第94話:槍太と璃亜の躍進
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北海道はHa市に存在する初心者用ダンジョンに巡る火祭槍太、そして双子の妹たる火祭璃亜と仲間として水無瑠亞と共に動いている。
まぁ、瑠亞は飽く迄もイレギュラーへの対処が主でしか無いけど。
朱色という違いは有るけど、デスコーピオンの甲殻を用いた鎧に加えて新たな手甲や脛当てまで装備し、炎属性を持つ魔槍も手にする槍太。
高速の突きも有るけど、どちらかと云えば腕力にステータスは振られており、それこそが槍太の疾さを支える屋台骨であるとも云えた。
当たり前だけど槍は斬る事も出来るのだけど、矢張り突きの方が真骨頂だからその疾さは必須。
槍とは色々な使い方も可能、突いて良し払って良し薙いで良し。
立ち回りには円運動を元にして、必勝の一撃には最大の突きを放つ。
「ふぃ~」
「お兄も強く成ったよね~」
「って、何で上から目線?」
魔物――オークソルジャーという槍持ちの豚面の脳天を穿って魔素へと還した訳だが、それを眺めていた璃亜が胸を張って頷いている。
まぁ、妹とはいえ一時間も違わない対等に近い存在であり、ちょっとルールなり何なりが違えば兄妹では無く姉弟に成ったかもな間柄だ。
事実、今は飽く迄も先に産まれた方が兄なり姉なりの立場になるが、昔は後から産まれるのは詰まり先に胎内に入ったから兄なり姉なりだ、その様に云われていた事も実際には確かにあったのだから。
「んじゃ、次はボクだよ!」
未だに戦闘の最中だった璃亜が、オークメイジという魔法を使う豚面に近接戦闘を仕掛ける。
彼女の職業スキルは拳士という、素手で戦闘を行う全般を指す。
例えばボクサー、例えば空手家、例えばレスラー、こういう闘い方をする職業だと思えば正解。
火祭璃亜は決して空手家という訳では無いが、闘い方という意味では空手に近いモノとなる。
拳闘士みたいな拳一辺倒で無く、蹴闘士みたいな蹴り主体+拳では無かったし、レスラーみたいな格闘主体の闘い方でも決して無い。
どちらかと云えば無差別格闘という処であり、拳も使うし蹴りも使うし関節技も使えるのだ。
まぁ、璃亜の主体と成るのは飽く迄も拳や蹴りによる攻撃。
「哈ぁぁっ! あたたたたたたたたたたたたたたたたたぁぁぁっ!」
魔法を扱わせては成るものか! と云わんばかりの超近接戦闘、詠唱は於ろか魔力を集束させる事すら赦さないと、連続攻撃を繰り出した。
メイジとはいえオークはオーク、その明らかにニmを雄に越える巨躯と、実は贅肉では無い筋肉が近接戦闘を支えているみたいである。
しかも割かし皮が厚いみたいで、ナマクラであれば刃ですら徹さないとも云われている程だ。
それでも所詮はDランク。
「どっせぇぇぇぇいっ!」
「グギャァァァァァァァッ!?」
美衣奈みたいな美しいでは無く、見た目には可愛らしいと呼ぶに相応しい容姿をしながら、璃亜は肉体を鍛えに鍛えて拳士の職業スキルに見合っただけの力を備え、卦韻を助ける為にその力を使わんと璃亜は技をも身に付けた。
オークメイジ、確かに魔法を放っては来るけどその真骨頂と成るのは、実の処だと肉体強化魔法による全身強化の肉弾戦に有るのだとか。
胸部を拳によるラッシュと、顎への蹴りによるトドメでぶち抜くと、オークメイジは上空へ吹き飛んだ。
「脂肪じゃ無く筋肉みたいだから重たいよね~」
言いながら落ちてきたオークメイジに向かう、ド頭を地面に打ち付けたその瞬間に更なる追撃、飛び蹴りを鳩尾へと放ってやるとオークメイジは壁に吹き飛ばされた。
「ガ、グ……」
HPが殆んど〇なのだろう、クラクラと千鳥足に成っている。
「哈っっ!」
そんなオークメイジに、空中一回転して踵落としを決めてやった。
頭蓋骨陥没から脳髄グチャッで、死亡して魔素へと還ったオークメイジは魔核だけを落とす。
「ちぇっ、ドロップ無しか~」
璃亜は地面に落ちたオークメイジの魔核を拾いながら呟いた。
「矢っ張り遣るしか無いよな」
「う~ん、だけど美衣奈ちゃんが教えてくれた手法は結構厳しいよ?」
槍太と璃亜は予め、美衣奈からドロップアイテムの取り方を教わっており、遣ろうと思えば生きた魔物からぶち抜いてやろうと思えば出来るだろうが、当然ながら生きた魔物を押さえ付けるのは危険でしかない。
「まぁ、今ならAランク冒険者の瑠亞姉が居るんだけどさ~」
「それに頼るのも違うよな」
「だよね~」
瑠亞に聴こえない様にひそひそ話をしてるが、実は割かし聴こえているから意味は無かった。
「霧氷長槍!」
「ギャワッ!?」
放たれたのは馬上槍の如く巨大な槍がオークアクスマンを穿つ、小さな複数の槍を放つ初級魔法より遥かに威力の高い攻撃力を持つ。
しかも当たった場所は心臓部では無かったが、その凍結力は確かで上半身を凍り付かせていた。
「さっすが、Aランクの瑠亞姉」
「中級の中でも上位に近い魔法なんだろうに」
軽く記憶に在る上級魔法に当たる極冷竜巻にも匹敵しそうで、見た目にはちょっと地味っぽく感じるものの相当な魔法の筈であろう。
瑠亞は高位たる術士だからこそ、上級魔法を扱えるのは確かだった。
レベルも高いからこそAランク、そうでなければ高位な魔法は使えない訳で、中級高位の魔法くらいは容易く扱えてしまうのである。
とはいえ、槍太と璃亜の兄妹と居る状態で高位魔法をぽんぽん使う訳にはいかないのも確かだ。
普通のRPGならだいたいEXPを纏めてパーティ全員で獲られるけど、云ってみればこれはS-RPGにも近いモノだから獲られるEXPは個人のみでしか無くて、最後のリザルトにてステージEXPが獲られるだけ。
詰まり、瑠亞が斃せば斃しただけ槍太と璃亜にはEXPが回らず、しかもステージ的に瑠亞が獲られるEXPは本当に雀の涙くらいでしかない。
何しろ此処は初心者ダンジョン、レベル一〇〇〇を上限とした場合でも既に半分を越えている。
S-RPGだけでは無く、通常のRPGでも必要となる経験値が莫大に成る為に、結局はレベルアップに時間が凄まじく掛かるから瑠亞が更なる高みを目指すなら、もっと上のダンジョンに入る方が吉と成るのだ。
一〇〇万の必要経験値に対して、先程の斃した魔物の経験値は精々が一〇か其処らでしか無い。
飽く迄も例えでしかないが……
だからこそ、中級高位の魔法の中でも地味なモノばかり使っていた。
ド派手な範囲魔法とか使っても、経験値を奪うだけであるから。
かの有名な自分で動かせないNPCが敵ユニットを次々と斃し捲る行為、詰まり経験値泥棒という訳だ。
「お兄、どうだった?」
「レベルアップした。これでレベルは二〇だな」
「ボクもレベル二〇だね」
遂にレベルは二〇の大台に入り、冒険者としてのランクは大きく上げられるであろう。
少なくともEランクは確実だ。
Dランクに成るにはレベル自体が足りないし、取り敢えずは卒業時にEランクで我慢だろう。
「そういえば、卦韻君や美衣奈ちゃんも二〇に成っているらしいわ」
「へぇ、流石じゃねーの」
「だよね~」
瑠亞の報告に笑いを浮かべながらも呟く二人、槍太も璃亜も心の底から喜びを表していた。
高校を卒業したら冒険者として、世界に羽ばたこうと考えるのなら、矢っ張り仲間は強い方が良いもの。
というよりも、大学に行く事も考えているから一緒に通いたい訳で、能力は並んでないと困ってしまう。
自分だけが突出していても駄目、かといって遅れ過ぎていても駄目、並んでいて初めてパーティだった。
何処ぞのラノベみたいな感じでは直ぐにパーティは瓦解する。
尚、この場合は最上位レベルの人間はイキった態度でパーティを瓦解させるのみ。
「よし、今度こそBOSS部屋のハイオークと闘おうぜ!」
「良いね!」
槍太と璃亜は北海道初心者ダンジョン第二五階層のBOSS部屋での、ボスである対ハイオーク戦に向けて既にノリノリであったと云う。
「とはいえ、愛坂学園に在る初心者ダンジョンではイレギュラーのボスが出たみたいなのよね~」
美衣奈が冒険者ギルドに報告を上げていた為、瑠亞は初心者ダンジョンの懸念点を考えていた。
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