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銀の騎士と黎明の星  作者: 月乃杜
第二章:獄焔剣
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第60話:目指すは二〇階層

.

 焼け焦げたセンチピードが崩れて魔素へ還り、其処に残されていたのは一個の魔核のみである。


〔お見事!〕


〔最早、Eランクなんて敵じゃ無さそうだよね〕


〔連携、お疲れっす〕


 卦韻はセンチピードが落とした魔核を美衣奈に渡した。


「Eランクだと容量は二畳くらいだったっけ?」


「そうだな。Fランクだと感覚的に一畳程度か」


「それでも低ランクの冒険者には充分だろうね」


 ランクの低い魔核は大した大きさでは無いし、ドロップアイテムも実にドロップ確率は低いものだから、低ランクでは矢張り小さい物だ。


 Cランクにもなれば、それなりの大きさな物も増えていくけど。


 実際に、卦韻が彼方側で斃したバトルウルフの毛皮や、此方側で水無瑠亞が斃したシルヴェンウルフの毛皮は相当な大きさである。


 魔核も大きさが随分と変わるが、魔物の体躯が大きいと魔核の大きさも相応だけど、その場合も魔核の純度が低いから値段帯は同じだ。


 大きさと純度が値段に関わる。


 小さくて純度が高いEランク、大きくて純度が低いEランク、どちらもEランクなのだから値段的には大した違いが無いという訳だ。


 これは魔導具や魔装具の方にも適用がされる。


「これを使うべきかな?」


「これだとさっきも美衣奈が言っていた通りで、二畳くらいの広さにしかならない。Dランクなら少なくとも四畳以上には成ると思うんだ」


「だったらイレギュラーを待つべきなのかな?」


「この初心者ダンジョンでは通常、Dランクの魔物は出ない筈からな」


 初心者ダンジョンに出てくるのは通常だとEランクまで、イレギュラーの魔物が顕れた場合にはDランク以上の魔物が顕れる事になる訳だ。


「まだDランクの魔核はナイトアントのやつが残っている訳し、それを使って美衣奈用のアイテムポーチを造ろうかと思うけど?」


「あ、そうしてくれる?」


「判った」


 卦韻の提案は美衣奈にとって嬉しい事だから、断ってしまう理由などは何処にも有りはしない。


 当然の事ながら、美衣奈は喜んで承諾をした。


〔あの~〕


「あ、ごめんなさい。此方事で盛り上がっちゃったね。ケインに新しい魔導具を造って貰うのに、必要な魔核をどうするかって話だよ」


〔ほほ~〕


〔詰まり、例の鏡と同じくらい冒険者にとっては有用な物が?〕


 流石は良質なリスナー故に俄然、この話題には食い付いて来た。


「何と、遂に私の手にアイテムボックスを体現した魔導具が!」


〔な……〕


〔何だってぇぇぇぇぇっ!?〕


 本当に余りにもノリが良すぎるリスナー達に対して、卦韻も美衣奈も思わず苦笑いを浮かべるしかない。


〔けど、今まで冒険者はアイテムボックス系ってホントに無かったんだな。不便だったんじゃ?〕


「不便だったみたいだよ。私はまだ一六歳未満だったから、流石に実感が出来てはいないけどね」


 約一六年前にダンジョンが顕れて依頼、ラノベ宜しくアイテムボックスなんかも考えられたが、ある程度は居る魔工師も頭を悩ませていた。


 それは筆頭格の冒険者にして魔工師でもある処の楠葉慎吾も同様、ステータスを視る手段やアイテムボックスは全く造れなかったのだ。


 他にも例えば生命さえ残っていれば如何なダメージも快復、精神力や魔力や氣力や霊力や念力も最大にまで戻す夢の様な霊薬なども欲しい、それだって全く造れる事は無かったから本当に頭を悩ませている。


 卦韻が新たに造れる様に成った新型ポーションも矢張りそうで、現状でレシピが判明しているのはハイポーションまでであり、エクスポーションやフルポーションみたいな強力な回復魔導薬は全くレシピが判明していないから、ダンジョンにて現物を手に入れるしか無かった。


 そんな中で卦韻は彼方側で新型ポーション開発に成功しており、これもエクスポーション程で無いとはいえハイポーションで治し切れない、そんな大きなダメージですらも治せる強力な魔導薬と成っている。


 ともあれ、故に運び屋的な運搬者(ポーター)がダンジョン探索には必要不可欠、そして一線級な冒険者をまさか運搬者として使う訳にはいかない。


 よって、慎吾も已む無しとして冒険者ランクが低い者を雇い入れて、その上で彼らを護る為の人員を増やし配置する必要性に駆られていた。


 運搬者にはCランク、護り手にはBランク冒険者を雇っており、Aランク~ホルダーたるSランク以上が直接的な戦闘を担っていく手法だ。


「さぁ、二〇階層を目指すよ!」


「応っ!」


 暫く歩いていたら、青銅の剣を持つゴブリンソードマンと青銅の槍を持つゴブリンソルジャーが顕れた。


「イレギュラーじゃないね」


「余りイレギュラーを望むのも良くは無いけど」


「FランクやEランクじゃ、流石にもう……ね」


「それで北海道みたいな、Bランクが出たら大変に成るだろうに」


 卦韻の指摘は特に間違ってない、事実として北海道では瑠亞が率いた槍太や璃亜も、北海道の初心者ダンジョンでBランクのシルヴェンウルフが顕れた為、瑠亞が居たから特に大変では無かったけれども、大怪我をした冒険者も居たらしい。


 何だか逸っている美衣奈に驚愕ばかりだった。


 武器を構えて襲ってくるゴブリンソードマンとゴブリンソルジャー、卦韻は鋼鉄の剣でソードマンの方の青銅の剣を斬り落とす。


「哈っ!」


「クギャッ!?」


 そして即刻、卦韻が首を叩き落としてやると、ゴブリンソードマンは悲鳴を上げて死亡した。


「ギャキャッ!」


 もう一匹のゴブリンソルジャーが槍を構えて突いて来る。 


氷槍(イッスパイ)ッ!」


「ギャウッ!」


 逆にド頭の眉間に氷の槍が命中、たったの一本の氷槍がゴブリンソルジャーの生命を奪った為、魔素に還って魔核と青銅の槍が落ちた。


「高々、Eランクの小鬼兵士に敗けたりしない」


 落ちていたドロップアイテムたる青銅の槍は、矢張り雑じり気が多くて純度の低い青銅合金製。


 はっきり云って安物でしかない、青銅というだけでも安いのに雑じり気ばかりの金属では二束三文にしか成らず、恐らくだけど一〇〇〇円未満にしか成らないだろう。


 純度が高ければもう少し高価(たか)かったろうけれど。


 再び歩いてみると、黒い毛皮のホーンラビットが跳ねてくる。


「あの角兎はEランクだよ、白じゃなく黒い毛皮だからね」


「特徴は?」


「白い角兎と変わらない、単にDランクの黒角兎は能力が全体的に白角兎より、高まっているだけだよ」


 美衣奈へ急襲をしてくる黒いホーンラビット、疾い動きで力も強いからか、ヒラリと美衣奈が躱した先で壁にその角が深くめり込んでいる辺りはEランクらしい。


 成程、白いホーンラビットなら角のめり込みは殆んど無かったろう、然し黒いホーンラビットの角は根元まで突き刺さってしまっている。


「お・マ・ヌ・ケ・さん♪」


 護身用に持っていた短刀を手にした美衣奈は、それで慌てる黒いホーンラビットの頸動脈の辺りを掻き切る、シュバァァァッ! と大量の出血が成されたかと思うと、ホーンラビットはくたばったのか魔素へと還って肉と魔核を残して逝った。


〔動けない兎に容赦ね~!〕


〔見た目だけならちょっと大きく、角が生えただけのウサギさんが〕


〔うわぁ、あんな血が噴き出すものなんだな?〕


 リスナー達もドン引きする行為だったみたいだけど、当の美衣奈は魔核とホーンラビット(黒)の肉を拾い上げて肉を卦韻に渡してくる。


「仕舞っといて」


「ああ」


「お肉は分けて食べようね♪」


 どうやらホーンラビット(黒)の肉を売る心算は無いらしい。


〔ああ、美味いらしいな〕


〔ホーンラビット(白)より美味いってのはさ~〕


〔ゴクリ……〕


〔俺も食いて~!〕


〔美味そう〕


 余程、ホーンラビット(黒)のお肉が美味しそうに見えたのか、リスナー達がまるで涎でも垂らさんばかりのコメントを流してくれていた。


 兎肉とはいえ、その大きさはそれなりだったからか? 卦韻と美衣奈の二人で分けても自分達の家族で食べる分には充分過ぎる量。


 売れば明らかに数千円くらいには成りそうで、それだけに食べればきっと美味しいのであろう。


 お金に困っていないとはいえど、あの美衣奈が一も無く二も無く食べる選択を選ぶ程度には。


 チラッと見てみれば、美衣奈の表情が綻んでいて明らかに涎を垂らしてますみたいな笑顔だ。


 自分で狩って食べたなんて事も無いだろうが、父親の玲也氏が狩ったのを食べた可能性はある。


(あれ? ひょっとして俺も食べた事がある?)


 その可能性に至った卦韻、そういえば何と無く兎肉を食べていた記憶が甦ってくるのであった。



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