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銀の騎士と黎明の星  作者: 月乃杜
第一章:聖霊剣
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第21話:建御雷神

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「へぇ? 能力が全体的に上がったみたいだな。魔導術は使えない筈だが、そうすると氣力か念力か霊力のいずれかに成る訳だが……な」


 愉しそうな表情で……否、それは愉悦とでも云える戦闘狂の様な。


 魔力を通し慎吾の身体強化が成されているのが視て解る、元より行われていたのは魔力が迸っているだけの簡易的な強化でしかなかった。


 本当の意味での自己強化(バフ)魔法という事だろう。


「さぁ、征くぞっ!」


 木刀を揮うと慎吾は駆け出すが、その速度は先程よりも鋭くて疾風迅雷の如く、卦韻の目の前に刹那の刻すら刻まぬ速度で現れていた。


「これがレベル八〇〇越えの!」


 それでも卦韻は反応をしている、()()()()とは単純な身体強化で無く思考加速も成されるから、更には動体視力までもが強化されている。


 右手に持っていた木刀が左側からの横薙ぎで、そんな慎吾の攻撃を何とか木剣で防いでみた。


「よく防いだ!」


 袈裟懸けを防ぎ、逆袈裟斬りをバックステップで躱す卦韻、然しながら即座に突きに移行する。


 生命力と精神力をガリガリと削られていくも、それであっても根性で建御雷神を維持していく。


 反して慎吾は魔法だから減るのは精神力のみでしか無く、生命力や体力を減らさないから上昇率こそ建御雷神に及ばないが使い勝手は良い。


「くっ!」


「ほらほらっ!」


「させるか!」


 慎吾からの攻撃を往なすのは正直に云えば厳しいのだが、向こうが手加減をしてくれているから何とかかんとか卦韻も反応が出来ていた。


「こんなものか?」


「ぐっ!」


 どんどん疾くなる剣速に翻弄されてしまう卦韻だった、それでも少しずつ対応をしているけれど対応力と上がる剣速が拮抗してはいない。


 何よりも、大元のレベルが一〇と八〇〇以上では対応するにも矢張り限界というものがあった。


「秘奥スキル……斬月っ!」


「はっ! がっ!?」


 “斬月”とは所謂、比喩表現というモノである。


 それは『不可能を成し遂げる』という意味で、慎吾の使った秘奥スキル“斬月”とは目にさえ見えていれば距離に関係無く斬る強力なスキル、しかも斬撃の軌跡すら起こさない故に放たれれば斬られるという。


 故に卦韻は動体視力が良かろうが、反応速度が鋭どかろうが、躱すのは於ろか視認すら出来ない侭に斬り払われてしまった。


 吹き飛ぶでも無く、斬撃の威力だけが体内を駆け巡り、卦韻は建御雷神をも貫かれて気絶する。


「秘奥スキルまで見せるなんて、随分と卦韻の事を買ってるのね?」


「我が子の才を買わない程に、愚かな親では無い心算だからな」


 勿論、本当の意味で才能が無いなら話は別だ。


 だけど卦韻に才能が無いなんて、それは有り得ない事なのだと《《慎吾も理央もよく判っている》》。


「さて、寝かせてくるか」


 慎吾は卦韻本人が気付いていれば羞恥心に悶えそうな横抱き、即ちお姫様抱っこと呼ばれる抱え方をすると部屋へと連れて行った。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 卦韻をベッドで寝かせた後、二階の卦韻の部屋から降りてリビングに戻った慎吾は、愛妻の理央が淹れてくれた珈琲を飲んで一息を吐いた。


「ふぅ、美味いな」


「フフ、有り難う慎吾さん」


「卦韻の奴は随分と強くなった。魔力を扱う才能が無いから俺の技術は剣技も含めて教えられん。それが残念と言えば残念なんだがな」


 刀を扱う武士の職業スキル、使う武器は刀系統になるから卦韻とは戦闘スタイルからして違う。


 とはいえ、先程みたいな模擬戦闘くらいであれば遣って遣れない事も無い、実力差が有り過ぎて卦韻が弱い間はどうにも手加減がし難いが。


 レベルが一〇に成り、更には氣導術も扱える様に成ったからか、慎吾から視てそれなりには闘えそうだったから試しに模擬戦をしてみた。


「初心者用のFランクなダンジョンじゃなくて、Eランク以上のダンジョンを踏破するくらいに成れたら、秘蔵の酒で乾杯をしたいもんだな」


「その時は御相伴に与りたいわ」


 息子をダシに、慎吾と理央は四十路にも成ってまるっきり新婚夫婦の如くイチャ付き始めた。


 年齢的には高齢出産に成るだろうから避妊はしろよ……とか、卦韻が視ていたなら要らない世話を焼きそうなレベルのイチャイチャである。


 ソファーに座る慎吾の背後からソッと抱き着いた理央、首だけを向けると頬を朱に染めた彼女と慎吾は唇を重ねて実に夫婦らしい行為。


 然し、没頭はしない。


 リビングで行為に没頭していて、卦韻が万が一にも降りて来て視られたら気まずいだろうから。


 これ以上は夫婦の寝室で……だ。


「明日はSSSランクダンジョンに入る事になる。会社の事は副社長の君に任せる事になるけどな」


「ええ、魔工師としつでは無くSSSランク冒険者である楠葉慎吾の御仕事だもの。頑張ってね♪」


「勿論だとも」


 ダンジョンとは長くて深いモノ、ランクの高いダンジョン――Sランク以上の認定を受けているのは伊達では無く、浅層→上層→中層→下層→深層→深淵→奈落といった区分けが成されており、卦韻と美衣奈が降りたのは未だに浅層に過ぎなかった。


「処で、卦韻のアレって何だったのかしらね?」


「美衣奈ちゃんが言っていた氣導術だろうな」


「アレが氣導術?」


「恐らく。俺は使えんから判らん、だが態々言っていたんだぞ?」


「そうね……」


 慎吾と理央は美衣奈から聴かされた話を信じているし、ある意味ではだからこそSSSランクだのSSランクの冒険者にまで駆け上がれたのだ。


「使っていたのは加速をするのと、身体強化なのだろうな」


 闘っていたからこそ判るのか? 慎吾は正確に使っていたのが何かを答えてしまっていた。


 酒は飲むが煙草は吸わない慎吾、そんな彼にとっての癒しは矢張り愛妻である理央との絡みだ。


 魔力の活性化が若さを保つ秘訣みたいなもの、四十路とはとても思えぬ若く美しい彼女と会話は愉しく、今は隣で微笑みを浮かべながら座っている理央との会話が弾んでいる。


「取り敢えず、卦韻のアレが氣導術なら精神力だけでなく生命力や体力も削られる。余り多くは使えないんだろう、切札には成りそうだが」


「そうね、魔法は精神力だけだからまだ使い勝手が良いわ」


 氣導術に関しての概要は美衣奈から教えられていたらしい。


「本当に、美衣奈ちゃんには色々と教えて貰ったものだものね」


「あの子の知識と研究意欲は大したものだよな」


 ダンジョンに関する事は美衣奈の独自な研究によるものが多く、魔法に関しては元々の知識量が半端じゃ無いから氣導術も既知だった。


 美衣奈は霊導術や念導術に関する知識も多々持っていて、魔法――魔導術の使い手よりも少ないけど確かに居る者達も助かっている。


 約一〇年前まで社会的な信用が無かった冒険者という仕事、痛ましい事件と共に社会からも認知をされる様に成っていったけど、ダンジョンに関する知識も無く、氣導術は於ろか魔導術や霊導術や念導術の知識も全く足りてないのが痛かった。


 それを補完したのが美衣奈の知識という訳だ。


 若干、五歳か六歳程度の……息子の卦韻と変わらない年齢でしかない少女が何もかも知ってる。


 不可思議ではあったが、ダンジョンという既知ではない存在が有ったからこそ受け止められた。


 というより、楠葉家や愛坂家や水無家やその他の一族は元々が一本化されたもので、ダンジョンや導術に関する知識、一族に遺されていた武器や防具などの事なども色々と伝承が遺されている。


 現在、卦韻が使う武器と美衣奈の防具類に関しては、古くからの伝承と共に遺されていた物だ。


「さて、そろそろ風呂に入ってから寝ようか?」


「そうね」


 当然の如く、慎吾と理央の二人は近くも遠くも無い血縁関係に有り、又従兄妹よりはちょっとばかり遠いけのだれど確かなもの。


 彼らの血縁関係はそれこそ、西暦より古いと云っても過言では無いのだから数は可成り居る。


 この一族にはダンジョンの情報もある程度でしかないが共有されていたし、水無家が北海道へと移り住んだのも初心者用のダンジョンが顕れる、そんな情報を元に動いていたからに他ならない。


 楠葉家及び愛坂家の現当主が、ダンジョン攻略の為の冒険科を内包する私立高校を開校したり、他に冒険者に必要な物を揃えたのもこの為。


 楠葉慎吾が一六年前に冒険者としていの一番に立ったのも、相方として愛坂玲也が動いたのも、偶然などでは無く必然的な事だった。


 愛を語らう夫妻は風呂場でイチャイチャして、更には寝室でもイチャイチャといずれは、卦韻に弟妹でもデキそうな勢いだったと云う。



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