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銀の騎士と黎明の星  作者: 月乃杜
第二章:獄焔剣
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第68話:いざ行かん最下層へ

.

「あれ? ケイン、御機嫌だねぇ」


「ん、まぁな」


 朝餉を摂った卦韻がテンションMAXで外へと出ると、其処にはいつもの如く美衣奈が近くで待っていて気軽に気さくに話し掛けてくる。


「俺の造ったポーションを父さんが随分と喜んでくれてね」


「デアポーションを? それは良かったね卦韻」


「ああ」


 嬉しそうな表情で卦韻は頷くが、ちょっとした考えがふと浮かぶ。


(あれ? 美衣奈にデアポーションの名前を教えていたっけかな?)


 此方側で美衣奈には、デアポーションの名前を教えていなかった気はするが兎に角、知っているのなら話は早いから気にしない事にする。


「さぁ、今日の配信攻略こそ最下層まで降りるからね!」


「応っ! 槍太と璃亜も最下層を目指して瑠亞姉さんと頑張っているらしいからな。俺達もやり遂げたい」


「うん、そうだね!」


 遣る気の表明をした二人は早速、愛坂学園の裏山を目指してレッツゴーとばかりに歩き出した。


 この裏山は予めダンジョンが出来るのを判ってたかの如く愛坂惣元、この裏山を中心として広い土地を学園の敷地として買い取ったのだと、卦韻はその様に聴いている。


 それが故に冒険者ギルドに意図的に近い作りをしており態々、魔核やドロップアイテムの収容場所を倉庫として建設もしていたし、受付嬢が立つカウンター席を置いた部屋も確りと造っていた。


 裏山自体もダンジョンの封印の為の措置すらも行われ、決して溢れ出さない様に冒険者志望である生徒達に定期的な討伐もさせている。


 裏山の初心者ダンジョンに着き、いつもの通り卦韻と美衣奈は冒険者の出で立ちへと着替えた。


 冒険者用のアンダースーツは【AISAKA】謹製、その上に卦韻は漆黒のデスコーピオンの甲殻鎧(キュイラス)を装着していき、更には魔鋼製の籠手(ヴァンブレイス)脛当て(グリーブ)腰当て(フォールド)を新たに装備して、左腰には鋼鉄製の剣を佩いて装備完了である。


 卦韻のそれは飽く迄も軽装型の鎧である為に、デザイン的には可成りシンプルに纏まっていた。


 例えば籠手も二の腕や手首や指を護るタイプでは無いし、脛当ても膝の部位まで護るタイプでは無くて、自身の動きを阻害しない様な物だ。


 要は関節部に干渉をしない様に造られている、勿論だがそんな軽装では危険は免れないだろう。


 だからこそ、防御系の魔法を掛けた魔装具である必要が有ったのだ。


 美衣奈の装いはいつも使っている杖とローブ、更には新しく水色のケープを肩に装備している。


 ケープその物は前々から準備をしていたけど、最近に成って卦韻が魔法を掛けて魔装具化した。


 然し、卦韻は頭を抱える。


 唯でさえ美衣奈は彼方側のミスティと瓜二つ、それなのにローブ姿が違うけど水色のケープを肩に装備している姿、これがミスティにダブって見えて困ってしまった。


 普段から分けて考えているのに、美衣奈はまるで敢えてミスティのコスプレ? をしている様な……そんな気がするくらいに寄せている。


 だけれど、卦韻は美衣奈に彼方側に関する話を一切していない。


 意図して寄せているなら詰まり?


 ポーチを腰に装着した美衣奈は、配信用ドローンのスイッチを入れてスマホでサイトも開いた。


「God morgen!」


〔グモ~ン〕


〔おっは~〕


 相も変わらずノリノリなリスナー達が良き反応を返してくれる。


「前回はニ〇階層まで降りたしね、だから今日こそは最下層たる第二五階層まで行く心算だよ!」


〔おお!〕


〔遂に来たか!〕


〔第二五階層、初心者ダンジョンの全てがこれだけなんだよな~〕


 初心者ダンジョン、それがそんな風に呼ばれる所以は二つ。


 一つは第二五階層という比較的に浅い階層までしか無い点、そして今一つが基本的に弱めな魔物しか顕れていなかったという点。


 後者は崩れ去るかの様に、今現在は彼方此方でイレギュラーな魔物共が初心者ダンジョンに顕れている。


「行くよ!」


「ああっ!」


 六角柱の水晶体による転移を行う二人が向かうのは第二〇階層、其処から更なる下の階層へと向かう為の足掛かりとする為に……だ。


 二人は転移して足を踏み入れたのは第二〇階層という、ダンジョンの全体的に視れば未だに中層でしかない階層だが、初心者ダンジョンという括りの中では下層域となる場所。


 黒い巨大な猫に近い見た目をした獣が顕れて、牙を剥き出しにしつつ此方へと疾走をして来た。


 跳躍をしながら噛み付きに来た、それを卦韻は高速で獣を横薙ぎにして首を断ち斬ってやる。


「グギャッ!」


 泣き別れして落ちた首が体躯と共に魔素へと還ると、落ちていたのは小さめな魔核と獣系が割りとドロップをする毛皮であったと云う。


「“ブラックパンサーの毛皮”?」


 卦韻の【真鑑定】が教えてくれた魔物の名前。


「黒豹か~」


 成程、日本で自生をしている訳では無いからか卦韻も見た事が無かった為、すぐに先程の魔物の正体には気付けなかったという訳だ。


「そういや、さっきのブラックパンサーにしても今までのスパイダーとかにしても、普通に地球に生息している生き物が魔物として出てるよな? 向こうに出たシルヴェンウルフだってそうだし」


 毛皮が銀色というだけで、巨大な狼の姿をしていた事に違いはない。


「別におかしくないよ。地球にだって魔物の目撃例は有るじゃない?」


「……え?」


〔は?〕


〔魔物の目撃例とは?〕


〔それって、一〇年前の大氾濫じゃないよな?〕


 困惑したのは卦韻だけじゃなく、リスナー達も矢張り困惑している。


「居るよね? 猫又とか一反木綿とか九尾の狐、卦韻も知ってる筈」


 美衣奈が言っているのは魔物なのだろうか? 何て考えてしまう。


〔妖怪じゃん!?〕


〔妖怪だよな?〕


〔妖怪だね~〕


 美衣奈が言っていたのは妖怪というカテゴリーであって、魔物とは全くの別物であるのが卦韻やリスナーの考えだったが、どうやら彼女の考えはまた違うみたいである。


「古今東西の東洋や西洋なんかに顕れたとされている異訪なる存在、それこそ妖精やら妖怪やらお呼ばれる事もあるアレらの一部は、地球の薄い魔素から誕生した魔物と同一な存在なんだよね」


「マ、マジかよ」


 驚くべき事実ではないか?


「昔の人は現代人と違って迷信を本気で信じていたり、神様への信仰が厚かったりって想像力も豊かだったからね。云うよね? 『幽霊の正体見たり枯れ尾花』ってさ。昔の人は暗がりで枯れ尾花を見たら幽霊が出たって思っていたんだよ」


 美衣奈が云うのは詰まり、そんな人間の想像力が薄い魔素の中から妖精や妖怪――魔物を産み出しているのだと、ダンジョンに顕れる魔物という存在が獣や蟲などを模すのは、現代人が直に闘えない存在としての畏れを糧にしているからだとか。


 それと同時に、ゲームなどの知識からゴブリンやコボルトなども産まれ出でる為、魔素から産まれ出でたドラゴンなんて存在も顕れていた。


「知らなかったな」


〔俺も知らんかったわ〕


〔私も知らなかった〕


〔僕もっす〕


 相変わらず博識な美衣奈に驚愕するしかない。


「ケイン、これでも私は一〇年以上も前から研究をしていたんだよ。まぁ、お母さんの故郷でなんだけど」


「そうなんだな」


 どうやら、美衣奈は母の愛坂扇歌の故郷でダンジョンに関する研究を幼いながら行ってたらしく、博識になったのはその成果と聴かされる。


黒豹(ブラックパンサー)の毛皮は魔物としてはEランクだけどね、実は割りとコレって高値で売却が出来るんだよ」


「へぇ、幾らくらい?」


「一二万円くらいだね」


高っ価(たっか)っ!?」


 普通の豹皮だと数万円で一〇万円もいかない、卦韻は素直に高がEランクの魔物が高価だった。


「だから黒豹の毛皮は卦韻のアイテムバッグの中に容れとくと良いよ」


「そうしとくよ」


 今なら卦韻は既に魔導具や魔導薬の売却金で、それなりにお金は獲ているから一二万円くらいなら今や端した金、だけれど折角の稼ぎなのだから有り難く獲たいと思う卦韻。


「取り敢えず、ブラックパンサーの毛皮を換金したら美味しい物を食べに行こうか? 美衣奈」


「うん、良いね」


 ニコリと、魅惑的な微笑みを浮かべて頷いてくれるのだった。



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