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銀の騎士と黎明の星  作者: 月乃杜
第一章:聖霊剣
34/50

第34話:母に訊ねて魔導法

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 魔銀(シルヴァライト)――魔鉱石の特許出願に関するあれやこれやは取り敢えず終わった訳だから、[夜口法律事務所]を出た卦韻と美衣奈は二人で並んで来た道を戻る様に歩いている。


「良かったね卦韻、権利は二〇年間は保護されるから魔鉱石は暫く卦韻の独壇場になると思うよ」


「そっか、きっと良かったって事なんだろうな」


「上の空だよね? 静那姐、美人だったもんね」


「何で、そうなる?」


「卦韻も男の子だねって話だよ」


 んべーと所謂、あっかんべーとばかりに右目の下瞼を引っ張りながら舌を出す美衣奈、可愛らしくはあるけど小生意気な風情を醸し出す。


「ほら、今日は卦韻の奢りだよ! 噂の美味しいレストランでお昼を食べるんだから……ね!」


「わ、判ったよ!」


 折角のダンジョン探索を休む日、それならばと卦韻は御礼も兼ねて奢りの約束をしていたのだ。


 何と無し、浮かれている美衣奈は先程まで少し不機嫌だったのが、吹き飛ぶくらいの御機嫌さを魅せてくれていて少しだけ安堵をしている。


 行き場は最近になって矢鱈と評判が良いと噂のイタリアレストランだったが、美衣奈は別に思い入れが有る訳でも無いフレンチを食べるのが嬉しいという事も無さそうで、何を浮かれているのかが卦韻にはちょっと解らずにいて困惑気味だ。


 それでも、美衣奈が御機嫌であるなら良い事なのだろう。


 イタリアンなら少しばかり御高そうな気もするのだけれど構うまい、正直に言ってしまえば彼女が不機嫌な方がよっぽど卦韻としては困る。


 暫く歩いていると、愛坂学園とは正反対な位置に建てられた大きな建築物の前に行き着いてた。


 イタリアレストラン[トラットリア嵯峨]という看板、トラットリアは大衆食堂の事だった筈だから特段に高価(たか)いという訳では無さそうだ。


 恐るべしイメージ先行。


「中々に美味しいイタリアンだったよね、卦韻」


「そうだな」


 食後のデザートまで食した卦韻と美衣奈は再び路を往く、その最中で話をしながら歩いていた。


「魔力は回復した?」


「ん、少しはしたけど。でもな~、ダンジョンに行けるかとか訊かれたら万全じゃないからな」


「別に今からダンジョンに潜ろうなんて言う心算は無いよ。私は単純に体調を気にしているだけ」


「そうか、悪いな」


 体調という意味では、悪くは成っていなかったから万全では無いにせよ、普段から普通に動く分には何ら問題もなかったので大丈夫だろう。


「うん、特に問題は無いよ」


「そっか。余り無理はしないで」


「ああ、有り難う」


 懐かしいとすら思えるユルい空気感を満喫している卦韻、果たして美衣奈の方はどんな感じ方をしているのかがちょっとだけ気になった。


(そういや、彼方側のミスティは何だか緊迫をしていたよな……)


 ふと思い起こされるのは、ミスティが何故だか俯きがちに空気が緊迫していたという事実だ。


 結局、何も話せていない。


(此方側で気にしても仕方が無いんだろうけど)


 抑々、此方側では此方側の生活が有る訳だし、彼方側を気にした処で何も出来やしないのだ。


「卦韻、どうしたの?」


「ああ、いや……その指輪も魔銀で造り直した方が良いかな?」


「造ってくれるなら大歓迎だけど、それなら造り直すんじゃ無くて新しく造って欲しいかもね♪」


「そうなのか?」


「そうなんだよ」


 卦韻は意外に思いつつも、それならそうしてみようかと考えた。


 美衣奈も女の子、アクセサリーが沢山有ったら嬉しいものか? なんて、マヌケな感想を懐く。


 魔銀の製作に魔力と精神力を大量に消耗するとはいえ、指輪に使う程度の量であるならば大した手間も消耗量も掛からないと皮算用をする。


 実際、一〇gで御釣りがくるのは間違い無い。


(とはいえ、新しく造るなら籠める魔法はもう少し良いモノにしたい。それを美衣奈に頼むのもなんか違う気がするし、母さんに頼むかね)


 母親の理央も術士系の職業スキルだったから。


 卦韻は意を決して理央に頼もうと考えたけど、きっとまた揶揄ってくるんだろうなとも考えが及んだら、少しばかり憂鬱な気分にも成った。


 取り敢えずは今日の御出掛けは、ちょっとしたプチデートみたいだったな……と現実逃避する。


「何か卦韻は遠い目をしてるけど、どうしちゃった訳?」


「何でも無いさ、何でも……な」


 思わず嘆息してしまっても罪には問われまい。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 プチデート? も終わりを迎え、家に帰り着いた卦韻は美衣奈の笑顔を思い出すと溜息を吐き、母親……下手したら父親にも揶揄われそうだというのは、余りにも頭が痛くなってしまう事情だ。


 事実として両親は謂わばお茶目な部分があるから、女性関連に某かあれば揶揄う題材にするのだろうと、ある意味ではダウナーが入った。


 卦韻も親から揶揄われるのは遠慮したいのだ。


 暫く経ったら理央が帰って来る。


「ただいま~」


「お帰り、母さん」


「あら、お出迎えなんて珍しいわ。ひょっとして、私に用事かしら?」


「実は……」


 卦韻は魔銀で新しく美衣奈に装飾具系魔装具を造りたい事、その上で新しい魔核にもう少しレベルの高い魔法を籠めたい事を語った。


 理央はフムフムと真剣に聴いてはくれてるが、ちょっとずつ不穏というかニヤニヤとした笑顔を浮かべ、最終的にはニッコリと喜色満面と成って卦韻の提案に頷いてくれる。


「構わないわよ~、新しい指輪を造りたいのね」


「ゆ、指輪に限りたい訳じゃ無いんだけどな?」


「あら~、指輪で良いじゃないの。最初のは初めての贈り物として大切に仕舞い、次のを自分の左手の薬指に填める美衣奈ちゃん、素敵よ!」


 何だろう? 良い年齢ぶっこいた母親が夢みがちな乙女が、夢心地の如く両手を胸元で組んで頬を朱に染めてトリップしているみたいだ。


 ボカッ!


「あ、痛ぁぁっ!?」


「何だかとっても侮辱をされた気になったわ!」


「うぐぅ、そんなもん、別に思って無いって! 酷い勘だよまったく」


 卦韻は結構、痛めに(はた)かれた。


「それで、詳しい話を真面目に聴かせて貰おうかしら」


「急に御真面目モード!?」


「良いから話す!」


「はいはい」


 My Motherのこのテンションに、相も変わらず着いていけない卦韻。


「素材は魔銀とそれなりの魔核ね。どうしても必要なのは母さんの使える防御系の魔法なんだよ」


「私の魔法……ね。それでどうやって魔核に魔法を籠めるの?」


「勿論、スキルの力」


「レアリティがURよね? 唯一技能なんだし? 随分と芸達者だわ」


「よくは知らないけど、唯一技能ってのは他の誰にも発現しない潰しの利かない技能であるけど、その分だけっていうのか複合能力らしい」


「複合能力……」


 SSR級までは出来る事が一つだけでしかなく、例えば【真鑑定】だと鑑定が出来る範囲は広いのかも知れないのだろう、だけどこれで遣れる事は即ち“鑑定”のみでしかない。


「序でに言えば、俺のSSR級技能【真鑑定】とは連動をしている。だから魔法を鑑定してスキルに紐付ける事によって魔法を附与するんだ」


「流石は唯一技能、滅茶苦茶にぶっ壊れっ振りなスキルよね~」


 うんうんと頷く理央。


 親に――取り分け母親に女性関係を話すのは、余りにも恥ずかしいので出来たらこの手の会話はしたくないし、早く仕事の話に移りたい。


「という訳で、俺が知る初級防御魔法より少しだけ上位に当たる魔法を見せて貰えないかな?」


「少しだけ?」


「余り上位過ぎると魔核の格に合わなかったり、俺の精神力や魔力の問題から附与が出来ない」


「ああ、詰まり附与には魔力とかを使うんだ」


 卦韻が頷いて肯定だと伝えたら、理央はう~んと小首を傾げると徐ろに魔力を練り上げて魔法紋を構築していって、腕に絡ませながら意味の在る言葉として練り上げると魔法陣を形成していく。


 四十路に突入をして尚、未だに衰えぬ若さと美貌が魔力の輝きに照り映えており、実の息子である卦韻をしてドキリと心の臓が跳ね上がる。


 容姿から妖艶というよりは可愛らしさが目立った母親だが、この時ばかりは卦韻も美衣奈を視ている時と似た様な気分にさせられていた。


 呪は紡がれない、魔法紋が魔法回路により複雑に絡まり合う魔法陣が形成されて魔導法と成す。


 そして、理央がその唇を動かして力成す言霊を紡ぎ出した。


「“防御上昇(フォセバスティゲ)”」


 それは中級防御魔法であり、卦韻がシルバーリングやネックレスに籠めたモノより、一段階上位の魔法。


 具体的には、ダメージを約四〇%ばかりを軽減する魔法である。



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