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銀の騎士と黎明の星  作者: 月乃杜
第一章:聖霊剣
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第56話:魔鋼を獲よう

.

 ランスとスピアが武具を選ぶ為に立て掛けられたり並べられた武器――槍や手甲を眺めている。


「う~ん、鋼鉄製の槍か。然し鉄製の槍より威力も高いけど、大した違いは無いんだよな。青銅製だったら意味があるくらい差も有るんだが」


「そうだよね~。ちょっと強いだけの武器に更新しても、また次の街で威力の高い武器に更新とかそっちのがお金って掛からない?」


 ああ、RPGあるあるだよな。


 街で買った真新しい武器防具が、でも数日後の新しい街では更に威力の高い武具が有りました……とか、『ざけんな』ってコントローラーを本当に投げたくなってしまうよ。


 ひょっとしてと思って鋼鉄の剣に触れてみた、だけどそういう事なのか? ビビッとは来ない。


「魔鉱石の様な魔力なんかの通りが良い金属でないと駄目か。だとすると、鋼鉄自体を魔鋼にしてしまわないといけないから、手間は手間か」


 銀は通常金属の中でも魔力の通りが良い方で、魔銀にするにもまだ遣り易い方みたいだけれど、鉄や鋼はいまいち通りが悪い類いらしい。


 銅だと銀に比べると全然だけど、鉄や鋼なんかと比べればまだ魔力の通りは良い方みたいだ。


「銀を魔銀(シルヴァライト)にするか、或いは鋼を魔鋼(スチルライト)にするか」


「ケイン、どうしたの?」


「ああ、俺のスキルを使えば鋼鉄製の武器だったとしても、強化してしまえるかと思ったんだが」


「そっか、ケインが居れば安い武器でも強く出来るんだね」


「まぁな」


 ミスティが頤に右手の親指と人指し指の間にて添えると、何やら考えている素振りを見せていたけれど、直ぐに考えが纏まったのかランスとスピアへと声を掛けた。


「ランス、スピア」


「どうしたよ?」


「何々?」


「取り敢えずは、鋼鉄の槍と鋼手甲を買おうよ」


「「え?」」


 ミスティからのまさかの言葉に、ちょっと驚愕をしてしまう二人。


「ケインがスキルで改良をしてくれるんだてさ」


「え、マジに?」


「良いの!」


 俺の方を見ながら叫ぶ。


「まぁ、構わない。ランスとスピアにはいっつも世話になっていたしな。ミスティにもだけどさ」


「ケイン……」


「アハハ」


 俺が体幹のブレや肉体的な重さから剣士として致命的な状態だった時に、ミスティを始めとしてランスもスピアも色々と庇ってくれていた上に、俺が最低限でもレベルアップ――存在力向上をするのを手伝ってくれていたみたいだから。


 後者は俺が俺として居る前の事だったけどな。


 正に友達、そんな二人の為に魔力や精神力を使うのは惜しくもない。


「ただ、ちょっと時間を貰うぞ? 銀より魔力の通りが良くないから、可成り消費も激しいんだ」


「ああ、構わんさ」


「お願い、ケイン!」


 二人はそれぞれ、鋼鉄の槍と鋼手甲を手にしてミリス女史の立っているカウンターに持ち運ぶ。


「これ、お願いします」


「お願いしま~す!」


「はいはい」


 鉄槍や鉄手甲に比べて結構な値段ではあるが、魔導金属であるミスリルを使った物よりはマシ。


 まだ鋼鉄製なら、ん千テランで買えるからな。


「鋼槍は六〇〇〇テラン、鋼手甲は七二〇〇テランになるね。合計で一三二〇〇テランになるよ」


 金貨一枚と銀貨三枚と銅貨二枚を取り出して、ランスがカウンターのお金入れに置いた。


「はい、毎度有り」


 丁度良く支払われて、レジっぽい物に容れながら商人らしい返し。


「じゃあ、取り敢えず鉄槍を使っとくから頼む」


「これね、ケイン」


 渡してきた二人に苦笑いを浮かべて受け取り、直ぐにも俺はスキルの投入口へと放り込んだ。


 ミリス女史がその目をパチクリとしているよ。


「武器を二個分と未だに遣ってる銀の魔鉱石化、取り敢えずは二人の鋼の武器の方を優先するか」


 容れてしまった後はシステムに委ねれば良い。


「それとさっきも言ったけど、鋼は魔力の通りが悪いからちょい時間が掛かるんだわ。それに関しては留意しておいてくれるか?」


「任せるぜ、ケイン」


「うん、任せるね」


 笑顔の二人に頷く俺。


「バトルウルフの毛皮で防具も造らないとだな」


 はっきり云って、ローブと武闘着を二着分を造るには大きさ的に充分だし、金属部分は鋼を使ってしまっても良いけど、なら魔鋼にするか?


「ミリス女史、鋼を一〇カルド欲しいんだけど」


「はいよ~」


 [ミリス堂]にはインゴットも置かれていたから問題無く買えた。


 買った鋼のインゴットをスキルの投入口に容れてしまい、更に俺は予め作ってあったデザインに併せる形で造り上げると、鋼槍と鋼手甲と共に魔鋼化させる為の処置を行う。


「魔銀は兎も角、魔鋼化は初めてに成るんだな」


 魔鋼――スチルライトと名付けたこの擬似的な魔鉱石、魔力が複雑に絡み合って定着化をさせるこれらは非常に硬質化が成されてくれる。


 しかも、どういう仕組みか単に硬いだけの金属では決して無く、粘り気も有るからちょっと壊れ難い構造に成っていて、武具に向いていた。


「ふ~ん? それがリリアの報告に上がっていたスキルかい」


「ああ、リリア女史から話は聴いていた感じ?」


「そりゃ、あの子には報告の義務が有るんでね。悪いんだけどある程度は報告をされているのさ」


「まぁ、それは構わないけど」


 守秘義務とか、そういったものは存在してない世界だから仕方がないし、何よりも初めから守秘をして欲しいと頼んですらいなかったし。


 コンプライアンスを著しく損ねない限りは問題も無い。


「是非、ウチと商って欲しいと思うんだけどさ」


「無理だよ、私達は直ぐに隣の大陸に行くから」


「あらら……」


 リリア女史もそうだったけれど、商人というのはそういった事に目敏くないと務まらないのか、キランと青い瞳を輝かせて俺を見詰めた。


 あっさりミスティのダメ出しを喰らったけど、肩を竦めながらも余り諦めた風では無さそうだ。


「まぁ、追々で良いさ」


「……そう」


 特に塩対応って程じゃ無いけど、ミスティが随分と警戒心を剥き出しにしている気がするな。


「それじゃ、行こう。今夜は宿を取って明日には船旅になるよ。ポーション類も買わなきゃだけど此処にも確か売っていたよね?」


「有るよ、幾らでも売ったげるさね。ウチは総合商社だからね」


「ポーションを四〇個」


「は? 四〇個って」


「そ、四〇個」


「やれやれ、判ったよ」


 ミリス女史は奥に行って箱に一杯のポーションを詰めて、二箱――二〇本詰めの物を持ってきてコレを売ってくれるのだと云う。


「それと大量に買い物してくれたからオマケだ」


 ミリス女史が四個のポーションをカウンターに置いて言う。


「それは有り難う」


 一二〇〇テラン×四〇で四八〇〇〇テランは、確かに大量と云えるくらいの買い物であろう。


 銭貨が一円として鉄貨が一〇円、銅貨が一〇〇円、銀貨が一〇〇〇円、金貨が一〇〇〇〇円、白貨が一〇万円、真貨が一〇〇万円とする。


 そう鑑みれば一二〇〇テランなら三〇〇〇円の彼方側と比べ半額以下、これは彼方側とは違って素材が割りと当たり前に手に入るからだ。


 此方側の場合は聖霊の森の中でそれなりに素材となる薬草類が入手可能、薬草の力を高めるべく必要な魔核も充分な確保が出来る。


 翻って彼方側は、魔核自体はダンジョンに顕れる魔物を狩れば、格の方はゴブリンの魔核で充分だから良いとしても、薬草もダンジョンに生えている物を採取せねば成らない事からか、いまいち質の良い薬草は手に入り難いのが現状なんだ。


 それでも、冒険者ギルドに所属する冒険者達が頑張って毎日を冒険に明け暮れ、薬草類の採取をしてくれているからこそ三〇〇〇円で済む。


 そうでなければ、一万円は普通に越えたろう。


「にしても、ケインには世話んなりっ放しだな」


「うん、普通の鋼鉄製の武具を魔装具にだなんて有り得ないよ」


 [ミリス堂]を出るや否や、兄妹二人で会話をしている。


「だ~か~ら、世話になったのは俺なんだから」


「そうは言うがよ~」


 苦い表情、金銭面や装備の改修などは確かに俺が率先をして遣っているが、学校に通い始めてからの数年間を二人には助けられていたんだ。


 俺に有るのは極最近の記憶だけだったけどな。


「ほら、三人共。余り遅くなると宿を取れなくなっちゃうから」


「わ、判った」


「応っ!」


「了~解」


 ミスティに促され、俺達は足早に宿屋へ向けて歩き出した。



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