10話 『裏の話』.90
祝100話
今話はいろいろな設定が出ます。多分NDL後半の大まかな流れはここで出ています。
「取りに行って参りました。私はいつでも」
「ご苦労」
ディグニが猫阿修羅と戦っている頃。ルーベル辺境伯家ではそのような会話が聞こえる。
ルーベルはデュークにジョブを取らせに行き、無事入手することができたデュークが今帰ってきたところである
「例の女性は?」
「ディグニの話じゃ、もう来ることはないだろうとよ。その上については、俺たちじゃなくてディグニ達がやってくれるだろう」
ルーベルは机の引き出しから紙を取り出し、眺める。そこにはリレーベン語で文字が書かれており、内容は請求書のようなものである。
「デューク、ウェルビンデンとの連絡は?」
「できております。行こうと思えばいつでも」
「わかった。もうしばらくすれば、ここも動き出すだろう。そうすれば、戦争に巻き込まれる。ならばだ、国の運営はあいつに、島の開放は召喚者に任せて、俺たちはこちらと彼方を繋ぐ役目を果たす。召喚者よりも先に行かなけりゃならんな。もちろん、弟よりもな」
椅子に深く座っていたルーベルが、体を起こして座り直し、机に手をつく。
「そして、そのためにお前にジョブを取らさせに行った。お前としては仕返しをしたいかもだが、あいつらのことは先ほども言ったように、ディグニ達召喚者⋯⋯いや、プレイヤー達に任せよう」
「承知しております。で、今回の目的は?」
「敵と味方の再確認。中立的な国はなるべくこちら側に傾くように操作する。敵国とみなしたら偵察兵をつける。すでに頼んで敵国にスパイとして潜り込んでいる奴もいるが、裏切る可能性がないわけではない。エルフを使おう。奴隷制度は廃止されたが、使えばいい。印を入れて裏切れないようにしろ」
「はい」
「今このことを知っているのは?」
「例の御三方と、弟様にはおそらく」
「だろうな。つけられている気配が一向に消えない。だが、その位置はわからない。さすがと言ったところだ。そして、多分ディグニも知ってるだろうなぁ。あいつは他のことも知ってそうだが⋯⋯まぁいい。準備を進める。行き来で六日かかるから大体十三日でいいか。十三日ほど空けると連絡できるようにしておけ。それと六日分の食料、そして金もな」
「はい。失礼いたします」
デュークが部屋から出ていく。
「シリカ」
「何か」
それと入れ替わるように、天井の一部が回転して、黒い服を纏った女が降りてくる。名前は先ほどルーベルが言った通りシリカ。ルーベルは成り上がって辺境伯になったわけではない。何故か地位を落として辺境伯となった身。そして、シリカは代々ルーベル辺境伯に仕えている。
余談ではあるが、サフィロスの秘書をしているキアヌはシリカの従姉妹である。
運動神経が良く、隠密行動にも長けているので、ルーベルに気に入られてルーベルに仕えている。
「魔王との連絡は?」
「取れております。彼方から此方に、順調だ。と」
「じゃあそれに対しての返信だ。その順調も崩れる可能性、黒き鳥をえみがえせし者あり。と」
「承知」
次は床の一部が回転し、シリカが出ていく。
「さて、入ってこいよディルクルム」
一体いつからディルクルムがいて、盗み聞きしていたのか。ルーベルにはわからないが、途中から気配が漏れていたので、ディルクルムの存在に気付いたルーベルは、ディルクルムを部屋に招き入れる。
たとえ聞かれていようとも関係ない。ディルクルムならば尚更だ。聞かれていい者なら特に何もせずともよく、ダメな者であれば殺せば良いのだから。
「まるで忍者だな」
「ジョブでもとってんじゃないのか?一応忍者ってジョブはこっちにあるし」
「把握してないのかよ」
「興味ないからな」
「そうか。はぁ、流石は辺境伯。完全に気配消すことできたと思ったんだけどな」
「ある程度お前らの世界と同じ理で動いているとはいえ、この世界の理もあるんだ。完全に気配を消すにはこの世界の理に合わせねぇと無理だよ」
「なるほどな。俺は器用じゃねぇから、こっちに合わせっるなんて無理だ。それより、いくんだろ?」
「あぁ、もう少しでここも動き出す。だから戦争の準備をな。⋯⋯と、そういえば。文献でしか見たことがないから確かめようがなくてな、お前の知識が必要だ。質問がある。お前からみて、他に解けている奴はいるか?」
「いないな。元々解けてるフェニックスは置いといて、辺境伯もあったあいつぐらいしか見たことがない。なるほど、故の魔王ね。もし解けたとして、勝てる勝算は?」
「ないな。その時は、お前達召喚者の力を使うだろうな」
「あっちからきたのがあれだけでよかったぜ」
「あっちか。お前達が来れてるってことは、あいつしか脅威がなかったんじゃないのか」
「それについてだが。俺たちもよくわかっていない。運営がどこまで作り上げているかも含めてな。もしあっちのことすら作り上げているのなら、恐怖もんだ。まぁ、それはいいとして、仮説は三つある。一つ目は、同じ世界。二つ目はあいつらがきたのが地球で、俺たちはまた別の星由来ということ。三つ目はその逆。可能性として低いのは三つ目だ。あいつらが地球由来じゃないと説明がつかない。まぁなんにせよ、あいつらと俺たちの体がいた星は剣と魔法の世界ってこと。そして、奴らがいるってことは神もいる可能性があること」
「神がいたらまずいことでもあるのか?」
「地球、特に日本は神を作りまくりだからな。いや、他の国でも神は作られてんだがな。ギリシャ神話とか。1番やばいってなると、支配者どもだが、まぁ大丈夫だろう」
「神⋯⋯神といえば、あいつがいるな」
「そうだ、あいつの方はどうなんだよ」
「何もわかっていない」
「あいつが復活となるといよいよ世界の終わりだぞ」
その時、扉が開かれ、デュークが入ってくる。
「調べがつきました。これを」
デュークはそういうと、懐から1枚の紙を取り出す。その紙には、丸い円に様々な図形が合わさり、真ん中に見た事のない生き物の絵が入った図であった。
「これは?」
「復活を目論むものたちがつけている紋様です」
「この陣自体は絶対服従の印に近いが何か違う⋯⋯何かが合わさってるな。っ、まさか」
ルーベルが引き出しの中から、デュークが持ってきたものに似たような柄をしている図を取り出す。
「やはり、封印を解く印。だが、これ自体は効果がない。ただの印。生き物の方は⋯⋯なるほど。想定していた最悪が訪れるようだ」
「んじゃこっちでも準備しとくわ」
「あぁ、頼んだ」
ディルクルムは屋敷を出ると、目線だけ動かし周りに人がいないか確認する。
「さて、ここならいいだろ。もしもし?」
『やっとかかってきた。この俺を待たせるとはナンセンス』
電話の相手はフォルティスのようだ。
「はいはい、いいからそう言うの。で、そっちはどうだ。もう大陸に着いたか?」
『あぁ、着いた。なるべくこっちの人間とはコンタクトを取らないようにしている。こっちの言語は英語だな。だが、日本語もちらほら使っている。多分こちらの主要言語は全員使える』
「流石は電脳世界と言ったところだな。その辺は俺ら人間よりも良くできている」
NDLは、NPC一体一体にAIが組み込まれているようなものである。仮としてAIと呼称するが、そのAIは人の一生くらいならば余裕で記録できるほどの容量を持ち、常時学習思考をしている。んDLの空間内でだけしか生活できない彼らではあるが、感情も持ち合わせているためシンギュラリティに到達していると言えよう。NDLとはそのような世界である。
『一応街から出てみたがモンスターはそこまで強くない。たまに厄介なのがいるけどな。それと、戦争準備もしている。とりあえず、三国はそのまま同盟を結んでるかんじだな。それと、海と空に同盟を結ぼうとしているな。戦争中の流れ弾に当たらないように守る代わりに一時的に交易を独占させろと』
「なるほどな。確かに、戦争ってのは資源が残っている方が勝つもんだ。あの二国を手にできれば大幅に勝てる確率が上がるだろう。ってことは、海上のあそこにも同盟を結ぼうと持ちかけてんのか?」
『あぁ。でもそっちは確実に入ってくるだろうな。あそこが持ちかけているから』
「なら心配はねぇな。他の国は?」
『大体あちら側だな。戦力差もあっちが上だ。そもそも住んでる環境が違う。厳しい環境で食えるのはモンスターくらい。そのモンスター達も生半可なものじゃない。そいつらを倒して食ってるんだ。農産業に力を入れてる温室育ちの奴らとは違う。まぁ別に、こちら側もモンスターを食わないことはないが、あっちに比べて弱い。差を埋めるには、プレイヤーが必要だろうよ』
「だろうな。が、別にプレイヤー全員がこっちに付くとは限らないし、多分大陸に行く頃には海外勢も入ってくんじゃねぇかな。とすれば、余計に統率が難しい」
『まぁそれもそうだが、個人的にお前を嫌ってる奴もたくさんだしな』
「仕方がないだろ。あいつなしにストーリーを進めるのは危なすぎる」
『俺たちに異論はないが、ほかのひとはそうじゃない。事情を知らないんだ。俺たち以外からすれば、ここはただの高精度なVRMMO、遊ぶのが目的なのにそれを邪魔されたら楽しめないってもんだ。まぁだからこそ、レベル上限が上がり、ジョブが解放され、島が拡張した今、プレイヤー数が急上昇しているんだがな』
「まぁそんなかの復帰勢はあちら側に付くだろうな」
実際問題、それが理由で辞めた人も多い。もう上がらないレベル、進化しないNOW、仕えないジョブ。それに不満を持った人たちが次々と辞めていった。しかし、いくらディルクルムが制限していたと言え、彼らは艮や坤を倒す技術も力も持ち合わせていないのが現実。ディルクルムに牙を向けるのがおかしい。しかし、人間というものは上手くできていない。自分にその力がない時、その力があるものに縋る。そして、その力を持っているものが事をなさない時、彼らは力を持つものを貶す。人間とはそういうものだ。
「仕方ない。俺が全員倒すから大丈夫だ。さて、脱線はここまでにして、とりあえず頼んだぞ」
『あぁ』
「それと、残りの70のうち、どれか見つけたら連絡をくれ」
『了解。封印場所がわかっているやつも見てみるわ。よほどのことがない限り死なないからしばらくはこっちにいる。三匹のうち二匹が死んだくらいで連絡してくれ、その時点でそっちに戻る。しれまではこっちにいると思ってくれ』
「あぁ、わかった。じゃあまた」
ディルクルムはそういう時通話を切る。
「さてと、朱雀はシリウス。白虎は翠がやるっていってたっけ?エフはディグニとあいつを倒しに行くから⋯⋯さて、青龍を倒しにでも行くか」
本作品について、一旦休載をしようかなと思います。期限は未定です。投稿頻度も落ちてきていますので。ただ、休載中に書き溜めもしますし、"もしかしたら"別の連載を書くかもしれません。連載再開までお待ちください。




