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銀の騎士と黎明の星  作者: 月乃杜
第二章:獄焔剣
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第81話:全ては神争が有りきで

.

 第五階層にまで降りると、彼方側の初心者用ダンジョンと同じく六角柱の水晶体が置かれている転移ルームを見付け、地上へと戻って行く。


 併し転移ルームか。


 矢張りというか、彼方側と此方側には密接な関係が有りそうだな。


 要らない素材は冒険者ギルドの方で換金してしまい、必要になるかも知れない素材だけは残してアイテムバッグの中に仕舞っておいた。


 特に魔導具や魔装具絡みで魔核を集めないと。


「それじゃ、始めようか」


 四人で俺とランスの宿泊する部屋に集まって、アルヴァン大火山で言っていた()()を話す事に。


 紅茶と御茶請けを準備して四人で座っている。


「先ず、私達……というよりケインとランス&スピアの先祖は皆、北方大陸エレメティアに中央大陸マーレイアから渡り移った移転者だよ」


 中央大陸マーレイア、確かに以前にも聴かされた覚えがある。


「ミスティは違うのか?」


「う~ん、私の場合はちょっと違う。私の先祖はマーレイアに渡った人の妹なんだ。メイフィリア・ヴィナーシュの妹――アルフィリア・ヴィナーシュが私の御先祖様だね」


「ヴィナーシュか。数百年間、姓が変わっていないんだな?」


「そうだね。ランスとスピア、それにガンパーの家もそうなんだけど、マーレイア王国の騎士でもあるし、確りとした爵位を持った貴族でもあったんだ。因みに、ガンパーの家系は子爵家でランスとスピアの家系は侯爵家だったんだよね」


「侯爵家って……」


 ランスの方を見遣ると頷く。


「間違いない。マズルス侯爵家は俺の先祖の家系だった。ガンパーのルドック子爵家もそうだったんだ」


「さっきから言ってるそれは誰の事を言っているんだ?」


「ケイン……お前な~」


 何故だか呆れた表情になるランス……解せぬ。


「無能ムーヴ君の事だよ」


「ああっ! 成程な」


 納得したし得心がいった。


「な、成程な。お前にとっちゃガンパーは無能ムーヴ君でしかないって訳か。彼奴(アイツ)も哀れだよな」


 ランスが肩を竦める。


 仕方が無いじゃないか、俺からしたら無能ムーヴ君の名前なんぞどうでも良かったんだからさ。


「まぁ、あれだ。『無能ムーヴ君』の事は扨置いといて……だな。侯爵家なのに平民をしていたのは何でなんだ? 貴族だったんだろ?」


「余所の国に一時的に身を寄せるのは仕方が無いにせよ、其処で仕官とかしたら戻れなくなってしまうからな。無論だが、俺の先祖の中にはそうやって身を立てた奴も居るだろうが、直系だけは嘗ての国王との契約の許に約定を守り続けたのさ」


「そうだったのか」


「だから騎士や貴族の中に数百年間でマズルス家の血は確実に入り込んでるし、俺らが最低限でも暮らしに困窮しない程度の支援も貰っているし、約定が成れば返す事も視野に入っているんだよ」


 詰まりは貸しという形での支援をしているって事になるのか?


「あれ? 契約だの何だのに縛られてるって事はマーレイア王家も絶えてはいないのか?」


 疑問をぶつけると、三人が苦笑いを浮かべる。


「お前だよ、ケイン」


「……えっと?」


 頭の中に浸透するのに時間が掛かってしまう、今ランスは何と言ったのか? 俺がマーレイアの王家としての生き残りである子孫だと?


 ミスティの方を見遣る。


「ケインがマーレイア王国の王家の子孫なんだ。それは間違い様のない事実だから受け容れてね」


「何か証拠でも有るのか? 仮にそうだったとしても、きちんとした証明が出来なかったら小僧の戯言で終わりそうなんだが?」


「クス、聖霊剣クリスタリオンが何よりの証拠。嘗て神々より与えられた神剣クリスタリオンこそマーレイア王国中興の祖アメイジア・セイル・マーレイア陛下が使った剣。それこそ双子の水晶神様の血族の証、貴方以外には誰も扱えないんだ」


「王家がどうのは扨置き、聖霊剣クリスタリオンなんて御大層な名前からしてそんな気はしたよ」


 専用の武器だとか胸熱な代物が、何故かこの手に在る理由を考えれば俺……というか、ケイン・ユラナスのバックボーンが在ったればだったんだろうが、それなら俺が彼方側で同じく聖霊剣クリスタリオンを扱えるのは、いったいどういう事になるんだ? 矢張り繋がりが有るのか。


「うん? 神々の血族っていったい何なんだ?」


「まんまだよ。アメイジア・セイル・マーレイア陛下の御母様というのは水晶神アメジスト様だもの」


「ええ……? 俺って神様のハーフやクォーターですらないよな最早、数百年前ってんなら。どういう仕組みで担い手が決められるんだ?」


「水晶神の血族にしか反応しないってだけだよ。アメジスト様とクリスタル様の血族だけが扱えるんだ」


 その侭な名前の神様だったな。


「若しかして、俺はこれから何かしないとイケないのか?」


「そうだね、マーレイア王国が亡びたのは大邪神の陰謀だったみたいだから」


「大邪神なぁ……」


 ミスティが曰く数百年前、中興の祖アメイジアこそが神様の血を引く訳だが、どうやらその子供や孫や玄孫が危機を救っていったらしい。


 それで俺に世界を救うのを期待されてもとは思うけど、本来ならそれを期待されているのは寧ろ俺じゃなくケイン・ユラナス君だろうけど。


 だけど彼方側での俺は何を期待されて聖霊剣を持たされた? 地球には大邪神なんか居ないだろうからな……うん、マジに居ないよな?


 ……居ない……筈……だよな? 実は居たりするのか?


「ケイン、勿論だけど貴方が遣りたく無いのなら遣らなくても良いよ。世界が滅びるなら別に私は構わないし。その時には一緒に滅ぼっか」


「ミスティ……」


「ミスティちゃんが重たいよ」


 ランスとスピアが大粒の汗を流しながらドン引きしている。


「せ、世界が滅びるのか?」


「大邪神は今も存在してるから」


「でも、大邪神とやらがマーレイア王国を亡ぼしたのは数百年前だろう? それなのに何で今の今まで世界が存続しているんだ?」


 其処が理解(わか)らない。


 例えばゲームなら暫く放置していたとしても、ストーリーが進まなければ世界も滅びないかも知れないが、現実では有り得ない事だろう。


「勿論、神々が抑えてるんだよ」


「神々が?」


「このテラルの信仰されている神々とは基本的に一二柱、属性を司る四柱と精霊の神と竜の神と光の神と闇の神と命の神と双子の水晶神と主神という事に成っている。だけど(まつろ)わぬ神々も存在しているし、地上とは関わらない神々も居るんだ」


「成程な」


 直接、信仰されていない神々は名が挙がっていない訳か。


「当然なんだけど神々も派閥が在るものだから、主神側と大邪神側でバチバチ()り合ってるんだ」


 数百年の平穏な期間は詰まる話が上が議論中だったから、民には何も知らされず何も政策が変わってないみたいな政治の様な刻だったとか、そりゃ確かに平和な訳だよな。


「だけど貴方が産まれたからには平穏な期間は御仕舞い」


「ハァ? まさか俺の誕生が破滅への引き金とか言わないよな?」


「それだと、ケインの存在が破滅への秒読みに成っちゃうよ」


「考えたくも無いな。それだと御偉いさんに俺の存在が知られたら消されてしまいそうだからさ」


 俺は正直、そんな意味不明な理由で死にたいとは思わない。


「アハハ、寧ろケインが居なくなったらそれこそ人間社会の破滅が待った無しに成っちゃうよ?」


「要するに破滅を回避するのが俺って訳なのか」


「態々、神様が人間の世界に血を残す程だもん。水晶神アメジスト様が降臨されて、御自らが選ばれた人間の夫……詰まりはアメイジア・セイル・マーレイア陛下の御父上との間に御子を儲けた。大邪神との神々の抗争はそれこそ遥かな古えの昔から起きていた事、だからこそ私達人間の世界にも波及していくのを見越して動き出したんだ」


 そして、どうやら宙天に輝く二つの月は神々の神争によって、一つだったのが破壊された結果だったらしいから俺の想像は当たりだった。


「というよりは、既にアメイジア陛下の時代から既に大邪神によって干渉は起きていたんだよね」


 ミスティの表情は曇っている。



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