第91話:ファイヤーオーク
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第一〇階層まで降りて漸く新しい魔物の群が顕れる、それはファイヤーゴブリンの片手剣持ちだったからFゴブリンソードマンだろう。
「強さ的にはゴブリンソードマンと変わらんな」
「飽く迄も、ゴブリンソードマンの進化系だよ」
「進化?」
進化と聴いて俺が思い浮かべたのは携帯ゲームのモンスター、何段階か進化して最終的には何処ぞの機動兵器並に強化されたりする?
「何かおかしな事を考えてない?」
「いや、別に……」
多分、違うんだろうな。
「因みに、進化ってのは環境に適応しているって意味だよ」
「ああ、うん。だよな」
このくっそ暑いってか熱いダンジョンに適応をしただけ、それはスライムやコボルトなんかも同じくって処なんだろうが、別に強くは成っていないって事かね。
それとは別で、例えばゴブリンの上位種みたいなのは進化してる訳でも無いって事なのか?
「ね、ね、ケイン!」
「スピア?」
「種として強くなるのも一種の進化ではあるよ。通常のゴブリンが職業持ちに成ったり、何ならジェネラルとかに成るのもね」
「成程な」
「まぁ、若干は強いかも」
これに関しては、魔物にも普通に個体差が有るからだろう。
「そういや、魔核は預けとくぜ」
「あ、ボクもボクも!」
ランスとスピアから俺は、Fゴブリンソードマンの魔核を受け取る。
属性が強く火に片寄っているからだろうか? 黒色の中に若干だけど赤みが混じっていた。
「その魔核で炎や熱に関わる魔導具を造るとね、普通の魔核を使うよりは強化されると思うよ」
「へぇ……」
ミスティが教えてくれた知識は確かに某かに使えそうだ。
「例えば寒い地域、この土地より寒い所なんかだと保温にも使われているみたいだよ。少なくとも私達の生まれた大陸は温度が低いから、重宝される時期は確実にあるんだ」
「そうだっけ?」
冬になれば彼処もきっと寒くなるんだろうな、確かあの大陸は北側に在る訳だから仕方が無い。
「特に寒いのが西方大陸アルマースだね。何しろ彼処って常に雪が降っている訳だから」
矢っ張り詳しいんだ、ミスティには前世のメイフェリアの記憶が有るみたいだし、数百年前からの記憶――知識なんだろうけどな。
此方側と彼方側でのダンジョンの相違という事、それはダンジョンの入口に記録機能が有るか無いかなのだとか、詰まり此方側で死ねば本当に冒険者は死んでしまう訳だった。
環境も生死を分けるという、俺はこのアルヴァン大火山で魔核を集めて、いつか行く筈のアルマース大陸に向けて某か造らないとだな。
要はホッカイ□みたいな?
「いずれ西北に存在するアルマース大陸に行く事になるんだし、ケインはアルマースに行く前には魔導具を造っといて欲しいな」
こんな大気すらグツグツと沸騰していそうな、大火山のダンジョン内で満面の笑顔を浮かべて言ってくるミスティ、その美麗な顔立ちに思わず俺はドキリと胸を高鳴らせてしまうけど、ムニッと横腹を抓って来る誰か、ハッとして見遣ると……
「痛っ!?」
「ケ~イ~ン?」
スピアがプクッと、膨れっ面な上目遣いをしてきていた。
「あんまりデレッとしない!」
「何故に抓る?」
「フンッだ!」
スピアに文句を言ったら、腕組みしながらそっぽを向かれた。
まぁ、俺も別にラノベの鈍感主人公なんかじゃ無いから何と無く察してるし、難聴な主人公でも無いからスピアがミスティと話しているのだって聴いた事が有るしな。
前世でミスティってか、メイフェリアと一緒に成ったからって、現在でもミスティを選ばないとイケない訳では無いんだが……ね。
「そろそろ行こうぜ」
「そうだな、ランス」
ランスに促されて、俺達四人は再び階下へと降りようと歩き始めた。
暫くは魔物が顕れなかったけど、一〇階層にまで降りると地響きが。
「ファイヤーオークかよ!」
多分だけど、名前に関しては此方側の言語が俺には彼方側の言語に聴こえてるんだろう、火の豚人だからファイヤーオークと聴こえている。
二m級の赤味掛かった肌の豚顔、肥った体型の人型が棍棒を片手に振り回しながら歩いて来た。
炎の如く灼熱肌の小鬼と同じ灼熱肌の豚人は、単純なパワーは間違いなく通常の豚人より強い。
故にこの魔物はファイヤーオークと呼ばれる。
木製の棍棒なのに燃える事が無いのは果たしてどうなっているのか、俺はドシドシと地響きを立てながら走るFオークに早速、自身の拳を揮いながら駆けるスピア。
「哈っ!」
灼熱よりも燦然と煌めく赤毛を揺らしながら、そして紅玉よりも輝く紅の瞳に力を籠めて睨む。
振り下ろされた普通よりずっと巨大なる棍棒、然しスピアは棍棒に触れたかと思うと身体をほんの少しだけ捻ってやり、右手を開いて掌で棍棒の先っぽを地上に導いてやった。
「どっせぇぇぇいっっ!」
更に振り被って放たれる右ストレートパンチ、スピアの怒声にも近い雄叫びと共に吹き飛ばされてしまい、思いっきり壁へとぶつかって大の字で磔け状態に成る。
「お兄っ!」
「応ともさ!」
バッと背後を視る事すら無く身を翻したスピアの後から、ミスティの身体強化魔法を帯びた状態のランスがジェット噴射でもしたかの如くの超高速で前進、手にした槍をFオークの左胸を目掛けて突き出した。
「グオッ!?」
心臓に深々と槍を突き立てられたFオークは、その口から逆流した血を吐き出して息絶える。
生命力を喪った為に魔素へ還り、その結果として最も凝り固まった魔素=魔核が地面に落ちた。
「おっと? 存在力が向上をしたみたいだぜ」
既に慣れたものなのか、ランスはちょっとだけ胸元を叩いて呟く。
存在力の向上は相手を討ち斃した際にソイツの存在力が、斃した当人へ大部分が流れ込む事を繰り返す事により、身体能力が強化されていくという現象の事を云う。
実戦経験を経て戦上手に成るという意味合いのレベルアップでは無く、ゲームみたいに闘えば闘う程に強くなるレベルアップと同義だ。
因みに、少しだけど近くで闘っていた人間にも存在力の向上は見込める為、向上はしなかったけど俺も存在力を獲ているという事になる。
「はい、ケイン」
「ああ」
無邪気な笑顔で、スピアが拾ったFオークの魔核を渡してきた。
スピアはスピアで、ミスティとはまた違った魅力を醸し出してるな。
いやまぁ、それは彼方側の璃亜で充分に判っている事だったわ。
本名スピーリアは来世で火祭璃亜としてランスの来世たる火祭槍太と、又もや双子として彼方側の地球に生を受けてるけど、俺とミスティ同様に二人も顔立ちが瓜二つだ。
歩いていると、明らかに正規ルートを外れている路を往き、ちょっとした袋小路にまでやって来ていた。
其処に居たのは明らかにCランクであろう魔物であり、Fハイオークという通常であるのならばオークの上位種に当たるハイオーク。
ゴブリンで云えばホブゴブリンという訳だな。
「Cランクなら並の冒険者では近付けないから、きっとトライア・セイル・マーレイア王子は魔物を配置していたんだ。メイフェリア皇后殿下からの命令で……ね」
詰まり、ミスティがメイフェリアだった前世で息子に命じたのか。
「近付かなければ動かない筈」
「マジか?」
「うん」
ランスが驚愕しながら訊ねると、ミスティはニコリと頷いた。
近くに魔核が落ちている事から恐らくだけど、近付いて来た魔物を叩き潰していたのだろう。
「先ずは私の強化魔法で二人を強化をするから、ケインは自分の天導術を使って強化をしてね?」
「「「了解っ!」」
ミスティがランスとスピアに強化魔法を使う、俺も氣導術……天導術たる健御雷神と帝釈天を使った。
純粋な肉体その物を強化してくれる健御雷神、そして周囲に氣力を纏わせてパワーやディフェンスやスピードのアップ、それに慣性制御までをもしてくれる帝釈天による二重の身体向上である。
欠点として魔力による強化は併用が不可能で、健御雷神は韋駄天との併用が出来ないからな。
帝釈天となら併用可能だけど。
「さぁ、征くぞっ!」
「応よっ!」
「うん!」
強化した俺達は、各々の武器を手にFハイオークへと立ち向かった。
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