鏡也の頼み
練習が再開したその日、練習の後携帯電話を見ると鏡也からメッセージが入っていた。
『レスリング部入ることにするからお前も俺の頼みを一つ聞け』
なぜテスト勝負に勝った者が頼みを聞かないといけないのかと一瞬思った海生だったが、せっかくレスリング部に入ってくれる気になっているのだからと『良いよ』いう返事を返した。
そして返ってきた返事はさっそくその頼みのことだった。
『土曜の夏祭りに付き合え』とのメッセージに、
『練習したいんだけど』と返すも、却下され場所と時間を指定された。
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土曜の夕方、待ち合わせ場所に来た海生は鏡也と合流した。待ち合わせ場所は祭り会場から少し離れた市役所の前だった。
鏡也は私服で袖が肘まであるロングTシャツにネックレスというファッションで来ており、海生は袖が短めの夏でも着れるパーカーを身に着けていた。
「海生お前良いよって言ったくせに、練習したいとかいってんじゃねぇよ。一日中練習するわけでもあるまいし」
鏡也はこの前の携帯でのやり取りのことを言っているらしい。
「いや練習終わった後も練習したいし……」
「スマン海生、お前が何言ってるのかちょっと分かんない」
じゃあ行こうかと歩き出そうとする海生に、ちょっと待ったと静止する鏡也。
「まだここに来る奴らがいるからちょっと待て」
他にも誰かくるらしいという事実を今日初めて知らされる海生。
「え? 他にも誰か来るの? 聞いてないんだけど」
「言ってないからな」
「いや言えよ。なんでだよ」
まぁ人見知りする方でもないしとそのまま待つことにする海生。
「で、誰がくるの?」
「あー二人来るんだけど一人はまぁお前も知ってるっていうか……あっ来たじゃん」
浴衣を着た眼鏡の女の子が海生達を見つけて駆け寄って来る。小走りで近づいて来ており、ポニーテールの髪が揺れている。
「え? 鏡也彼女でも出来たの? 自慢したいだけとかだったらぶん投げるぞ」
「いや違ぇよ。寧ろあの子は……いや何でもない」
近くに迫ってきた姿を見て海生は見覚えのある顔だということに気づいた。
「いやぁ海生先輩久しぶりっす」
「百合菜ちゃん?」
その子は海生が中学生の頃、バレーボール部でマネージャーをしていた一個下の女の子。花城百合菜だった。




