6話 『剣闘士』.86
島の上昇によって新たに開放された土地。その土地の十二方位にある街には十二支に対応する獣人が住んでいる。
この世界は、自然に対応している。つまり、本来この十二支の立ち位置はおかしい事になる。虎の方角の地形は森、馬の方角は火山帯、ネズミの方角は氷山帯。有り得ない話だ。
しかし、ありえなく無い。なぜなら、この十二支に対応する獣人は元々この島の生物では⋯⋯いや、この島の動物全てが、元々この島の生き物ではないのだから⋯⋯
念願のジョブを入手した俺は、街を出てモンスターと戦っている。
ジョブはジョブレベルというものがあるらしく、50レベルがマックスらしい。50レベルに到達すれば上位ジョブを手に入れることができるので、早いのとこジョブレベルを上げたい。
ちなみに、ノーシュは闘技場の方でレベルを上げるらしい。
剣闘士も闘技場でレベルを上げれるし、なんなら剣闘士や双剣士は闘技場でのレベルアップ効率が高いから闘技場の方が得なのだが⋯⋯
闘技場って常に使えるわけじゃなくて、トーナメントに参加しないといけないから戦えない時間多いし、勝ち上がり戦っていう、どんどんどんどん負けるまで連戦できるのもあるが、あれはこの世界の法律的にグレーな範囲だからやりたくない。
だから俺はモンスターを倒す。
「【熾天使の裁き】」
「これで三匹目」
さっきからデザシィばっかり倒してるが、冷静に対処すれば結構余裕だな。
オオカミが手伝ってくれてるのもあるんだろうがな。っていうか、コイツのことずっとオオカミって呼んでるな。名前考えてやるか。ウルフは安直だしな。てか、そもそもスライムなのか。狼、オオカミ、ウルフ、ウォルフ、ヴォルフ、ルー、ルプス、ラン、スリガラ、リュコス、リュコスライム⋯⋯よし。
「今日からお前の名前はリュコスラだ」
あ、いいんだ。尻尾振ってら。我ながらクソみたいなネーミングセンスだ。
ちなみに、リュコスラは〈白金之似軽鎧〉と相性がいい。守りたい部分を補強できるから有難い。
そして、肝心の剣闘士だが。
とりあえず、スキルが増えた。これに関しては一定レベルで取れるスキルがあるらしい。
取れたスキルは今のところ2つ。どちらもパッシブスキルで。
一つが【適時延長Lv.1】。
これは文字通りジャスト系の発動タイミングを広くしてくれる。まぁ有難い。ちなみに現在は0.05秒だ
もう一つは【自動防御】。
相手の攻撃が自分の視野内に入っている時且つ相手のAGIに勝ってる際に自動防御してくれる。
いや、俺のAGIそこまで高くないから意味ねえよ。
まぁ、文句を言ってはいるが別に悪いものではないので良しとするか。
「あっちの方も行ってみるか」
現在俺がいるのは、街を出て南側の砂漠地帯なのだが、先の方にサバンナがある。なんなら奥の方にジャングルっぽいのもある。
サバンナの方にはここより多くのモンスターが居るっぽいので、そっちに行くことにしよう。
「ギギギギギ」
と、その前に倒さないといけないやつがきたな。
気づくと、俺の周りを牛のような大きさのトカゲが囲っている。トカゲ⋯⋯トカゲなのか?どちらかというとワニなんだが。名前は⋯⋯街で聞いたような気がするな。確か、ハメタス・ビュートだっけか。長い、ハメトで。
ハメトは頭にコブがあり、コブがでかく爪が鋭くない方がオスで。コブがなく爪が鋭い方がメスだ。ちなみに、どちらも犬歯が鋭い。
歯は人間のようになっており、奥歯の方が臼歯となっている。これは、アレーナウィルムスを食すときやデザシィの殻を壊すために発達したものである。
基本的に群れで行動しており、オスが頭突きで、メスが爪による斬撃で攻撃を行う。
大きさは大中小と分かれており、オスが大・中、メスが中・小の大きさに当てはまる。大がバッファロー程度の大きさ、中が牛程度の大きさ、小がメスの鹿より少し大きいくらいの大きさである。
さて、相手は8匹。その中で、大が1匹、オスの中が4匹、メスの中が2匹、小が1匹か。
俺は持っているいくつかのスキルを駆使して、メスの頭部を狙いメスを気絶させる。オスは脳が保護されており、揺れに強いので普通に倒す。
時折噛みつこうとしてくるのに注意しながら、着々のダメージを入れていく。革⋯⋯鱗?どっちが正解かわからないが、それが少し硬いので少し手こずり気味だ。
リュコスラがいて助かってる部分もある。
突進してきた。よし
【熾天使の裁
「なッ」
【熾天使の裁き】を使おうと剣を振り下ろそうとした直後、ハメトがフェルサタンを咥える。
想像していたが、流石の咬合力だ。ワニみたいな感じだな。だが⋯⋯
「お前が咥えてるそれは、NOWだ」
フェルサタンから手を離し、意識でなくすことでこの状況から抜ける。そして、再度出現させたフェルサタンで斬り伏せる。
そして、斬った直後の無防備な俺にハメトが襲いかかる。リュコスラも間に合わない。
仕方ない、ここは一旦喰らうか。
そう思い、身構えた瞬間、俺の体が勝手に動き、ハメトの攻撃を防ぐ。
突然のことにびっくりしたが、とりあえず【熾天使の刺突】で脳天を貫く。
なるほど、今のが【自動防御】か。て言うことは、今の個体はAGIが俺より低かったんだな。
あと3匹。正直、1番でかい⋯⋯この群れのボスであろう個体も合わせてだと厳しい。他の2体を素早く倒すことが出来ればいいのだが、無理だろう。
メスみたいに脳震盪を起こせれば⋯⋯ん、いけるか?
俺は攻撃を避けつつ、思考を巡らせる。
なぜ、ハメトは牙が進化し、コブが進化し、爪が進化したのか。なぜ、オスとメスで進化したものが違うのかを。
考えられる理由としては雌雄の体の大きさの違いだ。爪を使って攻撃をするのなら図体が小さく素早い動きができるほうが良い。コブを使って攻撃をするなら図体がでかく重い方が良い。
とすれば、考えるべきはなぜ爪とコブなのかだ。
そこで重要になってくるのはこの砂漠の生態系だ。
この砂漠にいる他の生物はアレーナ・ウィルムス、デザシィ、謎蟻地獄だ。つまり、こいつらはアレーナ・ウィルムスとデザシィを糧としている。つまり、爪とコブはこの2体を攻撃するためのもの。そして、コブはアレーナ・ウィルムスを倒す為のもの。あの柔らかい体にダメージを入れるもの。
そうだ、柔らかい体にダメージを入れるものだ。なら、硬いものに対して頭突きができるようになってないのでは?
ちょうどその時、ハメトがこちらへと突進してくる。
「そのスピードじゃ、急ブレーキをかけれないな!」
【加重力】を使用して自らの体重を上げ、【鋼灰塔盾】を出現させる。そして、ぶつかった1匹が気絶する。
あと2匹。
同じ技は使えない。が、だ⋯⋯
「【堕天】」
圧倒的な力でねじ伏せる。
【青焔魔の蝕み】、【青焔魔の逆十字】、【青焔魔の尾針】。どれだけ、入るかな。
中ぐらいの方に【青焔魔の蝕み】をぶつける。すると、先程まで傷がつく程度だったのに対し、傷が開く程のダメージを与える。
ダメージが目に見えてわかるようになったからか、中ハメトが警戒して近寄らなくなる。おっと、大ハメトとコンタクトを取ろうとしてんな。挟み撃ちにする気か?
だとしたら甘いな。チョコラテのように甘い、甘すぎる。俺の後ろはリュコスラが見ている。そして、俺の斬撃は────
残り体力の半分を使った斬撃で中ハメトの身体が分断される。
─────飛ぶんだぜ。って、もう遅いか。
気絶した個体を除き、残り一体となってしまったハメトがこちらを警戒している。
しかし、まずいな。さっきのでHPが減りすぎた。完全防御空間を発動しようにも距離が近すぎる。これじゃあ一緒に入るだけで意味がないし、逆に逃げられなくて不利だ。
鋼灰塔盾も無しだ。逆に大ハメトの動きが見えなくて危ない。
走って逃げるのは⋯⋯論外だな。すぐ追いつかれる。つまり、【自動防御】も当てにならない。
どうしたもんかね⋯⋯あ、あれやってみるか?できなくは無い。やろうと思えば簡単にできる。丁度、俺はあいつに殆どダメージを与えていないし。
とあることを決心した俺は、左手にとあるものを持ち、大ハメトに肉薄。一定の距離を保ちながら、大ハメトにチクチクとダメージを与える。
ハメトは頭が悪い生物ではない。高度な思考ができる生物だ。冷静さを欠くことは基本的にない。だが、そんな生物でも、ストレスを与え続ければ、耐え切れなくなり冷静さを欠いて怒り出す。
大ハメトも例外ではなく、案の定怒り突進してくる。
その突進を、わざと俺は受ける。
直後、瓶が割れるような音がし、俺は全回復をしている。最初の方の回復の真似だ。
全回復した俺は、難なく大ハメトとを倒し、倒れている個体にトドメを刺す。
レベルアップは⋯⋯剣闘士のレベルは上がったが俺自身のレベルはまだか。なんかレベルアップしにくくなってるな。
そう思いながらふと顔を上げると、砂埃を上げながら何かがこちらに走ってきていた。
丁度:アルースト
時間:タイン
自動:オリライン
防御:ガダルド




