第92話:極冷竜巻
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「ケイン、ハイオークはゴブリンだとホブゴブリンに相当する上位種。オークジェネラルに比べると弱いけど、通常のオーク種より強いよ!」
「判った!」
彼方側で闘う事になったホブゴブリンイレギュラーよりはマシだし、Cランクなら俺だけだったらヤバいかもだけど、俺達の三人でなら!
「おららららぁぁぁぁぁっ!」
近付いたら此方に気付いて動き始めるFハイオーク、それに併せるかの如くランスが連続突きを放つものの、炎を纏う左掌で敢えなく防ぐ。
「ほあちゃぁぁぁっ!」
ランスの後ろから急襲気味に跳び蹴りをかますスピア、更に追加で俺が右回りにFハイオークへとミスリルの剣で斬り付けるも……
「グラァァァッ!」
雄叫びながら右腕でガードした。
「骨が、筋肉が、皮膚が硬い!」
一応のダメージは与えているし、血がポタリポタリと滴り落ちるが、明らかに余り斬れてはいないなだ。
「ケイン、ランス、スピア! そのFハイオークは普通のCランクより強いよ! 主に攻撃力と防御力が。はっきり言えばBランクよりは下だけどね、C+ランクって処かな?」
叫びながらミスティは氷結系の魔法を放った。
「なっ!?」
然しながら、その氷結の槍は溶けて水蒸気化してしまう。
「あちゃ~、矢っ張りか~」
どうやらゲームとは違い、余りもの熱気によって氷結の槍が届く前に溶けてしまったらしい。
普通は火属性の敵っていうか味方もなんだが、氷属性に大概は弱い事が多いものなんだけどな?
「ランス、槍に氷結を附与する!」
「判ったぜ! 二人共、ちっと任せるからな!」
そう言ってランスがバックステップで下がる。
「ケイン、ボクらで抑えよ!」
「判ってる!」
俺とスピアで、奴がランスを追えない様にと、剣撃と蹴撃で勢いよく戦闘の再開をしていた。
「おりゃあっ!」
「せやぁぁっ!」
ミスリルの剣でも刃が立たないのだろうか?
「くっ、この辺の魔物じゃあ殺られる訳だよな」
単純に硬くて強い!
だけど彼方側でのBランクたる、ホブゴブリンイレギュラーに比べれば少しはマシだろうか?
「哈ぁぁっ!」
拳による攻撃をするスピア。
俺も新たにアイテムバッグから聖霊剣クリスタリオンを出し、腰の鞘へミスリルの剣を納刀してアイテムバッグに仕舞い、聖霊剣の鞘を腰に佩いて準備完了、スピアに続く形で抜剣した聖霊剣を振り翳してやる。
袋小路とはいえ通路は存外と広いから二人は於ろか、三人で並んでいても闘えるくらいだから、俺とスピアの二人で同時に攻撃が可能だ。
「うりゃりゃりゃりゃっ!」
数発のパンチに数発のキックをぶつけるけど、その巨体は多少の揺るぎ程度で傷付いていない。
それと入れ換わる形で俺は聖霊剣を揮いながら駆け寄る。
更に俺は闇淤加美――谷底の水源となる暗闇に潜む氷を司る龍神をイメージし創られた天導術、これを聖霊剣に附与してダメージを出す。
その冷気により俺の全身がまるで氷の如く冷たく成って、手にした聖霊剣が真っ白に染まった。
闇淤加美とは附与型の天導術だ、だけど魔法とは異なっていて他者の武器への附与は難しい上、附与の間はガリガリと天力が削られていく。
魔法と天法の大きな差違だ。
この世界に於ける魔法は、術式を完成させた後に一度魔力を通せば基本的に、完成した魔法に通した魔力が切れるまでの間は維持される。
結界系の魔法にしても魔力を籠めてしまったなら魔力が尽きるまで、行使された魔法の効果を維持し続ける事が可能と成っているのだとか。
余計な魔力さえ無駄に消耗しなければ籠めたなら籠めただけ、それこそ何百何千年という人間の寿命からしたら途方もない時間を維持可能。
天法はその基礎が魔法と違って、その場で天力を使い続けないとイケないというモノだった。
天法は術式を使わないからだと思っているからだが、残念ながら俺には魔法みたいな術式を構築する能力自体がいまいち無いから、検証の仕様がないというのが実質的な処だ。
そして氣力と魔力は、同時に扱うのは不可能では無いが難しい。
検証するには、魔法の術式を扱えながら氣力も扱えないとイケない、現状では一番使えそうな感じがするスピアも氣力が使えない為、どうしても検証の遣り様が無かった。
「ケイン、スピアッ!」
スピアが先ず前衛で攻撃を抑え、直ぐ俺が中衛から前衛に切り替わりダメージを与えていく作業をしていると、後衛に下がっていたランスが叫びながら駆けてくる。
ソッコーで俺とスピアが下がり、ランスが入れ替わって駆ける勢いの侭に槍を突き出した。
「ギャワッ!?」
心臓に向けて放たれた攻撃を放ったランスだったけど、残念な事に突き刺さりこそしたが中途までで停まって、心臓へと届いてはいない。
「チィッ!」
Fハイオークの身体を蹴り上げ、その反動によりバックステップをして俺の隣に並び立った。
「俺自身への強化魔法と武器への附与までして、それでも尚抉れ切れなかったかよ! クソが!」
思わず毒吐くランス。
「その附与はどの程度保つ?」
「一分程度だな」
「そんだけか……」
魔法に籠められた魔力はどうやら六〇秒程度しか保たないのか、という事は余り時間を掛けてしまうと附与が切れてまた下がる事になるな。
一応、俺の闇淤加美は氣力さえ続けば附与を続けられるが、既に健御雷神と帝釈天を使っているから毎秒毎秒の氣力や精神力や生命力、これらがガリガリと削られていく。
矢張り時間は余り掛けられない。
「グギャッ!」
口を大きく開いたFハイオーク、俺達は嫌な予感からその場をバッと離れたら、何とその開いた口から火の玉を吐き出して来やがった。
「仮にもオークが火を吐くのか?」
「Fハイオークは通常のハイオークと違うしな」
並び立つランスが答えてくれる。
「ハイオーク自体が魔力を持っているからな!」
魔素から出来ているからおかしくは無いのか、魔法が使えない魔物は肉体構成的に魔法適性を持たないか、魔力変換が出来ないかだろう。
属性的に炎には強いランスとスピアは兎も角、俺がまともに受けてしまえば大ダメージに成る。
俺とランスは何とか躱しながら攻撃を繰り出していく、スピアは一時的に後衛に下がりミスティから附与をして貰っていた。
「うりゃりゃりゃりゃあああっ! 逝っちゃえぇぇぇっ!」
前衛に戻ってきたスピアも攻撃に参加をする。
皮膚が硬いだけでなく柔軟な所為であるのか、刃が立たない処か打撃も、数値的な防御力を越えて此方の攻撃を防いでくれていた。
矢張り単なるCランクよりずっと強いのかよ、ふと見遣ればミスティが首を横に振っている。
ヤバい! またミスティにアレを使わせてしまう事に!
彼女のユニークスキル【魔導妃】の機能の一つには、二段階は上の魔法を扱える様に成るみたいだけれど、代わりに魔力や精神力のみならず生命力を消耗してしまうらしい。
更に肉体に無理を強いるからか、内蔵にダメージが入り喀血もする。
存在力向上に伴いダメージは減るんじゃないかとは思うが、そうなればまた上の魔法を使ってしまうから余り意味が無いだろう。
間違いなく魔法を紡ぎ始めた、あの時の彼方側で俺の我侭によりホブゴブリンイレギュラーと闘った時の、美衣奈のアレが脳裏を過った。
視れば理解る。
俺に備わる【錬成王】に紐付けられた形で与えられたSSRスキル【真鑑定】、一度でも視たなら発動前の状態でもる理解ってしまえるから。
甘かったんだ、ちょっと人より秀でていたとしても結局、俺は未だにミスティ……美衣奈におんぶに抱っこな状態に過ぎなかったんだ。
「極北より自由なる乙女の吐息に運ばれしは変幻自在の妙なる乙女、荒ぶる怒りを顕す逆巻き白髪の如く巻き上げよ……」
止められない、止めるだけの力も資格も無い。
「極冷竜巻ッ!」
無慈悲にも放たれた魔法、魔法の名称こそ違ったけど、恐らくは彼方側でホブゴブリンイレギュラーとの闘いで美衣奈が使った極冷竜巻とは殆んど同じ、恐らくだけど此方側に於ける魔導言語による言霊として作用をしているんだとは思う。
あの時と同じだ!
「だったら、俺が遣るこたぁ一つだろうがよ!」
“力成す言霊”の通り、極めて冷たい竜巻により巻き付かれたFハイオークに向かって俺は放つ。
「倶利伽羅っ!」
俺から放たれた螺旋描く天法が、放たれて凍結していたFハイオークの上半身を打ち砕いた。
元より三つの天法を使っていたから、四つ目により殆んどの天力を持っていかれているな。
ヤバッ、意識がもう……
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