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銀の騎士と黎明の星  作者: 月乃杜
第二章:獄焔剣
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第62話:軽量化

.

「これが魔核……これって、明らかにCランクの魔核じゃないか?」


 拾った魔核はDランクより澄んだ色味なのだ。


「みたいだね、多分だけどイレギュラーなんだ」


「マジか、強いなとは思ったけど。ひょっとして、魔物が進化を?」


「有り得るかもね」


 卦韻は割りとジョークの心算で言ったのだが、当の美衣奈は至極真面目な表情で返してくる。


「それでか、俺のレベルが一七に上がったのは」


「あ、上がったんだ」


 実は慣れて来たのと、先程までの闘いで心臓が高鳴っていた事も相俟って、レベルアップだとは思っていなかったのが僅かな能力の向上で、卦韻は自身のレベルが上がったのだと理解をした。


「この宝玉は何だ? ゴブリンパンチャーのドロップか?」


〔珍しい、技能宝玉(スキルジェム)だね」


「スキルジェム?」


 大きさは野球のボールくらいか、色は青い硝子みたいな手触りをした珠、それがスキルの名を冠した宝玉の名前であるのだと云う。


〔スキルジェムって、使えばスキルを入手が出来るってやつ? マジか、青いって事はRだけど〕


〔茶がCで赤がSRで金がSSR、んで虹がURとか云われてるな〕


〔Cでも数十万で取り引きされてるんだろう?〕


〔Rならその一〇倍はした筈〕


 相変わらずの情報通なリスナー達が俄かに騒いでいるのは、スキルジェムと呼ばれているこの青い宝玉の有用性と稀少性故の事らしい。


「スキル次第では、ケインが売るなり使うなりすれば良いと思うよ」


「俺が決めて良いのか?」


「そりゃ、ケインが斃した魔物が落としたんだもの」


 ちょっとしたオーバーアクションを執りながら言う美衣奈。


「判った、帰ったら父さん達にも相談してみる」


「そうだね、慎吾さんも理央さんも歴戦の冒険者だから」


 話し合いも終わり、卦韻はゴブリンパンチャーから獲た魔核と技能宝玉をバッグの中に仕舞う。


「ふぅ、丁度良く第二〇階層だから戻ろっか?」


「そうするか、疲れたし」


 イレギュラーが顕れた場合は大事を取って戻る事を決めていた訳で、Cランクの魔核を落としはしたが、下手をしたら完全な上澄みだった。


 Eランクの最上位なら卦韻でも充分に斃せる、Dランクの下位程度なら普通に斃せるであろう。


 だけど流石にCランクともなると可成りキツくなってくるし、それの上澄みなら言わずもがな。


「それじゃ、まだダンジョンの奥にはなるんだけど……Vi ses!」


〔今回も見応えあったな~〕


〔グッバイ!〕


 パタパタと手を振りながら笑顔を浮かべると、配信用ドローンのスイッチを切ってしまう。


「ハァ、ごめんねケイン」


「何で謝る? 見誤って一人で闘うって選択をしたのは俺だぞ」


「それは、そうかもだけど……ね」


 それを言うなら、卦韻を救出しないで一人闘わせる事の選択をしたのは、正しく美衣奈である。


「またイレギュラーが出ない内に戻るよケイン」


「了解した」


 ルームを見付けるのは意外と容易く終わって、二人は巨大な六角柱の水晶体を使って第一層に。


「折角のCランクの魔核だし、アイテムポーチを造るか?」


 卦韻は訊ねてみた。


「アレ、ケインの好きに使ってしまっても構わないんだよ?」


 だけど返ってきた言葉はちょっと意外なもの。


「好きにとは?」


「今回、防御力が低かった。だからケインの防御力を上げるとか。私のはナイトアントの魔核で造ったポーチで充分なんだから……ね?」


「そうか?」


「上級の防御魔法は理央さんに、小母様に見せて貰ったんだよね? きっと、Cランクの魔核なら附与をする事も出来るだろうから」


「判ったよ、俺が出来る最大限の防具にするよ」


「うん、そうして」


 第一層に戻ってきた二人、卦韻はアイテムバッグの中の普段着に着替え、美衣奈もボストンバッグの中の普段着を取り出して着替えた。


「じゃあ、魔核を換金してくるから待っててね」


「判ったよ」


 男の先生がカウンターに居たなら構わないが、また奈々歌先生みたいな美人先生だと鼻の下を伸ばすかもだし、魔核の換金くらいならば自分だけでも充分だとして、現在は一人での換金をしている。


 とはいえ、魔核は確かに換金が可能であるし、無公害エネルギーとしての需要も見込まれているものの、卦韻なら魔装具や魔導具に果ては魔導薬などを造り出すのに必要不可欠な物でもあった。


 だからこそ、少しでもランクの互い魔核に関しては換金をしない方針で、先のゴブリンパンチャーは元よりナイトアントの魔核も、矢っ張りと云うべきで全く換金をしていないのが現状となっている。


「お待たせ、ケイン」


 FランクとEランクの魔核だけ、その程度なら当然ながら大した価格にはならないからだろう、パーティ用資金に幾らか入れたら余り無い。


 まぁ、高校生が持つのには過ぎた金額に成りつつあるのだけれど。


 Fランクの魔核は平均で数百円、Eランクなら平均で二〇〇〇円か其処ら程度だから仕方無い。


 Dランクに達すると、漸く魔核の質により一万円に届く価格帯だ。


 存外と安く、ドロップアイテムの方が高価格と成るのは、矢張り此方の稀少性が高いからなのだろう。


「ねぇ、どんな風に防具を改良をするのかな?」


「そうだな……デスコーピオンの甲殻鎧自体は変えない、籠手や脚当てを増やして防御力の向上をして、腰回りも増やさないといけないか」


 勿論、魔核もゴブリンパンチャーが残した物を使って、上級の防御魔法を是非とも籠めておきたい処だ。


「防御力は大事だけど、それだと重くなり過ぎないかな?」


「軽量化の魔法を見せて貰えば附与が出来るし、ゴチャゴチャと成り過ぎないシンプルデザインを心掛けるさ。動き易さも重視したいからな」


 卦韻は飽く迄も剣士、重装備を是としているのは“重”の名を冠するか騎士系の職業スキル持ち。


 但し、軽騎士は含まれない。


 下級職の騎士か装士なんかがこれに当たるし、中級職の聖騎士や重装士といった具合に重装備を使い熟す者が居るし、果てには槍太みたいな槍士や槍騎士も好みに依るけど、矢張り重装備を使っているのだとか。


「なら軽量化を見せておくよ」


「ああ、そりゃ使えるよな」


「まぁね~」


 軽量化――それ自体は単なる下位の魔法でしかない、その使い方自体は幾つか考えられているのだろう、だが単純に物を軽くするのが一般的な使い方だというのは間違いない。


 美衣奈は腹の底に在る魔力溜まりから汲み上げて喚起させていき、その魔力を励起させて血流の如く魔力回路へと強く流していく。


 腕に流した魔力を魔導紋へ構築、それを魔法陣に変換形成をして……


軽量化ヴィクトレドゥクションッ!」


 “力成す言霊”を、その可愛らしい口より紡ぎ出した。


「おっ!」


 確かに今、卦韻の身体は若干ながら軽くなっているらしい。


「下位の魔法だから消費も大した量じゃないし、軽くしていられるのも三割程度、時間も僅か三分程度に過ぎないんだ。でもケインが魔装具に附与をする分には何ら問題無いよ」


 卦韻の身長は一八cmで体重が七五kgという、それなりの体格だったりする訳だが、体重が三割減という事は軽量化され今は五二.五kg。


 急に三割も減れば割かしフワッとした感覚だ。


「確かに色々と使えそうな魔法だ、これなら普通に鎧の全体的な重量も軽減が出来そうで助かる」


「どういたしまして♪」


 美衣奈は卦韻からの御礼に対して嬉しそうな、それでいて複雑な表情と成って笑顔を浮かべる。


「私のローブはまだ軽めだから掛けて貰う意味は無いかな? 槍太と璃亜の装備品にはの軽量化ヴィクトレドゥクションを掛けて上げた方が良いかも知れないよね」


「そうだな、二人の装備品は金属製な訳だから」


「確か璃亜の手甲だけじゃ無くて、プロテクターも金属製に変えるんだっけ? 心臓を守る用に」


「ああ、そうなる」


 主に左肩と心臓を鎧うのが璃亜用となるプロテクター、脚当てと腕当てと腰当ても着ける事になるので割かし重く成ってしまうものだ。


 勿論、飽く迄も軽く守る為の防具なのだから、彼女の俊敏さが損なわれてしまっては全く意味が無い。


「実際、少し甘く見積もっていた。ゴブリンパンチャーとのバトルでそれがよく解ったからな」


 あのゴブリンパンチャーは、デスコーピオンの甲殻鎧を穿ってきた程の力を示してきたのだ。


 勝って兜の緒を締めろとは諺というやつだが、正しくそれは卦韻が心掛けなければならない事。


 幸か不幸か、卦韻は自主的にこの事に気付けた訳で、そんな彼を美衣奈は微笑みながら見守っていた。


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