第87話:レベルを上げよう
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溝呂木奈々歌先生は相も変わらず明るくて綺麗な容姿、眼鏡は掛けているけど実は伊達らしい。
普段は伊達眼鏡を掛けているが、仕事中は慎吾が造った魔導具である“鑑定眼”を掛けている。
担任や担当学科は持っていない、彼女の受け持ちは冒険科へと所属をしており、普段から冒険者見習いである生徒が持ち帰って来る魔核や素材などの鑑定を行っていて、通常ではカウンターに立っていた。
そんな溝呂木奈々歌先生はドアを開くと……
「楠葉君に愛坂さん、何なら乗って行きます?」
笑顔を浮かべて誘ってくれる。
「先生が学園に送ってくれるなら嬉しい限りですけど、それって先生の自家用車だと思いますが、彼氏じゃなくて良かったんですか?」
「あら、楠葉君が彼氏に成ってくれれば問題は有りませんよ?」
「へぇ……」
ニコニコしながら二人の視線の先がバチバチッとスパーキングッ! 特に美衣奈は前世では妻だった事もあり、幾ら何でも奈々歌先生みたいなポッと出の女性に持って往かれて堪るかとばかり、美衣奈のその額には青筋を浮かべていた。
勿論、卦韻自身が溝呂木奈々歌先生を己れの意志を以て選んだなら、執着をして決して婚姻をしないだろうが、それで卦韻を奪う為の動きはしないと考えている。
美衣奈としては、卦韻以外と子作り案件は無いと考えてるから当然、当たり前だけど他の男に肌を赦す気などは決して無いのだから。
何なら、万が一にでも奈々歌先生で無いにせよ卦韻を他の女に奪われるなら、そうなる前に卦韻とイケる所までイってしまいたいくらいだ。
卦韻との子供だけは最低限でも欲しいから。
「バチバチし過ぎだろ、美衣奈も奈々歌先生も」
「そうね、早く乗りなさいな」
奈々歌先生から促され為に卦韻と美衣奈は向き合うと、二人して苦笑いを浮かべて白い車のドアを開いて直ぐに後ろのシートへと座る。
「じゃあ、レッツラゴー!」
ハードルを握ってアクセルを踏んで走らせた。
勿論だが、奈々歌先生は法定速度を確り守って公道を突っ走ってる。
安全運転、安全運転……と。
「楠葉君」
「はい?」
「今の君はレベル幾つ?」
「丁度、二〇ですね。美衣奈も」
卦韻はレベル二〇、美衣奈も少し足りなかったけど重点的に存在力を獲て貰い、レベルもきっぱりはっきり二〇まで確りと上がっていた。
「へぇ、頑張ったのね。それにしてもレベル二〇という事は、既にレベルだけはEランクなのね」
「レベルだけじゃ無いよ、私もケインも単純な実力はCランク相当に上がってる心算だからね」
「レベルでは計れない実力ね」
「そうだよ」
ギリギリでもCランクを斃せる二人であるし、一応はギルドランクをCとして考えても良い。
尤も本当にギリギリだったから、ダンジョンはその下たるDが妥当。
とはいえ、Eランクくらいなら殆んど無傷での踏破は可能だろう。
「美衣奈、先生と仲が良いな」
「べ、別にぃ?」
「仲が良い訳じゃ無いわよ」
二人は……奈々歌先生は運転中だから兎も角、美衣奈は頬を赤らめながらそっぽを向いた。
一〇分くらいで愛坂学園に着き、教師用駐車場で二人は車を降りる。
「有り難う御座います、先生」
「助かりました」
美衣奈が御礼を言ったので卦韻もそれに倣う。
「構わないわ、春休みだもの。流石に学園が始まったらそういう訳にもいかないんだけどね」
「でしょうね」
教師であるが故に、本来は過剰なまでに一生徒に入れ込むのは赦されない訳だが、春休みに親戚のお姉さんとして接するくらいはアリだ。
溝呂木奈々歌先生も愛坂家のそこそこ近い血筋であり、高祖父母の代からの枝分かれであるから殆んど他人みたいなものではある。
それでも美衣奈とは仲が良い。
何故ならば彼女は教師であると同時に冒険者でもあり、魔工師の一人でもあるから“水晶戦記”のパーティとは切っても切れない関係なのだ。
それ故に一〇年前には、美衣奈ともそれなりな関係を築いていた。
「それじゃ、二人共頑張って」
「了解~」
「Greit」
手を振りながら見送ってくれてる奈々歌先生、これに返すかの様に卦韻も美衣奈も手を振る。
そして春休みの初日から何日も歩いた慣れ親しんだ裏山への山道、其処を登り行く卦韻と美衣奈はダンジョンの入口へ入っていく。
見た目にはちょっとした洞窟だから判り難い、然しながら視る者が視ればはっきりと判った。
誰も居ないダンジョンの第一層、二人はそれぞれのアイテムバッグやアイテムポーチから装備品を取り出し、完全武装をして六角柱の水晶体が在る転移部屋へと入ると、第一五階層を選択する。
第一五階層は最早、Fランクの魔物は殆んどが顕れなくなる代わりEランクの魔物が顕れ始めるのだ。
レベルが一五を越えない人間がボス部屋を入れないのも、間違っても弱者が入ってしまわない様に安全装置みたいなモノらしいと、美衣奈から聴かされた卦韻。
元々、彼方側のダンジョンにボス部屋の扉なんて物は存在せず、星神テリアルがダンジョンを設置した際に付けた一種の安全装置だと云う。
「美衣奈、どうした?」
「うん、彼方側の事を全部話したら妻だった時の想いが湧き出しちゃってさ。その姿を見ていると彼方側での事を思い出すんだよ。確かイグナート王国でその装備を使っていたんだよね?」
冷却マントも決まっていた。
「まぁ、此方側と彼方側でアーカイブを共有しているからな」
「そうだね。此方側でも彼方側でも新しい装備品を造れば、ケインは相互に更新をしていたんだもんね~」
卦韻のスキルは何故か彼方側と完全リンクをしており、此方側で獲たスキルは彼方側でも普通に使えるし、その逆もまた然りという訳だ。
「配信無しならこれを使うか」
「クリスタリオンだね」
単純な攻撃力は何処ぞのRPGに於ける高熱の炎を放つ剣と同程度だ、然しその素材は神鐵鋼製とも確実にタメを張る神により齎らされた金属である神皇鋼製、故に硬度も粘りも耐久性も通常金属は於ろか魔導金属よりも遥かに強力な代物である。
「そういえばケイン、真銀製の装備品を造らないの?」
「ああ、そろそろ造りたいな。でも新入生として学園に入ってすぐに使うのは憚られるからな」
「確かにそっか」
抑々、普段の配信で今は鋼鉄の剣を使っている理由は聖霊剣では目立つから、威力は兎も角として神鐵鋼製より格上の神秘金属を使った武器なぞ目立つばかりだし、ランク的にもおかしいという事もあるからだ。
ネット民とはある意味でどんな高ランクの魔物より恐ろしく、聖霊剣の違和感を気付いた途端に特殊で特別な剣――少なくとも、一般的に造られた代物では無い事には、あっという間に気付いてしまうくらい。
鎧に関しては確かに特製だけど、デスコーピオンのランクはC程度でしかないからまだ良かった。
尤も、剥ぎ取りが概念的に一般に流布されていないから、ドロップした甲殻で造られた鎧は可成りの付加価値が付いているであろうが。
「まぁ、今はデスコーピオンの甲殻鎧と魔鋼製の小盾だけで充分御釣りが来るんじゃないかね?」
「ああ、うん。そうかもねぇ」
頷く美衣奈、卦韻は真新しいまでに磨かれてる魔鋼製の小盾を触れ、その様は中々に決まっている。
「来たな」
「そうだね」
顕れたのはゴブリンウォーリア、片手斧を手にしたゴブリンだった。
所詮はゴブリンだから大して強い訳では無い、この存在が恐ろしいともされるが何十何百という群だったらであり、更に云えば小賢しい知能を持っている為だからで、知能レベルが猿よりも低い魔物のゴブリンが数匹程度なら何ら問題も無い。
ブンブンと手斧を振り回すだけのゴブリン程度は既に敵では無く、連中の大振りな横薙ぎをしゃがんで躱すと同時に此方が横薙ぎ一閃。
「アギャッ!?」
上半身と下半身が泣き別れした。
「大炎上ッ!」
美衣奈の両手から大きな爆炎が放たれる事で、ゴブリンの数匹を焼き尽くす程の高温が噴出。
滅茶苦茶な熱さだったけれども、予め造っていた魔装飾たる冷却マントが弾いてくれている。
元々が彼方側に於ける大火山の超熱気に耐える為の魔装飾、此方側にアルヴァン大火山は存在していないけど一応は、造っておいたのだ。
既に二〇のレベルは簡単に上がってはくれないけれど、割かし顕れる魔物を剣で斬り殺したり、魔法によって焼き殺したり凍結して殺った。
そして再び第二五階層に降りて、ボス部屋へと入る事に成功をする。
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