第64話:初の冒険者ギルド
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港町パルツィアに在る冒険者ギルドはすぐにも見付かった為、俺達は扉を開いてギルドの内部へと入ると幾つかのカウンター席が有る。
カウンター席に立つのは相当美女な受付嬢達であり、正しく冒険者ギルドの顔だという彼女達は冷ややかな表情だったり、作り笑顔であったり、又は本当に素晴らしいばかりの満面の笑顔だったりと、様々な表情を冒険者や依頼人に向けていた。
体型も様々で胸部装甲が御立派な女性が居て、逆に背丈は高いけど胸部装甲が余り無い女性なども居るし、まるで子供の如くな少女だったりと、受付嬢というギルドの顔は容姿端麗だったんだ。
「はぁ、出来るだけ受付嬢と会わせたくなかったんだよね。況してや、エレメティア王国の王都にはメルティエラ様まで居るんだから」
ボソッと呟くミスティの言葉に頭の中へ浮かぶ映像、それは一二年前の事件で僅か一二歳にして剣士の極致を突き進む天剣姫の姿だった。
特殊上級職“天剣姫”は幼かったケイン・ユラナスの記憶に鮮烈な跡を残し、普段は彼の記憶には振り回されない俺でさえ思い出す程。
“天剣姫”メルティエラ・エル・シエラスティという貴族家のお嬢様、御歳は二四歳で俺からしたら八歳も年齢が上だけど憧れの人かね?
剣士としてもそうなのだが血筋の上でも完璧、誰もが羨む美貌を持ちながら闘う者としては凛々しくて、そして普段の性格は決して高圧的では決して無く、寧ろ楚々として優雅を絵に描いたみたいな人物だとか。
美しい銀髪をストレートに腰にまで伸ばして、銀に程近い灰色の瞳を持つ当時の容姿なら可愛らしい、今なら恐らくは美麗だと思われる。
何故か現在はエレメティア王国の王都スピリチアにて、ミスティの言では冒険者ギルドの受付嬢をしているみたいな言い方であったと云う。
シエラスティを家名に持つ彼女、この家は嘗ての王弟が興した家であり公爵家であるという事、即ちエレメティア王国の王家に列なる。
それにも拘わらず……だ。
俺の脳裏へと浮かんだのは未だに一二歳の頃の、幼少の砌の姿でしかなかったけどミスティが会わせたくないとまで言う、それなら恐らくはあの頃の姿を大人にしたのが今現在の彼女なのだろう。
確かに面白くは無いか、幼馴染みが女にデレッとしているのは。
「ほら、ケイン」
「お、おお。判ってるよ」
空いているカウンターに向かう俺達に対して、受付嬢のお姉さんがニコリと微笑みを浮かべた。
「ギルドへようこそ、今回はどの様な御用向きでしょうか?」
「私達、全員が冒険者ギルドに入りたいんだ」
「畏まりました。それでは早速、御手続きを致しますね」
手続きそれ自体は其処まで複雑なものじゃないみたいで、名前と出身地と現在の存在力を羊皮紙に書いて渡すだけで終わったからだ。
彼女から受けた説明に関してはラノベなんかでよく書かれている通り、だいたいが聴かなくても判る程度の事を聴かされるだけだった。
内容的には同ランク以上の依頼は受けられないという事、逆に一段下よりランクの低い依頼は受けられないという事、依頼を半年以上も受けなかったらランクが下がるし、最低位ランクであった場合は除籍も有り得るという事など。
それから冒険者カードを渡されればそれで用事は全てが済む。
渡されたカードは何らかの機能が付いた魔法のカードでは無く、どうやらちょと軽めな金属製というだけの代物でしかなかった様だ。
「ギルドカードの再発行にはお金が掛かります。其処は御留意をしておいて下さいね?」
「判りました」
「それでは、サリア・エメリアが御案内させて戴きました」
サリア・エメリアさんが長い水色の髪の毛を揺らしながら、受付嬢としては完璧なる良い笑顔を浮かべながら頭を下げて挨拶をしてきた。
受け取ったカードを仕舞ったら、俺達は折角だから依頼板を見る。
「へぇ、これが冒険者ギルドの依頼板なんだな」
「そうだね。こうして住人達による依頼を冒険者が受けて、彼らは日々の生きる糧を獲てるんだ」
「成程な~」
そんな風に言うと可成りの生々しい話だよな。
「草むしり、ドブ川の掃除、Fランクが受けられる依頼なんてのは矢っ張り高が知れているな~」
「そりゃね、Fランクなんて云わば新人だもの。そんな新人に例えば、戦狼を斃せなんて土台無理だしね」
「そうだろうな」
新人がバトルウルフを斃すのは確かに不可能、俺達だったからこそ斃せたんだとも云えるんだ。
尤も、あれではダンジョンの闘いに使えない。
何故なら、スピアはダメージから気絶をしてしまっていたし、ランスも疲労やダメージによって動きが制限され、ミスティだって余りにも余裕が無くなっていて、俺は俺で倶利伽羅を使ったりしていたから、短期決戦は出来てもダンジョン探索をするなんてとても無理だ。
存在力が低い内だとどうしても、生命力や精神力が足りてないから。
「どれか受けてみる?」
「良いのか? 獄焔剣レヴィアートを手に入れる為に、ダンジョンに入らないといけないだろ?」
「確かに、出来る限り早くというのは有るけど。別にそれは私の想いに過ぎないよ。ケインが好きな様に遣れば良いんだからさ」
「それならちょっと冒険者として遣ってみたい」
「良いな、俺もだぜ」
「ボクもボクも!」
俺の意見に賛成をするランスと、それに追従をする形でスピアも跳び跳ねながら賛成を示した。
「じゃ、そうしよっか。ケインはどんな依頼をしてみたい?」
「そうだな……討伐依頼はFランクだと大した事が無いしな。それなら採取依頼でもしようかな」
流石にドブ川掃除はちょっと遠慮をしたいし、討伐なんてラットやバット退治程度だからな~。
ゴブリンやコボルトでさえEランクなんだよ。
「じゃあ、ポーション造りには欠かせない薬草を採取しよっか」
「薬草か……」
彼方側でもプチポーションは兎も角としても、未だ原材料である薬草は見た事が無かったよな。
確か彼方側で美衣奈からは、癒し草という名前だった……とは聴いていたけど。
「これで良い?」
「癒し草を五〇株、一株で一二テランの六〇〇テランか。これは価格的にどうなんだろうか?」
「うん、一般的な依頼料よりはちょっと高め」
「一般的には?」
「八テランくらいかな?」
原材料に過ぎないからか、ポーションの価格がそれなりにするから安いと感じてしまうよな。
けど取り敢えず原材料なんだからそんな物かな? 何て考えながら俺は依頼板から依頼表を外すと、それを手に先程の受付嬢の許へそそくさと持っていく。
「これをお願いします」
「はい、承りました」
羊皮紙には――[Fランク 癒し草を五〇株の採取 一株につき八テラン 補足事項:五〇株以上の場合も買い取り有り パーラ・ソーラ]と書かれており、俺はサリアさんから認印を捺印して貰ってミスティ達の所へと戻った。
「待たせたな」
「認印は貰えたね、それじゃ平原に行こうか?」
「平原?」
「癒し草の群生地みたいなのがちゃんと在るんだけど、其処は割りと魔物に溢れている地なんだ。ダンジョンでは無くとも魔素さえ在れば凝り固まって魔核は産まれ、魔物としての姿を結実化させてしまうからね」
「それで冒険者が要るのか」
「大丈夫、この大陸の平原は魔素を溜め込み難い土地柄から、顕れる魔物もDランクは越えない」
どうやらミスティからしたなら、其処いら辺のリサーチもバッチリであったらしい。
まるで、出来る秘書である。
パルツィアを出て真っ直ぐ東に向かうと更には北上、単なる道だったのが緑に溢れ始めて確かに平原と呼べそうな土地に成っていく。
否、それは原野と呼んだ方が良さそうだった。
「そういや、癒し草だったけ? ケインはどんなのか判るか?」
「いや、見た事が無いな」
ランスに言われて気付いたけど、よく考えたら俺はポーションの原材料の癒し草を見た事が無いじゃないか? どうやって捜すんだ?
「三人共、これを」
ミスティから渡されたのは紙で、それには恐らくだけど癒し草だと思われる絵が描かれている。
「それを元にして捜せば良いよ。きっと判んないだろうと思ったからね、用意しといたんだよ」
「「「準備万端過ぎる!」」」
その余りにも用意が周到なミスティの手際の良さに、俺もランスもスピアも声を揃えて同じ科白を宣ってしまうものだった。
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