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銀の騎士と黎明の星  作者: 月乃杜
第一章:聖霊剣
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第28話:魔装具の需要

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 冒険者として小さな、然し確実な一歩を刻んだという自覚としては、お金も一つの基準となる。


 春休みも前半で初心者ダンジョンに籠る毎日、稼いだ額の数万円とは果たして高いのか否か?


 それでも自分で稼いだお金に違いが無かった。


「それにしても、中々に良い感じに使えていた。ダメージカット程度の魔法だったにしてもね」


 ヤバいのは素材さえ有るのなら幾らでも増産が出来る事、その気になれば安い値段で手に入れた素材で、それこそ莫迦みたいに高価(たか)い魔装具が次々と造れる事であろう。


 事実、許可を得て幾つかゴブリンの魔核を私的に使いたいと譲り受け、青銅を母親である理央から買い付けた上で、形状を変えたブロンズネックレス[ダメージカット]を造り出してしまってる。


 ダメージカットの魔法なら既に登録済みなのだから、後は魔法を籠めるのに必須な魔核と土台となる金属塊が有れば『あら不思議』だ。


 ダメージ二〇%をカットするブロンズネックレスを一二個が完成、後はこれらを冒険者ギルドと密接な繋がりを持つ愛坂学園に売れば?


 予め美衣奈には相談をしていて、曰く数万円の売却益が見込めると。


 それも一個でだから、何とも素晴らしい結果。


 赤銅真鍮なんかも装飾品の土台として使えそうだが、流石に理央も持ち合わせてはいないか?


 それとは別に青銅なら()()()彼方側でも手に入れ易いのではなかろうか? と云う思惑もあった。


 彼方側で銀を買うには高いけど、先ずは魔装具を造って売ればいずれ銀を買えるかも知れない。


 此方側で出来る事は彼方側でも出来るのだと、唯一技能がどちらでも同じ水準で使える事に気付けた為に判ったから、後は上手く扱えるのならばちゃんと遣れる筈だし、若しも判らない事があったら彼方側でミスティに訊いてみれば良いのだ。


(然し、まさか銀の価値が此方側と違うとはな)


 彼方側での銀は此方側よりずっと高額だった、無論だが金程では無いのだけどそれでも高価(たか)い。


 だけど彼方側でも魔装具を造り売却すれば? と云うのが卦韻の思惑であったのだと云う。


(いつの間にか、彼方側と此方側を分けずに考えているよな)


 その事に吃驚してしまいながらも受け容れた。


「取り敢えず、このブロンズネックレスの売れ行き次第か」


 全ては売れてからだ。


「父さんは本職の魔工師だから訊いてみようか」


 こないだ、秘奥スキルでブッ飛ばされたばかりだから、ちょっとばかりアレだったけど蟠りなどは決して無くて、寧ろ憧憬すらも感じる。


「そろそろ戻って来たかな?」


 卦韻はブロンズネックレス……正式名称は未だに無いが、一二個のこれを持って階下に降りた。


「父さん」


「おう、卦韻。怪我は大丈夫か?」


「大丈夫。実は魔工師として、それからその手のアイテムを売る会社の代表取締役として、訊いてみたい事が有るけど良いかな?」


「構わんぞ、思えばその手の話はした事が無い。普通の親子ならそのくらいはするんだろうがな」


「どうだろうね、今時は親子間でも冷めているなんて割りとあるから。其処までするものかね?」


「そういうものか。それで? 訊きたい事とは何なんだ?」


 促されて卦韻は、柔らかく白い布に包んで持って降りたブロンズネックレスを慎吾へと見せる。


「同じ形のネックレスが一二個か。ドロップ品じゃ無さそうだ。填め込まれた石は魔核みたいだが見た事が無い装飾品だな。魔装具か?」


 慎吾は薄手護謨手袋を填めると、テーブルに置かれたネックレスを指で摘まみ、鑑定眼を掛けてそれを確りと見詰めて目を細めた。


 鑑定眼は慎吾謹製の魔導具だが、魔装具ではないのは戦闘の為の装備品では無いからである。


「青銅を土台(ベース)にゴブリンの魔核(マナ・コア)を使った魔装具、魔核に籠められた魔法は“損傷保護(レドゥセーレスカデ)”だな」


 名前は未だ無い。


「へぇ、損傷保護は確かちょっとだけダメージをカットする初級魔法だったわね。だけど問題としてどうやって造ったのかが気になるわ」


「これ、言っちゃって構わないやつなのかな?」


「成程、スキルだな?」


「ん~、正解」


「言い淀むくらいだ、レアリティの高いスキルって処なんだろう」


 親子だからと何でも言える訳でも無いのだし、ヤバいスキルに関しては出来る限り秘匿したい。


「今回は父さんにコレの相談がしたい訳だから、スキルに付いて内緒にした侭ってのも有り得ないかな。唯一技能(ユニークスキル)【錬成王】で造ったんだ」


「唯一技能! しかも戦闘方面では無いスキル」


 慎吾は聴いた途端に、目を輝かせながら卦韻を見詰めてくる。


 どうやら魔工師という、アイテム造りをしているだけに興味も津々といった処であるらしい。


 ひょっとしたら、慎吾もこういったスキルが欲しかったのかも知れない、それだけ食い付きが良かったし、明らかにブッ刺さっている。


「鑑定してくれた通り、土台は青銅の剣を鋳潰した物。魔核も簡単に手に入って安値にしかならないゴブリンの物を使用した。籠めている魔法も、俺が一度でも視ればスキルが勝手に組み込むよ」


「本当に、俺が欲しくて欲しくて堪らなかったスキルだよな」


 スキルは発動すれば後は記録された動きを自動で行ってくれる為に、遣らなければ成らない事などは特に無いから、ある意味では楽なのだ。


 正しく、工場で量産ラインへ載せるかの如く。


「それで、訊きたい事ってのはコレの値付けか」


「まぁね。ほら、装備品や消耗品って物によっちゃ高価いだろう? 売ればどの程度に成るかってのは結構な重要度の高い関心事項でさ」


「そうだな……」


 慎吾は今一度、ブロンズネックレスを鑑定眼を掛けた侭で繁々と見つめ直して呟き始める。


「ふむ、ベースの青銅もよく磨かれているしな。魔核がゴブリンの物なのは、初級魔法を籠めるなら充分だったからか? 初心者用としては決して悪くない品物に成りそうだ。それに魔装具だし」


 結論が出たのか、慎吾が顔を上げて口を開く。


「使われた素材、籠められた魔法、中古品では無く新品である事を鑑みて、俺なら二〇〇〇〇円で買い取って店には二五〇〇〇円で出すな」


「へぇ、中々かも」


 三〇〇円程度の価値なゴブリンの魔核であり、土台の青銅も鋳潰した剣から僅かに採取をしたに過ぎず、人件費や光熱費は個人的なスキルを使っただけだから無料と言っても過言では無かった。


 それを鑑みれば、一個辺りに使われたコストは僅か一〇〇〇円程度、コストパフォーマンスという観点から視たなら可成り良い感じだ。


 慎吾からしたら、息子に一個辺り二〇〇〇〇円を支払ったとしても、五〇〇〇円の儲けが出るから六〇〇〇〇円の利益が見込める商い。


 二四〇〇〇〇円の支払いだけど、慎吾の懐を全く以て痛めなかった。


 しかも、新品である事を強調するかの様に卦韻は指紋を着けない為、軟らかな布に包み込んで渡してきた事から理解している様だったから。


 無論それは売れたらの話であり、今の侭ではどれだけ良い品でも捕らぬ狸の何とやらであろう。


「それで、これはコンスタントに造れるのか?」


「造れるよ。少なくとも、このブロンズネックレスに限ればね。素材として亜鉛銅合金とゴブリンの魔核が必須だけど。造る数だけ用意すれば幾らでも手間暇掛けずに増産する事が出来るからね」


「そうか……」


 (おとがい)に指を添えながら思案をしている慎吾。


「需要は有る?」


「有るな。一六年が経って尚、魔装具はダンジョン産の物ばかりだ。俺も開発したりはしている、だけど絶対数がどうしても少なくてな」


 漫画じゃあるまいし、ポンポンと魔装具の類いが造られる筈も無く、しかも工業製品にする為のノウハウもまるっきり構築されていない。


「これというのも、原因の一つは一〇年前の事。正確には一六年前にダンジョンが顕れてから凡そ六年間、俺や玲也が運営する企業くらいなんだ。それから一〇年くらいで、ある程度は増えてはきているんだがな。それでもダンジョン内で見付かった宝箱から獲得された物くらいでね、実際に俺達も困っていたのさ」


 需要は有る、然し品は中々増えない、詰まりは高価(たか)く成ってしまう負のスパイラルが渦巻く。


 それに、魔装具は実際に籠める魔法が使えないでは成立しない。


 困ってしまう訳である。



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