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銀の騎士と黎明の星  作者: 月乃杜
第一章:聖霊剣
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第41話:恐ろしい事件

.

 その速度は魔法では無い、彼女のSSR級スキル【瞬間加速】だという縮地法にも似ている歩法で、流石に漫画みたいな距離を一瞬にして〇に詰めるなんて程では無いが、それでも駆け出した瞬間から最大速度を出せる、C級やN級には無い能力。


 能力的に、瑠亞が知らない卦韻の氣導術である“韋駄天”の下位互換。


腕力強化(アルムストゥルケ)!」


 丹田から血液の如く廻らせた魔力が意味の有る紋様を形成、それが白い輝きとして瑠亞の腕に絡み付いて往くと魔法陣として象られる。


 そして“力成す言霊”を発すると、魔法陣は魔力を使い精神力をエネルギー源に、魔法が発現をしていた。


「瑠亞姉さんのバフ魔法!」


「今まで使わなかったのに?」


 これまではイレギュラーでも精々がEランクに毛が生えた程度、Aランク冒険者にまで成り上がった瑠亞のレベルなら仮令、非力な術士であってもバフ魔法など不要だったから使わずにいた。


 然しながら、相手がBランク相当の魔物であるならば話は全くの別、術士は非力であるが故に腕力を強化しないと碌にダメージが通らない。


「喰らいなさいっ!」


 SSR級スキル【瞬間加速】の副産物ともいうべき跳躍力で銀狼の頭上高くに至り、確りと握り締めてる鈍い輝きを放つメイスを天高く振り被り、魔法で強化をされた腕力に任せて(なぐ)り掛かった。


 ズゴンッッ! 大凡そ撲れた生物が出しても良いモノでは無い低き轟音をフロア中に響かせる。


 痛みでそれ処では無い女性は兎も角としても、二人の男共は美貌を持った細腕の女性が力自慢の男顔負けな一撃を加えた事、そんな余りにも余りにして非常識極まりない光景には思わず呆然自失と成った。


 魔物だの魔法だのと、剣と魔法のファンタジーという様相を持った非現実的なダンジョン内で、今更ながら現実逃避にも程がある。


 だけど脚を留めてしまうのも無理は無かった。


 スタリッと地面に音を鳴らしつつも着地をした瑠亞は……


「さっさと退避なさい!」


 未だに動けずに居る三人に対しての退避勧告をする。


「ヒッ……あ……」


「うあ……」


「ひぐぅぅぅっ!」


 だが全く動こうとしない。


 瑠亞は舌打ちをしたくなるけど、それでも冷静に魔物である銀狼を見据えながら二人へと叫ぶ。


「槍太君、璃亜ちゃん! 其処の三人を下がらせなさい!」


「「アイ、マム!」」


 矢張り呆然と突っ立っていた槍太と璃亜だが、瑠亞に言われて漸く動き出すと戦闘の役には全く立たないにも拘わらず、戦闘領域から離れようともしない三人を、無理矢理にでも引き剥がしに向かった。


 そんな五人を尻目に瑠亞は戦闘の再開をする。


「瑠亞姉、大丈夫かな?」


「言っても、シルヴェンウルフはBランクだろ。瑠亞姉はああ見えてAランク認定されてるんだ」


「う、うん……」


 シルヴェンウルフは巨体には似合わぬ素早さを持っており、これが先程の斃されていた冒険者達をあっさりと打ち斃した要因でもあろう。


 銀の毛皮を持つ巨狼というだけであるのならば他にも存在する、ランクがD相当のもう少し小さめな狼であり、名前はグレートウルフだ。


 彼らはそれと勘違いをして突っ掛かったのかも知れないが、冒険者を名乗るには余りに迂闊が過ぎる三人はその代償を支払う事になった。


 瑠亞は先程、冒険者男Aの脚を踏み潰した前脚をメイスにより叩き付けてやると、銀狼は折れてこそいないみたいだけど、人間で云えば弁慶の泣き所を強打されており、その痛みたるや相当なものだ。


「グルァアアアッ!」


 悲鳴を上げるシルヴェンウルフ。


 フッサフサでモッサモサな銀の毛皮には物理は通り難い、しかも魔力の通りも悪いから魔法とて効き難いのだという、Bランクともなるとその手の魔物が幾らでも湧いて出るが、それだけに斃せるのであるなら大金を稼げる冒険者という事だ。


「【透徹】っ!」


 通り難いと通らないでは天と地程の差が有り、更には内部浸透系のスキルが在ればこうなる。


「ギャワンッ!」


 メイスの一撃という意味なら防げていたろう、然しながら攻撃の際に生じる衝撃が瑠亞の行使した奥義スキル【透徹】にて、シルヴェンウルフの体内に叩き込んだからダメージは相当なものだ。


 【瞬間加速】というスキルは魔力と精神力が消費はされるものの、瞬間的な加速と跳躍を可能としているから、高速移動攻撃を可能としている為に多少の疾さでは追い付かない、シルヴェンウルフはもそれなりの疾さで動けてはいる様だけれど、疾いながらも小回りまで利いている瑠亞に分が有ったらしい。


 シルヴェンウルフは巨体故の疾さが有りながら小回りの利かなさ、それが確実にこの銀の狼である魔物を蝕んでいくが流石にどうにも出来ない、瑠亞は攻撃魔法の類いが得意では無いけど支援系の魔法は得意で、それだけを頼りにAランクに登り詰めたと云っても過言では無かった。


「はぁぁぁっ!」


 そして【瞬間加速】とは、別に脚を加速させるスキルでは無い。


 その程度ならば本当に“韋駄天”の下位互換にしか成らず、それであればレアリティもSRくらいにしか成ってはいなかったであろう。


 このスキルの真骨頂は、複数箇所の瞬間加速と同時平行発動に有る。


 現在、瑠亞は脚部と思考に加速を掛けながら、更に攻撃の際には腕部へも割り振っていた。


 同時三ヶ所に平行発動、しかも攻撃を行う前は動体視力にも割り振っており、攻撃の瞬間に切り換えを敢行しているからこそのコレだ。


 思考を加速しているから出来る芸当でもある。


 幾度とないヒット&アウェイの繰り返しによるダメージの蓄積、シルヴェンウルフは外部こそ銀の毛皮に守られているけど、【透徹】により内部へと執拗なる打撃を受け続けていてズタボロ


「グルルッ!」


 立つのもしんどいとばかりに、遂には膝を折ってしまったシルヴェンウルフの顎へ先ずは一撃。


「ギャウンッ!」


 狼の決して丈夫とは云えない顎が砕け散った。


「トドメ……ですっ!」


 【透徹】でシルヴェンウルフの脳天をぶちかましてやった。


「グワァァァァァァアアアアッ」


 ダブルインパクト、それによる衝撃は凄まじいものであり最早、脳がグチャグチャで生命力は〇になって心臓の鼓動を停めてしまう。


 ズダンッ! 地面に地響きを響かせながらその巨体を横たえて、ビクビクッと暫くの間は痙攣をしてたが到頭、動かなくなってしまった。


「はぁ……」


 この闘い方は長時間の戦闘には向いていない、人間は抑々にしてあんな加速をしていては肉体が酷使され、致命的なダメージを負う。


 複合スキルでは無いSSRスキル、肉体が護られるなんて事は無い。


 だけど、術士の瑠亞は加速中は自らに回復魔法を掛けて過負荷を軽減しており、致命的ダメージを負わない様にしているからこその動き。


「うぐぅ……」


「うう……」


「嗚呼っ!」


 三人の男女が呻いている。


 右脚がおかしな方向にねじ曲がっている男に、左腕を喪ってしまった女性、其処までのダメージは負ってないけど恐怖から股座を濡らしている男という、どうにもならない状態なパーティ瓦解。


「此方の男性は病院に行けば何とかなりますね、でも……女性の左腕の方はどうにもなりません。せめて食べられたので無くて、斬られたとか千切れただけでしたらエクスポーションで繋ぐ事も出来ましたが……」


「うう、そんな……」


「それにこの初心者ダンジョンに潜っているという事は、冒険者ランクがDも行けば良いくらいではないですか? エクスポーションは五〇〇万円はします。繋ぐにしても結構高価(たか)い代物ですよ」


「か、買えない……そんな物、とても買えない」


 冒険者でもCランクを越えれば買えなくも無いかも知れない、然しながらDランク以下であると流石にどうしようもないものであろう。


「そして大問題として、エクスポーションであっても無い袖は振れません。詰まり欠損はどうしようも無いんですよ、欠損を修復するには更に上位のフルポーションが必要不可欠です。然しその値段は五億円」


「そんな……」


 どんなセレブ御用達なのかという値段であり、ポーションのたった一本が余りなものだった。


「Aランクなら何とか買えますが、Bランク以下となるともう難しいですよ。なので提案が有ります」


「て、提案?」


 喪った左腕を押さえながら不安に塗れた表情で訊いてくる。


()()()()()()()()()()


「は?」


 凄まじいばかりの提案に、三人の冒険者パーティは於ろか、槍太と璃亜も呆然と成ってしまっていた。



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