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エキシビショニズム②

 太陽は沈み、外灯等はなく月と星の光だけが便りになる夜、そろそろ眠くなるこの時間帯。

 何時もなら適当な宿の空いてる場所か、誰も住んでない家に泊まり布団か雑魚寝でもしているだろう。

 だがしかし残念なことに今回はそうはいかない。


 「なぁ、まだ準備は終わらないのか」


 まだ日があったときに来たはずなのだが一向にターナーの準備が終わらない。出掛ける前の女の化粧でもこんなに時間はかからない

 「すまないな、いかんせん初めて捕まった時にしか見たことがないからうろ覚えで。 んー、多分これだろうな」


 そんなことを呟きながら何かをしているターナー。これなら一人ぐらいは生かしとくべきだったな。

 ハオルシアは自分が殺した相手の身ぐるみを剥ぎ金目の物を手にいれたあとは暇潰しに辺りを走り回ったり腕立てをしたり、空を見てたりしていた。

 ミオは眠たかったらしく直ぐに寝た。子供か。

 だがそろそろ俺も眠たくなってきた。

 寝てもいいのだがハオルシアとターナーが寝てる間に何か面倒な事を起こされたらたまったものではないからな。

 俺は風に当たろうとして固まって開かない窓を物をぶつけて強引に開く、というより壊して開放的にした。

 目の前には大雪原が月の光りを反射して幻想的な風景が広がっていた。

 少しは目が覚めたがやはり眠いな、閉じた目蓋が中々開かない。

 そして目蓋を開けると、先程までは大雪原が広がっていたのに目の前には石造りで装飾等一つもなく不気味な雰囲気を醸し出す建物がそこにはあった。

 

 「やっと出来たか」

 「ターナー! これがお前の準備の結果なのか!」

 「あぁそうだ、俺も初めて見たときは関心したよ」

 

 監獄が見当たらなかったのは隠していたからなのか、確かにこんなのが街の近くにあったら住みにくいからな。

 ハオルシアも知らぬ間に俺の横で監獄を見ていた。

 

 「それじゃあ、荷物をまとめて行くとしよう」

 「そうしよう、ハオルシアはミオをお越しにいってくれ」


 ハオルシアは頷き動き出した。

 荷物をまとめているときにかん高い音と共に「いひゃい!」と言う声が聞こえたが気にせず作業を続けた。

 

 「こっちはオッケーだ」

 「こちらも同じく、後はミオだ」

 「うぅ、痛いですよハオルシアさ~ん」


 噂をすればミオが来たが頬に手形状の赤い跡が残っている。

 

 「もうちょっとお越しかたというものがあるのではないでしょうか~」

 

 ハオルシアは首を横に降った。

 ミオは何か言おうとしたがため息をついて事前にまとめていたらしい荷物を持った。

 

 「じゃ、行くとしましょう」

 「そうですね~」

 「久々の監獄だな、楽しみだ」

 そして俺達は監獄に足を踏み入れた。



 「で、何で既に入口にいるんだよ」

 「そりゃ脱走したからに決まってんだろ」

 

 監獄のでかい鉄の扉の一部を能力で普通のサイズの扉にして開けると、既にそこにはエリとクールがいた。

 どうやら上手い具合に脱走してたようで、中には一人以外看守はいずにその一人も既にどっか行ったらしい。

  

 「さっさとこんなじめじめしたところおさらばしようぜ」

 「そうよ、身体中べっとべとで気持ち悪いのよ」

 「そうだな、またマッシルが来ても困るしな」

 「ほぅ、私が来たら何が困るのかね」

 

 今この場で一番聞きたくない声が聞こえ、背筋が凍る。

 声の聞こえた方を見ると、あの筋肉の塊がそこにはいた。


 「そこで何をしてあるのかな犯罪者諸君、君達に認められた活動場所は檻の中だけなのだが」

 

 俺はマッシルから溢れ出す威圧感に気圧され、無意識の内に少しだけ後ずさっていた。

 堪らず目線を反らし皆を見てみると、クールの額から冷や汗が流れ、エリは震えていて今にも座り込みそうだ。

 

 「今すぐ檻に戻りなさい、そうすればこの場での脱走者の処分は見逃してあげるが」

 

 マッシルの話が終わる前に行動は起きた。

 マッシル目掛けてミオは矢を、ハオルシアはナイフを飛ばしたが、マッシルは素早くも精密な動作でナイフを素手で掴んだ瞬間に矢をナイフで防いだ。

 

 「どうやら戻る気は無さそうですね。 仕方ありませんがここで死んでもらいますよ!」


 そう言うなりマッシルは目の前から消えた。そして次の瞬間には俺の目の前に表れ、力と早さの加わった拳を今にも俺目掛けてぶちかまそうとしていた。


 「まずは見せしめに貴方ですよ」

 

 体に痛みが襲いかかるが、これは殴られた痛みではなく誰かに突き飛ばされた感覚だった。

 俺は直ぐに立ち上がり先程までいた場所を見る。そこには俺の代わりに腹を拳で貫かれていたターナーがいた。


 「ターナーさん!」


 ミオがターナーの名前を叫ぶが、ターナーはなんの反応もしなかった。そしてマッシルは腕を引き抜こうした瞬間、突然ターナーが動きだし、背中に背負っていてためにマッシルの一撃で先が斜めに折れて短くなった剣を腕に突き刺した。

 剣で突き刺されたマッシルは顔を痛みで歪め、腕からは大量の血が溢れだすため床が血で汚れていった。

 

 「あー、腹を貫かれるのは少し刺激が足りないな」

 「な、何故腹を貫かれてそんなにも意識がはっきりしているのだ!」


 そう、ターナーは明らかに死んでいてもおかしくないほどの状態だと言うのに、生きてるどころか別になんともなさそうにしている。

 

 「ん、まぁ俺の好きなことをしている内にさ、ある程度の怪我はおってきたから慣れてるんだよ」

 ターナーはそう言ってる間にも剣を引き抜き更に刺そうとしていた。

 マッシルは直ぐに腕を引き抜きターナーから距離を取った。

 ターナーは腹から腕を引き抜かれるとき色々溢れて床にぶちまけられたが、本人は何とも無さそうな顔をしている。

 

 「おい佐藤さんにおデブにゴスロリちゃん、何を怖がっているのか分からないが凄く強いだけで奴も人間だからな、剣は刺さるし急所をつけば死にもする。 それに驚くほど早いが動きはある程度単調だから予測して避けること位は出来る。 お前たちが恐怖を抱くのは腹を貫かれていたのに生きている俺の方だろ、普通はさ」

 ターナーは俺たちにそういい放つと、折れた刃と剣を拾い上げ俺に渡してきた。

 どうやら俺達の恐怖を取り除こうとしてくれたらしい、そしてその効果は絶大で俺は落ち着きを取り戻す事が出来た。

 俺はターナーに頷き返し、剣とターナーの腹を直して剣をターナーに返した。

 ターナーは剣を受けとると同時にマッシルに目線を戻した。


 「ミオ、俺があいつを絶対に後ろに行かせないから何時ものように確実な後方からの援護射撃を頼む」

 「任せてくださいね~」

 「ハオルシアさんは隙を見てミオの邪魔をしないように一撃離脱での攻撃をお願いします」


 ハオルシアの頷きを確認すると同時にマッシルとターナーが同時に動き出した。

 最初にマッシルはターナー目掛けて横からフックをしてきたがターナーはそれを踏み込む事で姿勢を低くし避け、そのまま腹目掛けて剣で突こうとしたがマッシルの膝蹴りを防ぐために剣の腹で防ぎ、お互い距離を取ろうとした時に直ぐにハオルシアがターナーと入れ替わりで前に出て斬りかかる。

 マッシルはそれを避けハオルシアに掴み掛かろうとしたが、ハオルシアが後ろに戻ろうとすると同時に矢が飛んできてマッシルの行方を阻んだ。

 そして俺にヒビの入っていた剣を直させたターナーは直ぐに前線に戻りターナーに斬り掛かった。


 「佐藤、何でもいいから武器を寄越せ」  


 剣を直す以外にも何かすることが無いか考えていると俺に、クールはそう話しかけてきた。


 「おいまさかあの中に参加する気か、間違いなく死ぬぞ」

 「誰だかもよく分からない奴にビビってる事馬鹿にされたまんまでいいと思ってるのか! 何か自分の生命力を自慢してきたしさ! いいからさっさと武器を寄越せ!」


 どうやら先程のターナーの言っていたことを馬鹿にされたと思ってるらしく相当頭にきているらしい。

 

 「わ、私だって! いつまでも人間何かに怯えてる用では魔王の娘の名が廃るわ!」


 受け取り方は少し違うがどうやら先程まで怯えていた二人の士気は上がったらしい。

 このままクールを放っておくと素手で行きかねないので、俺は床の石を使って簡易的な棍棒を作って手渡した。

 そしてクールは剣がまた折れてしまったターナーと入れ替わり前線に出た。

 

 「あのまま震え上がっていればいいものを!」


 そう言いながらクールの脇腹目掛けて横から蹴りを入れるがエリが床の石を盛り上げ壁を作り勢いを殺した。

 そしてクールはその蹴りを受けとめると足を掴み、マッシルの頭目掛けて棍棒を振るった。

 マッシルは直ぐに足を引き抜き距離を取ろうとしたがクールの予想以上の力により引き抜くことは出来ず、棍棒は腕で塞がれ棍棒は砕けた。

 しかしその隙をついてミオとハオルシアは動き出した。

 ミオは直ぐに弓で矢を引き、ハオルシアはマッシルが頭を守る為に持ってきた腕で出来た死角に入り込んだ。

 そしてミオは矢を放ち、クールの顔の横を掠めながら棍棒の衝撃で出来たマッシルの腕のほんの少しの隙間を通って矢はマッシルの目に刺さり、ハオルシアは心臓目掛けてナイフを突き刺し、すぐさまクールがナイフの持ち手目掛けて掌打してナイフを更に奥深くに突き刺した。


 「おデブ! 一旦引き返せ!」

 「俺はクールだ!」


 ターナーの一声ですぐさまクールとハオルシアは引き返しマッシルから距離を取り、皆でマッシルを目線を向けた。

 当のマッシルは声にもならない低いうめき声を出しながら目の矢を引き抜き、心臓にふかぶかと突き刺されたナイフを声を張り上げながら引き抜いた。

 目と胸からは蛇口の水のように血が溢れだしていて、エリが今までにない位興奮してるのか息が荒くなっていて正直気持ち悪かった。


 「はぁ、はぁ、き、さまらぁぁぁぁ!!」


 突然マッシルが叫ぶとさっきまで溢れていた血が止まり、傷はまるで最初から無かったかのように治っていた。

 それどころかマッシルから感じられる威圧感はさっきまでより大きくなっていた。

 

 「お、おい佐藤、なに治してんだよ」

 「そんなこと、するわけないだろ。なんなんだよあれ」


 体が震え、塞き止めていた筈の恐怖がまた溢れてきた。

 クールやエリも例外ではなく、クールは過呼吸気味になりエリは先程までは興奮していたのが嘘のように震えており、今にも泣きそうになっていた。

 更にハオルシアやミオ、ターナーまでも脂汗を額に浮かび上がらせていた。


 そして目の前に立つ圧倒的正義が動き出した。


 最初はターナーが空中に蹴り上げられ、更にその空中でも殴る蹴るを繰り返していき、辺りに肉片が飛び散り俺の顔にも付着した。

 次にクールの横に表れると同時にクールは壁に突き飛ばされ、更に顔めがけた殴り掛かり、クールの体は痙攣を数秒したのち動かなくなった。

 クールを標的にしている内に背後から襲いかかろうとしたハオルシアは突然振り返ったマッシルに腕を引き抜かれてしまい、床に倒れのたうちまわるハオルシアの顔を踏みつけとどめをさした。

 ミオは矢を放とうとするがすぐさま近づいてきたマッシルに頭を掴まれると、ミオの首はマッシルによって曲がりきれない角度にまで向けられミオはその場に倒れこんだ。

 そしてマッシルは俺とエリを残し、そこで動きを止めるとゆっくりと俺とエリの方に近づいてきた。


 「エリ、逃げろ、早く、早く!」


 俺がそう叫ぶがエリは反応すらせずに座り込んでいた。

 

 「エリ! おいエリ聞いてるのかエリ!」  

 「き、聞いてるけど、足が言うことを聞かないのよ」

 エリの足は目に見えて分かるほど震えていて、その場から動くことすらままならないようだ。

 そしてマッシルは俺の近くに来ると俺の首をつかんで片手で持ち上げた。

 首を掴む握力は強く、息はすることは出来なくなった。

 どんどん目の前で黒い点が飛び交い徐々に視界が狭まってくる。

 目の前が暗くなっていき、自分の心臓の鼓動が弱まるのを鮮明に感じる。

 心臓の鼓動が弱くなるのと一緒に意識もぼやけていく。

 最後には今自分が生きてるのかすらも分からないまでになったその時だった。

 心臓が一瞬、力強く動いた。

 その一瞬の躍動は俺の意識を覚醒させた。

 すると絞められていたはずの首は解放されていて、俺の体は生きるために酸素を取り込んでいた。

 息をする度に先程まで暗かった視界も鮮明になり、白黒の世界に色素が戻ってきた。


 「かっ、ひゅー、ひゅー、かはっ」

 だが急いで息を吸おうとして逆に息が吸えなくなっている、落ち着いて吸おうとするが体は言うことを効いてはくれなかった。

 

 「佐藤落ち着いて! ゆっくり、ゆっくり息を吸って」


 だが近くにいたエリの声が何故か落ち着いて、ゆっくりと呼吸が出来るようになると辺りが異様に熱いことに気づいた。

 顔を上げると周りは火の海になっていて、よく見るとエリの服の表面が焼けているのが分かった。


 「何が、あったんだ、エリ」


 息がまだ落ち着いて吸えず、途切れ途切れになりながらもエリに聞く。

 

 「分かんない、けどいきなり後ろから爆発が起きて」

 

 爆発? もしかしたらその音で一瞬だけど心臓が動いたのか。

 とにかく助かった。あのままではマッシルに絞め殺されていただろう。

 

 「そうだ、マッシル! マッシルは何処なんだ」

 俺はエリにマッシルの居場所を聞くために詰め寄った。

 「あ、あそこ」

 エリが指差す先を見ると、そこには左腕が焼け焦げてしまったマッシルと、全体的な鋭い突起物がついたド派手な服を着た青年が、炎を自分の周りに漂わせながら佇んでいた。

 

 

 

 

 

 

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