第74話:求めるモノ
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翌朝、卦韻が目を覚まして身体を起こして……頭が少しグラつく。
「う、何だか此方側でもまるで暑さが残っているみたいだな。実際には春先の気温の筈なのにな」
結局、アルヴァン大火山のダンジョンを脱出した卦韻達だったけど、パルツィア村に戻って宿泊先で夕飯後は部屋で倒れる様に眠った。
クーラー魔法を使って貰っていたとは云えど、闘いの中では汗も掻いていたし天導術、此方側で氣導術と呼ばれる術を使ったのも拙い。
否、使った事自体は構わないのだろうけれど、問題なのは下の階層には全く行っていないにも拘わらず、生命力と精神力に加えて体力までも削る術を序盤も序盤から使うなど、ちょっとばかり有り得なかった。
地下一階で顕れたDランクの魔物が相手に苦戦してしまい、ラヴァスライムやラヴァラビットやラヴァゴブリンといった熔岩の力を持っている魔物、まともに武器を揮えない状態で困ってしまったものである。
卦韻は溜息を吐いてしまう。
「父さんや母さんなら熔岩系の魔物に付いても、何か知っているかも知れないから訊いてみるか」
アイテムバッグを手に持つと卦韻は階下に降りていくとキッキンには母親の理央、リビングの方には父親たる慎吾が新聞を読んでいた。
「父さん、おはよう」
「おう、卦韻。おはよう」
読んでいた新聞から目を離して顔を上げると、慎吾は卦韻の挨拶に自身も挨拶を返してくる。
「おはよう、卦韻」
「おはよう、母さん」
理央もキッキンにて朝御飯を作りながら挨拶をしてきた。
ソファに座り、卦韻は起きた際の考えを訊ようと慎吾に話し掛ける。
「父さん、訊きたいんだけど」
「うん、何だ?」
「父さんはさ、ラヴァとかファイヤーとかマグマみたいな名前の魔物とは闘った事ある?」
「火山系のダンジョンに顕れる魔物の事だよな。勿論あるぞ? 血が熔岩みたいな奴だとか毛皮の部分が熔岩みたいなのとか……な」
ラヴァゴブリンにラヴァラビットがそれに当たるだろう、そして卦韻はミスリルの剣で刃を腐蝕させてしまって、いまいち闘えなかった。
「アレは通常金属は於ろか、魔導金属でさえ腐蝕させる魔物だからな。実力自体はDランクか其処らでも奴らは非常に面倒臭いんだ」
「だとしたらCランクに成るともっと面倒に?」
「そりゃな。例えばバトルウルフがCランクなんだが、同じランクのマグマウルフとは全くの別物な闘い方になる。炎のブレスも吐くしな」
「え゛? 狼なのに?」
「狼でもブレスは吐くんだよ、本当に空恐ろしい事に……な」
それだけでは無く、実はラヴァスライムも火の息を吐いてくる。
そうなる前に、ラヴァスライムが火を吐いてくる前にソッコーで核を潰して斃せたに過ぎない。
卦韻がダンジョンに付いて知る事など極一部、所詮は中学生のまでの間ダンジョンには興味など無かった子供に過ぎない、云ってみれば卦韻には知識が圧倒的に足りなかった。
「それで、父さんはラヴァスライムとかを相手にどう対処を?」
「魔力を剣に纏わせる事で刃を守る様にするな。そうしないと直ぐに腐蝕させられてしまうんだ」
「な、成程……」
卦韻も似た事はしていたのだが、剣を守るというより切れ味を増すのがコンセプトだったから。
「因みに私は氷結魔法で対処をしているわね」
「だよね~」
彼方側では普通にミスティが遣っていた事だ、彼女は当たり前の様に魔法での対処をしていた。
「俺は魔法が使えないから氣力で代わりにすれば良いか。単に氣力を使うだけなら生命力を減らさないからな。体力は減らされるけどさ」
魔力は持っているし、スキルを通せば使う事も叶う、然し卦韻は魔法として扱う能力を持ち合わせてはいないみたいで、理央や美衣奈からも其処ら辺の指摘をされている。
「それともう一つ」
「うん?」
「ウチの一族に病院関係者、取り分け義肢装具士の人は居ないかな?」
「居るといえば居るが?」
「ああ、居るんだ……」
「ウチは歴史だけは永いからな。学校の教師とか政治家とか、何なら玩具職人なんてのも居るぞ」
「ウチは本当に様々な職種に就いているんだな」
[夜口法律事務所]みたいな法律家も居るみたいであるし、スポーツに従事をしている人も居るのだと聴いているから、本当に職種が多い。
「出来たら、義肢装具士の人を紹介して欲しい」
「フム? 構わない。それなら来週辺りに来て貰おうか」
「それなら、お願いしたいな」
慎吾はせの言葉に頷いた。
「義肢装具士が今度の魔導具開発の為に必要な人材のか?」
問われて卦韻は渋い表情になる。
「前に四肢の一部を喪った元冒険者を視ていて、それを何とかする為の魔導具を造りたいと思ってるんだけど、何とかするなら義肢を造るのが手っ取り早いからさ」
「義肢を……か。確かに義足や義手を、それこそ義体を求める冒険者……だけじゃない。一般人も欲するだろうからな。それでだ、卦韻はどういうのを考えているんだ?」
「生体義肢を」
「生体義肢……か、確かにそれは欲しいかもな」
卦韻は此方側のみならず、彼方側でも肉体的な欠損をした人間を視た事で『生体義肢』という、そういうワードが頭に過ったのである。
思い付いてしまえば【錬成王】に卦韻は訊ねてしまい、そして自分であればスキルさえ用いれば可能な事が判ってしまうと、どうしても造りたく成ってしまった。
造る事が愉しいと思える辺りは、確かにスキルの担い手として相応しかったという事であろう。
まぁ、卦韻は出来るなら遣るというスタンス、出来ない事は遣れないし、遣れるなどとは口が裂けても言わない性質だからこそか。
「必要な素材が有れば言え、採って来れる物であれば俺が捜して来よう。恐らくだが、今のお卦韻レベルじゃ採りには行けない物も有るんじゃないか? 俺もまだまだ冒険者だからな、お前さんが依頼するなら採りに行ってやるともさ」
「クス、助かるよ父さん」
笑いを抑えられず卦韻は頼んだ。
「勿論、私も頑張るわ」
「ありがとう、母さん」
理央も頑張ってくれるらしいし、卦韻は少しだけ瞑目すると必要そうな物をピックアップする。
生体部品を造るのに必須なのは、人間を構成するモノであろう、出来得る限りは自分本来の肉体と変わらない使用感が出ると嬉しいものだ。
(着けたら感覚まで感じられるのが良いかもな)
蛋白質に水分に脂質や糖質やミネラルなどの成分で構成、酸素や窒素や炭素や水素やリンやカルシウムや鉄分やカリウムやナトリウムやマグネシウムといった元素によるモノ、これらを用いる事で生体物質は造る事も出来るであろう。
其処から色々と人工生体と繋ぐ為のシステム、これは魔導具としての技術が必要となりそうだ。
だけどそれらは別に慎吾と理央に頼む必要性が無いだろう、必要となるのは魔物由来の素材なのだからそちらを二人に頼むべきである。
「レインボースライムのゼリーと何らかのドラゴンの血液、スケルトンナイトの骨が有ると助かるかな」
「レインボースライムのゼリー?」
「クッション材として必要と成るみたいなんだ。ドラゴンの血液も本体となる人間側の保護に使うみたい。スケルトンナイトの骨は文字通りの骨子って事になるみたいだよ」
それ以外にも必要となるであろう素材というのは細々と有るが、流石にSSSランクの魔物の素材などは必要には成らないと考えていた。
「魔導具だから仕方が無いが、SSSランクの魔物の素材まで居るなら可成り高価く成りそうだな」
ドラゴンならSランクでも存在しているけど、レインボースライムはSSSランクに相当してる。
「一応は安い物を使うのも可能であるんだけど、重体な人には高めの素材を使わないといけない。どうしてもって損傷は流石に死んでペッされているとは思うけど」
「そうだな。死ねば持ち物もダンジョンに入ってからの存在力も喪う、だが肉体の欠損も戻る訳だからな」
それでも矢張り死ぬのは恐くて、だから肉体の欠損を持った侭ダンジョンを出る者も多かった。
一般人には理解らないが、ゲームをするかの様に死ねばリスポーンで済む問題ではないのだ。
そう、一般人には決して理解らないのである。
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