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ステノラグニア

 ここは賑やかな繁華街から離れた場所。その場所には屋根に雪が積もっているログハウスが一軒だけ立っていて、外にはロングソードを背負った男が一人だけ厚着をしながら立っていた。男は非常に詰まらなさそうで、厚着をしても寒いのかちらちらと家の方を見ていた。そろそろ我慢の限界だったのだろう、男はまた大きなあくびをしながら家に戻っていった。男は扉を開け、もう一人いる男の名を呼んだ。しかし何故か返事はなく、男の声が響くだけだった。男は何かおかしいと思い背中の剣を掴もうとしたが手はただ空を切るだけだった。男は慌てて両手で背中を触るが何処にも剣は無く、外に落としたと思い込んだ男は慌てて扉の方に走り出そうとした。しかし残念なことに男は外に出ることは叶わなかった。何故なら男の頭目掛けて飛んでくる刃に気づいていないのだから。そしてその刃は見事男の頭に刺さり、男は勢いよく床に倒れることとなった。



 「お疲れさまです~、ハオルシアさ~ん」

 「次は俺にも同じことをやってもらいたい」

 「凄いな、お前」

 それぞれが仕事を果たし一ヶ所に集まる。といっても殆どはハオルシアがやった為、俺も含めて皆でハオルシアを称賛し、ハオルシアはそれを聞いて照れ臭そうにしている。一人は誉めてるのかよくわからないけど。

 「いや本当に凄い。あの剣を奪うところなんか、流石に無理だろうと思ってたんだ」

 「確かにそれは俺も思った」

 小さいのでも剣とかはそこそこ重いから無くなったら気づくと思ってたんだが。ハオルシアは背中にある剣を音もたてずに取り出して、違和感を感じさせないように少しずつ動かしたりしてるのにはかなり驚いた。普通ならまず後ろに立つ前にバレるし、後ろに立てたとしても盗る作業でバレるし、盗れる技術があっても緊張のあまり息が荒くなってバレる。ちなみに剣はターナーが使うらしい。

 「えっと~、確かにハオルシアさんも凄かったんですけど。私も凄かったですよね~」  

 「へ? あ、えぇ、確かにミオさんも凄かったですよね~」

 「当たり前じゃないかミオが凄いのは」

 実際、中にいる敵はミオさんが弓矢で仕留めたからな。俺とターナーがしたことといえば殺りやすい位置に敵を誘導した位だろう。

 「本当ですか~、いや~それほどでも~」

 最初からわかってたけど、この人想像以上にめんどくさい人なんだな。

 「で。何の罪もない人を二人倒したけども本当にこんな場所に監獄なんてあるのか」

 「あぁ、それなんだが少し時間が掛かる。死体を隠したあとはゆっくりしててくれ」

 そう言うと、ターナーは小さな部屋の中に入っていった。死体は触りたくないんだが仕方ないか。こう言うときにクールがいれば楽なんだが、いったい今ごろどうなっているんだかな。



 「さっさと壊れろくそやろう!」

 目の前にある鉄の棒に蹴りを食らわす。石造りで出来た牢屋の中にぶちこまれてから、もう何回も蹴りを入れてるが全くびくともしない。足も痛くなってきやがった。

 「五月蝿いわね、大人しくできないの」

 「出来るか! さっさとこんなところ逃げ出してやる」

 「出来るわけないじゃない、私の魔法ですら壊せないのよ」

 さっきからエリは目に見えて落ち込んでいる。ふざけるな、落ち込む体力あるならちったぁ逃げ出すために力貸しやがれ。

 エリの態度にイライラしてきた俺は更に棒を蹴る。すると薄暗い廊下の奥から足音が聞こえてきた。そっちの方をみると小さい女のガキが近寄ってきた。そのガキは俺をみるなり馬鹿にしたように笑いだした。ここ出たら死なない程度にぶん殴ってやる。

 「見事に苛立ってますね。こんなやつは外にいたら確かに危険です」

 「黙れやガキがよ! さっさとママのミルクでも飲みにいったらどうだ!」

 俺はガキと話ながらも棒を蹴るがびくともせず、鉄の棒が耳障りな音を出すだけだった

 「私はもう二十歳ですよ。それに私だって好きであんたみたいな屑の顔を見に来た訳じゃ無いんですよ」

 「なら何で来た! 目障りだし耳障りだからさっさと! どっかに行ってくれないか! だぁもう! びくともしないぞこの屑鉄が!」

 余りにイライラしたため棒を殴ってしまったが、逆にこちらの手が痛くなる。

 「煩いですね! そんなやつはこうですよ!」

 ガキは腰につけていた棒を使いぶん殴ってきた、しかも殴られた瞬間体に激痛が走り俺は倒れこんだ。

 「おぉ~、マッシルさんの言う通りですね。こんなので鎮圧出来るとは、やはり筋肉は嘘つかないな~」

 ガキはそう言いながら棒をバチバチと音を出しながら振るう。この野郎電気使ってきやがった。

 「あんな筋肉だるまの何処がいいんだか、流石にあれはつけすぎだから食べても噛みきれないぞ」

 「良いじゃないですか筋肉、見てよし触ってよし頼ってよしと信頼の筋肉ですからね」

 「何が信頼の筋肉だ。ここから出してくれたら俺もそう思ってやるからさっさと出せ」

 俺はもう一度棒を蹴る、ガキは棒をこちらに振るってきそうだったが何故かやめた。

 「まず無理ですしょうね。この檻は生身や魔法では壊せませんし、鍵は私しか持ってませんしね、ほらこれです」

 ガキが尻をこちらに向けると確かにベルトに紐でくくりつけてあった。俺は急いで掴もうとしたが、ガキは棒でまた俺を殴った。

 「まぁ、これで無理と言うことは分かりましたね。では本題に入ります」

 ガキはそう言うと、懐から低品質そうな紙を取り出した。

 「あー、あなた方二人はいま巷を悪い意味で騒がせる不届きものの二人であることが分かりました。ですので、明日にはこの街で密やかに死刑させてもらうことになりました」

 「ですが、あなた方は悪魔でおまけです。あなた方のリーダーである佐藤の場所を吐くのであるなら死刑ではなくなります。だそうですよ、良かったですね」

 ガキはにやにやと俺をみていて、どうやら確実に俺が白状すると思ってるようだ。余裕の表情で偉そうにしやがって。

 「そうだな、確かにこのまま死刑は嫌だ。俺はまだまだ生きていたい」

 「まあですよね~、分かってましたよ貴方の答えは。貴方みたいな屑は自分さえ良ければ良いですもんね」

 「あぁそうだ、俺は自分さえよければ後はどうでもいいと思ってるし、これからもその考えは微塵も変わることは無い」

 「うんうん、ならさっさと場所を教えてくださ~い。私はこんな掃き溜めから一秒でも早く出たいんですよ」

 ガキは俺の言葉を聞くために手を耳にあて、わざとらしいポーズをとり顔をこちらに近づけた。

 そして俺は深呼吸して息を落ち着けた。ガキは更に檻に顔を近づける。

 そして俺は心の準備をして。


 思いっきしクソガキの顔を殴った。小柄なクソガキは気持ちの良いぐらい綺麗に吹き飛んでいき奥の壁にぶつかった。

 「な、何てことをしゅるんですか。このクショ豚が」

 思いきり殴ったのでクソガキの顔は見るも無惨にひしゃげてしまい、先程までの滑舌はなくなり、喋りにくそうにしていた。

 「おいおいおい! 俺は自分さえ良ければいいんだって言ったよな! 何でお前みたいな腹立つ奴の言う通りにしなきゃいけないんだ! えぇ!」

 「お、お前なんか、死刑だ。後で後悔してもおしょいんだからな。う、うぅ、マッシルしゃ~ん」

 クソガキは大泣きしながら肉ダルマの名前を叫びながら帰っていった。  

 「超気持ちよかった、人生最後の一撃は爽快だな」

 「よかったの、あんなことして」

 エリが話しかけてくるがすっかり忘れてた。そういえばいたんだったな。

 「そりゃ自分さえ良ければいいからな、あいつの言われるがまま死刑から逃れても胸糞悪いだけだしな。それに多分あれは嘘だからな」

 「分かってたんだ」

 そう言うとエリは立ち上がりこちらに何かを投げてきた。俺はそれをしっかりと取り見てみた。

 「おいおいこれは!」

 「そうよ、あの看守が持ってた鍵よ」

 そう、これはあのクソガキがこちらにわざわざ見せつけてきたここの扉を開ける鍵だった。

 「ど、どうやって」

 「まずいつもの首を切り裂く魔法の威力弱めのやつで鍵の紐を切る。その後はバレないようにレンガの床を盛り上げたりへこませたりして移動させたのよ。床が木だったら危なかった」

 「やるなお前」

 「あんたが騒いでなかったら無理だった」

 俺は大量にある扉の鍵を使い扉を開け、ゆっくりと扉を開けてった。どうやらクソガキ以外はいないようだ。

 「さてと、さっさとおさらばしようか」

 「そうね」

 「ま、待ってくれよ」

 俺達は薄暗い廊下を歩こうとすると誰かが声を掛けてきた。最初は誰か別の看守がいるのかと思ったが、どうやら俺達の隣の檻から声がするようだ。

 「何だ、忙しいんだ早くしろ」

 「あぁ、何も変なことを頼む訳じゃない。その鍵を俺にくれよ」

 「あ、それだけ? ほらよ、鍵は自分で見つけろよ」

 「ありがてぇ、必ずあんたに恩返しするぜ」

 「好きにしろ」

 俺達は男に鍵を渡して先を急ぐことにした。目指すは出口、必ず脱走してやる。

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