第6話 クリス様、許されると思いまして?
予選C会場___
司会「勝者クリス・サーペント伯爵令息」
マリエンヌが走り寄り、クリスの汗をハンカチで拭く。
「とても素敵でしたわー」
「まぁ、俺は強いからなぁ」
ドゴォオオオン
観客「A会場のほうからだったな。どんなすごい剣士がいるんだよあっち。見に行こうぜー」
A会場のほうを見ながらクリスはマリエンヌに話しかけた。
「あんな轟音させるなんてヤバいやつがいるな・・・マリエンヌ。もしもの時はよろしくな」
「ええ、分かっていますわ」
予選A会場___
「どうしてですの?何故皆さん棄権なさるの?!」
「そりゃ、そうでしょう‥‥お嬢様。素手でクレーターを作る令嬢と戦いたいわけがございません!」
A会場予選通過者 ロゼッタ・フォン・ローゼンベルク公爵令嬢
予選B会場___
レイ「A会場は先ほどの轟音の剣士が予選通過かな」
B会場予選通過者 レイ・アシュリー騎士団長
予選C会場___
C会場予選通過者 クリス・サーペント伯爵令息
___決勝トーナメント会場にて
「いよいよだな。ここからは真剣を使う。気を付けろ。剣を落としても負けだ。」
リュークは公爵家の剣をロゼッタに渡す。
「はい、リューク様」
ロゼッタの手に緊張の汗がにじむ。
少し、素振りをしてならしましょう・・・
「えい!」
ブゥォオオン
リリアンは思った。
お嬢様は人ではない何かになってしまわれたのかもしれない。
準決勝____
「は!ロゼッタお前が本当に出場してるなんてな!」
「クリス様と私はすでに婚約破棄しております。名前呼びとは失礼ですわ。身分をわきまえて、公爵令嬢とお呼びください。」
司会「準決勝戦 ロゼッタ・フォン・ローゼンベルク公爵令嬢 対 クリス・サーペント伯爵令息 礼!! はじめ!!!」
ロゼッタはリュークの構えを完璧に再現出来ていた。
(なんだ?ぜんぜん隙がないじゃないか。仕方ない)
クリスは剣の向きを変えた。
??何故向きを変えたのかしら?
ヒュン‥‥ 針?観客席のほうから飛んできたわね。
でも、止まって見えるわ。
ロゼッタは剣ではじく。
どこから飛んできたのかしら?さっきはあの辺でしたわ。
観客の中に黒装束の男がいる。
あいつね。
クリスは針がはじかれて驚いているようだ。
「卑怯ですわね。」
「何のことだ?」
「早く切り込んできたらどうだ?」
ニヤニヤとクリスはにじり寄ってくる。
「ふふ、あの黒装束の男はあなたのお仲間かしら?」
クリスの顔に焦りが見えた。
「そんなやつしらねーよ」
ブォォォオオン
クリスの顔の横を、ロゼッタの剣が空を切った。
その風圧は観客席まで届いた。
「なっ…残念だったな。当たらないと意味ないんだよ。」
ロゼッタはにっこり笑う。
「あら。当たったわよ。」
観客席から悲鳴が聞こえた。
「うがぁぁぁ」
黒装束の男が倒れた。
「なんだと……」
明確な焦りが見え始めるクリス
「剣をふると風がでてくるでしょ。それをあてたの」
こともなげに言うロゼッタをバケモノでも見るような目でクリスは見ていた。
観客席では倒れた男が警備の騎士にどこかへ運ばれていく姿があった。
クリスの額に汗が噴き出る。
「棄権・・」
クリスが棄権を口にしかけた瞬間、ロゼッタが地面に剣を突き刺した。
ズンッ!!
大きな衝撃に、クリスはバランスを崩して倒れた。
「させないわよ」
冷たい目でクリスを見るロゼッタ。
「マリエンヌ様からもらった剣はこれですわよね?」
クリスが力なく持つ剣を指さしてロゼッタは
にっこり微笑むが目は笑っていない。
背中にも汗がびっしょりと噴き出る。
「さぁ、構えなさい!!!構えないと試合・・・できませんことよ?」
「すまなかった・・・」
「は?」
「殴ってしまってすまなかった」
ため息をついたあとロゼッタは今度は近くの木を殴った。
バキィィィ
司会(また木を粉砕した……。地面にはクレーター。剣術大会なのに、フィジカル面ではすでに優勝している……)
「許されると思った?許すわけありませんわ」
クリスの顔色は真っ青になった。
それと同時に地面に広がる水たまり。
リリアンは思った。
あいつ絶対漏らしてる。
お嬢様の尊厳を傷つけたこと、リリアンも絶対許しません。
「審判様、この方汚れていますのでどうにかしてくださいませ。お嬢様が汚い殿方に触れるのは見ていられませんわ」
「それに戦意が完全に喪失してますわ」
審判はクリスに近づいた。
「まだ、戦う意思はありますか?」
クリスは鼻水を垂らして泣きながら
「き…棄権しましゅ…」
と伝えた。
司会(うん、剣術大会なのにな…)
会場からはドッと笑いが起こった。
「見ろよあの伯爵の息子。漏らしてるぜ」
「あら。汚いですわね…」
嘲笑と哀れみの視線がクリスに刺さる。
「ロゼッタ・フォン・ローゼンベルク公爵令嬢決勝進出!!」
前代未聞の公爵令嬢の決勝進出に観客席から大歓声が巻き起こった。




