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銀の騎士と黎明の星  作者: 月乃杜
第一章:聖霊剣
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第27話:転移門

.

「美衣奈、デスコーピオンの甲殻鎧とネックレスは送ってくれた?」


「大丈夫、送ったよ。ギルド経由で送ったから、明日には北海道の冒険者ギルドに着いている筈」


「それは良かったよ」


 イレギュラーが初心者用ダンジョンに出てくる昨今、防御力の向上は必須事項だという考えからすぐにも甲殻鎧とネックレスを送った。


 鎧はデザインが変わらないから色で判る様に、それからシルバーネックレスは美衣奈が同じにならない様に自分のはリング、璃亜のをネックレスにする事を提案してきたからそれに従った形だ。


 璃亜の方をネックレスにしたのは理由が有り、闘士という職業スキルを持つから基本的に素手喧嘩(ステゴロ)だし、リングでは壊れてしまう。


 因みに美衣奈用のシルバーリングは何故だか、()()()()()()()()()確りと装着が成されていた。


「それにしても、卦韻の唯一技能って凄いよね」


「創造系としてはちょっと使い難いんだけどな、それでも普通に創るよりマシなのかも知れない」


 創造系はラノベなんかだと、頭で考えたモノがパッと創られる印象だったけど、卦韻の唯一技能では飽く迄も手動で造るという事になる。


「それにしても、美衣奈が防御力向上の魔法を使えて助かったよ」


「そのくらい何でも無いよ」


 唯一技能――【錬成王】は卦韻が知っているというか、視た事の有る魔法を脳内の空き領域へと格納をしており、それを基に魔装具などを構築が出来る為にか、卦韻は容易くこれらを製作する事が可能だった。


 この機能を知った卦韻は早速と云わんばかりに魔法を教わり、こうして魔装具である甲殻鎧や、シルバーアクセサリーに応用をしたのだ。


 美衣奈は自分の左手の薬指に太陽の光を反射して輝くシルバーリングを見詰め、頬を朱に染めながらボーッと無惚れている様である。


 どうも闘士だからどうは、適当に答えた建前だったみたいだ。


「それじゃ、行こうか卦韻」


「そうだな」


 北海道とは違って、初心者用ダンジョンを管理運営しているのは愛坂学園、故に今日も今日とて二人は愛坂学園の正門を抜けて裏門を越えると、裏山に出現していたダンジョンの入口に向かう。


 今までと違うのは漆黒の甲殻鎧を纏った卦韻、そしてシルバーリングを指に装着した美衣奈だ。


 元より卦韻が装着をしていれば、垂れ流されている氣力で甲殻の強度が弥増し、鉄製の鎧にも迫る防御力を獲得出来るから中々に強い。


 しかも美衣奈に見せて貰ったダメージカット型の防御魔法――損傷保護(レドゥセーレスカデ)を籠めてある魔装具だ。


 この魔法は鎧のみが対象で無く、鎧が無い部位である全身が約二〇%をダメージカットしてくれる為に、美衣奈のシルバーリングとか璃亜のシルバーネックレスにも同じくこの魔法を確りと籠めてあった。


 損傷保護は防御力を上げるタイプの魔法では決して無く、飽く迄も受けるダメージを幾分かカットをして減らすだけの初級魔法でしかない。


 ただ単に一〇〇のダメージを八〇にしてくれるだけだ。


 それでも有り難いのだけど。


 そろそろ卦韻達としてもB5を越えたい訳だし、其処に存在している転移門たる立方体水晶の部屋まで行きたい、これまでは再三顕れたイレギュラーにより足留めを喰らってきて仕方が無かった。


God morgen(グモーン)!」


〔グモーン〕


〔おっはー!〕


〔御早う!〕


「本日も愉しく仲良く元気良く! ダンジョンの探索をやぁぁぁぁぁぁってやるんだよっ!」


 配信用ドローンのスイッチを入れた美衣奈は、早速とばかりにスマホを使ってリスナーと交信。


 リスナー達もノリが良くて挨拶を返してくる。


「こないだはごめんね、デスコーピオン何ていう可成りのイレギュラーが出ちゃったんだよね」


〔知ってる、確かデスコーピオンってのは初心者ダンジョンには出ない筈の魔物だったよな~〕


〔そうそう、早くてもDランクダンジョンから〕


〔それを斃しちゃうケイン君がパネェですよ!〕


 どうやら彼らもイレギュラーに付いては認識済みらしく、温かくも優しい言葉で労ってくれた。


〔あれ? そういや、ケイン君が黒い鎧を着てるんだけど?〕


〔そう言えば!〕


 気になって仕方が無いと言ってくるリスナー、それならば……と真相を語ろうかと口を開く。


「これは正式名称――『デスコーピオンの甲殻鎧』と云う。こないだ斃したデスコーピオンからドロップした甲殻、それからデスコーピオンの魔核を使って俺が造った魔装具ってやつだな。“損傷保護(レドゥセーレスカデ)”って魔法を籠めてあるんだ。ダメージカットってヤツだよ」


〔え、ケイン君が……〕


〔造ったぁぁっ!?〕


〔マ・ジ・か・よ!〕


〔って、事は魔工師なのか?〕


 卦韻の話にリスナーは驚愕のコメントを出す。


 魔工師で無く“錬成師”とでも云うモノだろう、唯一技能(ユニークスキル)の【錬成王】は可能性の塊であった。


「んじゃ、降りて行くよ! 今日こそはゲートまで降りるからね」


 それは正しく、美衣奈による決意表明であったのだと云う。


 B1やB2やB3では特にイレギュラーは顕れず、ゴブリンやコボルトやスパイダーなど既出な魔物を相手に、魔核を稼ぎながら存在力の獲得もしていって偶~に落ちるドロップアイテムを拾った。


「順調だね」


「イレギュラーさえ出なけりゃな。何て言っていたら出るのが御約束だったりするのかね?」


〔うわ~、縁起でも無いな〕


〔然し御約束ではある〕


〔俺、戦争が終わったら結婚するんだ……何て事を言っていた奴が、いの一番に死ぬ御約束とか〕


〔マジに縁起でもねーwww〕


 取り敢えず始終が和やか穏やかに進んでいる。


 殺っている事とは、云ってみれば魔物に対する殺戮だけど。


 そして、漸く二人はB4を越えてB5へと降りた。


「やっと来たね」


「まったくだよな」


 偶に不意を突かれて攻撃を喰らう事もあるが、美衣奈はシルバーリングのダメージカットによって殆んど怪我にならない。


 卦韻の甲殻鎧も軽く硬いと良い感じに使える。


「どっかの部屋にゲートが在る筈だから捜すよ、ゲートはちょっと大きめな六角柱の水晶だよ」


「了解だ!」


 ダンジョン内はルームと呼ばれる部屋が存在しており、内部には魔物が居たり宝箱が置かれてあったりするが、ゲートも其処に在った。


 幾つかルームを視たが、イレギュラーは無しで魔物が居たくらいで、宝箱は特に置かれてなかったしゲートも残念な事に見付からない。


「浅層とはいっても存外と広いものなんだよな」


「ゲートが無ければ抑々、探索なんて侭ならなかったろうね」


「そうだよな」


 何しろ、いちいち登ったり降ったりしていては時間が幾ら有っても足りず、いざと云う時に早く戻りたくても戻れない(もど)かしさよ。


 卦韻も其処ら辺は少しばかり懸念をしていた。


「あ、ルームが有ったぞ」


「本当だね」


 遂に見付けた卦韻がルームへの扉を開くと……


「六角柱の水晶……ゲートか」


「だね。これが転移門だよ」


 透明の……まるで硝子を思わせる立方体の水晶碑が屹立していた。


「これに触れれば階層が浮かんで、行った事のある階層に跳べるよ。私達は地上一階のみだね」


「へぇ……」


 試しに触れると確かに、言われた通りである。


〔って、事は次からミスティちゃんとケイン君はB5からスタートか〕


〔何か、感慨深いよな〕


〔宝箱なんかも有ったら良かったんだろうにな〕


〔無かったもんは仕方無い〕


 口々にコメントを流すリスナー達だったけど、皆が一様に労いの思いを籠めてくれていた。


「それじゃ、今日はそれなりに時間も経ったし。皆さんお疲れ様。Vi ses(ヴィ・セース)!」


 パタパタと手を振りながら、美衣奈は配信用のドローンのスイッチを切ってスマホも仕舞う。


「よし、撤収しよっかケイン」


「ああ。今回はイレギュラーも無くて順調そのものだったな」


「いつもこうなら良いのにね」


「本当にな」


 卦韻と美衣奈は転移門を使って地上に戻った。


 そして、いつもの通りに魔核換金所へ向かう。


「あれ、今日は天笠鎮摩先生」


「よお、愛坂。それにそっちは確か楠葉……だったよな?」


「え、はい」


 何で会った事も無いのに判るのだろうか? という疑問は尽きなかったが、美衣奈はバックパックから魔核を取り出してカウンターに。


「へぇ、初心者ダンジョンとはいえ大漁だな?」


「頑張りましたから」


「結構、結構!」


 眼鏡型魔導具――鑑定眼を天笠鎮摩(あまかさしずま)も掛けて、魔核の買い取り価格を正しく確りと計っている。


「四二〇〇〇円だな」


「そっか。一五〇〇〇円ずつ分けて、一二〇〇〇円をパーティ資金として貯金をしておこっか」


「そうするか」


 実際には多少の端数が出ていたけどそれを四捨五入みたいに、端数を無くして支払ってくれた。



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