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銀の騎士と黎明の星  作者: 月乃杜
第二章:獄焔剣
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第72話:大火山の麓

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 目覚ました俺はイグナート王国の港町の一つのパルツィアの宿屋を出ると、ラジオ体操をして眠りの最中に固くなっていた身体を解す。


 更には道具屋に行って、ポーションを買おうと考えて足を向ける。


「いらっしゃいませ」


「ポーションを四〇本、下さい」


「へ?」


 決して高価いとは云わないまでも四〇本というのはそれなりの値段、道具屋のお兄さんは吃驚したのか目を白黒させてしまっている。


「それからプチポーションも二〇本貰いたい」


「は? わ、判りました」


 木箱に二〇本ずつ入ったポーションとプチポーション、俺は三箱を持ち上げて一旦は道具屋から離れるとアイテムバッグへと放り込んだ。


 帰って部屋に戻ると、すぐにプチポーションを取り出して自分の【錬成王】を起動してやると、スキルから送られてくる情報に身を任せる。


 頭の中に浮かんだ情報は安い値段でハイポーションより効果的だが、デアポーション程に強い訳では無い新型ポーションの造り方だった。


 まぁ、プチポーションの素材を使えば良いのかも知れないとも考えたけど、どうやらこの方法だと素材を一度は魔導薬に調合しないと成立しないという事で、大量生産をするなら既に調合をされた魔導薬を使った方が良いと判断をされたんだ。


 造り方自体はデアポーションと変わらないが、使う素材となるのはポーションでは無くプチポーションの方、理論的に考えればポーションで可能な事ならプチポーションやハイポーションなんかでも、同様の事が出来る筈なのだと思っていたからスキルを使って調べてみた。


 【錬成王】からの答えは即ち『是』であった。


 プチポーションを使ってハイポーションよりも強めな効果を獲られるらしく、それはプチポーションを複数個使ったとしても獲られない。


 事実、プチポーションは飽く迄も擦り傷を治す程度の魔導薬、ハイポーション以上なんて本来ならば有り得ない回復量という事になる。


 素材の特性を解析して理解をし、素材その物を分解して、分解されたモノを再構築するという。


 その際に分解された素材の特性を圧縮した上で凝縮していき、通常の何倍にも成る特異素材を新たに再構築をして造り上げている訳だ。


 圧縮と凝縮によって新たに特異素材と成った、故にこそ本来なら有り得ない程の充分過ぎる効果を持ち、あれだけの効果の魔導薬に成った。


「プチポーション六本分とFランクの魔核か」


 彼方側なら三〇〇円だから一八〇〇円と成り、これにFランクの魔核だからハイポーション以上の回復量なら、随分とコスパが良い事に。


 尚、此方側は五〇テランの安値と成っている。


「彼方側と此方側で物流が出来ればちょっとした稼ぎ方も出来たけど、流石に其処まで上手くはいかないよな。そういや、新ポーションの名前はどうするかね?」


 折角、デアポーションの名前も付けたっていうのに、またもや新しいポーションの名前を……とはな。


「ティア……ポーションかな?」


 涙=ティアーから、それはポーション瓶の見た目が何故か漫画表現的に涙の様な形だった為だ。


 涙は水滴な訳だから、水薬という意味でも良いかも知れないね。


 新しく造られたティアポーションを数本だけ、造れる分を確りと造ってからバッグに仕舞う。


「おはよう、ミスティ」


「おはよう。ねぇ、出掛けていたみたいだけど」


「ちょっと道具屋に」


「道具屋?」


「ちょっとハイポーション以上の魔導薬を造ろうかと思ってさ」


 その成功作品がティアポーションという訳だ。


 単純にハイポーション以上という意味であればデアポーションもそうだが、それはエクスポーションよりも高い効能を持っている物だ。


 ティアポーションはエクスポーション程では無かったが、ハイポーションより高い効能という物だった。


 ハイポーション以上ながらポーションより安く手に入る、俺のスキル頼みなのは相変わらずだけど逆に云えば流石はURのレアリティだよ。


「ケイン、今日から大火山のダンジョンに向かうんだろう?」


「そうだな」


 ランスから予定を訊ねられた為、俺は頷きながらテーブルに座ると、宿屋のウェイトレスさんが運んで来てくれた朝食を食べた。


 栗色の長い髪の毛をサイドテールにした紫色の瞳を持ったお姉さん、背丈は一六〇cm半ばくらいでどちらかと云えば可愛らしい顔立ち。


 ウェイトレスの服装も相俟って成人とは思えない若々しさ、恐らくは二〇歳半くらいの年齢だとは思うけど、パッと見で高校生にも思えた。


 ウェイトレスさんが持ってきてくれた朝御飯、特に美味しくは無かったけど特に不味くも無い、はっきり云うとそれなりの味だったかな? 


 朝食の後、俺達は宿屋を出て大火山ダンジョンへと向かう。


 イグナート王国の“アルヴァン大火山”の麓は、流石に王都のすぐ傍では無いから結構歩く。


 正確には馬車に乗ってアルヴァン大火山に向かう事になる訳だけど、俺としては新しい馬車を造らねばならないのでは? とも考えている。


 ファンタジー系のラノベなんかではよく有りがちだが、ガタゴトと凄い音と振動を響かせながらも身体の不調と闘いつつ馬車に乗っていた。


 サスペンションを馬車に装備すれば振動を何とか抑えられそう、取り敢えず【錬成王】に訊ねれば必要な素材なんかも判るだろう。


 俺はガタゴトという振動に身を任せながらも、スキル【錬成王】の起動をして色々と作業した。


 只の鉄では錆びてしまうだろう、それは故障に繋がり易い筈である。


 懸架装置とも呼ばれる板バネを装着させれば、衝撃を和らげてくれるだろうから、こんなガタゴトとも“オサラバ”が出来てしまう筈だ。


 バネ鋼を造る為に必要な素材は今現在の持ち物でもイケる、だから俺は先ずはコレを造る為にも素材をスキルの投入口へと放り込む。


 勿論、辻馬車にそんな改造をする事なんて不可能だから、新たに自前の馬車を造る必要が有るのだろう。


 イグナート大陸を出るまでには造りたい処だ。


 暫くの時間が経ってサスペンションは完成し、魔鋼製の小盾も此方側用が出来上がっていた。


 小盾は剣士としての防御力を上げる為に必要、それに軽量化ヴィクトレドゥクションの魔法も籠めておけば尚良しだな。


 前の時には冒険者の男女が大慌てをしてくれていたからな、お陰様でこの魔鋼(スチルライト)製の小盾(バックラー)を完成させるまではいかなかったんだが……


 女性冒険者は助かった訳であり、一二〇万テランを一二ヶ月分割にて一〇万テランずつを支払って貰っているし、結果としてそれなりにお金も稼げる様に成っている。


 契約書の効力の為に、彼らは支払いをバックレる事が決して出来ない仕組みだから、定期的に借金がギルドへと支払われる事によってギルド預金が増えていく。


 魔鋼製の脛当てや腰当てや籠手を造って防御力の向上をしたい、それは俺だけでは無くランスの防御力を上げる為にも必要であろう。


 それに、スピアの手甲や脛当ても必要だよな、ミスティもケープだけでなくローブも更新しておきたい。


 取り敢えず、今直ぐに……とまではいかないのは仕方がないか。


「ケイン、そろそろ大火山の麓の村に着くよ」


「うん?」


 眠っている振りをして【錬成王】を使っていた訳だが、俺は若干ながら本当にウトウトとしていたのだけどミスティから肩を揺すられた。


「起きた?」


「ああ、起きた」


 麓の村――トラータ村と呼ばれているらしい、それなりに栄えてるのはダンジョンが在るからみたいだ、街にまで発展しなかったのは矢張りというべきなのか、魔物による大氾濫が起きたら恐ろしいからだろう。


「先ずトラータ村の宿に向かうよ、それから御試しでアルヴァン大火山のダンジョンに入ってみよっか?」


「そうだな」


「そうしようぜ」


「行こ行こ!」


 ミスティから促されて俺もランスもスピアも頷くと、アイテムバッグ内に仕舞ってあった武器や防具類を完全装備した上で魔導薬も携帯をするべく、泊まりで借りる事になった二階の宿泊部屋へと向かった。


 馬車の中では飽く迄も簡単な装備だけだった訳だが、ダンジョン攻略に向かうのであれば矢張り装備は完全にしないと事故が恐いからな。


「さ、行こうぜケイン!」


「ああ、ランス」


 未完成な装備は扨置き、デスコーピオンの甲殻鎧と革製の籠手や脛当てを装備、左腕に魔鋼製の盾を装着して腰にはミスリルの剣を佩く。


 ランスは盾無しで、背中に背負う形で鋼の槍を装備する。


 宿屋の前で合流した俺達四人は、取り敢えずだけどこの村に置かれた冒険者ギルドに向かうのだった。



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