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銀の騎士と黎明の星  作者: 月乃杜
第二章:獄焔剣
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第70話:BOSS部屋での戦闘

.

 レリーフの【15】がボス部屋に入れるレベルを示しているらしく、卦韻はそれを聴いてすぐにも理解をしたものの数字自体は見覚えが無い。


「確かにこれって、何で俺が読めたのかな~? な~んてなハハハ」


 取り敢えず笑って誤魔化すしか無かったけど、それを云ったら美衣奈も読めている事になる。


〔レリーフが数字を表しているっていうのは言われてたけど、こんなあっさりと解決するなんて〕


〔何か知らんが不思議な事が起こったのかな?〕


〔読めるって、これはいったい何処の文字?〕



 矢張りリスナー達もよく解らない文字らしい、そんな卦韻やリスナー達に対し柔らかな微笑みを浮かべ、ゆっくりとその小さな口を開く。


「これは、テラル文字……とでも云うのかな?」


「……え?」


 テラルといえば彼方側の惑星――世界名(ワールドネーム)が確かそうだった筈だ。


 卦韻は目を見開いて、胸の高鳴りが耳を強く衝いている。


(繋がりが確かに有った訳だ)


 ちらほらと彼方側との繋がりが見えていたし、ポーションの名前や魔物の名前など共通点が有ったけど、それに関してはファンタジー系のラノベや漫画では鉄板だったから気にならなかった。


 実際にポーションだのゴブリンだのコボルトだのは、ファンタジー系には何処にでも存在している名前なのだし気にする程でも無い訳だ。


 だけれど、“テラル”という世界名が出たからには矢っ張り繋がっているみたいだし、だとしたら美衣奈とミスティにも関係が有るのか?


 然しながら正直、訊くのはちょっとばかり怖いと思う。


(そういえば、美衣奈の俺の名前を呼ぶイントネーションがミスティと同じだった気がするよな)


 美衣奈とミスティは容姿も声も、それに性格や卦韻に対する考え方も全てが一致していたけど、二人は確かに一貫して『ケイン』だった。


(イグナートにも航った事だしな、色々と考えなきゃならないか)


 深呼吸からの溜息。


〔あの~、何の話を?〕


〔深い事を話してますね~〕


 リスナー達も困惑気味にコメントをしている。


「あ、私事でごめんね皆」


〔いやいや〕


〔仕方が無いよね〕


 美衣奈も悪いと思ったのか素直に謝罪をした。


「ケイン、それに関しては後から話し合おっか。今はボス部屋のホブゴブリンを斃しちゃおう」


「そ、そうだな……」


 今は目の前の事に確りと臨もうと卦韻は考えるしかない。


 卦韻は再び大きく深呼吸をして、その荘厳なる扉に手を掛ける。


 ゴゴゴゴッ! という、鈍くて地獄の底よりの地面を擦る音と共に両開きな金属の扉が開いた。


「さぁ、いよいよ御待ちかねのボス戦。奮闘をしちゃうよ!」


「応ともさっ!」


 卦韻は気を取り直すと、ボス部屋へと足を踏み入れる。


「グキャァッ!」


 巨大な鉄の剣――見た目からしてグレートソードだと思われる大剣、それを振り回すホブゴブリンは卦韻より一二〇cmは高いであろう三mを越える背丈、しかも筋骨が隆々で通常のゴブリンとは大違いだった。


「ホブゴブリン、初めて見た」


「フフ、そうだね~」


 美衣奈は既に魔力を魔法へと転換する為に身体を巡らせており、卦韻も右手の鋼鉄の剣と左腕の小盾を構えるとボス部屋に雪崩れ込む。


 ホブゴブリンはFランクの初心者ダンジョンでボスとして顕れたが、このホブゴブリンが他のダンジョンに出る場合では、前に卦韻が闘ったイレギュラーなゴブリンパンチャーと同じ、Cランクであったと云う。


「うりゃぁぁぁっ!」


 首根っこを狙っても恐らく意味は無いという、流石に単なるゴブリンよりは頭が良いから行き成り狙っても防がれるし、だから卦韻が先ず行うのは防がれる事を前提に、美衣奈の魔法を放つ隙作りの為の攻撃。


「ケギャッ!」


 大剣を用いての防御により思った通り防がれてしまうが、卦韻は反動を利用してホブゴブリンの頭を空中前転により飛び越えると背後へ。


 三m越えで重たい筋肉質な肉体を持つが故に、細かい動きを取れないからか背後に廻られてしまうと方向転換が難しく、卦韻は膝を曲げ右脹ら脛を狙って剣檄を浴びせてやる。


「チィッ!」


 然しながら筋肉の少ない脹ら脛とはいえ皮膚も硬質的で、卦韻の放った鋼鉄の剣による斬檄を殆んど通さないで防いでしまっていた。


 三mを越えるからか、矢張り下方からの攻撃には余り上手くは対応が出来ていないらしい。


 だけど肉体その物が鎧の如く。


「ケイン、避けて!」


「了解だ!」


 魔法の準備が完了したらしく声掛けをされて、卦韻は素早くホブゴブリンのすぐ傍から離れた。


隕鉄降雨(イェルンレグン)ッッ!」


 魔力を焼けた隕鉄に物質化し――飽く迄も一時的な物質化ではあるが――それを雨の如く降らせてやる。


「グキャァァァッ!」


 小さいが重量が普通より有る為、幾ら筋肉の鎧を持とうとも貫いて、多大なるダメージを与えていく。


 卦韻は鋼鉄の剣を手放してなり、唯一技能【錬成王】に仕舞ってあった聖霊剣クリスタリオンを取り出し、更には新たに魔鋼製の小盾をも取り出して装備した。


 先の鋼鉄の剣の単純な攻撃力は、ゲーム的に視れば聖霊剣と変わらないのだけど、実際の切れ味という意味で遥かに高い威力を持っている。


 若しこれがゲームなら、きっとどちらも攻撃力+四五くらいであるのかも知れない、然し現実には使われた鉱物の切れ味という意味で明らかに高められていた。


 普通に攻撃力が高いだけでは? とも思われがちだが、実際はそうでは無いという事みたいだ。


「健御雷神! 帝釈天!」


 そして一番の問題は武器としての強度が高い、卦韻が自身の肉体能力を上げる氣導術として扱う健御雷神、そして周囲に纏う事で全体的な増幅を行う氣導術の帝釈天を同時に行使した場合だと、通常金属の武器はその衝撃に耐えられない。


 だからこそ卦韻は、聖霊剣クリスタリオンに換えたのである。


 ガリガリと削られていく生命力と精神力と更には体力、早めにケリを着けないと動けなく成ってしまうだろうから、卦韻はすぐにも斃すべく地面を蹴って駆け出す。


雷鳴(トルデンスクラム)ッ!」


 右腕を挙げて人指し指のみを伸ばした状態にて魔法を撃つと、天井からけたたましい爆音と共に落雷が放たれてホブゴブリンを打ち据えた。


「ブギャァァッ!?」


 雷に打たれた事により悲鳴を上げてのた打ち回るホブゴブリン、卦韻はソイツに心臓への一撃をぶつけてやるが完全には刺さらない。


「くっ!」


 一旦抜いて再び刺そうとするも、ホブゴブリンが起き上がってしまった為に地面へ飛び降りる。


「ギギャァァァッ!」


「くっ、このっ!」


 大剣を出鱈目にブンブンッと振り回して来て、危険が過ぎて小盾を使って防ぐ卦韻。


 風を切る音が耳障りに感じる程に恐ろしいが、身体強化と外骨格化の氣導術を駆使しているから何とか吹き飛ばされないが、小盾も魔鋼製で無ければ破壊されていたかも知れないと、卦韻は脅威に感じてしまう。


「チィッ! 下手に躱せば美衣奈を巻き込む!」


 舌打ちをしながら援護を待つ。


「すぐに躱して!」


 卦韻はゴロゴロと地面を転がる様に躱した。


風爆弾(ヴィンドボンベ)ッ!」


 見え難いけど一二もの超圧縮された空気の塊が放たれていき、その悉くがホブゴブリンの腕や脚や胴体にぶつかっては随時破裂をしていく。


「グギャャッ!? ガギャァァァァァァッ!」


 血に塗れるホブゴブリンは吹き飛んで倒れた。


鋭利化(シェルペンデ)ッ!」


 美衣奈が放った魔法の輝きが卦韻の持つ聖霊剣に宿る。


「ああああああああっっ!」


 斬っ!


「グギャァァァァアアッ!」


 ホブゴブリンの首を斬り落とす事は流石に出来なかったものの、頸動脈だけは何とか斬る事が叶った事によって大量の血が噴出した。


 すぐ傍に居たのと位置取りが悪かったのが相俟ってか、噴出した血を諸に頭から被ってしまう。


「うべっ!?」


 気持ち悪いと思ったのも仕方が無い事だった。


 とはいえ元々が魔素で創られた魔物であったが故に、魔物自体が生命を喪ったその瞬間に掛かった血液も魔素へと還ってしまった様だ。


 その場に残されていたのはCランクの魔核と、ホブゴブリンが持っていたグレートソードのみ。


 体力面が削られていたから膝を付いてしまった卦韻、オマケに美衣奈も何故か血の気が引いており少しばかり顔色が悪くなっていた。


「本来、四人以上のパーティで闘うべきだったからキツいね」


 小さく呟く美衣奈。


〔お、おお……〕


〔ホブゴブリンの(たま)ぁ、取ったどぉぉぉぉぉぉぉおおおおっ!〕


〔最低限でも、Eランクが四人パーティで闘う筈がマジか!?〕


 沸いているリスナー達。


 レリーフに有った【15】の文字通りレベル一五に成らねば入れない、そしてこれが最低限であるけど実際にはパーティで四人~六人以上が居るのが推奨されており、本来ならばDランクの人間を入れるべき事案。


 少なくとも、Eランクが三人以下で闘うのは決して推奨はされない。


 曲がり形にも闘えたのは、美衣奈の魔法と卦韻の氣導術が有ったればこそであったのだろう。



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