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銀の騎士と黎明の星  作者: 月乃杜
第一章:聖霊剣
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第57話:向かうは東方大陸

.

「宿は海辺の方が良いよね?」


「明日は船だしな」


「港に近い方が楽っちゃ楽だ」


「うん、さんせ~い」


 ミスティからの提案に俺達は一もなく二もなく頷いている、何しろ彼女は村長の孫娘って事も有ってか村を出た経験も何度か有った。


 他の村を訪問したり、街へ買い出しに出掛けたりが殆んどだが、税金を納めるべく王都まで村長の護衛と勉強の為に着いて行く事もある。


 その時にはどうやら魚をお土産に買って来たなんて事もあったみたいだが、残念ながら俺の識らない記憶の話だから深掘りはしないでおく。


「[海辺の宿ザ・リューヌ]?」


「そうだよ」


 この世界での人間種は姓を普通に持っていて、俺ですら“ユラナス”という姓で暮らしている。


 此方側の父親――名前は覚えていないけれど、彼から受け継いだ姓という事であるらしい。


 尚、亜人種は氏族名は持つ種も居る様だけど、個別に姓を持った者は基本的に居ないのだとか。


 ミリエリア・ヴィナーシュとか、ミリエリア女史が姓を名乗るのは夫たるミスティの父親から獲たモノ、本来なら彼女も聖霊の森『アウローレア』の氏族として、ミリエリア・アウローレアと名乗るのが普通だとか聴く為、実際に彼女が名乗るべきはミリエリア・アウローレア・ヴィナーシュという事になる。


 それは兎も角、ザ・リューヌとはリューヌ姓の宿屋という意味だと、ミスティから聴いていた。


 『ザ』はラ・◯◯みたいなモノだろうか? 知らんけど。


「メリア、二人部屋を二つ取れる?」


「大丈夫、今なら空いてるよ」


「お願い」


「了解」


 ミスティが、慣れた手付きで記帳をしている。


 にしても……年齢的には変わらないんだろう、だけど何処とは云わないけど突出をしているな。


 何処とは云わないけど。


 メリア・リューヌ? というんだろうけれど、彼女は下衣の上に法被(はっぴ)に近い服を着ていて突出した部位が強調されており、『普段から鍛えています』みたいな感じに肉付きは良いのに、腰回りがスッと括れていて逆にお尻の辺りはまた大きい。


「ケイン、視すぎだよ」


「お兄も!」


「「イタタタッ!」」


 俺はミスティ、ランスはスピアに笑顔を浮かべながら(つね)られた。


 メリアに案内された部屋は海を一望が出来る、三階で景色の良さは一級品だと言われている。


「それじゃ、明日に備えた会議と往こっか?」


「そうだな」


 俺達が宿泊する部屋に四人で集まってミーティング、明日の船に乗るからには幾つか考えなければならない事もあるのかも知れない。


「船は既にチケットが有るから問題も無いよ」


「え、いつの間に?」


「この宿屋、船屋と提携してるんだよ。だから、船旅に出るとなったら此処でチケットを買える」


「そりゃ便利な」


「この宿屋がおっきい理由がそれなんだもん」


「ああ、成程な」


 港町で宿屋と船旅は切っても切れない関係で、ならば宿屋が船のチケットを売る事で船屋は売買の確実性が上がり、宿屋もチケットを求める序でに宿泊を……という事になってWINーWINだろう。


「そういや、気になったんだがよ」


「ランス、何?」


「他のダンジョンは回らないのか? この大陸にだってランクの上下は有るけど、それなりにダンジョンが湧いてるもんじゃねーか」


「ああ、そうだね。聖霊の森もダンジョンだけど他のダンジョンか、ランクの低いダンジョンなら入って踏破も有りなんだけどねぇ」


「問題が有るのか?」


「今回は獄焔剣の入手を優先しておきたいんだ」


「理由は?」


「元々は、聖霊剣は七振りに分かたれた神剣の内の一振りだってのは話したよね? 完成体に近付けば近付くだけクリスタリオンも強くなる」


 あれ? という事は何で彼方側のクリスタリオンも聖霊剣だったんだって話にならないかね?


「因みに最初の一振りが聖霊剣クリスタリオン、最後の一振りが神剣クリスタリオンなんだけど、他は割りと自由に入手して名前も別なんだ」


「へぇ?」


 そういう事か、詰まり最初の一振りであるという聖霊剣を入手したから、最後の一振りであるとされる神剣以外を入手したい、そして入手の順が自由なら近場である隣の大陸から入手しておく。


 となると……


「獄焔剣の次は?」


 ちょっと気になっていた、獄焔剣の次に入手をするべき剣だ。


「蓬莱剣ムラクモ、極東は列島の国に置かれている剣だよ」


 矢張りそういう事か、恐らく形状は刀じゃなく倭刀の類いだろうな。


 倭刀は丸みを帯びた両刃の剣で、刀が普及する前にはこれが普通だったとされてはいるけど、何しろ平安時代には既に刀だった筈だからな。


「そうそう、ケイン」


「うん?」


「さっき買ったポーション、オマケで貰った四本以外は例のハイポーションより強力な名前不明ポーション、あれに錬成をしておいてね?」


「ああ、判った。って云うか、それで四〇本も買ったのか」


「そう、矢っ張りケイン任せになっちゃうけど、こればかりは仕方が無いからね。だけどケインにしか使えないから、こればっかりは」


「判ってるって」


 俺にしか造れないからな。


「そういや、俺らの槍とかいつ完成するんだ?」


「明日かね」


「え、マジか?」


「今、全力で魔力を注ぎ込んでいる真っ最中だ……二四時間体制でな」


「お、おお……」


 だから今の俺は実は結構しんどい状態なんだ、精神力が次から次へとどんどんと減っていく訳だからな。


 二人の武器は最優先ってやつだ。


「勿論、ミスティとスピアの防具も順次造っていく心算だ」


「あ、ローブは今のでそれなりに使える物だからケープでお願いね」


「判った、ケープだな。スピアのは下に着る服とプロテクターで?」


 その流れでスピアにも訊く。


「あ、うん。それで」


「了解したよ」


 防御上昇の魔法を籠めて、確りと魔装具にしようと考えている。


(実際、スピアがバトルウルフからの攻撃を受けて気絶していたしな)


 これからはCランクの魔物との闘いも視野に入れねばならない、そうなると安値で仕入れた武具を強化が出来るのは相当な意味が有る。


 今回も鋼を魔鋼に変換する事で、強力な武器を鋼製の武器と同じ値段で普通に魔装具を手に入れられるのだから、こればかりは俺のパーティ限定の特典って事になるんだろう。


「それじゃ、四〇本のポーション以外はそれぞれに渡しとくぞ」


 俺はアイテムバッグからポーション四本の内の一本ずつ渡し、残りの二〇本入りの物を二箱分を残してバッグの中に仕舞っておいた。


 ポーション四本とゴブリンの魔核、それだけでエクスポーションよりは下でもハイポーションより遥かに高い効果を持ち、流石に千切れた腕や脚を繋いだりは出来ないけど、可成りのダメージでも一瞬で治せるのは既に実証済みだ。


「なら、そろそろ武具を造る時間も欲しいんだ」


「そうだね、夕飯まではゆっくりとしていてよ」


 ミスティの言葉に頷くと、スピアだけでは無くランスも部屋を出る。


「邪魔はしたくねーからな。がっつりと作業に専念をしてくれや」


「判った、有り難う」


 身体的な特徴は外から視た感じ、恐らくだけどミスティは美衣奈、ランスは槍太、スピアは璃亜と殆んど変わらないものだと思われる。


 ならば俺の知識だけで武具は造れるであろう。


 三人が部屋を出た後、俺は集中して只管に作業を行っていく。


 何なら彼方側には無い精神力回復薬を飲んで、MPを回復してまでも作業へと熱中していた程だ。


 俺はスピアがバトルウルフに吹き飛ばされて、血の気が引く思いってやつをあの時に実感した。


 否、それ以前にも聖霊の森でミスティが、ランスが、スピアが疲弊しているのを視ていたんだからな。


 此方側だの彼方側だのに拘って居られるかよ!


 魔鋼槍と魔鋼手甲、バトルウルフの毛皮のケープと魔鋼プロテクター+アンダー服を何とか完成させて、殆んど徹夜をする形でスーパーポーション(仮)をも完成させてやる。


 そして翌朝、俺は武具を各人に渡してやって、船に乗ると“東方大陸イグナート”へ向かう事になった。



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