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銀の騎士と黎明の星  作者: 月乃杜
第一章:聖霊剣
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第31話:魔銀

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 目覚めて少し頭を抱えてしまう、卦韻は彼方側でギリギリに成ってしまったのが困りものだ。


「参ったね、魔力が完全に無くなってしまった。普段から魔力なんて扱わないから慣れもないし、仕方がないっちゃ仕方がないのかね」


 取り敢えずは此方側でも【錬成王】を展開してみると、彼方側で遣っていた事が確りと反映がされていたから無駄にはならなかった。


「これなら試してみるべきか」


 母親である理央に頼んで銀を一kgを売って貰えれば、すぐにでも試す事が出来るだろうから。


 朝の朝っぱらから銀を母親から買う息子というのもどうかと思うが、必要性の高い案件なだけに早めに動くべきだろうと部屋を出る。


「母さん、おはよう」


「あら、卦韻。おはよう」


 朝の挨拶とは、親子だからこそ大事であろう。


「おはよう、卦韻」


「おはよう、父さん」


 父、慎吾が新聞を読みながら珈琲を飲んでいたらしく、新聞から視線を外すと挨拶をしてきた。


「朝御飯は出来てるからささっと食べちゃって」


「うん、そうするよ」


 彼方側とは違う、ミスティが準備をしてくれているから文句も言わず食べているが、味に関しては彼女の料理の腕が悪い訳じゃ無いけど、決して美味しい御飯とはとても思えない代物だけれど、こうして母が出してくれた御飯を口にしてしまうと、ほとほと思ってしまうのが此方側との飯事情の違いというもの。


 今日はフレンチトーストだ。


 因みに、ミスティは決して飯マズではなかったりする。


 少なくとも、美衣奈と同じく御菓子作りに関しては確実に美味い……で無くて上手いのだから。


「母さん、ちょっと頼みが有るんだけど良い?」


「聴いてみない事には判らないわよ? それで、何かしら?」


「銀がまた欲しくてさ」


「銀?」


 又候(またぞろ)、貴金属類を欲しがる息子に理央も訝しい表情となった。


「ちょっと実験をしたくて」


「どのくらい欲しいの?」


「一kg」


「それなら、インゴットが有るけれど……ねぇ」


「勿論、母さん相手とはいえタダでくれとは言っていないよ」


 恐らくだが一kgの値段なら支払える筈だし、実験の方が上手くいけば今は払えずとも将来的に大丈夫、支払う当てとしては充分だろう。


「四五〇〇〇円はするわよ?」


「何とか支払えるよ」


 昨日までのダンジョン探索に於いて獲得している資金で賄えるし、何よりも実験が上手くいったなら――それは真銀では無いけど魔銀とでも呼べる物であり、これを上手く売却すれば支払う金額の何倍にも成る。


 現状では取らぬ狸の何とやらにしかならない、だけど魔銀は魔力を持って本来の硬度を遥かに越えてる、それこそダイヤモンド級だった。


 武器にすれば威力も相当に成る筈である。


 加工が出来れば……だが。


 唯一技能【錬成王】に記録されていた魔銀は、確かに金剛石級の硬度を持つとされてはいたが、その硬度の分だけ加工が難しいと有った。


(果たして現代金属加工技術で加工が出来るか、一応は銀に混ぜれば加工自体は出来そうだけど)


「どんな実験だ? 危険は無いんだろうな?」


「無いとは言い切れない、だけど誰かを巻き込むタイプの危険は無い。飽く迄も個人的な感じ」


「いや、そんなもん遣らせるのはどうなんだ?」


「意識は喪うかもだけど、生命に支障は無いさ」


「仕方がない。それはすぐにでも出来るのか?」


「其処まで時間は取らない」


 一kg程度なら慣れの問題も有るのだろうが、スキル側の微調整も今なら利くと視ているから。


「仕事までは時間も有る。俺と理央で付き添う事にしよう」


「そうね、余りに危ないなら遣らせられないし」


「判った、此処で遣る」


 スキルを家族とはいえ余り大っぴらにしたくは無いが、心配をされているのを無碍にするというのも矢張り違うと感じていたのだ。


「じゃあ、ちょっとだけ待っていなさいな」


 理央は自宅に備え付けられた倉庫に向かうと、卦韻が欲している銀を一kg、細かくインゴットとして纏めてあるのを取りに行った。


 他にも五kgサイズのも有るが、一〇kgサイズのは持ち上げるのも億劫で手元には無い。


「これが一kgのシルバーインゴットよ」


「有り難う、母さん」


 加工をする必要性も無いし、今回行うのは銀を魔銀に変質させる事。


「唯一技能【錬成王】を発動、記録がされているアーカイブから抜粋。銀を魔銀へと錬成する!」


 尚、矢張りと云おうか? こうして【錬成王】を発動させた卦韻を視ていた二人は呆然と成っている。


 スキルが卦韻の視点では所謂、ARモニターとして移っているからだろう、慎吾と理央には何も見えていないから独り言一人遊びにしか思えない、事情を知らない人間から視ていたらきっと寂しん坊であった。


 銀の延べ棒――一kgのインゴットをスキルの容れ口に投入し、更に自らの左腕を突っ込んだら右手でタッチパネルを操作するが如く。


 ピッピッという操作音も卦韻の耳にしか響いていないから、本当に慎吾と理央からしたら息子の頭がどうにか成った様にも感じてしまう。


 そうでは無い証明として、シルバーインゴットが消えて無くなったのと、膨大な魔力が卦韻から何処かへと吸引されている事実が有った。


 魔力を持たないのでは無く、扱う為の能力を持ち合わせていない。


 代わりに卦韻は氣力を操る術に覚醒している。


 故にこそ、膨大な魔力は卦韻にとって無用の長物でしかなくて、それを活用する方法を獲たという訳だ。


 【魔力視】というレアリティがSRスキルを持つ二人は、卦韻の魔力が螺旋に渦巻きながら恐らくシルバーインゴットの中へと吸引されながら、それが円環される事によって少しずつ少しずつインゴット内へと溜めているのが視て取れていた。


 それも倍速処か一〇倍速ですら無い超々高速、下手をしたら一〇〇倍、或いは一〇〇〇倍速かもだ。


 僅か一分程度の時間が驚くくらい長大に感じ、固唾を呑んで見守っていた二人の前で卦韻がグラ付いて、慌てた慎吾が卦韻を抱き止める。


「卦韻っっ!」


「だ、大丈夫……慣れない魔力の減少でちょっと疲れただけ」


「莫迦者が! 理央、すぐにでもソファへ寝かせるぞ!」


「は、はい!」


 戯けた事を言う卦韻に叱り付けると理央を呼んですぐにもソファへ、卦韻を寝かせた後は大きな溜息を吐きながらも、スキルから吐き出されていた銀……だった物を視た。


「魔銀。魔力を溜め込んだ銀が変質した鉱物」


「既に名前が付いてるのね」


「硬度は約一〇、詰まりは金剛石級という訳だ。しかも自然に形を成すには地球では魔素が絶対的に足りん、卦韻が精製するしか無いな」


 個人に依存するなら商売としては特許云々以前の問題で硬度も問題、これの融点次第では加工が出来ない謂わば出来損ないな可能性も。


「で、その魔銀を卦韻はどうしたいと考える?」

 

「銀の一〇〇倍の値段で売るのは構わないけど」


 シルバーインゴット自体は既に卦韻が買い取っており、魔銀化した物も当然ながら卦韻に所有権が有るのだから、欲しいなら買うしかない。


 一kgで四五〇〇〇円となると、一〇〇倍になったら四五〇〇〇〇〇円に成るから可成り高価。


「父さんと母さんに訊きたい」


「何だ?」


「何かしら?」


 卦韻は知りたい事を訊ねてみた。


「ミスリル……真銀は地球から出土はされる?」


「……魔導金属の類いは自然に出土しないな」


「でも、存在はしているわ」


「それは宝箱で出るミスリル製品、魔物が落とすドロップアイテムからの物を集めたって事?」


「そうだな」


 此方側――ルミスリルが自然出土しない事は、卦韻からしたら理解をしていたから驚きは無い。


「それは真銀じゃない。銀と性質が似ているから“真の銀”とされているけど、銀その物という訳じゃ無いんだ。だから遣ってみて判ったけど、それも真銀と近い特性こそ有るよ。でもその物では有り得ないからね、だから“魔銀”と呼んでいるんだよ」


 魔銀とは魔素を無理矢理に含ませた物と成っており、真銀は永い――恒久にも等しい年月を魔素が銀鉱石に染み込んでいき、完全に馴染んだのが魔導金属である真銀(ミスリル)であるという事なのだろう。



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