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銀の騎士と黎明の星  作者: 月乃杜
第一章:聖霊剣
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第29話:ミリス堂

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 【錬成王】を用いると、スキルの力で青銅の剣の分解をする。


 俺は彼方側……地球の方では既に一二個も造っていたから、素材をブッ込んでしまうだけで造れてしまうのがスキルの良い処だろうな。


「銀を買うまでは銅で、亜鉛銅合金化した青銅。こいつで土台を造れば良い、後はゴブリンの魔核が幾らでも有るからな。何しろ未だに売ってないんだから。足りなけりゃ、聖霊の森でまた取ってくれば良いさ」


 基本的に孤児な俺やランス&スピアだったし、家の中は俺しか居ないから作業が出来るんだ。


 唯一技能――ユニークスキルを展開していても他人には見えていない、従って俺は端から視ると独り言を呟きながら一人遊びをしているちょっと可笑しな奴で、余り誰かに見せたい姿じゃ無い。


「向こう側で既に造っているから簡単だよな」


 このスキルの良い処である。


「良し、彼方側の時と同じく一二個が完成した」


 正しくこれは、三分クッキング成らぬアルケミーと言った処だった。


 青銅の剣の素材分解も御手のモノってやつで、スキル任せにしたらあっという間だから笑える。


「取り敢えず、こいつを売れば幾らかには成る」


 此処は村長が集落のトップを張る謂わば村だ、然し聖霊の森と隣接する村ながら大きい事もあってか総人口は中々で、需要が見込めるからと国の首都から商人が店を出しに来ている程だった。


 従って、俺の造った魔装具だって売れるかも。


 そんな小さくて淡い気持ちを懐きながら家を出てみると、碧銀のポニーテールを風で揺らしながら俯いて歩く美衣……ミスティが居た。


「ミスティ!」


「あ、ケイン……おはよ」


「おはよう。どうしたんだよ? 元気が無いな」


「ああ、うん……」


 いつもはなら花丸元気印なスピア程じゃ無いにしても、ミスティは元気過ぎるくらいには元気で明るく人柄も佳しと非の打ち所も無いけど。


 少なくともこの数日、落ち込んだ様子なミスティは見た事が無い。


 そんなミスティが顔を上げると苦笑いだった。


「あはは、ちょっと……ね」


「何かあったのか? まさか無能ムーヴ君から何か嫌がらせでも?」


「違う違う!」


 両手を横にブンブンと振りながら否定をした。


 だけど、某か悩みが有るっぽいのは間違い無さそうな雰囲気を醸し出しているし、世話に成っているのは確かだから愚痴くらいは聴くのに。


 結局、何も聴けない侭に午前中の座学は終わってしまって、いつもの通りに昼の給食を食べてしまった俺達は食休みをしてから庭へ出る。


「あれ? そういや、今日は無能ムーヴ君はどうしたんだ?」


 取り巻きAと取り巻きBの二人は来ているというのに、無能ムーヴ君は何故か学校を休んでいるみたいで今更ながら気付いて訊いた。


「散々っぱら『無能無能』とイキり散らしていて敗けたからな、それで恥ずかしくて学校に来れていないみたいだな。まぁ、奴は親も居るから慰めて貰ってんじゃねぇか? 実際は知らんけど」


 これは聴いた話だが、俺やランス&スピアは親を早くに亡くした孤児である為に一人暮らし用の宿舎、詰まりあの掘っ建て小屋に住んでる。


 ミスティも父親を亡くし、母親は父親が死んだ際に連れ戻されて両親が居ないが、村長の孫娘という立場から本来は宿舎に入らなくて良い。


 だけど、俺達が心配で入る事にしたんだとか。


 抑々、ミスティのお母さんはお父さんとの結婚自体を反対されていて、故に亡くなったのと同時に連れ戻されてしまったらしい。


 救いなのは母親が自ら出て行った訳では無く、飽く迄も泣く泣く引き摺られて行った事だろう。


 幼い時分の事だったけど、ケイン・ユラナスの記憶に何と無くだが残っていたから多分間違いない筈なんだが、本当に微かな記憶だから。


 俺達の両親に関しては魔物に殺されたらしい、此方はミスティの母親の時以上に幼かったから全く記憶に無い、だから顔も名前も判らない。


 とはいえ、ケインの両親みたいな魔物と闘って死亡なんて事態を僅かでも減らす、この魔装具はその第一歩に成ってくれれば御の字だった。


 それはそれとして、矢張り今朝からのミスティが気になる。


 色々と世話を焼いて貰っているだけに放って置くのは違うし、それにミスティと美衣奈がごっちゃに成っているのも大きいんだろうね。


「ほら! 余所事を考えてる場合なのかよっ!」


「くっ!」


 いつもの通りにとはいえ、ランスとの模擬戦は槍太を思い起こすから()り難くは無いんだよな。


 寧ろすっごく闘り易い!


 決着としては、本当に僅かな差で俺の勝利だったという。


「さぁ、今度の相手はボクだよ! 始めようか」


「ああ、征くぞ!」


 スピアからも負け越しているから勝ちたいね!


 無能ムーヴ君が居ない実技授業は恙無く終わりを迎え、これ程にまで戦闘実技だというのに平和な侭に終わったのは初めてじゃないか?。


 それだけ突っ掛かって来ていたって事だよな、厄介な事この上無いってのは正しくこの事か。


 尚、スピアとの模擬戦には接戦の末に勝利を収めている。


「今日は村中央の武具店に行きたいんだけど構わないか?」


「ミリス堂にかよ?」


 ミリス堂というのがこの村の武器や防具や装飾具を売る店だ。


 俺達もそろそろ本格的な実戦に入る訳だから、武器や防具を揃えようというのもおかしくない。


 デザインのオーダーメイドも、結構な割高感が有るけど可能。


 とはいえ性能の良い武器や防具であるのなら兎も角として、例えば革の鎧をオーダーメイドする奴なんてまず居ないから、ミリス堂がそんな仕事を請け負う事なんて無いにも等しいみたいだが。


「ちょっと売却したい物が有る」


 そう言って鞄に突っ込んだ小さな木箱を出す。


「これは?」


「ブロンズネックレス。デザインは汎用性を持たせてるけど、スピアに渡したのと変わらない性能の魔装具だから、恐らくだけど売れる」


「マジかよ」


 木箱をランスが開けて驚きを露わにしていた。


「確かに円形の土台の中央にゴブリンの魔核ってのは、デザインとしちゃ在り来たり過ぎだよな」


 スピアに渡したネックレスは菱形にしてるし、装飾も少しだけ凝ったデザインを採用している。


 ダメージを二〇%カットも地味に嬉しい機能であるらしく、今日も模擬戦でダメージを受けていたけど、ランスもスピアも体感的に今までより痛くなかったのだと感想を言ってくれて助かった。


 村の中央の広場にドカンと建てられた煉瓦作りの建築物、その名も高き“ミリス堂”だったけれど正しくは[武装具店ミリス]という事になる。


 ミリス堂というのは通称だ。


 ミリスは店主の名前だけど、店の名前=店主の名前は珍しくない。


 寧ろその方が主流まである。


 金属製の扉が開かれ中に入ると、人人人でごっちゃ返していた。


 村の規模からは思いもよらない人数だったが、聖霊の森や他にもダンジョンが有る村だけに戦力は多く、武装具店も客には困らないらしい。


 それが良い事が悪い事かは別にしてもだがな。


「いらっしゃいませ~。ようこそ、夢の武装具店[ミリス堂]へ」


 モノクルを左目に掛けた茶髪を短く切った青瞳の女性、美人とまではいかないけど顔立ち自体はそれなりに整った三十路くらいであろう。


 道中でランスから聴いたけれど、この村のミリス堂は暖簾分けされた支店みたいな扱いに過ぎず、彼女の名前にしても“ミリス・ファーライト”では決して無くて、リリア・ファーライトだとか。


 同じ家名から判る通り、本店の店主ミリス・ファーライトとは従姉妹の関係にあるらしかった。


 この世界は平民が『名前・家名』、王候貴族が『名前・通名・家名』、亜人が『名前』のみだ。


「これを売りたいんだ」


「ふむ、お預りしますね」


 彼女がモノクルを輝かせながら、薄手の手袋を着けると……


「銘は無い。青銅製で、ゴブリンの魔核、籠められた魔法はダメージを二〇%カット……ですかね」


 極普通に鑑定をしてくれた。


 大正解だが、ひょっとしたらあのモノクルは、彼方側で父さんが造ったって言う“鑑定眼”と同じ代物か?


 俺は思わずグッと半ば乗り出すかの様にして、リリア・ファーライト女史を見詰めてしまう。


「おや、そんなに見詰められると照れてしまう」


 それに気付いたか、頬を朱に染めながら揶揄う感じに言ってくる。


「痛ぁぁっ!?」


 そしたら何故かミスティとスピアにより、尻を左右の両方からつねられてしまうのであった。



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