第35話:銀の騎士
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理央から防御上昇の魔法を視せて貰った卦韻は、SSR級技能【真鑑定】でその全てを鑑定する事に成功、連動しているUR級技能【錬成王】に取り込みをする事が出来た。
「これで後は魔銀を指輪にして、魔核も居るな」
「それならこれを使いなさいな」
「これは、魔核……ポイズントードのモノだね」
「【真鑑定】だったかしら? その通りよ卦韻」
理央が渡してくれたのはDランクダンジョンに湧出する魔物、ポイズントードという青色をしたでかいガマガエルみたいな奴のモノ。
中級魔法を附与するなら遣れそうな格だろう。
「有り難う母さん、またデスコーピオン級の魔物を斃さなきゃならないのかと思っていたんだよ」
「それにはイレギュラーを狙うか、Eランクダンジョンに入るかしないとだもの。難しいわよ」
イレギュラーはいつ顕れるかも判らない上に、デスコーピオン級が出るとは限らないから論外。
かといって、Eランクダンジョンならコンスタントに獲られる反面、同じレベルの魔物が大挙して押し寄せて来る可能性が高いのだ。
卦韻も健御雷神を使えば身体能力を大幅に引き上げられるが、あれは一気にHPとMPとSPまでもを消耗してしまうし、更に毎秒という速度で僅かずつ氣導術の維持に消費していくから短期決戦用であり、長期戦には全く向かないモノだった。
HP――ヒットポイントで生命力を表す数値。
MP――マインドパワーで精神力を表す数値。
SP――スタミナパワーで持久力を表す数値。
氣導術というのはこれを大量に消費する為に、魔法みたいな扱い方はちょっとばかり難しい。
(氣導術でもう少し効果が低くても汎用性の有る何かが欲しいな)
今現在の卦韻は低いレベルにしては多い氣力量であり、その域を出ている訳では無いからどうしても消耗の激しい氣導術は扱えなかった。
因みに、無能ムーヴ君との模擬戦でも瞬間的に似た様な事をしているけど、技術と呼ぶには余りにも拙くて研究をしている真っ最中だ。
「これからスキルを使うの?」
「まぁね、魔力も精神力もそれなりに快復しているからさ」
「なら見てても構わないかしら」
卦韻は小さく頷いた。
「スキルを展開、素材投入口に魔銀と魔核を容れてっと、デザインは少しだけ変更……魔法アーカイブから防御上昇を附与」
記録されたモノはアーカイブから参照が出来る仕様で、一度でも造った代物、素材、魔法などが既に幾つかアーカイブに記録されている。
美衣奈が使用した火球や氷撃なども記録済み。
その気になれば魔法剣や魔法槍といった魔法具の製作も可能、魔法具は魔装具の一種だけど明確に魔法を宿した魔剣や魔槍の事を云う。
これが有れば使えない属性を補ったりが可能であるし、魔法を扱えない人間が擬似的に魔法を使うなどの事が出来る様には成る。
所詮は補助程度だし、魔法具自体が余り見付からないから大して当てにはされていないけれど。
それとは別に魔宝具なんてのも存在するけど、これはこれでまた別物だと云っても良いだろう。
卦韻は魔核に魔法を籠めて、土台にした魔銀製の指輪へと填め込んで新しい魔銀の指輪を完成、実際に造り上げた指輪がポンと顕れた。
「これで完成っと、流石に完全快復前は疲れる」
再び魔力や精神力を消耗しては、卦韻としても疲労困憊である。
「う~ん、私の【魔力視】ではさっぱり解らないものね」
魔力の動きは多少なり視えてはいるのだけど、その程度しか【魔力視】も視覚化してくれない。
「確か【魔力視】ってレアリティSRだったっけ。それなりに持ち主も居る程度にはレア度が低い。矢っ張りレア度の差が有るんじゃない?」
「そうなのかもね~」
レア度は持ち主の度合いであるのと同時に格、相当な人数が持つレアリティC級は格も最低限でしかなく、卦韻が持つ唯一技能なUR級は最大限の格を持つスキルであるからこそ、一人のみしか与えられない。
其処ら辺は、ソシャゲなんかと特に変わりがないものだった。
というよりも寧ろ、ソシャゲの彼是が在ったからこそコモンスキルをC級、レアスキルをR級といったレアリティ的な呼び方が広まったと言い直した方が、或いはより適切な表現なのであろう。
「どうした、母さん?」
急に黙り込んだかと思うと思案顔で何やら考えている。
「美衣奈ちゃんが言うには、唯一技能というのは一世代に一人しか持ち主が現れない。美衣奈ちゃんの唯一技能【魔導妃】もそうよ。そして唯一技能の特徴は名前に【王】や【妃】が付くらしい。卦韻、貴方の【錬成王】もだから唯一技能であるとすぐに判るわ。もう一つの特徴が複数の機能を持つ複合スキルという事、これも卦韻自身がよく理解をしているわよね? 問題なのは唯一技能とはいえ、【王】と【妃】は同時に存在する事よ」
「詰まり、ひょっとしたら俺以外に【錬成妃】の宿し手が居るかも知れないって事?」
「そうなるわね。万が一の話でしか無いけれど」
「となると、【魔導王】も居る可能性があるって事なのか」
その一番の問題は敵対するか否かという事だ。
直接的な戦闘系では無い【錬成妃】なら未だしもマシで、強力な戦闘力を有するであろう【魔導王】が敵対してきたら厄介な事になる。
とはいえ、美衣奈から聴いていた事もあった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「うん? 唯一技能で現在、判っている事ね~」
「ああ。俺と美衣奈がソレの持ち主なのは判る。だけど俺はこのスキルに関して余り知らない」
「私も知る事は少ないよ。でも、確かに今の卦韻よりは知っているかもね? 今の卦韻よりはね」
瞑目をしながら言う美衣奈に多少なり違和感を覚えるが、卦韻としても知りたい事を教えて貰えるならと違和感を呑み込んで傾聴する。
「唯一技能で一番の特徴は一世代に一人しかその存在は現れない事で、何故ならこの技能は星を――時空そのモノを依代とする星神により魂魄へと、その最も深淵に位置する真魂に刻まれてるから」
「ワールド……オーダー?」
「世界の守護をする星騎士と世界そのモノにも等しい星神、そして卦韻は星騎士として最後の覚醒者であるが故に、星神テリアル様により唯一技能を刻まれたんだよ」
首を傾げる卦韻、それは意味が解らない単語が行き成り現れたのだから仕方が無い、星騎士だの星神だの全く知り得ないモノばかりだ。
況してや、今の言い方だと卦韻が星騎士であると謂わんばかり。
「今すぐに解れとも、そう在れとも言わないよ。どの道、まだ卦韻は覚醒の条件を満たしただけ。現在の卦韻は何の力も無いんだから」
「そうなんだな……」
気になる事は幾らでも有るけど、今は知る必要が無いし訊くまい。
「でも、一つだけ覚えといて」
「うん?」
「貴方は星騎士が一人、『銀の騎士』だって事だけは」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
唯一技能の持ち主とは、何らかの特別な意味が有ったみたいである。
『銀の騎士』の称号と共に。
抑々にして、どうして美衣奈がそんな事情にも詳しいのか? とか、なら美衣奈の唯一技能に関しても同じ事が云えるのか? など疑問は尽きなかったけど、いずれ教えて貰えるのかも知れないから今は置く。
「これが……美衣奈ちゃんにプレゼントする新しい指輪なのね。デザインも主張をし過ぎないのが素敵よ。私も欲しくなっちゃったわ~」
「父さんに御強請りする気?」
「ええ、そうね♪」
年齢を考えろと言いたくなる様なルンルン気分でいる理央、だけど見た目には正直な処を云うと三十路は於ろか二十代にも見える。
そんな仕種をしながらも、夫である楠葉慎吾にどう言って指輪を贈らせるか思案中なのだろう。
誕生日、クリスマス、年末年始、結婚記念日、取り敢えずはそのどれでも無いのが三月たる今。
だけどきっと贈らせるのだと解ってしまった。
もう四十路の筈なのだが、理央のアレは彼女の美貌から、実によく似合う仕種であったと云う。
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