓でしょ?!”
無線からミサの驚いた声も聞こえた。
辰は頭で考えるよりすぐ身体が動き、バイクコンテナからエアボードを取り出すとそのまま補助スタンドを蹴って飛び降りた。
二人の元に駆け寄る、夏冬は外傷はなさそうだがイルは左膝から血があふれ出ていた。
「い、痛い、いたいぃぃ!」
「イル大丈夫か。ついでに夏冬、お前は?」
そう言いながら辰は凄いスピードで止血スプレーを取り出し、イルの膝へ吹き付けた。
思わず苦悶の表情を浮かべるイル。
夏冬はよろよろと腕を押さえて悲痛な表情を浮かべているものの何とか立ち上がった。
「夏冬、死にたくなきゃお前は甲斐さんのバイクのとこまで走れ!」
「こ、拘束したままで?!冗談でしょ?」
悪態を付きながらもよろつきながら駆け足でバイクに向かった。
辰は抱えていたホバーボードの電源を入れると地面に置き、イルを左から肩を抱き上げ右足をボードに乗せた。
「行くぞ!」
そのまま支えて二人は駆け出した。
”オッサン急いで、もう先頭が500mまで迫ってる!”
ミサが焦りながら伝える、もう気が気でないようだ。
「畜生がっ」
辰は目を見開きながらガンバスに向かって無我夢中に走った。
先に着いた甲斐夫妻は、夏冬の首根っこを掴みながら第二地方自警団第一小隊のバスに飛び込んだ。
第一小隊のガンバスは車体のあちこちに多数のガンバレルが伸びており、
ルーフには1~2mの長細いカメラレンズのようなものが付いているやや奇怪な形をしている。
車体には国旗、自警団章のほかサッカーのマスコットキャラクターようなものが描かれている。
ちなみに第三小隊イエローサインも補給・偵察を目的としているが数は少ないものの車体には機銃やカノン砲が付いており
自警団章の他に、山盛りに野菜が盛られたどんぶり(?)のようなものが描かれている。
小隊のエンブレムのようだ。
「スマン遅れた。玉藻、こいつを柱に括り付けておいてくれ」
「お、スゲー土産じゃん。肉付きが悪いが」
玉藻と呼ばれた操舵士は夏冬を甲斐からキャッチした。
「ひぇぇ、やめてください(くたばれっ)」
「おい、こいつ小声でくたばれって・・・」
「無視しろ、後でぶちのめす。状況を」
席に着いたオペレータ・美生はコンソールを弄ってモニターを確認した。
「全隊とも配置完了、臨戦態勢にて待機。本部より阿熊の衛星からの確認完了の連絡あり、
阿熊は北方面222号第三交差点より南下、推定総数120頭余り」
「やはり増えてるか・・・そして疑惑の第一地方の自警団は知らぬ存ぜぬだな、畜生め」
甲斐はコンソールを弄ると自らもガンオペレータ席に着いた。
「急げ、もう少しだ」
「うん、でも足が・・・痛いっ」
辰はイルを抱え息を切らしながら走った、すぐ目の前には設営した簡易銃座や武器群がある。
”ふたりとも、頑張って。お願いっ”
ミサが心配そうに声をかける
”オッサンたちなら大丈夫だ、ミサはモニターに注力しろ!”
ルイはイルに代わってガンオペレータ席に着いていた。
そして何とか、銃座までたどり着く。辰は直ぐに銃座に着いて重火器を弄りまくった。
「イル、お前はこのままバスに戻れ、急げ」
「でも、足が、このままここに・・・」
「駄目だ!ここにいたら阿熊が近づいたときに面倒見切れん、バスに戻れ、ルイじゃ十分なガンオペレートが出来ない」
それでもとイルは留まろうとした、辰はそんなイルをけしかける。
「お願いだイル!いけ!」
それを聞いてイルは震えながら歯を食いしばって踵を返し、
痛みをこらえながら怪我をした足で地面を蹴ってホバーボードを走らせた。
”先頭集団接近、1時から2時方向、距離約300m”
ミサが張り詰めた声で全体に伝える。
辰は取り急ぎコールを出した。
「全隊、こちら第一小隊ガンツアー隊長だ。本迎撃の作戦指揮を担当する。十分に引き付ける、合図があるまでまだ撃つな」
「イエローサイン了解」
「こちらリバー(第二地方第一小隊)了解。辰、10時から11時方向にも注意しろ」
(10時から11時?)
銃座に着いているモニターを確認と北の集団とは別にやや後方北西にも複数の確認が取れた。
辰は焦りながら後方を振り返ると必死に走るイルに入った。
(イル、もう少しだ。頑張れ!)
”距離260m!”
イルは必死に足を蹴り、バスを目指した。
息を切らし、足を蹴り、苦悶の表情を浮かべる顔からは玉の汗が噴き出していた。
”距離200m!”
「おいまだか辰、心中する気かっ」
小型のガトリングガンを構える大森は目前に迫る阿熊に思わず声を上げた。
「まだ、まだ待機!」
イルは地面を蹴る際、地面に転がる大きな石を蹴ってしまい、ふらついて立ち止まって思わず立ち止まってしまった。
”距離170m!”
「クソ、ダメッ」
”イル、もう少しだ!”
ルイも走ってくるイルをモニターで凝視している、それはもう気が気でないようだった。
”距離140m!”
窮地に陥るイルはバスを見つめながらハッと我に返ったかのような顔をし、閃いた。
走りながら素早く体のハーネスやホルスターをすべて取り外し、汗で張り付いたシャツ一枚で身軽になる。
そして渾身の思いを込めて大地を蹴ると腕の端末でホバーボードの浮力を最大にした。
”距離120m!”
ホバーボードの推力でイルの身体は空中で大きく弧を描きながら一回転し、
そしてゆっくりとガンツアーバスのルーフへまるでダンスの決めポーズが決まるかの如く着地した。
上半身を捻らせてて辰と目が合い、合図した。
”距離100m、おっさん!”
「いい根性だ・・・各隊総火力、前方集中砲火!!」
凄まじい轟音、閃光と共に、無数の鉄の雨が阿熊に降り注いだ。




