第7話 決勝戦
決勝戦____
「ロゼッタ公爵令嬢…リュークから聞いている。」
レイはいたずらっぽく笑った。
「え?どのように…?」
ロゼッタの耳のそばでレイはささやく。
「綺麗なのに強いって」
真っ赤になるロゼッタ。
「冗談が過ぎますわ…」
リュークの冷たい視線がレイを刺している。
「怖い怖い」
笑いながら定位置に戻りレイは、騎士団長らしくとても綺麗な礼をした。
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いしますわ」
二人の剣が火花を吹いている。
「本当だ。リュークの言う通り強いな」
余裕すら感じさせる。この騎士団長…やはりただものではない。
「うむ、太刀筋が見えているのか。フィジカルギフトとは便利なスキルだな」
真剣同士がぶつかり合っているのに、何故か力が流されている気がする。
「力がいなされているのでしょうか?ものすごい高度な技術なんですね?」
「お褒め頂きありがとうございます。」
「団長は相手の太刀筋が読めるんだ。」
リュークはリリアンに言うが、リリアンはいまいちピンとこない。
「スキルということでしょうか?」
「剣聖の眼
相手の筋肉の動きや重心から、次の一撃を予測できる。」
リリアンはそのすごさはよくわからない。
でも、とても気品がある戦いになっていますわ。
お嬢様のクレーター製造も起こらないし、何という軽やかな剣なのでしょうか。
司会「さすが決勝戦です。息を吸うのも忘れるほどの攻防。レイさんは大会4連覇なるか?それともダークホースローゼンベルク公爵令嬢か」
「リューク様、ちょっと…今、レイさんは四連覇って言っていましたわよね…?お嬢様は大丈夫なのかしら…?」
「正直、団長は剣聖と呼ばれるくらいの人なんで・・・・」
リュークの顔にも心配が混じっているようだ。
レイ様、さすが騎士団長ですわ。でも、太刀筋が少し乱れてきていますわ。
私の太刀を受けるのにも限界があるのでしょうね。
キン、キィィン
「うっ」
レイ様、私の太刀筋を読めているはずなのに、反応が鈍くなってきていますわね。
「やはり強いですね。私が次の一手を読んでいることにも、気づいているのでしょう?」
「こんな面白い試合、初めてです。ゾクゾクします」
レイは少し間合いをとった。
呼吸を整えたレイは少し構えが変わった。
ロゼッタが攻撃を繰り出す。
あたった?当たったと思ったが空を切った。
「え?」
見えていたはずなのに、かわされた?
レイ様の足が、ほんのわずかに軸をずらした。
これは脚の使い方?!
「すみませんね。騎士団の団長の威厳は保たないとなりませんので」
レイは剣の柄の部分でロゼッタの後ろ首のあたりをついた。
途端にロゼッタは意識を失った。
「団長が大人げない…」
司会「勝者 レイ・アシュリー 騎士団長の意地を見せてくれました~
今大会4連覇です。 さすが剣聖です!」
女性の黄色い歓声がすごい。
ロゼッタは後頭部をさすりながら目を覚ました
「いたたた‥‥」
「すみません。切り付けるわけにもいかないので気絶させました。」
ロゼッタに手を差し伸べるレイ。横からぺしっとはたき落とすリューク。
「いたっ。団長におめでとうとかないんですかね。リューク?」
ニヤニヤ顔のレイにムカムカしてる様子のリューク。
「おめでとうございます(棒)」
「あははは。わかりやすいなー。かわいいなリューク君」
団長がリュークの髪の毛をぐちゃぐちゃにする。たぶん手を叩かれたことは根に持ってる。
_____クリス・サーペント伯爵令息
大会運営上の重大な規約違反
相手選手に毒針を刺そうとした疑い。
毒針を所持した黒装束の男は拘束されたが、男の自白により依頼主は侯爵家令嬢 マリエンヌ嬢と判明。
マリエンヌ嬢はクリス・サーペント伯爵令息に頼まれたと証言。
尚、毒の成分は検出されたが短時間の麻痺が起こるだけのものと判明した。
これにより、本大会にはクリス・サーペント伯爵令息の参加は今後一切できないものとする。
「クリス! この恥さらしが!! お前をサーペント家の跡取りから外す!!」
クリスの父、エリックはこれ以上ないほどの怒りを露わにした。
「も、申し訳ありません、父上……。 どうか、それだけは……。」
クリスは顔面を蒼白にし、必死に父へとすがった。
「今後は双子の弟たちのどちらかを跡取りにする。」
冷たく言い放つとエリックは出かけて行った。
「兄上~、公爵令嬢にびびって漏らしたそうですねぇ?」
「そうなんだよ。結構漏れてたぞ。それにめちゃくちゃ泣いてた。」
ハハハハと笑う双子たち。
「うるさい!!!」
「怖い怖い~。いこうぜー。」
笑いながら双子の弟たちは去っていった。
取り残されたクリスは茫然と立ち尽くした。
マリエンヌ・ド・ベルモント侯爵令嬢____
「今回の件、どういう事なのだ?何故加担したのだ?」
マリエンヌの父、リゲル侯爵は声を荒らげない。
「あの…クリスに頼まれて…どうしても勝ちたいっていうので…」
リゲルはマリエンヌから目を逸らさずに言った。
「マリエンヌ。私はお前を甘やかしすぎたようだ。シュタルク辺境伯家に嫁いでもらう。」
「な!シュタルク辺境伯!!」
リゲルの目は寂しそうだった。
「そうだ、シュタルク辺境伯ならば、お前を大事にしてくれる。」
マリエンヌの大きな瞳には涙がたまっている。
「お父様、嫌です!あのお方は熊みたいな大男なんですよ!それにラーナの地は永久凍土。そんな厳しい土地に行くなんて無理です!!」
「そうだな、お前が自ら招いた結果だ。受け入れなさい。侯爵家の娘ならばな。」
マリエンヌは父の本気が伝わりもう何も言葉が出てこなかった。




