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銀の騎士と黎明の星  作者: 月乃杜
第二章:獄焔剣
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第79話:再び大火山へ

.

 冷却魔法を理央から見せて貰った事によって、新しく魔導具を完成させた上で設計図を彼方側に持ち込み、俺は朝早く宿屋で造ってみる。


 短めな白いマントに銀色の留め具を持たせた、どちらかと云えばミスティのケープに近い代物。


 スパイダーの糸を魔力と共に織り込んでやり、魔銀で造られたマントの留め具に魔核を仕込む。


 仕込まれた魔核に籠められる魔法は“冷却(アーブヒューレ)”と成る。


「完成したな。これを取り敢えずはパーティ分だけを造って、ひょっとしたらこれを見た冒険者の誰かが欲しがるかも知れないしな、少数ながらも量産をしておくかね?」


 スパイダーの糸は此方側でも聖霊の森で斃して持っていたし、魔銀は[ミリス堂]で買った銀へと魔力を籠める事で造り出していた。


 魔力の通りが良い素材ばかりだったからかね、思っていた以上に高性能な魔導具に成ったよな。


 ランスが未だに蒲団の中にて眠っている中で、俺が完成した四枚分の“冷却マント”を手に宿屋の二階から降りると、既に起きていたミスティとスピアが朝餉を食べながら紅茶を飲んでいるのを見付けた。


「二人共、おはよう」


「あ、おはようケイン」


「おっはよ~!」


 声掛けをすると、此方へと気付いたミスティとスピアが手を振って朝の挨拶を返してくれる。


 尚、周りからの圧が凄い事に成っているけど、これは美少女の二人が俺と親しげだからだろう。


 女性は兎も角、冒険者は基本的に荒くれ者達の男共ばかりであるし、七割はそうなんじゃないかと思えるくらいには男が多い稼業と言えた。


 この宿屋は冒険者ギルド御用達でもあるから、矢張り男共の割合が多くて女性は少なめである。


 だからこそ、美少女コンビであるミスティとスピアの二人から笑顔を向けられ、挨拶に対して返された俺に嫉妬と羨望を向けるのであろう。


「あれれ~、お兄は?」


「未だ寝ていたぞ」


「それは、困ったお兄だね~」


 苦笑いを浮かべるスピア、偶にだがランスは眠りこけて寝坊をしてしまう癖が有るみたいだな、其処ら辺は矢っ張り槍太と同じなんだ。


 俺も宿屋の人に朝餉を頼んでから席に着くと、更に圧が振り掛かってきた為に笑いを漏らした。


「ケイン、それは?」


「冷却マント」


「れ、冷却……マント?」


 名前からしてミスティにも意味は理解してはいるのだろうけれども、ちょっとだけ不思議な表情に成る。


「これを着ければ、大火山の高熱から俺達の身を護る事が可能な筈」


「そうなんだ? 確かに私はケインに魔法は見せたけど……」


 冷却マントをミスティとスピアへ渡しておく。


 スピア……と実兄であるランスは何故か熱に強いらしく、大火山で闘っていても俺やミスティ程に汗を掻いてなかったし、何なら熱中症などにも無縁な体質をしているみたいだけど、決して暑くない訳では無いから嬉しそうに受け取っていた。


「マント……ね。ケープの上から羽織るしかないかな? あれ? この籠められた魔法って……」


 ミスティが小首を傾げる。


「私が見せた“涼纏(ルハ・ラハーラ)”の術式とはちょっと違う?」


「――え?」


「もっと複雑な……術式だね」


 【魔力視】のお陰か、どうやらミスティは籠めた魔法の術式がきちんと視えてしまうらしい。


「私の“涼纏”は単純に周囲の気温を下げるだけの魔法、誤解を覚悟で言えば凄く簡単な術式の魔法でしかないんだよ。はっきり言ってこれに籠められた魔法は、もっと複雑に編み組まれている術式だよね!」


「よく判ったな……」


 確かに唯只管に気温を下げるだけの“涼纏(ルハ・ラハーラ)”とは異なって、彼方側で俺が母さんから見せて貰っていた“冷却(アーブヒューレ)”の効果は下げる気温をある程度だけど変えられる。


 それだけに術式は複雑に成るのも当然だろう。


「ケイン、誰に浮気したの?」


「浮気ってなんだよ! 人聞きの悪い事を!?」


「だって、ケインの周りに術士は私だけだよ?」


「うぐっ!」


 間違っていないだけにぐぅの音も出やしない。


「えっと、遣り方を変えればミスティにも出来るんじゃないか?」


「ふ~ん、どうやって?」


「先ず魔力に関しては多分だけど遣り方は変わらないと思うけど、身体に張り魔力回路を巡らせた魔力を魔導紋という形に変換、それを使い魔法陣を形成した上で“力成す言霊”を紡ぐ事に成るな」


「……成程、面白いね」


 真面目な表情に成ったと思えば、ニヤリと口角を吊り上げると右手の人指し指と親指だけを伸ばした状態で、自身の(おとがい)に添えながら呟く。


「魔導紋……か。ふ~むふむ」


 ミスティが教えた通りの紋様を魔力で構築させていく。


涼纏(ルハ・ラハーラ)! あれ?」


 全く発動しなかった。


「う~ん?」


 発動しないのは“力成す言霊”が違うからかね?


 確か魔導紋と“力成す言霊”は連動していた筈、だからきっと美衣奈が魔法を使う時の言語じゃないと駄目なんだろう、という事は先程教えたのは彼方側での母さんが使った“冷却”の魔法だから、その言霊は……


「アーブヒューレでないと発動しないと思うぞ」


「うん? アーブヒューレってどういう意味?」


「冷やすとかそんな感じ」


 美衣奈の母親である扇歌さんの故郷の言語で、冷却という意味がアーブヒューレだった筈だ。


「使う言霊は、私達の識る魔導言語では無いって事なんだね」


「ま~ね」


「じゃあ、色々と教えてよ」


「ああ、判った」


 一気に全てを教えるのは難しい、だから少しずつでも教えて往こう。


「兎に角、ランスが起きてきて朝御飯を食べ終わったら、アルヴァン大火山の方に向かおっか?」


「そうするか」


 話している内にランスが二階の宿泊部屋から降りてきて、朝餉を摂った後は宿屋を出てアルヴァン大火山へと辻馬車に乗って行く。


 相変わらずガタゴトガタゴトと振動が物凄いし酷い、尻が……腰が痛い……めっちゃ痛いぞ!


 そして苦しいのを我慢に我慢を続けて大火山に辿り着き、俺とミスティとランスとスピアの四人は馬車から降りると冷却マントをを装備。


「わあ、涼しい!」


「マジ、それな」


「ボクらも熱さには強いんだけど、別に不快感を感じない訳じゃ無いし、マントが気持ち良いよ」


 冷却マントを装備した瞬間、ヒヤッとした感覚が身体を包んでくる。


「行こうか、皆」


「うん!」


「行こうぜ!」


「行こ行こ!」


 取り敢えず俺の出す号令の許に、三人が返事を返してくれる。


 アルヴァン大火山のダンジョンに入ダンをした俺達、歩いていると橙色の粘液がウニョウニョと蠢いているのが見えてきて、俺達は武器を構えるとラヴァスライムを一気呵成に斃してやった。


「良し、上手く殺れた」


「剣の調子は?」


「問題無い、無能ムーヴ君から戴いたミスリルの剣に魔核を装着したんだ。これに魔力の膜を纏わせる事に成功したからな。元々が腐蝕し難かったミスリルに、この魔力の膜で護られているんだ」


「へぇ、考えたね~」


 俺が彼方側で父さんから聴いていた解決法を上手く落とし込めたし、熱さ対策も冷却マントによりバッチリだったから、今度こそは第二階層に降りる事も出来そうだ。


 今度は、以前にも見るだけは見たファイアゴブリンだ。


 石槌や石斧を持つ炎を纏ったみたいな橙色の肌を持つファイアゴブリン、しかもまるで火の魔法みたいなナニかを掌から放ってくる。


「くっ! 単なるゴブリンじゃねーってかよ!」


「避けろ避けろだよっ!」


 狙われていたランスとスピアが火の玉を躱す。


「其処だぁぁっ!」


「キギャッ!?」


 俺は体勢を崩したファイアゴブリンの首を刈り取って殺る。


「ハァァッ!」


「そいやぁぁぁっ!」


 それに続く様に、ランスとスピアの二人も各々の判断でファイアゴブリンを穿ったし、打ちのめした。


「涼しくなっただけでも闘い易く成っているな」


 汗を流す事は仕方が無いにせよ、それでも涼しさが俺の体力が落ちたり熱中症に陥ったりする事も無く、汗で武器を滑らせたりもしない。


 本当に冷却マントを造って良かったと思うね。


 ドロップアイテムを当てにするより矢張り剥ぎ取りの方が良いかな、とはいえミスティ達をそんな危険に付き合わせるのは流石にちょっと。



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