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銀の騎士と黎明の星  作者: 月乃杜
第一章:聖霊剣
16/55

第16話:第三回配信

.

「間違いなく知ってる天井だ。俺の眠っていた筈のベッドの上、それにデスコーピオンの甲殻鎧も装着してないな。クリスタリオンは有るが」


 天井の確認をした卦韻は、身体をムクリと起こすと身体の状態やクリスタリオンの在処を確かめてしまい、胸を撫で下ろして溜息を吐く。


 卦韻は聖霊剣クリスタリオンを鞘から抜き放って素振り、割かし広くて天井も高いから自由に剣を揮う事が可能だから準備運動し易かった。


「お早う、卦韻」


「父さん! 珍しいな」


「俺がいつも家に居ないみたいに言うなよな」


「いや、居ないじゃん」


「うぐっ!」


 楠葉慎吾は冒険家を騙る冒険者、正確には息子の卦韻だけが知らされてはいなかったらしい。


 その職業柄、どうしても家を空けがちになるのを鑑みて、冒険家という嘘でも真でも無い灰色の答えを以て卦韻に伝えていたのである。


「知ったんだな」


「知ったよ、聴かされた。父さんが実は冒険家じゃなく冒険者だって。まさかの母さんまでもが」


「ふふ、冒険家も嘘では無かったんだけどな」


 トーストエッグを口にし、咀嚼をして呑み込むとブラックな珈琲で口の中を洗い流す楠葉慎吾、笑みを浮かべて一人息子と会話を交わす。


 この地球でたった二人のSSSランク冒険者の謂わば片割れであり、虹色のギルドカードを与えられたトリプルホルダーという達成者。


 何処か余裕すら感じさせる泰然自若で悠然とした態度で、薄く微笑みを浮かべて瞑目をしながら珈琲を口に運ぶのはとても様に成っている。


「今日は……否、今日も冒険をするんだな?」


「勿論。ダンジョン配信もしているんだし」


「配信か、確かに今はそれが主流に成ってきてはいるよな」


「父さんもしてるって聴いたけど、其処ら辺ってどうなのかな?」


「ああ、【水晶戦記Ch】だ」


「どっから“水晶”が?」


 戦記は未だ兎も角、いったい戦記という言葉は何処から来たのか?


「さてな、扇歌に訊いてくれ。チャンネル名を考えたのはアイツだよ」


「小母さんが!?」


 美衣奈の母親である愛坂扇歌、彼女は日本系の名前を名乗ってはいるけど出身地は北欧に在る。


 本名はセンカ・ヘイエルダールだったと云う、詰まりは彼女の扇歌とは本名での当て字なのだ。


 序でに云えば、愛坂・H・扇歌が正しかった。


「小母さんは北欧の人の筈なのに、普通に日本語のチャンネル名か」


「日本人よりも日本人らしく日本語を話せる奴だからな」


「確かに」


 見た目とは裏腹に、訛りとか変なイントネーションは全く無い。


「そういや、父さんと母さんのレベルって幾つなのかな?」


「俺は807だ」


「私は723ね」


 流石は一六年とか冒険者をしているだけあり、随分と両親共にレベルが高かったらしい。


「それで、お前のレベルは?」


「俺は未だに始めたばかりだから4程度だよ」


「成程、一回だけか」


 ステータスを展開して視れる訳では無いけど、レベルに関しては自身の脈動から判明するもの。


 若し、脈動の回数を数え損ねたらレベルが判らなくなりそうだ。


「ああ、父さんは魔工師だって聴いたんだけど」


「ミスティちゃんから聴いたのか? そうだな」


「技術はスキルによるもの?」


「ああ。そう言うという事は卦韻もスキルが出ているのか?」


「まぁね」


「そうか、それは良かった。会社は卦韻に継がせようかな?」


「は? 会社?」


 どうやら慎吾は会社の経営もしているらしい。


「どんな会社を?」


「魔工学系の会社だ。社名は“魔工師楠葉”だな」


「単純な名前」


「余り、派手にはしていないからな。冒険者なら知る人ぞ知るだが」


 どうも、卦韻が知らなかっただけで割りと有名な魔工店の様だ……冒険者達の間ではだけれど。


「それで、父さんの獲てるスキルって何なの?」


「【錬金術】だな」


「レアリティRか」


「うん? レアリティ?」


「そう。稀少性とかで決まるレアリティなんだ。Rはコモンスキルよりは稀少だけど、持っている人間もそれなりには居る感じかな?」


「ほう」


 説明する卦韻だが、正しくレアリティを測れたのは本人の【真鑑定】が在ったればこそだった。


 朝食後、両親は冒険者としての仕事に出る。


 冒険者というより、魔工師としての会社経営を頑張らねばならない為に、最近ではそちらが多少なり疎かにしがちだったと言っていた。


God morgen(おはよう)!」


「おはよう」


 ミスティと合流したらソッコーで愛坂学園へと向かい、学生証を見せて門を越えて裏山に登ると其処に存在する初心者用ダンジョンに入る。


 通常、入学が決まったとはいえ新入生が始業式前からダンジョンには入らず、二年生以降ならば抑々が初心者ダンジョンは卒業しているからか、相変わらず閑散としてダンジョンに人気(ひとけ)が無い。


 昔に起きたという魔物大暴走が起きない様に、学園の初心者ダンジョンは一年生が狩場にする。


 微妙にバランスを取っているという事だろう。


「第一階層は安全区域だからのんびり出来るな」


「そうだね。でも油断はしない方が良いみたい」


「? と、言うと?」


「瑠亞姉さんがギルドに報告を上げていたよ」


「瑠亞さんが?」


「うん、イレギュラーが起きてるかもだってさ」


「! 浅い階層にディアーが居たみたいな?」


「あっちはビッグタートル」


 ビッグタートルは甲羅が硬くて並のレベルでは歯が立たない、とはいえギルドランクAに若くしてのし上がった瑠亞なら楽勝な程度だ。


「イレギュラーってくらいだからヤバいよな?」


「そうそう起こらない、だけど起きたら確実に宜しくないかな。浅い階層にディアーなら可愛らしいもの、場合によっては洒落にならない」


「起きる理由とかは?」


「判るならイレギュラーとは呼ばれてないよ」


「御尤も」


 魔物大暴走みたいに解明されていないらしい、それでも浅い階層に通常より強い魔物は危険度が高いし、万が一に適性レベルを越えている魔物と遭遇したら、それこそ魔物の御飯コースだろう。


 ダンジョンで死んでも生きた状態でペッと吐き出される程度だけだ。


 それでも尊厳は間違いなく死ぬのだろうから、卦韻としては御遠慮願いたい事象だったと云う。


 それでも最低限、死ぬ事は無い筈だから美衣奈も危機に対して麻痺しているのかも知れない。


「それじゃ、配信を始めるよ」


「了解」


 取り敢えず、配信を始める為に美衣奈が配信用ドローンの起動スイッチを入れ、スマホでサイトと繋げ、武器として樫の木の杖を持った。


「God morgen!」


〔愚問?〕


〔いったい……〕


「あ、ご免ね。おはよう」


 美衣奈から本当に偶に出てくる『おはよう』の外国語だが、会った時の挨拶もそうであったからきっとそんな気分だったのだろう。


「【CCC(スリーシー)】! 今日も仲良く元気に張り切って行ってみよ~!」


〔応っ!〕


〔頑張れ~!〕


〔応援団だぜ!〕


 今回もリスナーは絶好調。


 美衣奈の元気一杯アピールと言葉に反応をするとコメントが流れて、このチャンネルを愉しいのだと感じている事が見て取れていた。


 美衣奈も愉しいのだと、全身全霊を以て体現をしているみたいだし、卦韻もちょっとばかり愉しくなってきて、何だか優しい瞳で見詰める。


「んじゃ、先ず第五階層を目指す。この水晶柱は転移水晶と呼ばれている魔導装置(マギ・システム)なんだけれど、これを使えば五階層刻みで転移が出来るんだ」


〔遂に転移水晶キタァァッ!〕


〔その説明がいつくるのか、待ってましたよ!〕


〔誰が何の為に設置したのかすら判っていない、それでも使えるから使われている魔導装置!〕


〔それが転移水晶だっ!〕


 この合いの手コメント群、正しくリスナーがノリにノッていた。


 既に前回で三階層までは降りていたから後残りは一階層、それで転移水晶を使える様に成るから頑張って降りて行くのが今日の目的だ。


 これが使えるのと使えないのとではダンジョン攻略が雲泥の差、だからこそ行き成りは無理だと判断したけど、この第三回目の配信では是非ともB5にまでは行ってしまいたいのが本音であった。



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