表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/39

セシリア・ウィンスター

閑話です。

 気が付くと、白い天井が見えます。寝かされたのは簡易ベッドのようですが、清潔なシーツと布団が使われています。

 一瞬自分がどこにいるのか分からなくてパニックになりますが、意識を失う前の記憶がじわりじわりと思い出されてきました。

 そうです。私はクラウス様のお怒りによって発された威圧に、耐えることが出来ずに気を失って……。


「不甲斐ないです」


 悔しさのあまり、目から涙が溢れてきます。それさえも悔しくて、自然と出てくるしゃっくりを抑えたいけれど、苦しくて、辛くて。


「う、ひっく、うぇ……」


 クラウス様、クラウス様、クラウス様……。

 叶わぬ想いなのは分かっています。だからお側にいるだけでもと、そう思っていたのに……。


「それさえも、ひっく、叶わないのですね……」


 ここにいるのは私だけということは、ギュンター様、オルフェウス様はもちろん、マイコちゃんもついて行けたということです。

 なぜ、とは言いません。だって私はマイコちゃんの頑張りを知っていますから。

 右も左も分からない所で、ただクラウス様のためだけに頑張ってきたマイコちゃん。

 それに比べて私は、高位の司祭であるお父様が側にいてくれていたにも関わらず、神聖魔法を高める修行を始めたのは最近です。クラウス様に出会ったのは何年も前なのに、です。


『セシリア、君には神聖魔法を極めて欲しい。回復に特化した存在がいるのといないとでは戦力的に大きく違う』


 以前クラウス様が仰ったことを思い出します。その時は分かっていたつもりでした。

 ですが、私が今この状態であるということは、クラウス様のお言葉を「本当の意味で」分かっていなかったということでしょう。

 どんどん落ち込む私でしたが、不意に強い存在を感じ取りました。


「入らせてもらうが、良いかの?」


 力ある声が聞こえ、私は慌てて「大丈夫です!」と返すと、入ってきたのは竜族の長様でした。

 長様に対して失礼かと、私は起き上がろうとしましたが、起き上がれません。


「良い。そのままで居れ」


「は、はい」


 どうやら何か力を使われたのでしょう。修行不足の私には上手く感じ取れず、尚更落ち込みます。


「ふむ。お主はどうやら落ち込んでいるようじゃが、なぜじゃ?」


「え? ええとそれは、自分の努力不足を痛感しておりまして……」


「努力が不足、のう。では、その努力がどれくらいあれば良かったのじゃ?」


「そうですね。せめて先ほどのクラウス様の威圧で気を失わない程度には……」


「なるほどのう。ではその威圧はどれくらいの努力で退けられるのじゃ?」


「それは……」


 長様の問いに、私は答えられません。先ほどのクラウス様はたいそう怒ってらっしゃいました。温厚なクラウス様ですから、あれほどのお怒りを今後出されるのでしょうか……。


「あれをどうにかしようなぞ、神官見習いであるお主には到底無理な話じゃ」


「そんな! オルフェウス様はともかく、ギュンター様やマイコちゃんは大丈夫でしたのに!」


「あの水色の男子を精霊が守っていたし、女子は影に入り込んだしのう」


「ええ!? ギュンター様もマイコちゃんずるい!!」


「ほほ、そのずるさで危険を回避出来るのであれば、それはそれで良いのではないか?」


 私はハッとしました。そうです。長様の言う通りです。

 どんな方法でも、生き残る手段があるなら使うべきです。神聖魔法を極めるようにと言われて、ただ闇雲に神聖魔法をだけを高めようとしていましたが、クラウス様について行きたいのならそれだけではダメだった……。


「そういうことですか」


「ふむ。良い顔になったのう」


「長様、ありがとうございます。私は確かに努力不足でした」


「我は何もしておらぬよ。励むが良い」


「はい!!」


 長様が出ていかれた後、私は再び考えます。

 今の私がクラウス様について行っても、きっと足手まといになります。

 お父様に言われたとはいえ、私がクラウス様に仕えているのは、あの方の憂いを断つためです。あの方の一助になるためです。

 その私が憂いとなっては元も子もありません。


「まずは、クラウス様がご無事に戻られるのを待ちましょう」


 心に一つの決意をした私は手を組み、そこから長い時間神々に祈りを捧げるのでした。






お読みいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ