久しぶりの神様です。
お久しぶりすぎてすみません。
ゆっくり再開していきます。
人の住む街に面していない北の山の中腹に、その洞窟はあった。
いや、洞窟とは言えないだろう。何しろその場所には奥行きがほとんどない。一見山の岩肌が見えているだけの、数人が雨風が凌げる程度の広さしかない空間に俺たちは案内された。
「ここですか?」
「そうじゃ。少々目隠しをしておるでな、このまま進むがよい」
「はぁ」
そう言われても俺の目の前には岩の壁しかない。手を当てても岩の感触だし、魔力も感じられない。
「そうじゃ。手を当てたまま押すのじゃ」
首を傾げながら押していくと、フニャリと岩が柔らかくなり、思わず俺はそのまま前につんのめってしまう。
「クラウス様!!」
「クラウス!!」
俺の服の裾を掴んだオルとギュンター二人を巻き添えにして、そのままスルリと柔らかくなった岩の中へと「落ちて」いった……。
頬に冷たい岩の感触を感じる。どうやら意識を失っていたらしく、気がつくと俺はうつぶせになっている状態だった。頭を打っていると良くないと思って、しばらく深呼吸を続けていく。
身体中に魔力を流していき異常がないか確かめる。少しずつ手足を動かして痛む箇所はないのを確認してから、俺はゆっくり体を起こした。
先程の灰色の岩肌とは違い、真っ白な岩で出来ている洞窟に俺は既視感を感じる。
この感覚、なんだっけ?
「マイコ、聞こえる?」
俺の影の中にいるはずのマイコは、呼びかけに応えてくれない。一体どうしたのかと辺りを見渡すと、少し離れた場所に栗色が見えた。
「マイコ!!」
一気に血の気が引いた俺は、転がるように彼女の元へ駆け寄る。倒れているマイコは意識を失っているらしく、その白い首元にそっと触れると、ゆっくりだが指先に脈を感じることができた。
「気を失っている、だけか?」
俺は魔力で、マイコに意識がないだけで特に身体に異常がないことを確認すると、ゆっくりと周囲を見回す。オルとギュンターの姿が見えないし、彼らの気配は一切感じられない。
故意に別れさせられたのか、それともたまたま別の場所に「落ちて」しまったのか。
その時、不意に俺の目の前を何かが塞いだ
『やほー! 久しぶりー!』
馬鹿みたいに明るい声。懐かしいというか、今更何の用だというか。
相変わらず、Tシャツジーパンという気の抜けた格好をした少年は、ニンマリとした笑顔を俺に向けている。
「何だよ。何の用だよ。俺は忙しいんだよ」
『いやいや、ちょっと待って。君は神託を受けにきたんだよね? 神様に会いに来たんだよね?』
「その通りだが、それがお前に何か関係があるのかよ」
『大アリじゃん!? 俺だって神じゃん!?』
「じゃんって言われてもなぁ」
そういえばこいつも神だったか。確か「渡りの神」とか何とか言ってたよな。
『そうだよ。渡りの神だよ。忘れないでくれよー』
人の心を勝手に読むところも、まったく変わってないな。こいつ。
『君も相変わらず、神に対しての扱いがぞんざいだよね!』
「それはどうでもいい。オルとギュンター……俺の連れは?」
『別の所で眠っていてもらってるよ』
「なんで俺とマイコなんだ?」
『君らとは一度会っているからね』
渡りの神はその場でクルリと一回転すると、薄い氷のようなものを手のひらに出した。魔力が感じられないということは神力か。いや、一応神だったっけ。
『一応って……まぁいいや。宮田君……じゃなかった、クラウス君の使える鑑定を強化しておくよ。今の状態だとこの世界の「理」しか見通せないから』
「え、今でも充分チートなんですけど」
『最初って言っても憶えてないかもしれないけど、今世の魔王は外部からの干渉によって、この世界の人間だけでは倒せなくなっているんだよ。この世界のチートじゃ太刀打ちできない』
「そんなに手強い相手なのか」
『まぁ、ある意味手強いかもね。あとマイコちゃんも起きているみたいだから、力を強化させておくよ』
硬い石の上では痛いだろうと、膝枕をしてあげていたんだけど、どうやらマイコはタヌキ寝入りしていたらしい。そのまま俺の太ももに顔を押し付けて、グリグリ擦り付けてくる。白いうなじが赤くなっているのがすごく可愛い。ちゅーしまくりたい。俺の嫁めっちゃ可愛い。早く成人したい。
『クラウス君、僕にそういう思考をわざと向けるのやめてくれない?』
「じゃあ読まなきゃいいだろ」
『読めちゃうんだよ!!』
珍しく感情を露わにした渡りの神は、こほんと咳払いをした。
『気を取り直して、ともかくこれから神託を受けてくるんだから、気を引き締めて行っておいで』
「お前のじゃないのかよ!」
『君らは二世界を渡っているんだから、二つの世界から神託を受けるんだってば。ほらほら仲間が待ってるよー』
少年の姿をした神は、再びクルリと一回転して消えた。彼の立っていた後ろには、ぽっかりと穴が開いていて、奥には通路のような道が見える。
「相変わらずマイペースな神だな。じゃあ行こうかマイコ。ん? マイコ?」
俺の膝の上で顔を擦り付けてしたマイコは、俺の下腹に顔を当ててスーハー呼吸をしている。おい、なにやってんだよ。
「くらうすしゃま、いいにおい……」
チラリと見えたマイコの顔は、頬を紅潮させてへにょりと蕩けた笑顔をしている。不覚にもその破壊力抜群の愛らしい彼女の笑顔に、しばらく俺は固まったまま身動きがとれなくなってしまった。
勘弁してくれ……。
お読みいただき、ありがとうございます。




