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エキシビショニズム①

 「皆さ~ん、後少しで出られますので頑張って下さ~い」


 先頭にいるミオが俺達に向かって手を振りながら明るく話しかけてきた。しかし、誰一人として返事をする体力も気力も残っていなかった。


 というのも、先程まで数えきれないほどの針を飛ばしてくる蜂が襲ってきたり、通常の3倍早い赤いゴキブリが辺りを飛び回ったりしていた為である。


 「ま、まさかゴキブリが出るなんて……」

 「ゴキブリは森の掃除屋と言われてるからな、ここにいても不思議ではないだろう。なんで赤のかは分からないがな」

 「なぁ佐藤、何でそんなこと知ってんだ?」

 「自分の天敵について細かく調べるのは当たり前の事だ」


 お互い、死んだ魚の様な目をしながら疲れを誤魔化そうと会話を続けるが、先程から疲労の原因であるはずの虫の話しかできてない。これでは余計に疲れるだけだ。


 しかしハオルシアは俺達と違い、虫と見たときとても目を光らせていた。あれは珍しいものを見つけた幼い少年のような目だった、随分と純粋なようだ。


 しかしこの森で一番驚かされたのはミオだ。


 虫相手に逃げ惑うことしか出来なかった俺たちをカバーしながら、虫を一匹も殺さずにここまで来ている。


 虫好きもここまで来たら恐ろしいな。


 そんな事を考えていると、一陣の風が吹いてじめっとしていたた空気を吹き飛ばした。  


 久しぶりの風、樹海の中では感じることが出来なかった風が吹いていた。ということは……


 「皆さ~ん、出口ですよ~」


 待ちに待った言葉。俺は全速力で出口まで走りだそうとすると。

 「出口だ~!!」


 大声を出しながら先にエリが駆け出していった。この中で一番暑い格好をしているから、さっさと涼しいところにもいきたいのだろう。


 俺は静かに出口まで走り、森から抜け出した。


 森にいたときこそ心地のよかった風だが、森からでるとその風は体をつんざくような冷気として吹き荒れていた。


 あまりの寒さに俺とエリは森の方に体を震わせながら急いで戻った。


 「な、何でこんなに寒いのよ」

 「分からん、それより俺は頭が痛くなってきた。風邪でもひいているのだろうか」


 体の震えが収まってきたので俺は後ろを振り向き目の前の光景に動揺してしまった。


 そう、辺り一面雪で覆われた銀世界にだ。


 最初、幻覚の類いだと思っていたのだがエリも俺と同様に震えていたところからして違うようだ。


 だが考えてみてくれ、先程まで俺たちがいた場所は森のなか、しかもじめっとしていて暑いと来たものだ。そんな森をでてすぐに雪があるはずがない。


 「どうなってんだこりゃ」

 「やっぱりこの辺りは冷えますね~」


 後ろからクールとミオの声が聞こえ、振り向いた。ハオルシアは雪を見てはしゃいでいた。本当に犬のようだ。


 「おい佐藤、雪だ。隣の蒸し暑さ何か全力で無視して積もってやがる」


 クールも俺と同じようなことを思ってるようだ。


 「もしかしたら森の方がこの雪のなか異様に成長しているのかもしれないな。ミオは不思議に思わないのか?」

 「いいえ~、特に困ってませんので~」


 そこは疑問に思った方がいいのではないだろうか。

 しかし寒いな、このまま進むと凍え死にしてしまいそうだ。何とかできないものか。


 「おい何やってんだよ佐藤、さっさとお前もこれ着ろよ」


 そう言うなりクールは俺に毛皮の服を渡してきた。


 「こんなものをいつ用意した」

 「ミオが俺達用に作ってくれたんだとよ、急いでたから縫い目が粗いとか言ってたけどな」

 「縫い目が粗いか……」 

 

 みた感じはそうでも無さそうだがな、能力使わずに着れそうだ。


 「皆さ~ん、少し先に村があるのでそこにまずは行きますよ~」

 「分かりました。クール、エリ、ハオルシア、村入っても問題を起こすなよ」

 「分かってますって、流石に村は小さいから人の目がありすぎて手が出せねーよ」

 クール、OK

 「へー、そうなんだ。なら私も大人しくしとくね」

 エリ、OK

 「……」

 「ハオルシア、大人しくできるか?」

 「……」


 凄く嫌そうな顔をしながらハオルシアは首を縦に振った。

 よし、これで大丈夫そうだな。


 「では、はぐれないようにしっかりとついてきてくださ~い」

 「「「は~い」」」


 そして俺達は、雪原の中をはぐれないように進んでいった。



 

 「つ、ついたか」

 「お疲れさまでした~」


 森から出てどれぐらいの時間が過ぎたのだろう、青かった空は夕陽色に染まり、少しだけ月も見えるぐらいになっていた。


 「ミオ、少しだけって言ってたよな」

 「はい~、その筈だったのですが~」


 イライラしているクールを見てミオは少しだけ怯えていた。


 「少しじゃねーじゃねーか!」

 「ひいっ」


 怒りが頂点に達したクールはミオにその怒りをぶつけた。クレーマーだ。


 「まぁまぁいいじゃないか、ついたんだし、な?」


 俺がクールとミオの間に立ち、説得を試みたが聞く耳がないようだ。完全に怒りに身を任している。疲れるだけだろうにな。


 「確かについたけど、もしこれで迷ってたらどうしてたのよ! えぇ!」


 クールに加えエリも不満があったのか、怒りを露にしてミオに怒鳴り付けた。子供か。


 「いいじゃないか迷わなかったんだし、それに実際に迷わなくてはそんなのわかるわけないだろう」


 ハオルシアもそう思うのか呆れた顔をてうなずいた。


 それでもまだ不満があるのか、いっこうに収まらない怒りをぶつけられ耐えられずにミオが泣き出しそうになったそのときだった。


 「誰だね、村の前で騒ぐ不届き者は」


 男の野太く渋い声が辺りに響いた。

 俺達は声のする方に振り向いた。そこにいたのはこんな寒いなか何故かブーメランパンツだけをはいた筋肉ムキムキの男だった。


 「私の筋肉が美しい内は、村の回りですら騒動を起こさせないよ」


 そういいながらこちらに近づいてきた。あれはまずい、クール好みの肉付きじゃないか。今は我慢してもらわないと。


 「クール、問題を起こすんじゃ」

 「誰だお前! 今は俺達だけで話してるんだから邪魔すんじゃねーよ」

 「そうだそうだ!」


 怒りすぎて食欲そっちのけになっているな。ありがたいが騒動は起こってしまうな。


 「む、泣いているではないか。お嬢さん、このハンカチで涙を拭きなさい」


 そういうと、ブーメランパンツからハンカチを取りだし渡してきた。


 「い、いえ~、結構ですよ~」


 そう聞くと男は少ししょんぼりとした顔でハンカチをまたパンツにしまった。そんなところに締まっているからだ。


 「は~!! ずいぶん紳士的だな~えぇ!?」

 「ヘドが出そうになったわ全く!!」

 「貴様達!」


 男が怒鳴り、先程まで文句を垂れていたクール達を黙らせた。そしてこの流れは面倒な事が絶対な起こるな。俺はミオの隣に行くか、ハオルシアも既にいやがる。早いな。


 「いたいけな女性を泣かせる貴様らのような卑劣な悪党はこの私! マッシル・エキシビションが相手だ!」


 男、マッシルが筋肉を見せつけながらクール達に向かって怒りを露にした。


 「な~にが許さないだ! お前みたいなのは気がすむまでぶちのめして二度も生意気言えないようにしてやる!」


 完全に噛ませ犬です。クールはマッシルに向かって一直線に突撃していった。闘牛みたいだな。


 だがそんな考えはすぐに吹き飛んだ。そう、クールと一緒に仲良くふきとんだのだ。


 吹き飛んだクールは落ちると同時に雪が撒き散った。雪がなければひどいことになってたなあれは。


 「少しはフェイントの1つでも入れたらどうかね。それでは次はそこの君だ」


 そういうとマッシルはエリに向かってゆっくりと近づいていった。端から見ると悪党はマッシルのようにしか見えない。


 「ふ、ふん! 肉弾戦は強くても魔法に敵うわけないでしょ!」


 エリはいつものように風魔法で首を切ろうとした。しかしマッシルは驚くことに風の魔法が発動してから動いたのにも関わらず回避しえ、いつのまにかエリの目の前に迫っていた。


 「詠唱なしでの魔法か、確かに早いが……遅いな」


 マッシルはエリの目線に合わせた屈むと、おでこにデコピンをくらわした。デコピンといっても上半身が勢いで仰け反るほどの威力だがな。そんなのを食らえば当然だろう、エリは倒れたまま気絶してしまった。


 「これで全員か……大丈夫かね君達、怪我は」

 「へ? あっ、はい大丈夫です」

 「そうか、なら村に入っているといい。何もないがそこが魅力的な村だからね」


 マッシルはそういった後大声で笑いながらクールとエリを担ぎ、村の方に走っていった。


 「あ、ちょっと……いってしまった」

 「クールさん達が連れてかれましたね~」


 困ったな、これじゃあ戦えるやつが二人しかいないぞ。これはなんとしてもクール達を助け出さなくては。


 「ハオルシア、ミオさん、クール達を助けるの手伝ってくれますか?」

 「はい、ああなってしまったのには私も少しは原因がありますので」


 ハオルシアも首を縦に振った。


 「よし、ならまずはあの村に入るとしよう」


 そして俺達は筋肉の化け物が守る村に入っていった。とてもじゃないがクール達を助けられる気が全くしないけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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