表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
晴霞の王  作者: 瀬戸榛名
第3章|王は、ここに在る

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/66

第61話 決着の刻

***


 荒れ果てた城跡に、重く風が吹いている。空は薄く曇り、雲の切れ間からわずかに陽が差す。

 ──そこに、セフィリアは立っていた。

 白銀の髪が戦場の風に舞う。


「セフィリア。お前にまた会えるとはな。戻ってくるのが、ずいぶん遅かったんじゃないのか?」


ロゼルトの声は、どこか甘やかだった。


「もう、諦めたのだと思ったよ」


「……いいや」

 セフィリアは静かに首を振った。その声音は弱々しくも、凛としていた。


「私は、ここでお前を討つ。今度こそ、終わらせる」


 ロゼルトは目を細めた。


「その覚悟で来たというのか。ふむ。では、お前の正義を私に見せてみろ。──レティシアの娘よ」


 次の瞬間、空間が震える。ロゼルトの魔力が解き放たれ、空が歪んだ。

 時空を断ち切るような一撃が、一直線にセフィリアへと放たれる。光の槍。重力を圧縮した、禍々しい魔法。


「──くっ!」


 セフィリアは腕を振り、空間に魔力の壁を展開する。しかし、すべてを防ぎきるには至らず、爆風が地を裂いた。砕けた地面が舞い上がり、瓦礫が宙に弾ける。


「やはり、足りぬか。力が戻りきっていないのだな」


「そうかもな。でも、それはお前も同じだろう? お前を止めるのに、私の力が足りないとは思わない」


 セフィリアの足元が眩いばかりに光る。魔力の奔流。迸る光が大地を這い、周囲の空気が引き裂かれる。


「レク・ヴィア──落ちろ」


 彼女が指を下ろした瞬間、天が揺れる。


 天が、落ちてくるかのようだった。天から降る光が、地を押し潰すように圧縮する。

ロゼルトの足元に空間が捻れ、地面が音を立てて陥没していく。しかし。


「甘いな」


 片手を掲げると、その掌に凍てつく黒が渦を巻く。


「セフィリア、お前の魔法は……あまりに美しい。美しすぎるよ」


 ロゼルトは目を細める。その口の端には笑みが浮かんでいた。


 闇が一閃し、彼女の術式を真っ向から打ち破る。反動が彼女の身体を弾き、セフィリアは膝をつく。口元から血が滴った。


「……っ、まだだ」


 崩れる身体を支えるように、地を握り締める。


 ロゼルトは歩み寄る。一歩ずつ、確実に。


「お前のその意志は、実に見事だ。だがそれだけでは、世界を変えることはできない。──私が、世界を創り直すのだ」


 セフィリアは答えない。ただ、静かに顔を上げ、彼の姿を睨み返す。

 その瞳の奥に宿るのは、諦めでも絶望でもない。誇りだった。


「今度こそ、ここで終わらせてやろう。小娘よ、もう苦しむことはない」


 ロゼルトがその手に魔力を収束させる。セフィリアに向けて放つ。全てを飲み込むかのような真っ黒な闇。

 彼女はその闇に、今にも覆われる──



 その瞬間──風が、割れる。



 夜風を裂いて、黒い影が現れる。黒衣の男。淡い色を帯びた視線。


「──ああ、間に合って、しまったか」


 リヴェルが、セフィリアとロゼルトの間に降り立った。


 リヴェルが手をかざすと、吸収された魔力が空気の奔流となってロゼルトに反射し、ロゼルトは強制転移される。セフィリアは驚いてリヴェルを見た。

 彼は言う。


「お前には、やってもらわなければならないことがある。こんなところで死なれては困るんだ」


 リヴェルは彼女を見ることもない。


「一度ならず二度もお前に助けられてしまったな」

 囁くような声。


「別にお前の望んだことではないだろう」

 リヴェルは淡々と答える。


「ロゼルト様のことは転移させただけ。蹴りをつけに行かなくては」


「でも、お前──」

 セフィリアは案じるようにリヴェルを見る。


「お前に心配される筋合いはない」


 リヴェルはピシャリと跳ね除ける。自らの手で決着をつけなければならない。もう、自分の信念に、迷いはない。


 静かに、リュグルスへの転移の扉を出現させる。彼はロゼルトの元へと、ゆっくりと歩む。

 リヴェルが扉をくぐると、バタンと、大きな音を立て、後ろで扉が閉じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ