8話 『猫阿修羅』.88
先にログインして南の街へ向かったエフメリアさんが残した跡───倒れた木や踏まれた土───を見ながら、俺はサバンナの方へ向かう。
現実もそうであるが、サバンナというところは弱肉強食の世界で、なんかヤバそうな生物が多数生息している。
この世界のサバンナはどうなるかと言うと、そもそもが頭おかしい世界となっているのでサバンナの脅威はそりゃあ増してるわけで⋯⋯つまり、何が言いたいかというと、化け物揃いだ。
遠くの方にキリンのようなやつと象みたいなやつがが争ってるのが見える。キリンの方はそこまで似てないけどね、雰囲気的な話。象は⋯⋯なんというか。サイ+象みたいな感じだ。ゴリラは入ってないのか。いや、筋肉質っぽいからギリギリゴリラも?サイ!ゴリラ!ゾウ!サg⋯⋯やめておこう。
さて、あのゾウやキリンみたいな強そうな奴にはあまり関わりたくはないが、レベルアップするには強い奴を倒さないといけない。厄介だ、実に厄介。群れで動いていない生物がいいんだよな。多対一は命取りになる。
かと言って、このサバンナを単独で生きる種というのは少なく、基本的には群れだ。
「グルルル」
丁度その時、後ろから鳴き声がする。どちらかといえば唸り声だが。
見つかったなら多対一でもやるしかないので振り返ってみると、いたのは一匹の獣だった。いや、獣ならよかった。俺の後ろにいたのはただの獣じゃない、獣だ。
見た目は猫科の動物。ライオンというよりかは、チーターに近い。だが、チーターのそれとも違う。牙も爪も大きいわけではない。それもそのはずだ。体はライオンよりも大きく筋肉質。獲物を狩るために発達させる牙も爪もいらないのだ。圧倒的膂力があるのだから。
モンスターの名はニャゴ・シュネッグ・ラーザ。このサバンナでトップに君臨する種。
だったけ?エフメリアさんが言ってたけど。確かに、牙も爪もないな。見た目的にはオス個体。番が居ないのを見ると、親元を離れた個体なのだろうか。そして、そういう個体は⋯⋯
───俺の頬が裂ける
⋯⋯凶暴なのである。
なお、ディグニにそれを確かめる術はない。
ちなみに、受けることはできる。素早くて反応できなかったんじゃあない。避けなくても、受けなくても大丈夫な攻撃と判断したため受けたのだ。
さてと、噂で聞いてた個体よりかはサイズも小さいし、本当に親離れした子供なのだろう。これなら俺でも戦えそうだ。
というわけで、ニャシュラへと一気に肉薄。こういうのは素早く倒すに限る。今日はそこそこな連戦をしているので長引くとしんどい。というか、エフメリアさんに結構持って行かれた。
てなわけで、少し大きめに動く。動く量は大きくなるが、現実と違ってしんどさはほとんどないので、ギリギリでかわすとかいう神経を減らす行為は避けるよう立ち回る。
さて、肝心な攻撃の方だが、全くと言っていいほど通っている様子がない。リュコスラも攻撃力が低いから困ったもんだ。
てか普通にニャシュラが固い。柔軟性を持った皮膚に固い筋肉が合わさって攻撃が通らない。辛いよほんと。
ディグにの攻撃力はそこそこある。それでこそ、デザシィなら余裕で倒せるくらいには。だが、ニャシュラという生物は単体でそれらを上回ることができる。
生まれた瞬間から強者の側に立つ彼らは王の名を冠する。単体ではあの象とキリンには及ばないが、だとしても相当な強さを誇る。
そしてこの瞬間、ディグニの視界にとあるものが映る。
そもそも、なぜディグニがニャシュラと対峙しているのか。それは、ナワバリに入ったから。であるのなら、ナワバリの中心の方で普段生活しているわけで、必然的に足跡はそこに集まりやすくなる。
そして、ディグニは見たのである。他のサイズのニャシュラの足跡。
ディグニがそれに気づくと同時に、足音が後方から聞こえる。
次の瞬間、ディグ二を救ったのはディグニ自身のの反射だ。反射は大まかに分けて2種類。無条件反射と条件反射がある。ディグニを救ったのは条件反射、今までの経験から体が勝手に動いたのである。
独り身個体じゃねぇのかよ。しかも、子供の力でこれか。
ディグニの周りには三匹のニャシュラが居る。こと戦闘において、リュコスラは頼りにならない───肉壁としては使える───ので実質ディグニ一人で対処することになる。
無理くね?エフメリアさんさぁ。いや、有難いし俺が頼んだんだけど。それはそれとしてさぁ?ねぇ⋯⋯。いやね、語れば秒よ。そりゃしょうもないものに見えるかもしれんけど、普通にキツイからね。いや、何普通に刀が見えるって。
そんなこと考えつつも、一応ダメージは入れてるし攻撃も躱してはいる。だが、ジリ貧だ。こうなると数的有利を取られてる俺が負けるのは必然。一体一なら良かったが、三体一だと話がちがう。
こいつらが鋭利な爪や鋭利な牙を持たない種で良かったと心の底から思うぜ。普通に居るからな、同じような体格なのに鋭利な爪と牙を持った漢じゃない種が。
うーん。どうする、使うか?ただ、この状況でHPを減らすっていうのはどうなんだ⋯⋯まぁ、負けるよりはマシか。
「【堕天】」
味方もいないし、相手が強い時に堕天使うのはあまり良い手とは思わないが、ジリ貧よりはマシだろう。
「【青焔魔の逆十字】」
やはり、俺のNOWは強いようで、有効なダメージを与えることに成功する。
これらな勝てるな。
ポーションを飲みつつHPを消費した攻撃。HPを使えば使うほどに威力がます攻撃は、ニャシュラ───であろうモンスター───を倒すことに成功する。
もう眠いよ今日は。ていうか、いつの間にか、体刻まれてるし。⋯⋯え、刻まれてる?いやだってこいつらニャシュラじゃっ?!
突如雷鳴が起こる。
ディグニは3つ勘違いをしている。一つ目は、ディグニが今のいままで戦っていた三匹とも成体ではない。それゆえに彼らの鋭利な爪や牙は成体の物と違い小さいが、ディグ二の体を刻むほどの強さを持っている。
二つ目は、先ほど言ったように、この生物はニャシュラ⋯⋯ニャゴ・シュネッグ・ラーザではない。
三つ目は、一つ目と近いが、成体の大きさだ。
では、それが成体であればどれほどのものか。
生まれ持っての最強との近縁種。しかし、彼らは武器を求めた。より強くあるために。体躯はデザシィに匹敵し、力はニャシュラに匹敵し、能力は自然現象の噴火と落雷に匹敵する。
彼らはニャシュラと違い強さを求める。より強くより大きく、己が存在を世界に誇示するように。
彼らの名はニャゴ・アルター・シュネッグ・エキシィラァヴァ。王より前に世界に生まれ、溶岩と雷を操り、爪と牙を磨いてきた者たち。
そして、プレイヤーの間で猫阿修羅と呼ばれる物たち。
ちょっとメタいディグニ。
NDLは2種類モンスターがいて、シミュレーションで勝手にそういう形になったモンスターと、運営が自ら手がけたモンスターがいる。
途中で出てきた象はそっち側。
ニャシュラは別にラトさんとは関係ない。ラトさんと関係あるのは爪と牙があるほう。
運営にそういうのが好きな人がいる。
シャウさんは海にいる。プトさんはここにはいない。タジャさんもここにはいない。
ガタさんは虫の森にいる。ちなみに、虫の森の最深部には天の道とは逆を行く奴がいる。
いつか出る。いつ出るって?次章の中ボスかな。




