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銀の騎士と黎明の星  作者: 月乃杜
第二章:獄焔剣
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第90話:三度の大火山

.

「ケイン!」


「ミスティ……」


 目を覚ますと其処は惑星テラル、その中央大陸から視ると北東に位置するイグナート大陸に存在するイグナート王国、アルヴァン大火山の麓に在るトラータ村の宿屋の一室。


 俺はその一室で眠っていたのを、ミスティが起こしに来たのだ。


「おはよう、ミスティ」


「うん、おはよう」


 俺からの挨拶に、ミスティも笑顔で挨拶を返してくれる。


 矢張りというか、ミスティは美衣奈と瓜二つの容姿をしているな。


 美衣奈が曰く、メイフィリアの時と違って前世の姿と変わらない容姿をしていて、星神テリアルによって敢えて俺と美衣奈……だけでは無く槍太と璃亜がランスとスピアの転生体らしいけれど。


「ほら、起きて」


「判ってるよ」


 俺は起き上がって寝間着を着替えようとしたのだが……


「部屋を出てってくれる?」


 じっと観ているミスティ。


「しょうがないな~」


 ミスティは前世だというメイフィリアの記憶を持っているらしいから、俺をテンルィーの転生体である事も判っていてそれも込みで甲斐甲斐しいという事なんだろう、ひょっとしたら頼めばそれこそ着替えや、下手したら朝の処理をもしてくれそうではあるよな。


 流石に、朝の処理を頼もうとは思わないけど。


「良し、これで終わり」


 着替えを終えて階下に降りると、既に起きていたランスとスピアが朝餉を摂っているみたいだ。


 それにミスティもフォークとナイフでステーキを食していた。


 俺も食堂でウェイトレスさんに朝餉を頼んで、盆に載せて持ってきてくれたのでそれを食する。


 目玉焼きと黒パンと紅茶だけど。


 とはいえ卵は日本みたいな安全安心とはいかないから、確りと焼いた物で無いと細菌により御腹が痛くなるのは間違いない。


「それでも御腹が痛くなる時は成るんだけどね」


「何が?」


「いや、何でも無い」


「そう?」


 サルモネラ菌とか雑菌が卵の中には溢れ返っているし、それで結果的には御腹を壊す上に熱が出たりの所謂、食中毒に成ってしまう訳だ。


 勿論、全てがそうじゃない。


「塩味か」


 醤油とは云わないから、もう少し味にバリエーションが欲しかった。


 食べ終えたら早速、皆でアルヴァン大火山へと向かう事に。


「ランス」


「どうしたよ?」


「これを」


 俺がランスに渡したのは魔鋼製の籠手(ガントレット)であり、今までよりも遥かに防御力は増している筈の物だ。


 魔装具にしてしまえばある程度のサイズ調整をする機能も付けられる様にも成り、順調にスキルも成長というより熟なれてきている。


「お、着け易いな」


「腕を折られたり最悪で砕かれたりしたら俺スピアは兎も角、俺達にとっちゃあ致命的だからな」


 元の物より防御力を上げた上で、着け易さなども考慮した籠手だ。


 真銀――ミスリルが手に入るならそれを素材にしたいが、流石に今のミスリルの剣を溶かしたりランスの今は使わない槍を溶かしたり、そんな事は流石に出来ないからな。


 ミスリルのインゴットか或いは純粋な鉱石でも構わないから、必要量の入手をしたいとは思っているが。


「脛当ては無いのか?」


「今は未だな」


 二人分を造るには時間も素材も足りていない、だから取り敢えず彼方側で腕を折られた経験から籠手の強化に務めたし、脛当て(グリーブ)も作製中だ。


 時間が無いのと素材も魔鋼その物が足りない、普通の鋼を魔鋼化するにはもう少しだけ時間が欲しい。


「冷却マントを着ければアルヴァン大火山の熱気にも負けない、これで後は獄炎剣を入手するだけに成るけど、ミスティなら何処に在るのかは判っているのか?」


「大丈夫。四代目がメ(・)イ(・)フ(・)ィ(・)リ(・)ア(・)妃(・)殿(・)下(・)の(・)指示で各大陸のダンジョンに置いたんだ。だからこそ、私にはだいたいの場所が判るからね」


 テンルィー・セイル・マーレイアが中興の祖から見て三代目、確かに四代目の時期なら母親の筈だから普通に生きている頃なのかね。


 魔鋼製の槍を装備しているランス、魔鋼製のガントレットを装備しているスピア、ケープを装備しているミスティは杖が自前だった。


 実力的には彼方側と違って、未だに俺もミスティも存在力が二〇にすら届いていない、装備品にしても俺のミスリルの剣は置いといて彼方側のを追従しているだけ、現状で彼方側に無い要素といえばランスとスピアが居る事くらいだろう。


 俺達は早速とばかりアルヴァン大火山に入ダンして、更には例の六角柱の水晶体の存在する部屋へと入って第五階層へと転移をする。


 元より第五階層はダンジョンランク的にはE、第一五階層まで降りたらDランクも出てくるのだとか。


 だけど普通に降りる訳じゃ無い。


「私達の目的地は第一〇階層、でもね其処からはちょっと本来より別ルートを進む事になるんだ」


「別ルート?」


「そうだよ。だって、普通の場所に置いちゃったやら見付かるもんね。まぁ、見付かっても取れないけど」


 聖霊剣にせよ獄炎剣にせよ、どうやら水晶姫アメジストの直系でないと扱えないモノであるらしい。


「神剣クリスタリオンと神盾ラメティストに関しては水晶姫アメジスト様が、神鎧クアルソと神兜クリュスタロスは水晶神クリスタル様が創った神装具なんだよ。そしてこれらは中興の祖アメイジア様の直系のみが使える様に調整されているよ」


「あれ? 若しや、神装具ってのを集めないとイケないのかそれ」


「最終的にはね」


 俺からの質問に、ミスティが苦笑いを浮かべて答えてくれる。


 遂に顕れるラヴァスライム。


 前にも闘ったから判るのだけど、その体躯はまるで熔岩みたいなモノであり、下手に武器を突っ込めば溶けて刃も劣化をしてしまう


 とはいえ、ミスリルの剣なのだから魔導金属故に劣化は小さい。


 尤も、ミスリルであっても熔岩に突っ込めば普通に劣化するけど。


 劣化し難いだけでな。


「私が先制するよ、世界を巡れる静かなる大気よ尖りて放たれよ」


 この世界では基礎は彼方側と変わらないけど、魔導紋の構築や魔法陣の形成では無く詠唱によるモノで、丹田に魔力を収束して血流の如く身体を巡らせるのは変わらない様だ。


 序でに“力成す言霊”を紡ぐのも変わらないが、その言霊自体は此方側の魔導言語と彼方側の言語では別物、というか美衣奈が使っていたのは魔導言語じゃなくて、第二の故郷とも云える扇歌さんの故郷の言語だったけれどもさ。


「氷槍(ルハ・ラメーラ)!ッ!」


 複数の氷の槍がミスティの掌から放たれると、三体のラヴァスライムへと命中をしている。


 凍り付いてたり、或いは核にぶち当たって溶けて死んだりと、矢張り其処まで強くは無かった。


 直接的に刃をラヴァスライムに突っ込まなければ大した事は無い、ランスは槍の石突き部分で核を突いて、スピアは蹴り殺している。


 俺は俺で氣力――此方側で云う処の天力を纏わせて刃を守った、彼方側で父さんからの教えの通りに。


「ふぃーっ、回数を熟すと何とか成るもんだね」


「だなぁ」


 スピアとランスが笑顔で顔を見合わせている。


「うん、ラヴァスライムくらいなら大丈夫そう」


「先に進もうか」


「そうだね、ケイン」


 今の自分達には何が出来るのか、それを見出だしつつ動かないとな。


 第五階層から更に降りて行くと、ファイヤーゴブリン数匹が顕れた。


 皮膚が燃える様なゴブリン、こいつにまともに触れれば火傷は必至、というか剣で斬り付けると矢張り刃が少しずつ駄目に成っていく。


 なので、ラヴァスライムの時みたいに刃へ天力を纏わせないとな。


「哈ぁぁぁっ!」


 斬っ!


 特にホブゴブリンイレギュラーみたいな硬さは無くて、ファイヤーゴブリンの防御力は通常のゴブリンと大して違いは無いのだ。


「キャギャッ!」


 従って、一撃で首を落とせる。


 ランスも矢張り石突きでド頭や左胸といった、あからさまに生命の急所を文字通り突いていた。


 そしてその双子の妹たるスピアも直接は触れずとも、今までと同じく蹴りや拳を揮うという動作による衝撃波みたいなモノを発生させる。


 顔面に当たれば普通にその部位が抉れていて、人間を相手に使うならばちょっと怖そうな技だ。


 まぁ、人間の場合だと魔力やら何やらで自然と防御をされている為、其処までグロい事には成ったりしない、万が一に例の無能ムーヴ君に当てたのだとしても、今のファイヤーゴブリンみたいな事には成らないだろう、脳震盪では済まないが。



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